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メンタルヘルス

ウェルビーイング経営が企業成長を後押しする理由|導入メリット・戦略・成功事例を解説

「従業員の幸せが、企業の成長を本当に後押しするのだろうか?」多くの経営者や人事担当者が抱えるこの問いに、現代の経営学は明確な「イエス」を提示し始めています。心身ともに健康で、働きがいを感じられる従業員は、生産性や創造性が向上し、結果として企業全体の競争力強化に不可欠な存在です。特に、コロナ禍を経て働き方が大きく変化した今、ウェルビーイングの実現は、企業にとって避けて通れない重要な経営テーマとなっています。 この記事では、ウェルビーイング経営がなぜ企業成長に不可欠なのか、その本質的な理由と具体的なビジネスメリット、そして導入・推進のための戦略的アプローチを、先進企業の事例を交えながら解説します。 ウェルビーイングとは?ビジネスにおける本質的な意味と重要性 ウェルビーイング(Well-being)とは、単に病気でない、あるいは弱っていないという状態を指すのではなく、身体的・精神的・社会的にすべてが満たされた、良好で幸福な状態にあることを意味します。これは世界保健機関(WHO)による健康の定義にも通じる考え方です。 ビジネスの文脈におけるウェルビーイングは、従業員一人ひとりが仕事や私生活において充実感を持ち、心身ともに健康で、自らの能力や個性を最大限に発揮できる状態を目指すものです。企業が従業員のウェルビーイング向上を支援することは、もはや単なる福利厚生の範疇を超え、企業の持続的な成長と競争力を支える重要な経営戦略として捉えられています。 ウェルビーイングの構成要素についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。 https://mag.viestyle.co.jp/five-elements/ 企業が今、ウェルビーイングに取り組むべき社会的背景 企業がウェルビーイング経営に注目し、積極的に投資するようになった背景には、以下のような複合的な社会的・経済的変化があります。 働き方の多様化とコロナ禍の影響: リモートワークの普及などにより、従業員の働き方は大きく変化しました。一方で、コミュニケーションの希薄化や仕事と私生活の境界の曖昧化が進み、メンタルヘルスへの配慮や自律的な働き方の支援が一層求められるようになりました。 従業員エンゲージメントの重視: 従業員が仕事に対して持つ「熱意」「没頭」「活力」といったエンゲージメントの度合いが、企業の生産性や業績に大きく影響することが明らかになっています(ギャラップ社調査など)。ウェルビーイングの向上は、このエンゲージメントを高めるための重要な鍵となります。 人材獲得競争の激化と定着の重要性: 少子高齢化に伴う労働力人口の減少が進む中、優秀な人材の獲得とリテンション(定着)は企業にとって死活問題です。特に若い世代は、報酬だけでなく「働きがい」や「自己成長」、「心理的安全性」といったウェルビーイングに関連する要素を企業選択の重要な基準とする傾向があります(日本労働政策研究・研修機構調査など)。 参照:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」:https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf ウェルビーイング経営が企業にもたらす具体的なビジネスメリット ウェルビーイングへの投資は、単に従業員のためだけでなく、企業経営に具体的なリターンをもたらす戦略的な取り組みです。ここでは、従業員の幸福が企業の成長にどう結びつくのか、主要なビジネスメリットを解説します。 メリット1:生産性向上とイノベーション創出の促進 従業員が心身ともに健康で、仕事に前向きに取り組める状態は、個々の集中力や業務効率を高め、組織全体の生産性向上に直結します。厚生労働省の調査(※)でも、メンタルヘルス不調によるパフォーマンス低下が企業の生産性に大きな影響を与えることが示されています。 逆に、ウェルビーイングが高い職場では、従業員のストレスが軽減され、創造性や問題解決能力が刺激されるため、イノベーションが生まれやすい環境が育まれます。 参照:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_kekka-gaiyo01.pdf H3: メリット2:企業ブランドイメージと社会的評価の向上(ESG投資との関連) ウェルビーイング経営に積極的に取り組む企業は、「従業員を大切にするホワイトな企業」というポジティブなブランドイメージを社会に発信できます。これは、顧客からの信頼獲得や製品・サービスの選択において有利に働くだけでなく、投資家からの評価にも繋がります。 近年注目されるESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)において、従業員のウェルビーイング(人的資本への配慮)は「S(社会)」の重要な評価項目の一つです。「健康経営銘柄」や「ホワイト500」といった認定制度も、企業の社会的評価を高める上で有効です。 健康経営について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。 