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遅刻してしまう人と5分前行動をする人の脳の違いとは?

発達障害について2回にわたってお話してきましたが、この分野にはまだ解明されていないことが多くあります。 では、実際にどのような点が未解明で、今後どのようなことを解明していく必要があるのでしょうか。今回も引き続き、発達障害をテーマに、その背景や課題を深掘りしていきます。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm26/ 発達障害について解明されていることの現状とは? 発達障害にはまだ多くの未解明な点があり、これが当事者や支援者にとって大きな課題となっています。似た症状を持つ人たちが生きづらさを感じている現状がある一方で、それらの症状がどのようにして生まれ、どんな種類の障害があり、何をすれば改善するのかについては十分に解明されていません。 診断基準に基づき、人との関わり方に問題があり、強いこだわりを持つ場合はASD(自閉スペクトラム症)の特性があるとされ、集中力が続かず授業中に歩き回ってしまう場合はADHD(注意欠如・多動症)の特性があると判断されます。しかし、この診断も一筋縄ではいきません。 例えば、授業中に人の顔の落書きをしてしまう子供について、「注意力が散漫でADHDの気質がある」と解釈する場合もあれば、「人の顔に特別な興味を持つASDの気質がある」と解釈される場合もあります。同じ行動でも判断が分かれるため、発達障害の分類や診断には曖昧さが残ります。 さらに、脳に特徴的なバイオマーカーがあるのかという点についても、いまだ確実な証拠は見つかっていません。「チェックリストに当てはまる人がこの障害」と定義しようとしても、発達障害は複数の特性が併存することが多く、その特有の脳構造を明確にするのは難しい状況です。 薬物療法についても、効果が見られる場合がある一方で、それがどのようなメカニズムで効いているのかは十分に解明されていません。このように、発達障害に関する理解はまだ発展途上にあり、多くの課題が残されています。 治療薬に代わり得るニューロフィードバックとは? 発達障害に関して未解明な点が多い中で、ニューロテクノロジーを活用したアプローチも注目されています。この技術は、従来の薬物療法とは異なり、症状や障害を脳の情報処理の違いとして捉え、それを望ましい方向にトレーニングするという考え方に基づいています。 発達障害の症状や、特異的な脳の情報処理が少しずつ明らかになってきている中、ニューロテクノロジーはこれらにアプローチする可能性を示しています。例えば、ASDにおいては、人の感情を理解することが難しい、表情から感情を読み取ることができないといったコミュニケーションの障害が知られています。このような症状の背景には、脳内の特定のネットワークの機能が関わっていることが分かってきています※。 完全に「治す」ことが目指されるわけではありませんが、ニューロフィードバックや電気刺激を用いることで、コミュニケーション能力に関わる脳の領域を一時的に調整し、人の気持ちを少し理解しやすくしたり、表情を読み取る力を向上させたりすることが可能になる場合があります。これにより、社会性の向上や生活の質の改善が期待されています。 ニューロフィードバックについてはこちらの記事で紹介しています。 https://mag.viestyle.co.jp/neuro_feedback/ また、ADHDに関しては、シータ波やデルタ波といった特定の緩やかな脳波が、定型発達の人と比べて多い傾向があるとされています。このような脳波を調整するニューロフィードバックが提案され、アメリカではFDA(食品医薬品局)によって認可された方法も存在しています。しかし、これが確固たるエビデンスに裏付けられているわけではなく、ADHD特有の脳波パターンが本当に存在するのかについても、まだ議論が続いています。 ニューロテクノロジーは、従来の治療法に代わるものではなく、補完的な手段としての位置づけですが、発達障害の症状への新たな理解や支援の可能性を広げる一歩として、今後の研究と発展が期待されています。 ※出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/36/2/36_219/_pdf?utm_source=chatgpt.com, 2024年12月3日参照 お便りコーナー「遅刻をする人と時間を守る人の脳の違いは?」 Q. 時間を守れる人と守れない人は、脳科学的に何か違いはあるのでしょうか?例えば、次女と主人は5分前行動をするタイプですが、私と長女は時間ギリギリなら良い方で、遅刻気味です。これは性格的な違いなのでしょうか? A.時間を守れる人と守れない人の違いは、性格の違いと言えますが、神経科学や精神医学の視点から見ると、より深い要因が考えられます。 例えば、時間に遅れがちな人にはADHD(注意欠如・多動症)的な傾向があり、5分前行動を好む人にはASD(自閉スペクトラム症)的な特性が見られることがあります。 遅刻気味の人は、多動的でおおらかさがあり、計画がなくても柔軟に物事を進められるタイプであることが多いです。一方、5分前行動を徹底する人は神経質で、段取りやスケジュールにこだわり、それが崩れるとストレスを感じやすい傾向があります。遅刻気味の人は「なぜそんなに急ぐ必要があるの?」と感じることがあり、逆に時間に厳しい人は「どうしてそんなにのんびりしているの?」と不安を覚えることもあります。この違いは、脳の特性や発達的な違いが現れている可能性があります。 遅刻をしやすい行動の背景には、いくつかの要因があります。まず、ADHDの特性として挙げられるのが、衝動性と注意散漫です。行くべき時間を認識していても、直前になって別のことに気を取られてしまうことが多くあります。例えば、服を選び始めたり、ゴミ捨てを思い立ったりして、時間を過ぎてしまうことがあります。また、幼少期の辛い体験やトラウマが影響している場合もあります。虐待などの経験によって自己を切り離す「乖離」という心理状態が生まれると、約束している自分と今の自分の意識が断絶し、遅刻やドタキャンにつながることがあるのです。 さらに、人間関係の不信感も関係していることがあります。信頼できない相手や場所に対する約束を守ることができず、結果的に遅刻やドタキャンが多くなる場合があります。これに加え、幼少期の環境で「時間を守る」「約束を守る」という社会的規範をあまり厳しく教えられていなかった場合、時間を守ることに対する意識が薄いことも考えられます。 このように、時間を守る行動ひとつをとっても、背後には性格だけではなく、発達特性、過去の経験、育った環境が複雑に絡み合っています。遅刻しやすい人や時間に厳しい人の行動を単なる性格の問題と片付けるのではなく、その背景を理解することで、より良い関係性を築いていくことができるでしょう。 まとめ 発達障害に対するニューロテクノロジーの活用には、既存の薬物療法とは異なる可能性が期待されています。例えば、ASDにおけるコミュニケーションの障害や、ADHDにおける衝動性といった症状について、それらを引き起こしている脳の情報処理を特定し、そのサーキットに働きかけることで改善を図る試みが進んでいます。 ニューロフィードバックのエビデンスは近年増加しており、これまでの薬物療法に代わる新たな介入方法として期待されています。「病気として治療すべきか」という議論は別としても、具体的な困りごとを軽減する手段として、この技術には希望を感じる部分があると言えるでしょう。 しかし、この分野には注意が必要です。科学的な根拠が乏しいニューロフィードバックや怪しい主張が出回る可能性もあります。「脳波を測れば発達障害がわかる!」「アルファ波を増やせば自閉症が治る!」といった宣伝に飛びつきたくなる気持ちも理解できますが、必ずしもそれらに十分なエビデンスがあるわけではありません。慎重な判断が求められます。 それでも、この分野は多くの可能性を秘めており、発達障害を持つ人々の生活をより良くするための道筋を示してくれています。みなさん自身がこの分野の当事者であり、どのような介入やテクノロジーを活用すればお互いが生きやすい社会を築けるのか、一緒に考え、前に進んでいきましょう。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/50XcJtTBXjwL2idGpMjqPV?si=9Mo01NmqTSabe0YOEgAfew 次回 次回のコラムでは、脳科学的に『恋愛に効果的な食べ物』をご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm28

大人になってから発達障害に気づくのはどうして?