https://mag.viestyle.co.jp/health_productivity_management/ メリット3:従業員エンゲージメントの向上と人材確保・定着 ウェルビーイングを重視する職場環境は、従業員が会社や仕事に対して持つ愛着や誇り、貢献意欲(エンゲージメント)を高めます。自分の健康や幸福が組織によって尊重されていると感じる従業員は、より主体的に業務に取り組み、組織目標の達成に向けて力を発揮する傾向があります。 また、心理的安全性が高く、良好な人間関係が築かれている職場は、従業員の定着率を向上させ、採用コストの削減や組織知の蓄積にも繋がります(リクルートワークス研究所調査など)。 参照:https://www.works-i.com/research/report/item/hatarakigai-survey.pdf ウェルビーイングを経営戦略として導入・推進するための5つのポイント ウェルビーイング経営を単なるスローガンに終わらせず、企業文化として定着させ、具体的な成果に結びつけるためには、戦略的かつ体系的なアプローチが不可欠です。ここでは、そのための5つの重要なポイントを解説します。 経営層の理解と全社的な推進体制の構築 ウェルビーイング経営の成功は、経営トップの強いコミットメントとリーダーシップから始まります。経営層がウェルビーイングの重要性を深く理解し、明確なビジョンと方針を全社に発信することが不可欠です。 その上で、人事部門、健康管理部門、各事業部門などが連携する推進体制を構築し、専任の担当者やチーム(例:チーフ・ウェルビーイング・オフィサー(CWO))を設置することも有効です。 従業員の現状とニーズの的確な把握 効果的なウェルビーイング施策を展開するためには、まず自社の従業員がどのような健康課題を抱え、どのようなサポートを求めているのかを正確に把握する必要があります。 定期的な健康診断結果の分析、ストレスチェックの実施、従業員サーベイ(満足度調査、エンゲージメント調査など)、個別インタビューなどを通じて、定量的・定性的なデータを収集し、課題を特定します。 具体的な施策の計画と多角的な実行(働き方、メンタルヘルス、環境など) 把握された課題とニーズに基づき、具体的なウェルビーイング施策を計画し、実行します。これには、以下のような多角的なアプローチが含まれます。 働きがいのある仕事の設計: 裁量権の付与、キャリア成長の機会提供、公正な評価制度など。 柔軟な働き方の推進: フレックスタイム、リモートワーク、時短勤務、休暇取得促進など。 メンタルヘルスケアの充実: カウンセリング窓口設置、ストレスマネジメント研修、ラインケア教育など。 健康増進プログラムの提供: フィットネス支援、健康的な食事の提供、禁煙支援など。 快適で安全な職場環境の整備: 人間工学に基づいたオフィス家具、適切な照明・空調、リフレッシュスペースなど。 定期的な効果測定と改善サイクルの確立 ウェルビーイング施策は、実施して終わりではありません。導入した施策が実際にどのような効果をもたらしているのかを定期的に測定・評価し、その結果に基づいて改善を重ねていくPDCAサイクルを確立することが重要です。KPI(重要業績評価指標)としては、従業員の健康指標、エンゲージメントスコア、生産性指標、離職率などが考えられます。 テクノロジーの適切な活用 近年では、AIやIoT、ウェアラブルデバイスといったテクノロジーを活用し、ウェルビーイング施策をより効果的かつ効率的に展開する動きも広がっています。例えば、従業員の健康状態をリアルタイムでモニタリングしたり、個別最適化された健康アドバイスを提供したりするシステムなどがあります。 ただし、テクノロジー導入ありきではなく、あくまで目的達成のための手段の一つとして、プライバシーへの配慮を十分に行った上で慎重に検討することが肝要です。 テクノロジー活用の詳細は以下記事をご参照ください https://mag.viestyle.co.jp/wellbeing/ 企業の成功事例から学ぶウェルビーイング経営の実践 ウェルビーイング経営は、理想論ではなく、すでに多くの企業が実践し成果をあげている現実的な戦略です。特に先進的な取り組みを行っている企業の事例からは、制度や施策だけでなく、現場に根づかせる工夫や課題との向き合い方まで、多くのヒントを得ることができます。 NECソリューションイノベータの事例 NECソリューションイノベータは、「Well-being経営」を経営戦略の一環と位置づけ、社員の心身の健康、成長、働きがいを支える取り組みを進めています。2024年度からは「健康」「成長」「働きがい」の3つのテーマで個人の価値向上を目指す全社プロジェクトを立ち上げ、部門横断型のワーキンググループを組成。社員の声を反映しながら、産業医や安全衛生委員会とも連携し、実効性のある施策を展開しています。 注目されるのは、同社が自社で開発・運用している「健康ミッションアプリ」の導入です。このアプリは、運動や食事など日々の健康行動を“ミッション”として提示し、社員が楽しみながら生活習慣を改善できる仕組みです。ポイント獲得や仲間とのコミュニケーションを通じて、健康への意識向上と行動変容を促進しています。 さらに、デジタルツールを活用して健康課題を可視化し、対策へとつなげている点も特筆すべきポイントです。例えば、社内調査で明らかになった「運動不足」や「メタボ予備軍の多さ」といった課題に対し、生活習慣改善に向けた施策を重点的に行っています。こうした継続的な取り組みが、社員のウェルビーイング向上と企業の活力につながっています。 参照:https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/csr/society/healthcare. Works Human Intelligenceの取り組み 人事システム開発大手のWorks Human Intelligenceは、自社のHRテクノロジーを活用した先進的なウェルビーイング戦略を展開しています。同社は、従業員の自律的な学習と企業の戦略的な研修を両立させる学習プラットフォーム「COMPANY Learning Platform」を提供しています。 このプラットフォームは、従業員が自らのキャリア目標や個人のニーズに合わせて学習できる環境を提供し、AIによるコンテンツのリコメンド機能や、他の従業員との学習共有機能を備えています。​これにより、従業員のモチベーション維持やスキル向上を支援し、組織全体の生産性向上に寄与しています。 さらに、同社は統合人事システム「COMPANY®」を通じて、健康管理システムCarelyとの連携を実現し、人事データと健康データの統合管理を可能にしています。​これにより、従業員の健康状態を把握し、適切なサポートを提供することで、ウェルビーイングの向上を図っています。 これらの取り組みを通じて、WHIは従業員のウェルビーイングを重視し、働きやすい環境の整備と個々の成長支援を実現しています。 参照:https://www.works-hi.co.jp/news/20240423 ミイダスのデータ活用事例 タレントマネジメントシステムを提供するミイダスは、「適材適所」をキーワードにしたユニークなウェルビーイング戦略を展開しています。同社は、自社開発のアセスメントツールを全社員に適用し、個々の特性や強みを科学的に分析。その結果を基に、各人の適性に合った業務配置を行うことで、仕事の満足度と生産性の向上を実現しています。 さらに、同社は「組織サーベイ」を導入し、従業員のコンディションを定期的に把握しています。​これにより、ストレスやモチベーションの状態を可視化し、適切なフォローアップを行うことで、働きがいのある職場環境の構築に努めています。 これらの取り組みにより、ミイダスは従業員の満足度と生産性の向上を実現し、離職率の低下にも寄与しています。​また、これらの実践から得られた知見をもとに、クライアント企業にも適性検査や組織診断のサービスを提供し、適材適所の人材配置を支援しています。 参照:https://corp.miidas.jp/landing/survey ウェルビーイング経営の今後の動向と日本企業が直面する課題 ウェルビーイング経営は、今後ますますその重要性を増し、進化していくと考えられます。ここでは、最新のトレンドと、特に日本企業がその推進において直面しやすい課題、そして今後の展望について考察します。 AIやデータ活用によるパーソナライズ化の進展 AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ解析といった技術の進化は、ウェルビーイング支援のあり方を大きく変えつつあります。従業員一人ひとりの健康データ、勤務データ、コミュニケーションデータなどを統合的に分析し、個々のニーズや特性に合わせた、よりきめ細やかで効果的なサポート(パーソナライズド・ウェルビーイング)を提供することが可能になっています。 例えば、個人のストレスレベルや睡眠パターンに基づいて最適な休息タイミングを提案したり、特定の健康リスクを予測して予防的介入を促したりするような活用が期待されます。 人的資本経営とESG投資におけるウェルビーイングの位置づけ ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の世界的な拡大に伴い、企業の「人的資本」への取り組みが投資家からの評価を左右する重要な要素となっています。 従業員のウェルビーイングは、この人的資本の中核的要素であり、その開示情報(例:従業員エンゲージメントスコア、健康関連指標、ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み状況など)は、企業の持続可能性や将来的な成長性を判断する上で重視されています。 SASB基準(サステナビリティ会計基準審議会が策定)のような国際的な開示フレームワークにおいても、人的資本に関する項目の重要性が高まっています。 日本企業がウェルビーイングを推進する上での課題と展望 日本企業がウェルビーイング経営を本格的に導入・推進していく上では、いくつかの特有の課題も存在します。 短期的な成果主義との両立: ウェルビーイングへの投資は、効果が表れるまでに時間を要することが多く、短期的な業績目標とのバランスをどう取るかが経営判断の難しい点です。 組織文化の変革: 年功序列や長時間労働を是とするような旧来型の組織文化や、過度な同調圧力などが、個人のウェルビーイングを尊重する文化の醸成を阻害する場合があります。特に管理職層の意識改革とリーダーシップが鍵となります。 効果測定とROIの可視化: ウェルビーイング施策の投資対効果(ROI)を客観的に測定し、経営層に説明することが難しいという課題も挙げられます。 