発達障害は、社会に出てから自分がそうなのではないかと気づき始める人が多いと言われています。子供の頃にはその症状が目立ちにくかったり、周囲に隠されがちだったりするため、早期に自覚することが難しいようです。 では、なぜ子供の頃は、自分が発達障害の症状を持っていることに気づきにくいのでしょうか? 今回も「発達障害」をテーマに、その背景について深掘りしていきます。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm25/ 子供の頃は隠されている発達障害 子供の頃に発達障害に気づきにくい大きな理由として、周囲の大人たち、特に母親や担任教師の存在が大きく関係しています。 小学生の頃、忘れ物が多い子供には母親が次の日の準備を手伝ってくれたり、宿題を忘れやすい子供には担任の先生が声をかけてくれたりと、周囲のサポートによって日常生活が成り立つことが少なくありません。そのため、たとえ発達障害の傾向があったとしても、それが表面化しにくくなるのです。 しかし、中学生になると環境は一変します。母親からは「中学生なんだから、自分でしっかりしなさい」と言われ、例えば朝は自力で起きる必要が出てきます。また、小学校のように一日中同じ担任の先生が見守るわけではなく、教科ごとに担当の先生が変わるため、サポートの手が届きにくくなります。 このように、周囲の支援が減り、自立を求められる場面が増えると、生きづらさを感じ始めることが多くなります。そして、その段階で初めて「もしかして自分は発達障害かもしれない」と気づく人が少なくないのです。 発達障害は本当に治療しないといけない病気? 発達障害への対策として、すべてが「治療」を必要とするわけではありません。しかし、本人が困りごとを抱えている場合には対症療法が有効です。治療法は主に薬物療法と非薬物療法に分けられます。 薬物療法では、ASD(自閉スペクトラム症)に精神病薬を使用したり、睡眠リズムを整える薬を処方することがあります。社会性向上が期待されるホルモン「オキシトシン」の投与も新しい選択肢として注目されています※。一方、非薬物療法では音楽療法や認知行動療法、行動療法などが用いられ、特性に合わせた支援を行います。 ただし、治療が必須ではないケースも多く、周囲の支援があるだけで十分に生活できることもあります。ここで重要なのが、発達障害をどう捉えるかです。医学モデルでは「治すべきもの」とされますが、社会モデルでは「社会の仕組みに課題がある」とし、環境整備の必要性を強調します。 発達障害を持つ人が生きやすい社会をつくるには、周囲の柔軟な対応が欠かせません。例えば、忘れ物が多い友人のために充電器を多めに持つなどの小さな工夫で、お互いの関係が円滑になることがあります。このように、多様な特性を受け入れる仕組みを整えることで、誰もが過ごしやすい社会を目指せるのではないでしょうか。 ※出典:https://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/__icsFiles/afieldfile/2019/07/03/release_20131219.pdf, 2024年12月3日参照 さまざまな人を受け入れる社会作りのために 発達障害の中でも、ASD(自閉スペクトラム症)を持つ人の中には感覚過敏の症状を持つ人がいます。例えば、くすぐりに敏感だったり、少しの音でも反応してしまったりするなど、気が散りやすい特徴が挙げられます。 そのような人たちには、職場で遮音性の高い部屋を用意したり、電気のちらつきやエアコンの音を抑えるなどの環境調整が有効です。このような配慮により、集中力が高まり、パフォーマンスの向上が期待できます。「薬で治してください」と求めるのではなく、特性に合った環境を整えることも重要です。 また、ASDの人は抽象的な言葉を理解しにくい場合があります。例えば、「お風呂見てきて」と言われたとき、湯船の水位を確認するのではなく、お風呂場を見るだけで終わってしまうことがあります。このような特性を持つ人に対しては、職場の上司や同僚が具体的でわかりやすい指示を出すことが大切です。「これをこうしてほしい」と明確に伝えることで、スムーズなコミュニケーションが取れるようになります。 一方、ADHDを持つ人をサポートする方法としては、リマインダーアプリなどの活用が挙げられます。「何時何分にここを出発しよう」といった通知を繰り返し出してくれるアプリは、スケジュール管理が苦手な人にとって大きな助けになります。このような技術を活用し、不得意な部分を補える環境を整えていくことで、より生きやすい社会を築けるのではないでしょうか。 発達障害を持つ人ができる取り組みとして、自分の特性を理解し、「どこまでできるか」「どこからサポートが必要か」を把握することが重要です。例えば、遅刻しがちな人はリマインダーアプリを設定したり、友人に「遅れるかもしれないから連絡してほしい」と頼んだりして工夫を重ねることができます。 一方で、周囲の人も偏見を持たず、当事者の特性を理解しながら協力することが求められます。当事者は自分の症状を理由に開き直らず、周囲の人は一方的な先入観を持たず、お互いに努力し合える関係を築くことが理想です。そのような相互理解と支援が広がれば、誰もが生きやすい社会になるでしょう。 まとめ 今回、大人の発達障害について取り上げました。発達障害は、基本的に小児期にその特性が現れるものです。ただ、子供の頃は母親や担任の先生のサポートによってうまく隠され、生きづらさを感じることが少なかった場合でも、大学生や社会人として自立が求められる段階で困難が表面化し、「大人の発達障害」として認識されるケースが多いと考えられています。 こうした人たちが生きやすくなるための方法として、薬物療法や認知行動療法といった非薬物療法を受ける選択肢があります。しかし、それだけではなく、環境を整える取り組みも重要です。例えば、感覚過敏がある人には音や光の刺激を抑えた環境を用意すること、時間管理や段取りが苦手な人にはスケジュール管理アプリを活用してもらうことなどが効果的です。 発達障害を持つ人が快適に暮らせる社会をつくるためには、当事者に「病気だから治すべき」と一方的に求めるのではなく、周囲もその特性に合わせた環境を整え、支援していくことが大切です。お互いが理解し合い、協力することで、誰もが生きやすい社会を目指していけるのではないでしょうか。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/4s0WDnkQ5TYZGuAmZiaPi0?si=nDs807SWRTenTCMVG1gu3w 次回 次回のコラムでは、『発達障害とニューロテクノロジー』に関するお話をご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm27

脳波で変わる日常生活!アルファ波(α波)の科学的効果とは