これらの課題を克服するためには、経営トップの強いリーダーシップのもと、長期的な視点に立った戦略策定、データに基づいた効果検証、そして何よりも従業員の声に真摯に耳を傾け、共に企業文化を創り上げていく姿勢が求められます。 ウェルビーイングを経営戦略の中核に据え、持続的な企業価値向上を目指す ウェルビーイングとビジネスの関係は、もはや「あれば良い」という付加的なものではなく、持続的な企業成長のための必須要素となっています。本記事で見てきたように、従業員の心身の健康と幸福感は、生産性向上、イノベーション創出、人材確保・定着など、直接的なビジネス成果に結びついています。 企業の事例からも明らかなように、データに基づいた科学的アプローチと経営戦略としての一貫した取り組みが成功の鍵となります。また、AIやデジタルツールの活用、ESG投資との連動など、ウェルビーイング経営の手法は今後さらに進化していくでしょう。 これからの企業には、単なる制度や施策の導入にとどまらず、組織文化そのものをウェルビーイング志向に転換していくことが求められます。「人」を中心に据えた経営が、結果として企業の持続的な競争力と社会的価値の向上につながるのです。 ウェルビーイング経営は特別なものではなく、これからのビジネスの標準となっていきます。今こそ、自社のウェルビーイング戦略を見直し、従業員と企業がともに成長できる好循環を生み出す時です。未来の働き方に向けて、一人ひとりの幸福と組織の成功を同時に実現する経営へと舵を切りましょう。

従業員満足度を上げる職場環境とは?経営者が考えるべきポイント

職場環境とは、単にオフィスの設備やレイアウトだけでなく、人間関係・働きやすさ・ストレスの有無など、仕事のパフォーマンスや満足度を大きく左右する要素を指します。快適な職場環境が整っている企業では、生産性が向上し、従業員のモチベーションや定着率も高まると言われています。しかし、職場環境が悪いと、ストレスや不満が蓄積し、離職率の上昇やメンタルヘルスの悪化につながることも。 では、理想的な職場環境とはどのようなものを指し、働きやすい職場を作るために企業や個人ができることとはなんでしょうか? 本記事では、職場環境の定義・改善方法を紹介し、あなたの職場をより良くするヒントをお届けします。 職場環境とは?その定義と重要性 職場環境とは、単にオフィスの設備やレイアウトだけでなく、人間関係や働きやすさ、ストレスの有無など、仕事のパフォーマンスや満足度を大きく左右する要素を指します。快適な職場環境が整っている企業では、生産性が向上し、従業員のモチベーションや定着率も高まると言われています。逆に、職場環境が悪いと、ストレスや不満が蓄積し、離職率の上昇やメンタルヘルスの悪化につながることもあります。この記事では、職場環境の基本的な定義や、良い・悪い環境がもたらす影響について解説します。 職場環境の基本的な定義とは? 職場環境は大きく分けて「物理的環境」と「心理的環境」の二つの側面があります。  • 物理的環境:オフィスのレイアウトや設備、空調や照明、休憩スペースなどの働く場所の快適さを指します。これらが整っていると、従業員が集中しやすく、作業効率も向上します。  • 心理的環境:人間関係や社内のコミュニケーション、評価制度、働き方の柔軟性などを指します。心理的に安全な職場では、従業員が自由に意見を言え、のびのびと働くことができます。 なぜ職場環境が重要なのか? 職場環境は、従業員のストレスやモチベーションに大きな影響を与え、生産性や企業の成長に直結します。働きやすい環境が整っていると、業務効率が向上し、離職率の低下につながります。 また、職場環境の整備は、優秀な人材の確保と定着にも不可欠です。柔軟な働き方や公正な評価制度がある企業では、従業員の満足度が向上し、長期的な組織への貢献意欲が高まります。さらに、職場環境の良し悪しは企業のブランドイメージにも影響を与え、求職者からの評価にも直結します。 良い職場環境とは?理想的な条件とは 職場環境は、従業員の働きやすさや企業の成長に大きく影響を与える要素です。良い職場環境が整っている企業では、従業員のモチベーションが高まり、生産性の向上や定着率の向上につながります。一方で、環境が悪いと、離職率の増加や組織の停滞を招く可能性があります。では、具体的に「良い職場環境」とはどのようなものを指すのでしょうか。ここでは、理想的な職場環境の条件を3つ紹介します。 1. 心理的安全性の確保 良い職場環境の条件として、まず 心理的安全性 の確保が挙げられます。心理的安全性とは、従業員が自分の意見を自由に発言でき、失敗を恐れずに挑戦できる環境のことを指します。 Googleが実施した「プロジェクト・アリストテレス」の研究によると、心理的安全性の高いチームほど生産性が高く、成果を上げやすい ことが明らかになっています(1)。これは、従業員が安心して発言し、協力し合えることで、仕事の質が向上するためです。 心理的安全性が確保されている職場では、以下のようなメリットがあります。  • 意見を自由に言える環境 → 新しいアイデアが生まれやすく、業務改善につながる  • 協力しやすい雰囲気 → チーム内の信頼関係が強まり、問題解決能力が向上  • フィードバックを前向きに受け取れる → 個々の成長が促進され、組織全体のパフォーマンスも向上 上司や同僚が積極的に意見を聞き入れ、建設的な議論を促すことで、心理的安全性の高い職場を作ることができます。 (1)参照:https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness#introduction 2. 適切な労働時間とワークライフバランス 良い職場環境には、従業員が無理なく働ける適切な労働時間と、仕事と生活のバランスを取れる環境 が不可欠です。長時間労働が常態化している職場では、従業員の疲労やストレスが蓄積し、健康問題や離職の原因になります。 一方で、適切な労働時間が確保された職場では、仕事とプライベートのバランスが取りやすく、従業員の満足度や業務効率が向上します。 理想的なワークライフバランスのポイント  • フレックスタイム制の導入 → 柔軟な勤務時間で、ライフスタイルに合わせた働き方が可能  • リモートワークの推奨 → 通勤時間の削減や、集中しやすい環境での作業が実現  • 有給休暇の取得を促進 → 従業員が適度にリフレッシュできる仕組みを整える 仕事だけでなく、家庭や趣味の時間を大切にできることで、精神的な余裕が生まれ、仕事へのモチベーションも高まります。 3. 円滑なコミュニケーション 職場での良好な人間関係は、従業員のストレスを軽減し、働きやすさを向上させる重要な要素です。職場での意思疎通が不足すると、業務の進行が滞ったり、ミスや誤解が増えたりするだけでなく、従業員のストレスも高まります。 一方、円滑なコミュニケーションが取れる職場では、業務効率が向上し、チームワークも強化される ため、働きやすさが格段に向上します。 コミュニケーションが円滑な職場の特徴  • 業務の進行がスムーズ → ミスやトラブルが減り、チームワークが向上  • 上司と部下の関係が良好 → 相談しやすく、フィードバックを受け入れやすい環境  • 定期的なミーティングを実施 → 進捗確認や意見交換の機会を増やし、風通しの良い組織を作る 特に、1on1ミーティングなどを活用し、上司と部下が直接コミュニケーションを取る機会を増やすことで、互いの理解を深めることができます。 また、チーム全体で意見交換の場を設けることで、社員が積極的に発言しやすい文化を醸成することも重要です。 職場環境が悪いとどうなる?リスクと課題 これまで良い職場環境について触れてきましたが、反対に職場環境が悪いと、従業員のストレスが増加し、生産性の低下や離職率の上昇など、企業にとって深刻な問題を引き起こします。適切な対策を取らない限り、組織全体の成長が停滞し、企業の競争力も低下してしまいます。ここでは、職場環境が悪いことで生じるリスクや課題について詳しく解説します。 従業員のストレス増加とメンタルヘルスの悪化 長時間労働や過重な業務負担といった職場環境では、従業員は休息の時間が確保できず、心身の疲労が蓄積します。また、パワーハラスメントや人間関係の悪化により、職場での居心地が悪くなり、精神的な負担が大きくなります。 また評価制度が不透明で、努力が正しく評価されない場合、従業員のモチベーションは低下し、仕事に対する意欲を失うことがあります。このような状況が続くと、うつ病や不安障害などのメンタルヘルスの問題を抱える従業員が増加し、最悪の場合、休職や退職に至るケースもあります。企業としては、従業員の健康管理に配慮し、適切なストレス対策を講じることが重要です。 生産性の低下と業務の効率悪化 コミュニケーションが不足している職場や、業務プロセスが非効率なまま放置されている環境では、従業員はストレスや不満を抱えながら働くことになり、業務の効率が大幅に低下します。また情報共有が十分に行われないと、業務の進行が滞り、ミスやトラブルが発生しやすくなり、チーム全体の生産性が落ちてしまいます。 さらに、業務プロセスが非効率なまま放置されることで、無駄な作業が増え、仕事に対する負担が増大します。このような悪循環が続くと、企業の成長が停滞し、競争力の低下につながる恐れがあるのです。 離職率の上昇と人材流出 職場環境が悪いと、優秀な人材がより良い環境を求めて転職する可能性が高くなります。特に、働きづらい環境が続くと、仕事に対する不満が蓄積し、キャリアアップを目的に転職を考える従業員が増えていきます。 また、社内の評価制度やキャリア成長の機会が不十分な場合、従業員が自分の将来に希望を持てなくなります。企業のビジョンや価値観が明確に共有されていないと、組織に対する帰属意識が薄れ、転職へのハードルが低くなります。特に若手の優秀な人材が流出すると、企業の成長に大きな影響を与えるため、人材の定着を図る取り組みが不可欠です。 ニューロミュージックで職場環境を改善 音楽には、ストレスを軽減したり、集中力を高めたりする効果がある と言われており、職場環境の改善にも活用されています。例えば、リラックスできる音楽を流すことで職場の緊張感を和らげたり、適切なリズムの音楽が作業効率を向上させることが知られています。 こうした音楽の効果をさらに科学的に活用する手法として「ニューロミュージック」が注目されています。ニューロミュージックとは、神経科学(ニューロサイエンス)の観点から開発された音楽で、脳のリズムを整え、働く人の心理や認知機能に影響を与える可能性があるとされています。 ニューロミュージックが脳に与える影響 ニューロミュージックは、脳波のリズムに作用すると言われる音を取り入れ、働く人のコンディションを整える目的で作られています。  • シータ波の増強 → 「ととのう」状態に関係があるとされ、リラックス状態を促す可能性がある  • ガンマ波の増強 → 認知機能に関係があると言われており、作業時の脳の活性化をサポートする可能性がある この音楽は、専用のイヤホン型脳波計を用いた検証を経ており、実際に脳のリズムの変化が確認された楽曲のみが「ニューロミュージック」として配信されています。