現代社会では、ストレスや疲労、集中力の低下に悩む人が増えています。そんな中、注目されているのが脳波の一種である「アルファ波」です。リラックスしているときや、穏やかな集中状態にあるときに発生するアルファ波は、心身を整え、ストレス軽減や集中力向上をサポートしてくれる脳波として知られています。 本記事では、アルファ波とは何か、その驚くべき効果、さらに日常生活で手軽にアルファ波を増やす方法をご紹介します。瞑想や音楽、運動など、忙しい毎日に取り入れられるアイデアを通じて、より充実した日々を実現してみませんか?アルファ波の力を活用し、心身のリフレッシュを目指しましょう。 アルファ波とは?脳をリラックスさせる秘密 アルファ波とは、私たちの脳がリラックスしているときに優勢になる脳波の一種です。脳波は周波数によって分類されており、アルファ波は8~13Hzの範囲に該当します。この周波数帯域は、目を閉じてリラックスしているときや、集中しすぎず適度に落ち着いている状態で観測されることが多いです。 特に、ストレスや疲労を感じる現代人にとって、アルファ波は「心と体を整えるシグナル」として注目されています。そのため、瞑想、深呼吸、特定の音楽などを通じてアルファ波を増やす試みが、科学的にも実践的にも広がっています。 アルファ波が脳に与える影響 脳波は周波数ごとに異なる状態や役割を持ちます。主な脳波は以下の通りです: デルタ波0.5~4Hz深い眠りや無意識状態で現れる。身体の回復や脳の修復に関与。シータ波4~8Hz眠りに入る直前や深い瞑想状態で優勢。創造性や直感力に関与。アルファ波8~13Hzリラックス状態や軽い集中で観測。ストレス軽減に役立つ。ベータ波13~30Hz高い集中や警戒状態で優勢。過剰になると不安やストレスの原因に。ガンマ波30Hz以上複雑な問題解決や学習時に観測。脳の全体的な活動を統合。 アルファ波は、ベータ波とシータ波の中間に位置し、心地よいバランスを保つための「架け橋」のような役割を果たします。 アルファ波が低下し、他の周波数(特にベータ波)が優勢になると、以下のような状態に陥ることがあります: ・過剰なストレス: ベータ波は集中力や警戒心と関連しますが、過剰になると過緊張状態に。 ・不眠や疲労感:リラックスが不足し、脳が休まらないまま活動し続ける。 ・焦燥感や不安感: ベータ波が優勢になると、気持ちが高ぶり、落ち着きを失うことがあります。 逆に、アルファ波が優勢なときは心が安定し、リラックス状態に近づきます。このため、意識的にアルファ波を増やすことが、精神的な健康をサポートすると考えられています。 アルファ波以外の脳波については以下の記事をご参照ください。 https://mag.viestyle.co.jp/eeg-business/ アルファ波を増やすメリット 「アルファ波」と聞くと、少し専門的で難しい印象を持つかもしれませんが、実は私たちの日常生活に密接に関係しています。アルファ波を増やすことで、ストレス軽減や集中力向上など、心身にさまざまな良い効果をもたらしているのです。ここでは、その具体的なメリットについて詳しく見ていきます。 ストレスの軽減 アルファ波は、心を落ち着かせるリラックス効果と関連しています。ストレスがたまると脳はベータ波優勢の状態になり、緊張や焦燥感を感じやすくなりますが、アルファ波が優勢になることで以下のような効果が期待できます: ・心拍数や血圧が安定し、リラックスしやすい状態になる ・感情の安定や不安感の緩和 ・ストレスホルモンであるコルチゾールの低下 後ほど「アルファ波を増やす方法」で詳しく解説しますが、例えば、瞑想や深呼吸、リラックス音楽を取り入れるだけで、自然とアルファ波を増やし、ストレスを軽減することが可能です。 集中力と創造性の向上 適度なアルファ波が優勢である状態は、過剰な緊張を抑えつつ、頭の回転をスムーズにしてくれます。多くの方がアルファ波と聞くとリラックスを想像するのは、この状態が心身のバランスを整え、自然な落ち着きをもたらすからです。その結果以下の効果が期待できます: ・思考がクリアになり、集中力が高まる ・新しいアイデアが生まれやすくなる クリエイティブな作業をする際や、学習時の効率を高めるために、例えば、自然音を聞きながら作業することで、集中力が持続しやすくなります。 睡眠の質向上 良質な睡眠には、リラックスした心身の状態が不可欠です。アルファ波は、次のような睡眠改善効果をもたらします: ・就寝前の緊張を和らげ、スムーズな入眠をサポート ・睡眠中の深い眠り(デルタ波状態)に移行しやすくする 寝る前に瞑想や深呼吸、穏やかな音楽を聞くことでアルファ波を増やし、より良い睡眠を得る手助けとなります。 免疫力の向上 アルファ波は、ストレス軽減を通じて免疫系にもポジティブな影響を与えます。リラックスすることで副交感神経が活性化し、以下のような効果が期待できます: ・自然免疫(NK細胞)の活性化 ・ストレスによる免疫力低下を防ぐ ・身体の回復力を高める 特に長期的なストレスが続くと免疫力が低下し、風邪や病気にかかりやすくなるため、アルファ波を増やす取り組みは健康維持にも役立ちます。 アルファ波を増やす方法・ツールを紹介 アルファ波を意識的に増やすことで、リラックスや集中力向上といった多くのメリットを享受できます。ここでは、簡単に実践できる方法や役立つツールを具体的にご紹介します。 瞑想や呼吸法 瞑想や深い呼吸は、脳波をアルファ波優勢の状態に効果的な方法の一つです。瞑想中は高まったベータ波(緊張状態を示す脳波)が低下し、脳がリラックスモードに移行します。また、呼吸法を組み合わせることで、その効果がさらに高まります。 特に「4-7-8呼吸法」や「腹式呼吸」は副交感神経を刺激し、心拍数や血圧を安定させる効果があります。短い時間でも定期的に実践することで、日常的にアルファ波を増やし、ストレスや不安を軽減することが可能です。 瞑想は初心者にとってハードルが高く感じられることもありますが、初心者でも始めやすい瞑想アプリを活用することで、その効果を手軽に実感できます。以下のアプリはガイド付きセッションやタイマー機能を備えており、具体的な方法を学びながらリラックスした状態に導いてくれます。  以下より、瞑想に役立つアプリを紹介します。 Headspace Headspaceは瞑想やマインドフルネスのガイドを提供する人気のアプリで、ストレス軽減や睡眠改善をサポートします。直感的で初心者に優しい設計と、科学的根拠に基づいた多彩なコンテンツがHeadspaceの魅力です。 公式サイト:https://www.headspace.com/ Calm Calmは瞑想や睡眠、リラクゼーションをサポートする世界的に人気の高いアプリで、初心者から上級者まで幅広く利用されています。 高品質な音声コンテンツや自然音、著名人によるナレーションが揃い、深いリラクゼーション体験を提供する点がCalmの魅力です。 公式サイト:https://www.calm.com/ja Insight Timer Insight Timerは、世界中の専門家が提供する数千種類のガイド付き瞑想や音楽を無料で利用できるアプリです。豊富な無料コンテンツが揃い、自分に合った方法で瞑想を楽しめる自由度の高さが魅力です。 公式サイト:https://insighttimer.com/ その他、瞑想についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。 https://mag.viestyle.co.jp/meditation/ 音楽や自然音の利用 音楽や自然音を聞くことは、アルファ波を増やす上で非常に効果的な方法です。特に、バイノーラルビートや特定の周波数を含む音楽は、脳波をアルファ波に誘導することが科学的に示されています。また、自然音(川のせせらぎ、鳥のさえずり、雨音など)は心地よいリラックス感をもたらし、ストレスを軽減します。 