そのため、従来のヒーリングミュージックや環境音とは異なり、科学的な視点から開発されているのが特徴です。 ニューロミュージックを活用するメリット ニューロミュージックをオフィスに導入することで、以下のような効果が期待されます。  • ストレスの軽減:シータ波に関連するとされる音を活用し、リラックスしやすい環境を整える  • 作業への集中をサポート:ガンマ波に関係すると言われる音が、集中が必要な場面でのサポートとなる可能性がある  • 職場の雰囲気を和らげる:適切な音楽が流れることで、心理的なリラックス効果が期待できる このように、ニューロミュージックは職場の雰囲気を整え、働く人のコンディションをサポートする可能性を持っています。 職場でのニューロミュージックの活用方法 ニューロミュージックは、職場のエリアごとに適した音楽を流すことで、より効果的に活用できます。 デスクワークエリアでは、認知機能に関係があると言われるガンマ波を増強する楽曲を活用し、集中力をサポート。 休憩スペースでは、シータ波を増強する音楽や自然音を取り入れ、リラックス効果を高めます。 会議室では、落ち着いたBGMを流し、緊張を和らげつつ、思考を活性化。 職場の環境に合わせた音楽を取り入れることで、快適な労働環境を実現できるでしょう。 お問い合わせはこちら:info@vie.style https://lp.vie.style/vie-tunes 職場環境を改善し、従業員の生産性を向上させよう! 職場環境の改善は、従業員のストレスを軽減し、モチベーションや生産性を向上させる重要な要素です。快適な環境が整っていると、業務効率が上がり、企業全体の成長にもつながります。 オフィスの設備やレイアウトの工夫に加え、ニューロミュージックを活用することで、集中力を高めたり、リラックスしやすい空間を作ることが可能です。デスクワークや休憩エリアなど、場所ごとに適した音楽を取り入れることで、より快適な職場環境を実現できます。 働きやすい環境を整えることは、従業員の満足度を高め、企業の競争力を強化する大切な取り組みです。今こそ、職場環境の改善に取り組み、生産性の向上を目指しましょう!

メンタルヘルスとは?職場での対策と個人でできるケア

日々の忙しさの中で、気分がすぐれなかったり、仕事に集中できなかったりすることはありませんか? 疲れが取れにくくなったり、やる気が出なかったりするのは、心の健康が影響しているサインかもしれません。そのまま放置すると、仕事のパフォーマンスや人間関係にも影響を及ぼすことがあります。 メンタルヘルスは、誰にとっても大切なもの。ただ「うつを防ぐ」だけでなく、心のバランスを整え、前向きに過ごすための基盤となります。本記事では、メンタルヘルスの基本から、企業の取り組み、職場でのストレス対策、そして個人でできるセルフケアまで、具体的な方法を紹介します。 なんとなく不調を感じるときこそ、心のケアを見直すタイミング。今日から実践できる対策を一緒に考えていきましょう。 メンタルヘルスとは? メンタルヘルスとは、世界保健機関(WHO)の定義によれば、「単に精神疾患がない状態ではなく、個人が自身の能力を発揮し、通常の生活のストレスに対処し、生産的に働き、社会に貢献できる状態」を指します(1)。精神的に安定していると、仕事のパフォーマンスが向上し、人間関係も円滑になり、生活の質が向上します。 一方で、ストレスや不安が長期間続くと、心身のバランスが崩れ、うつ病や適応障害などの精神疾患を引き起こすリスクが高まります。現代社会では、多くの人が仕事や生活の中で何らかのストレスを抱えています。特に職場環境の変化が激しい昨今、メンタルヘルスを守ることは個人だけでなく、企業や社会全体にとっても重要な課題となっています。 (1)参照:https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400227881.pdf なぜ今、メンタルヘルスが重要なのか? 近年、メンタルヘルスの重要性が急速に高まっています。その背景には、働き方や社会環境の変化が大きく影響しています。 かつては「少しくらいのストレスは我慢するもの」「仕事は多少つらくても仕方がない」といった考え方が一般的でした。しかし、ストレスや長時間労働が健康に深刻な影響を与えることが明らかになり、企業や国も積極的にメンタルヘルス対策に取り組むようになっています。 テクノロジーの発展や経済のグローバル化により、ビジネス環境は急速に変化しています。それに伴い、多くの労働者がプレッシャーを感じるようになり、メンタルヘルスの問題を抱えるケースが増えています。 例えば、常に高い成果を求められる仕事環境では、精神的な負担が大きくなり、ストレスが蓄積しやすくなります。また、リモートワークの普及により、仕事とプライベートの境界が曖昧になり、長時間労働や孤独感を感じる人が増えているのも一因です。 さらに、メンタルヘルスの不調は個人だけでなく、企業や社会全体にも影響を及ぼします。メンタルヘルスが損なわれることで、仕事の生産性が低下し、離職率が上昇するだけでなく、社会全体の医療費や社会保障費の増加にもつながるのです。このような状況を踏まえ、メンタルヘルスの維持・向上は、個人の幸福だけでなく、企業や社会の持続的な発展にとっても不可欠な要素となっています。 