VIE Tunes VIE Tunes(ヴィーチューンズ)は、脳波に働きかけるニューロミュージックを提供する音楽アプリです。ユーザーの「なりたい状態」に合わせて脳をととのえ、独自の音楽体験を楽しめる点が特徴です。 公式サイト:https://lp.vie.style/vie-tunes VIE Tunes Pro VIE Tunes Proは、イヤホン型脳波計「VIE Zone」や「VIE Chill」と連携し、ユーザーの脳波を解析してAIモデルを生成する音楽アプリです。仕事、瞑想、ヨガ、サウナ、睡眠といったさまざまなシーンにおいて脳状態を数値化し、パーソナライズされたニューロミュージックで最適な脳の状態をサポートします。 公式サイト:https://vie.style/pages/vie-tunes-pro 運動やヨガの実践 運動やヨガは、心と体の両方を整え、アルファ波を自然に増やす方法として人気があります。適度な運動は、ストレスホルモンであるコルチゾールを減少させるだけでなく、セロトニンやエンドルフィンといった「幸せホルモン」を分泌し、リラックス効果を高めます。 またヨガは、呼吸法とポーズの組み合わせにより、アルファ波優勢の状態を促進します。ヨガの基本ポーズである「シャバーサナ(死体のポーズ)」や「チャイルドポーズ」など、リラックスを目的としたポーズを中心に行うことで、脳が落ち着きを取り戻します。ヨガは忙しい生活の中でも短時間で実践できる点が魅力です。 アロマセラピー アロマセラピーは、嗅覚を通じて脳に直接働きかけ、リラックスをもたらす自然療法です。特に、ラベンダーやイランイラン、サンダルウッドなどの香りは、副交感神経を活性化し、アルファ波を増加させる効果があります。 香りを吸入することで、脳内のストレスホルモンを減少させるだけでなく、気分を落ち着かせる作用が科学的に裏付けられています(1)。ディフューザーやアロマスプレーを使うことで、自宅や職場でも手軽に取り入れることが可能です。また、バスソルトやマッサージオイルと組み合わせると、さらに深いリラクゼーションが得られます。 (1)参考:https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/0824.html?utm_source=chatgpt.com 温浴(入浴や足湯) 温浴は、体を温めることで血流を促進し、心身の緊張をほぐす効果があります。副交感神経が優位になることでアルファ波が増加し、リラックスした状態を作り出すことが可能です。特に38~40度のぬるめのお湯に10~15分ほど浸かることで、心拍数が落ち着き、ストレスの軽減に繋がります。 また、足湯は忙しい日常でも簡単に取り入れることができ、疲労回復とリラックス効果が期待できます。バスソルトや入浴剤を活用すると、リラクゼーション効果がさらに高まります。入浴後には睡眠の質も向上するため、夜の習慣として特におすすめです。 日光浴 日光浴は、アルファ波を増やすだけでなく、体内リズムを整える効果もあります。太陽光を浴びることで、セロトニンの分泌が促進され、脳がリラックスした状態に切り替わるのです。また、日光浴はストレスを緩和し、気分を安定させる効果があり、短時間でも健康維持に役立ちます。 朝の時間帯に15~30分程度日光を浴びると、体内時計がリセットされ、夜の睡眠の質も向上します。特にオフィスワークや屋内で過ごす時間が多い方には、積極的に取り入れることが推奨されています。 デジタルデトックス 長時間のスマートフォンやPCの使用は、脳を常に刺激し、アルファ波が減少する原因となります。デジタルデトックスは、こうしたデジタル機器から意識的に離れる時間を作り出し、脳をリフレッシュさせる方法です。自然やアナログな趣味に触れることで、心身がリラックスし、アルファ波優勢の状態を取り戻すことができます。 Forest Forestは、スマートフォンから離れて集中したいときに、設定した時間スマホを触らずに過ごすことで、仮想の木を育てることができるアプリです。設定した時間スマホに触らずに過ごすことができれば、植えた木の苗は立派な木へと成長し、逆に我慢できずにスマホを触ってしまうと、葉っぱが枯れた木になるという仕組みです。 公式サイト:https://www.forestapp.cc/ Offtime Offtimeは、特定の時間帯に特定の人やグループからの連絡のみを許可し、その他の通知や着信をブロックすることで、仕事や勉強に集中できる環境を提供するアプリです。Offtimeは、通知や着信の制御を細かくカスタマイズでき、集中したい時間をしっかりサポートする高い柔軟性が魅力です。 アプリサイト:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.ascent&hl=ja アルファ波に関する最新の研究 アルファ波は、リラクゼーションや注意力向上に深く関与する脳波として、多くの研究者から注目を集めています。以下、最新の研究成果を紹介します。 アルファ波を増強するニューロフィードバックトレーニングの効果 2021年にGrosselinらが行った研究では、12週間にわたるニューロフィードバックトレーニング(NFT)の効果を健康な成人を対象に調査しました。特に、リラクゼーションや集中力に関連するアルファ波の増強に注目しています。 研究対象は、被験者を「NFグループ」と「対照グループ」の2つに分け、トレーニングを行いました。NFグループは、自分の脳波に基づいて音量が調整されるリアルタイムフィードバックを受ける一方、対照グループはランダムに生成された音声フィードバックを受けました。 主な結果: アルファ波の増加:NFグループでは、トレーニング期間を通じてアルファ波(8~12Hz)が増加し、脳波を意識的に調整する能力が向上しました。 対照グループとの比較:対照グループではこうした変化は確認されませんでした。 リラックス感と不安の軽減:両グループの被験者がリラックス感の向上や不安の軽減を報告しました。 結論: この研究は、ニューロフィードバックトレーニングが脳波を調整する能力を高め、リラクゼーションやストレス軽減に寄与する可能性を示しています。 Grosselin, F., Breton, A., Yahia-Cherif, L., Wang, X., Spinelli, G., Hugueville, L., Fossati, P., Attal, Y., Navarro-Sune, X., Chavez, M., & George, N. (2021). Alpha activity neuromodulation induced by individual alpha-based neurofeedback learning in ecological context: A double-blind randomized study. Scientific Reports, 11, Article 18738. ニューロフィードバックに関する詳細はこちらの記事も参照ください。 https://mag.viestyle.co.jp/neuro_feedback/ マインドフルネス瞑想とアルファ波増強の関係 2023年に深圳大学が行った研究では、8週間にわたるマインドフルネスストレス低減(MBSR)プログラムを通じて、瞑想中と安静時の脳波活動の変化を調べました。特に、リラクゼーションや集中力と関係が深いアルファ波の増加に注目しています。 研究の対象は、MBSR初心者である男女11名です。脳波測定(EEG)は、訓練の初期段階(1~2週目)と後期段階(9~12週目)の2回行われました。瞑想セッションでは、被験者はマインドフルネス呼吸法を実践し、その結果を安静時と比較して分析しました。 主な結果: アルファ波とベータ波の増加:瞑想を続けることで、アルファ波(8~12Hz)とベータ波(13~30Hz)が顕著に増強しました。これらの変化は、特に後頭葉や前頭葉で顕著に観察されました。 脳波の安定化:トレーニングが進むにつれて、これらの周波数帯の変化が安定し、瞑想の熟練度と関係があることがわかりました。 デルタ波の減少:低周波であるデルタ波(1~4Hz)が減少し、リラクゼーションや集中力が向上している可能性が示されました。 さらに、深層学習と機械学習を用いて、瞑想状態と安静状態の脳波を分類する技術が評価されました。その結果、MBSRトレーニングで得られた脳波パターンが瞑想状態の特徴として正確に識別されることがわかりました。 結論: この研究は、短期間の瞑想トレーニングがアルファ波を増強し、リラクゼーションやストレス軽減に役立つ可能性を示しています。これにより、瞑想が脳の活動にポジティブな変化をもたらす科学的根拠が提供されました。 Shang, B., Duan, F., Fu, R., Gao, J., Sik, H., Meng, X., & Chang, C. (2023). EEG-based investigation of effects of mindfulness meditation training on state and trait by deep learning and traditional machine learning. Frontiers in Human Neuroscience, 17:1033420.  論文リンク:https://doi.org/10.3389/fnhum.2023.1033420 アルファ波の調整による睡眠の質改善効果 2022年にBresslerらが行った研究では、ウェアラブルEEGデバイスを用いた閉ループ神経調節技術が、睡眠の質改善に与える効果を調査しました。特に、アルファ波(8~12Hz)の活動を調整することで、睡眠導入時間や質の向上に注目しています。 研究対象は、日常的な環境で睡眠を取る健康な成人および不眠症状を持つ被験者です。以下の3条件で実験が行われました: ・音声刺激なし ・アルファ波のピーク位相に同期した聴覚刺激 ・アルファ波の谷位相に同期した聴覚刺激 主な結果: 睡眠導入時間の短縮:アルファ波ピーク時の刺激により、不眠症状を持つ被験者の睡眠導入時間が平均20分短縮されました。 非薬理学的アプローチの有効性:閉ループ神経調節が薬に頼らず睡眠改善を実現できる可能性を示しました。 ウェアラブルデバイスの利便性:自宅での睡眠データ収集が可能で、個別化治療の実現を後押しします。 結論: アルファ波に基づく神経調節技術は、不眠症や睡眠障害の治療における革新的な手法となり得ることが示されました。 Bressler, S., Neely, R., Read, H., Yost, R., & Wang, D. (2022). A Wearable EEG System for Closed-Loop Neuromodulation of High-Frequency Sleep-Related Oscillations. arXiv preprint arXiv:2212.11273.  論文リンク:https://arxiv.org/abs/2212.11273 ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードする アルファ波を日常生活に取り入れよう アルファ波を意識的に生活に取り入れることで、心身の健康を整え、ストレスの軽減や集中力向上を図ることができます。アルファ波はリラックスした状態で発生し、瞑想や深呼吸、好きな音楽を聴くことで効果的に活性化できます。また、自然の中で過ごすことやヨガ、ストレッチといった軽い運動もアルファ波の増加に役立ちます。 これらを日々の生活習慣に取り入れることで、心身のバランスを整え、より充実した生活を送ることが可能です。ぜひ、自分に合った方法を見つけ、アルファ波を活用してみましょう。

ウェルビーイング経営の新潮流:脳科学とテクノロジーで実現する社員の幸福と企業成長

従業員一人ひとりの心身の健康と幸福(ウェルビーイング)を組織の成長エンジンと捉える「ウェルビーイング経営」。今、多くの企業がこの新しい経営スタイルに注目しています。特に、リモートワークの普及や働き方の多様化が進む現代において、メンタルヘルスケアやストレス対策の重要性はかつてないほど高まっています。 本記事では、ウェルビーイング経営の基本的な考え方から、その重要性が増している社会的背景、さらには脳科学やAIといった最新テクノロジーを活用した先進的な取り組みまでを深掘りします。具体的な企業事例を交えながら、従業員のエンゲージメントと企業の持続的成長を両立させるウェルビーイング経営の魅力と可能性に迫ります。 ウェルビーイング経営とは?社員の幸福が企業成長の鍵 まず、「ウェルビーイング経営」が具体的に何を指し、なぜ現代の企業経営において重要視されているのか、その基本的な概念と背景について理解を深めましょう。 ウェルビーイング経営の基本概念と人的資本経営との関連 ウェルビーイング経営とは、従業員が身体的、精神的、社会的に良好な状態(ウェルビーイング)でいられるよう、企業が戦略的に支援し、それを通じて組織全体の活性化、生産性向上、そして持続的な企業成長を目指す経営アプローチです。 近年注目される「人的資本経営」において、従業員は単なる「資源(リソース)」ではなく、価値創造の源泉である「資本(キャピタル)」として捉えられます。この文脈において、従業員のウェルビーイングは、その資本価値を最大化し、維持・向上させるための不可欠な要素として位置づけられています。つまり、ウェルビーイング経営は人的資本経営を具体的に推進する上での重要な柱の一つと言えるでしょう。 国内外のウェルビーイング市場について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。 https://mag.viestyle.co.jp/well-being-market-landscape/ 従業員の心身の健康が企業パフォーマンスに与える影響 従業員の心身の健康状態は、企業のパフォーマンスに直接的な影響を及ぼします。経済産業省の資料(※1)でも指摘されているように、従業員が健康であれば、仕事への集中力や意欲が高まり、創造性や問題解決能力も向上します。 特にメンタルヘルスが安定している状態では、職場内のコミュニケーションが円滑になり、チームワークが醸成されやすくなるため、組織全体の生産性向上に繋がります。逆に、健康状態が悪化すると、欠勤率の上昇、生産性の低下(プレゼンティーイズム)、さらには離職リスクの増大といった形で、企業経営にマイナスの影響を与えかねません。 (※1)健康経営の推進について - 経済産業省:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeiei_gaiyo.pdf なぜ今、ウェルビーイング経営が企業に不可欠なのか? 