企業におけるメンタルヘルスの課題 企業においても、従業員のメンタルヘルス対策は重要な経営課題として認識されるようになり、多くの職場でストレスチェック制度の導入や相談窓口の設置などが進んでいます。 しかし、対策が形式的にとどまっていたり、従業員が気軽に相談しづらい雰囲気があったりするなど、まだ改善の余地がある職場も少なくありません。特に、リモートワークの普及や働き方の多様化が進む中で、より柔軟かつ実効性のあるメンタルヘルス施策が求められています。 長時間労働と過重労働の常態化 日本では、働き方改革の影響もあり、長時間労働の是正が進んでいます。しかし、業種や職種によっては依然として業務負担が大きく、ストレスが慢性化しやすい環境にある人も少なくありません。 特に、管理職やリーダー層では、責任感の強さから「自分が休むわけにはいかない」と無理を重ね、結果としてメンタル不調に陥るケースが課題となっています。こうした状況を改善するためには、個人の意識改革だけでなく、組織全体でのサポート体制の充実が求められています。 職場の人間関係によるストレス 職場の人間関係は、メンタルヘルスに大きく影響を与える要因のひとつです。上司や同僚とのコミュニケーションがうまくいかない場合、職場環境がストレスの要因となることがあります。 また、厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」では、パワハラやモラハラなどのハラスメントを経験したと回答した人の割合が一定数存在することが分かっており、これがメンタルヘルスの悪化につながるケースも指摘されています。企業においては、対策の強化が求められています。 参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000165756.html リモートワークによる新たな課題 コロナ禍をきっかけに、多くの企業がリモートワークを導入しました。これにより通勤時間が減るなどのメリットがある一方で、社員同士のコミュニケーション不足や、仕事のオンオフの切り替えが難しくなるといった新たな問題が浮上しています。オフィスに出社していた時には何気なくできていた相談や雑談が減り、一人で業務を抱え込んでしまうことで、精神的な負担が増してしまうケースも少なくありません。 メンタルヘルス不調のサインを知る メンタルヘルスの不調は、突然起こるものではなく、日々の生活の中で少しずつ蓄積されていくものです。しかし、多くの人はそのサインに気づかず、「疲れているだけ」「少し頑張れば大丈夫」と無理をしてしまいがちです。気づかないまま放置してしまうと、次第に気持ちが落ち込み、仕事や日常生活に支障をきたすこともあります。 また、自分のメンタルヘルスだけでなく、周囲の人の変化にも気を配ることが大切です。職場では、日々一緒に働く同僚や部下の様子を見て、いつもと違う変化がないか気づくことができるかもしれません。早めに異変を察知し、適切な対応を取ることで、不調を悪化させずに済む可能性が高まります。 自分自身のメンタル不調をチェックしよう ストレスや疲れが原因で気持ちが落ち込むことは誰にでもありますが、それが長引いている場合や、普段とは違う症状が出ている場合は注意が必要です。以下のような変化が続く場合、メンタルヘルスに問題が生じている可能性があります。 1. 気分の変化 以前は楽しめていたことに対して、興味や関心が薄れていると感じることはありませんか?好きだった趣味が面倒に感じたり、何をしても楽しくないと感じる場合は、精神的なエネルギーが低下しているサインかもしれません。また、理由もなくイライラしたり、不安感が強くなることもメンタルの不調を示す兆候のひとつです。 2. 体調の変化 メンタルヘルスの不調は、身体にも影響を及ぼします。例えば、慢性的な頭痛、胃の不快感、肩こり、動悸などの症状が続く場合、それはストレスが身体に影響を与えている可能性があります。また、食欲が極端に減る、または過食してしまうといった変化も、精神的なストレスが原因で起こることがあります。 3. 睡眠の異常 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝スッキリ起きられないなど、睡眠に問題を感じることはありませんか?メンタルの不調が進行すると、睡眠の質が低下し、さらに心身の回復が遅れるという悪循環に陥ることがあります。逆に、異常なほど長時間眠り続けてしまうことも、ストレスや心の疲れのサインです。 4. 仕事や日常のパフォーマンスの低下 集中力が続かない、ミスが増える、仕事への意欲が湧かないといった状態は、メンタルヘルスの不調が影響しているかもしれません。これまで当たり前にできていた作業に手間取るようになったり、やる気が起きず仕事を先延ばしにしてしまう場合は、精神的な疲労が蓄積している可能性があります。 5. 社会的な交流の減少 人と話すのが億劫になったり、LINEや電話の返信が面倒になったりすることはありませんか?メンタルの調子が悪いと、人との関わりを避けたくなることがあります。職場や友人とのコミュニケーションが減ってきたと感じたら、自分の心の状態を振り返ることが大切です。 もしこれらのサインに思い当たることがあれば、「まだ大丈夫」と無理をせず、少し立ち止まって心のケアをすることが重要です。特に、症状が長期間続いている場合は、専門家に相談することも検討しましょう。 