現代社会において、企業がウェルビーイング経営に取り組む必要性はますます高まっています。その背景には、働き方の変化や従業員が抱える課題の複雑化があります。 働き方改革とコロナ禍が加速させた「個」の課題 働き方改革の推進や、コロナ禍を契機としたリモートワーク、ハイブリッドワークの急速な普及は、従業員の働き方に大きな変化をもたらしました。通勤時間の削減や柔軟な時間活用といったメリットがある一方で、コミュニケーションの希薄化、仕事とプライベートの境界の曖昧化、孤独感の増大といった新たな課題も生まれています。 これにより、従業員一人ひとりが抱えるストレスや心身の不調が顕在化しやすくなっています。 リモートワーク時代のメンタルヘルス問題と生産性への影響 リモートワーク環境下では、従業員自身による高度な自己管理能力が求められます。業務の進捗管理やパフォーマンス維持に対するプレッシャー、対面での気軽な相談機会の減少、オンオフの切り替えの難しさなどから、メンタルヘルスに不調をきたすケースが増加傾向にあります。 このような状態は、集中力の低下、モチベーションの減退を招き、結果として個人および組織全体の生産性に悪影響を及ぼします。 メンタル不調が企業経営に与えるリスクとその対策の重要性 従業員のメンタルヘルス不調は、個人の問題に留まらず、企業経営における重大なリスクとなり得ます。欠勤や長期休職による人材不足、医療コストの増加、職場全体の士気低下、さらには優秀な人材の離職といった事態を招きかねません。 そのため、企業はこれらのリスクを未然に防ぎ、軽減するために、メンタルヘルス対策を積極的に講じることが不可欠です。従来のカウンセリングサービスや相談窓口の設置に加え、近年ではAIや脳科学などの最新テクノロジーを活用し、よりパーソナライズされた効果的なウェルビーイング支援を提供する動きが活発化しています。 【最新トレンド】脳科学とテクノロジーを活用したウェルビーイング施策 ウェルビーイング経営の進化において、脳科学の知見と先端テクノロジーの融合は、従業員のメンタルヘルスケアやパフォーマンス向上に新たな可能性をもたらしています。ここでは、その具体的な例をいくつかご紹介します。 EEG(脳波)データで見える化するメンタルヘルスと集中状態 EEG(Electroencephalography:脳波計測)は、脳の電気的な活動を記録する技術です。この技術を活用することで、従業員のストレスレベル、集中度、リラックス度といったメンタル状態を客観的なデータとして「見える化」できます。 例えば、脳波パターンからストレスの高まりが検知されれば、適切なタイミングで休憩を促すアラートを出したり、リラクゼーションコンテンツを推奨したりすることが可能です。従業員自身も自らの脳の状態を把握することで、セルフケア意識の向上や早期対処に繋がります。 EEGについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。 https://mag.viestyle.co.jp/eegmeasurement/ ニューロフィードバックによる脳の自己調整力トレーニング ニューロフィードバックは、リアルタイムで計測した自身の脳波データ(主にEEG)を基に、特定の脳活動を意識的にコントロールする力を養うトレーニング手法です。 例えば、リラックスしたい時にはリラックス状態に対応する脳波パターンを、集中したい時には集中状態に対応する脳波パターンを目標とし、その状態に近づけるよう脳を訓練します。 これにより、ストレス下でも冷静さを保つ、あるいは必要な時に高い集中力を発揮するといった、脳の自己調整能力を高める効果が期待されています。 ニューロフィードバックについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。 https://mag.viestyle.co.jp/neuro_feedback/ 脳科学的アプローチがもたらす具体的なウェルビーイング効果 マインドフルネス瞑想や特定の音楽刺激など、脳科学的エビデンスに基づいたアプローチは、ストレス軽減、集中力向上、睡眠の質の改善といった具体的なウェルビーイング効果をもたらすことが示されています。 最近では、こうした脳科学の知見を活かした製品やサービスも登場しています。例えば、個室型ブース「VIE Pod」は、脳波に働きかける特殊な音楽(ニューロミュージック)を組み合わせることで、利用者が短時間で集中状態やリラックス状態に入りやすい環境を提供します。 これにより、オフィスにいながら手軽に心身のコンディションを整え、生産性向上とウェルビーイング向上を両立させることを目指しています。 VIE PODについて詳しく知りたい方は、以下のリンクをご参照ください。 https://lp.vie.style/vie-pod 最新技術を活用したウェルビーイングの企業事例 本セクションでは、実際に先進的な取り組みを行っている企業の事例をご紹介します。 マイクロソフト「MyAnalytics」 MyAnalyticsは、従業員の勤務時間、集中して作業できた時間、会議への参加時間、さらには休息やリフレッシュに充てた時間などをデータとして収集・分析します。このデータをもとに、従業員は自分の働き方の傾向を把握し、改善点を見つけることが可能です。 特に注目されるのは、従業員が無意識のうちに長時間労働に陥らないよう、適切な休息のタイミングやリフレッシュの必要性をアラートで知らせる機能です。これにより、従業員は過労を未然に防ぎ、心身の健康を維持しながら生産性を高めることができます。マイクロソフトのこの取り組みは、テクノロジーを活用して従業員が主体的に健康を管理できるよう支援する好例と言えるでしょう。 MyAnalyticsについて https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/blog/2019/01/02/myanalytics-the-fitness-tracker-for-work-is-now-more-broadly-available/ ロート製薬「健康社内通貨:ARUCO」 ロート製薬株式会社は、従業員の心身の健康向上を支援するため、健康社内通貨「ARUCO」を導入しています。この取り組みでは、日々の歩数や非喫煙などの健康活動に応じて「ARUCO」が付与され、ヘルシーランチの購入やリラクゼーション施設の利用、特別休暇の取得などに活用可能です。 従業員は楽しみながら健康的な生活習慣を築ける仕組みとなっており、企業全体のウェルビーイング向上を促進しています。ロート製薬の健康重視の経営方針は、従業員の満足度や生産性向上につながる、革新的なウェルビーイング経営の一例です。 健康社内通貨「ARUCO」について https://www.rohto.co.jp/news/release/2019/0207_01/ 味の素株式会社「味の素流セルフ・ケア」 味の素株式会社は、「従業員のウェルビーイングは人財資産の強化を支える基盤」として、多角的な施策を展開しています。その中心となるのが、従業員が主体的に取り組む「味の素流セルフ・ケア」です。従業員は自分の健康データをポータルサイトで確認し、健康改善を促進するアプリを活用。 さらに、健康診断結果をもとにした「健診戦」では、改善状況の順位づけや表彰を行い、健康意識を高めています。健康診断や個別面談といった基盤的施策と併せ、「持続可能なエンゲージメント・ウェルビーイング」を指標とし、すべての従業員が働きがいを感じる職場の実現を目指しています。この包括的な取り組みは、従業員と企業の成長を支える基盤となっています。 味の素流セルフ・ケアについて https://park.ajinomoto.co.jp/special/wellbeing/ ウェルビーイング経営の未来 ウェルビーイング経営は、単なるトレンドではなく、持続可能な企業運営を実現するための重要な要素として定着しつつあります。従業員の心身の健康を支援し、働きやすい環境を整えることは、企業の競争力を高め、長期的な成長を促進するために欠かせない戦略です。特に、テクノロジーや脳科学の進展により、個々の従業員に合わせたパーソナライズドなサポートが可能になり、ウェルビーイング経営の効果を一層高めています。 ウェルビーイング経営の未来は、よりパーソナライズドで予防的なサポートが主流になると考えられます。従業員の健康状態をリアルタイムでモニタリングし、適切なタイミングでサポートを提供することで、心身の不調を未然に防ぐ仕組みが進化していくでしょう。また、働く場所や時間に縛られない柔軟な働き方の普及により、ウェルビーイング経営の実践はさらに広がりを見せるはずです。 企業がウェルビーイング経営を真剣に取り組むことで、従業員と組織の双方が活力を得て、より強固な成長基盤を築くことができるでしょう。ウェルビーイング経営は、健康的で幸福な社会の実現に向けた第一歩とも言えます。

発達障害の人口は急増した?ADHDという言葉が拡まった理由

ここ数年、SNSやメディア、さらには芸能人の告白などを通じて、ADHD(注意欠陥・多動性障害)について話題にする人が増えています。日常生活でも「それ、ADHDじゃない?」というような会話を耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか。 ADHDは注意力の欠如や多動性、衝動性が特徴の発達障害の一つですが、なぜ最近になってこうした話題が急増しているのでしょうか? 今回は「発達障害」に焦点を当て、社会での認識がどのように変化しているのか、また、その背景に何があるのかを深掘りしていきたいと思います。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm24/ 最近ADHDの人は増えたの? アメリカの医学会が作成したDSM(精神疾患の診断マニュアル)は、精神疾患や発達障害を理解し支援するうえで大きな役割を果たしています。弊社の最高脳科学責任者である茨木も、このマニュアルの作成に関わった人たちと話す機会があり、「このような診断基準が普及することで、『私ADHDだから仕方ない!』と、自分の症状を理由に行動を正当化する人が増えるのではないか」と質問したことがあります。 彼らの返答は、「その懸念は理解できるが、まずは疾患についての啓蒙が必要だった」とのことでした。ADHDのような発達障害に関する症状が昔からあったにもかかわらず、それを障害として理解し、サポートが必要な人として社会が認識してこなかった歴史があります。そのため、まずは障害の存在を広く知ってもらうことが重要だった、という考え方です。診断基準が普及することは、そのような障害を抱えた人々への理解と支援の拡充に役立ってきたのです。 しかし一方で、ADHDという名前が一般化しすぎると、それがアイデンティティの中心になりすぎるリスクもあるといいます。たとえば、ADHDの人がドタキャンや遅刻を繰り返し、「ADHDだから仕方ない」と言い訳にしてしまうことがあるかもしれません。ある専門医も「それだけで許されてしまうのは、治療者としては複雑な気持ちになる」と語っていました。 自分の症状をアイデンティティの核としてしまうと、本人も周りも苦しくなってしまう場合があります。適切なサポートと理解を得るためには、障害や特性を受け止めつつも、それに依存せず、少しずつ対処法を模索する姿勢が大切かもしれません。 原因の究明が難しい発達障害 他の臓器とは異なり、脳の特徴や障害は非常に複雑で、診断や理解が難しい面があります。 たとえば、「咳が出る」という症状には、コロナ感染や喉への異物の侵入など、さまざまな原因が考えられます。この場合、診断では「咳がある」とだけ言うのではなく、「ウイルス感染ですね」「インフルエンザですね」と具体的な原因を特定し、咳止めなどの対症療法と並行して、原因そのものへの治療を行います。 しかし、発達障害などの精神分野では、こうした原因の究明が非常に難しく、現在もそのメカニズムは明確にわかっていません。症状としては、自閉症やアスペルガー症候群、ディスレクシア(読字障害)といった分類が存在しますが、これらはあくまで「症状」として捉えられます。日本の医学会もアメリカのDSM(精神疾患の診断マニュアル)を基に診断基準を設けており、その基準に該当する症状があれば、診断名がつけられる仕組みになっています。 そのため、現状では発達障害に対して根本的な治療はなく、症状を緩和する対症療法が主な手段です。また、これが「個性」や「性格」とどのように異なるのかについても、まだ曖昧な部分が多くあります。遺伝や脳機能の違いがある程度解明されつつありますが、なぜそのような違いが生まれるのか、その根本原因は脳の構造や発達の違いに関連しているとされながらも、性格や個性とどう線引きできるかは、非常に難しいテーマです。 ADHDの診断基準を作成した医師たちは、「ADHDを個性とは言わないものの、一種の『体質』のようなもの」と表現していました。これは、本人が望んでその特性を持つわけではない一方で、ある程度自分で対処する努力も可能であるという意味です。どんなに理解されるべき特性であっても、それを理由に責任を回避したり、開き直る態度は周囲との関係を損なう可能性があります。そのため、「体質」としての特性と向き合いながら、自分なりの工夫をすることが大切であり、発達障害の理解においてもこの姿勢が重要かもしれません。 まとめ 発達障害は、脳機能の発達に関連する問題であり、主に自閉症、アスペルガー症候群、ADHD、学習障害などが含まれます。臨床の現場では、特に子どもの問題として診断・支援が行われる分野です。 発達障害は、遺伝的な要因や脳の器質的・機能的な違いに起因する症状として捉えられていますが、その診断には、具体的な症状に基づいたチェックリストが用いられています。そのため、ADHDとアスペルガー症候群が併存するように、複数の症状が同時に見られるケースも少なくありません。こうした併存が発達障害や精神分野の特徴であり、診断の難しさにもつながっています。 最近では発達障害を公表する人も増え、理解は広がりつつありますが、症状の捉え方や治療の必要性についてはまだ社会的なコンセンサスが十分に形成されていない部分があります。障害という呼称がつけられているのも、その複雑さゆえかもしれません。 発達障害は時に「体質」に近い側面もあり、本人や周囲がその特徴を受け止める姿勢が求められます。本人が開き直ることも、周囲が無理解であることもお互いに生きづらさを生むため、共存と理解の時代が求められていると感じます。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/4EMtlXBnZua3vbBgkQIHZw?si=udtZBim-S6efq3TyHi5sRA

ニューロテクノロジーを使って見たい夢を見る方法とは?

ストレスが溜まっているときに、怖い夢や悲しい夢を見た経験はありませんか? 以前「学習」に関する回でお伝えした通り、睡眠は日中に得た記憶を再構成する大切な時間です。そのため、私たちが見る夢には、寝る直前に体験したことや、その日に感じた感情が反映されやすいと考えられています。 今回は、そんな「夢」をテーマに、睡眠についてさらに深掘りしていきましょう。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm23/ 見たい夢を自分で作れる!ドリームエンジニアリングとは? みなさんは、ドラえもんの「気ままに夢見る機」をご存じでしょうか?これは、のび太くんの「せめて夢の中だけでも活躍したい!」という願いに応えて、ドラえもんが見せてくれた道具で、見たい夢のカセットを入れると、その夢を見ることができるというものです。 もちろんこれは漫画の中の話ですが、実は現実世界でも、見たい夢をテクノロジーの力で実現しようとする「ドリームエンジニアリング」と呼ばれる研究が進んでいます。脳科学の分野で注目されているこの技術は、夢を自分でコントロールできるようにすることを目指しています。 その手法のひとつとして、「ターゲッテッド・ディアクティベーション」という方法が挙げられます。これは、寝る前に見たい夢に関連するコンテンツを視聴したり聞いたりしておき、寝ている間に同様の刺激を与えることで、その内容を夢として再現しやすくするという技術です。例えば、好きなアイドルの夢を見たい場合、寝る前にそのアイドルの動画を視聴し、さらに寝ている間にアイドルの声を聞かせることで、記憶が再活性化されて夢に反映されやすくなります。 将来的には、ニューロンを一つひとつターゲットにして刺激できるようになれば、完全に自由な夢を構成して見せることも可能になるかもしれません。ただし、これはまだ少し先の話です。しかし、夢を自らの意図に近づける試みとして、ディアクティベーション戦略は非常に注目されているテーマです。 最近では、VRとの組み合わせも試されています。たとえば、寝る前に空を飛ぶVR体験をすると、その感覚が記憶に残り、夢の中で空を飛ぶ夢を見やすくなるといった効果も報告されています。今後、テクノロジーが進化することで、夢の中でも自由に楽しむことができる未来が訪れるかもしれません。 寝ている人が見ている夢を解読! 日本のSFドラマ「悪夢ちゃん」では、人が見ている夢を他者が覗くことができるという設定が描かれていますが、実はこうした技術は、脳科学の分野で少しずつ実現に近づいています。 現在の研究では、被験者がfMRI(機能的核磁気共鳴機能画像法)の中で眠っている間に脳活動を測定し、「その人がどんな映像を見ているか」を解析する試みが進められています。夢を見ているとされるレム睡眠中に、被験者を起こして「今どんな夢を見ていたか?」と尋ね、実際に見ていた内容と脳活動のパターンを記録することで、特定の映像や夢に関連する脳活動をデータとして蓄積していきます。この方法を繰り返しデータを集めることで、夢の内容を解読できるようにする技術が開発されつつあります。 ただし、夢は主にレム睡眠中に発生するため、夢を解読するには、被験者がレム睡眠に入っているかを脳波で確認する必要があります。このタイミングで、夢の内容を記憶として残しやすくするためにディアクティベーション技術が使われることもあります。たとえば、レム睡眠中に関連する音を聞かせるなどして記憶を活性化することで、夢の記憶が鮮明に残る可能性があるのです。 このように、夢の内容を把握し、それを記録する技術は急速に進化しており、いずれ「夢の内容を正確に再現できる」日が訪れるかもしれません。 睡眠領域で挑戦したいこと 睡眠覚醒リズムの調整に薬を使うのは、現代ではある程度やむを得ない部分もあります。しかし、睡眠薬の長期使用や大量処方により、薬に依存してしまったり、過剰摂取(オーバードーズ)の問題が発生したりと、依存のリスクも顕在化しています。 そこで、薬に頼らず安全に自然な眠りを誘発できるよう、脳の活動を自分で整える方法を模索したいです。例えば、心地よく眠れる音楽を自動的に選んでくれるようなデバイスやサービスの開発は、誰でも手軽に利用できる新しい選択肢になるでしょう。 さらに、「見たい夢を自らコントロールできる」ようなドリームエンジニアリングにも挑戦してみたいと考えています。レム睡眠中に脳に特定の刺激を与えることで夢の内容を調整し、ニューロテクノロジーを活用して、思い通りの夢を楽しめる世界が実現できるかもしれません。 睡眠に関しては、これまで睡眠障害や「睡眠負債」といった問題が取り上げられてきましたが、もし睡眠がもっと楽しく、クリエイティブな体験になれば、私たちの生活も豊かになるはずです。「早く寝たい!」と思える人が増え、睡眠の質が向上すれば、生産性や日中のパフォーマンスも上がります。睡眠を通じて、より健やかで創造的な社会作りに貢献できるような技術やサービスの実現を目指しています。 まとめ 私たちが眠っている間に見る夢は、記憶の再統合の役割を持ち、寝る直前の体験や感情が反映されることが多いとされています。 近年では「ドリームエンジニアリング」と呼ばれる技術が注目されており、見たい夢を意図的に見るためのテクニックが開発されつつあります。脳波の測定や特定の刺激を用いて、夢の内容を推定・誘導することも現実のものとなってきています。 「早く寝て夢を見たい!」というような感覚が広がれば、睡眠不足が深刻な日本でも、睡眠への意識が高まり、健康的な睡眠が広がる未来が期待できるのではないでしょうか。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/6zzwxTGuF7NFZ1t6aylmGX?si=DN-6fPkZQ267hb25lKOM-A 次回 次回のコラムでは、ADHDをはじめとする『発達障害』について深堀していきます。 https://mag.viestyle.co.jp/columm25/

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