職場でのメンタル不調のサイン メンタルヘルスの不調は、職場の中でも表れることがあります。特に、周囲の同僚や部下がいつもと違う行動を取っている場合、それがメンタルの問題によるものかもしれません。職場でのメンタルヘルス不調のサインに気づき、適切なサポートを行うことは、チーム全体の働きやすさを向上させることにもつながります。 1. 表情や態度の変化 普段は明るく振る舞っていた人が急に口数が減ったり、無表情になったりしている場合は、心に何かしらの負担を抱えている可能性があります。逆に、突然イライラしやすくなったり、怒りっぽくなることも、ストレスが原因となっていることがあります。 2. 仕事のミスやパフォーマンスの低下 仕事の進捗が遅れがちになったり、ミスが目立つようになった場合、メンタルの不調が影響している可能性があります。特に、普段は几帳面でミスが少ない人が急に注意散漫になったり、物事を忘れやすくなっている場合は、一時的な疲れではなく、心の負担が蓄積しているサインかもしれません。 3. 遅刻や欠勤の増加 普段は時間を守る人が頻繁に遅刻したり、理由をつけて休みがちになる場合、心身の疲れが溜まっているかもしれません。特に、「体調が悪い」と言いながら休む回数が増えたり、「仕事がしんどい」と口にすることが多くなった場合は、早めに話を聞いてみることが大切です。 4. 職場での人間関係の変化 チームでの会話にあまり参加しなくなったり、周囲との距離を取るようになった場合は、メンタルの不調が影響している可能性があります。逆に、必要以上に攻撃的な態度を取るようになった場合も、ストレスが溜まっているサインかもしれません。 職場でこうしたサインを見つけたら、「何か困っていることはない?」とさりげなく声をかけることで、相手が悩みを打ち明けやすくなるかもしれません。無理に詮索する必要はありませんが、ちょっとした気遣いが、大きな支えになることもあります。 企業が実施するメンタルヘルス対策とは?事例付きで解説 メンタルヘルスの問題は、個人だけの課題ではなく、企業全体で取り組むべき重要なテーマとなっています。メンタルヘルス対策を進める企業は増えており、その取り組みも多様化しています。ここでは、実際に導入されている具体的な施策を紹介し、企業がどのように従業員の心の健康を守っているのかを見ていきましょう。 こちらの記事もチェック https://mag.viestyle.co.jp/friendly-workplace/ 1. ストレスチェック制度の活用 企業のメンタルヘルス対策として最も一般的なのが「ストレスチェック制度」です。2015年に労働安全衛生法が改正され、従業員50人以上の事業所には毎年1回のストレスチェックが義務付けられました。これにより、従業員が自分のストレス状態を客観的に把握し、必要に応じて産業医やカウンセラーに相談できる環境が整備されています。 ストレスチェックは、単に従業員のストレスを測定するだけでなく、企業が職場環境を改善するための重要な指標としても活用されています。例えば、ストレスが高い部署が特定された場合、その部署の働き方や業務負担を見直すことで、職場全体のメンタルヘルスを向上させることができます。 【事例】川崎市消防局のストレスチェック活用法 川崎市消防局では、ストレスチェックの結果を活用し、全ての高ストレス者に対して保健師による補助面談を実施し、個別のフォローアップを行っています。また、半年に1回、保健師が各消防署を巡回し、健康診断後のフォローや高ストレス者への面談を行うことで、職員のストレス軽減に努めています。 参照:https://www.jalsha.or.jp 2. 従業員支援プログラム(EAP)の導入 「EAP(Employee Assistance Program)」とは、企業が従業員のメンタルヘルスを支援するために提供するプログラムのことです。これは、専門のカウンセラーや心理士による相談サービスを企業が提供する仕組みで、メンタルヘルスだけでなく、仕事や家庭の問題、法律や財務に関する相談など、幅広いサポートが受けられるのが特徴です。 企業がEAPを導入することで、従業員が職場のストレスや個人的な悩みを気軽に相談できる環境が整います。特に、職場の上司や同僚には話しづらい悩みを抱えている場合、外部の専門家に相談できることは大きな安心感につながります。 【事例】大成建設株式会社のEAP導入事例 大成建設株式会社では、2001年より外部のカウンセリング機関と提携し、従業員とその家族が匿名で無料相談できるEAP(従業員支援プログラム)を導入しています。このプログラムでは、メールや電話を通じて外部の専門カウンセラー(衛生保健福祉士、臨床心理士等)に相談できる体制を整えています。 導入当初はEAPの認知度が低く、社員の相談利用に対するハードルがあったものの、プロモーションビデオの作成や利用案内の配布などの普及活動を進めた結果、相談件数が徐々に増加しました。このように、EAPの活用促進には、従業員に向けた継続的な情報発信が重要であることが分かります。 参照:https://www.jes.ne.jp/casestudy/taiseikensetsu 3. ハラスメント防止対策の強化 メンタルヘルスの悪化には、職場の人間関係が大きく関与していることも少なくありません。特に、パワハラやセクハラなどのハラスメントは、被害者の精神的な健康を著しく損なうだけでなく、職場全体の雰囲気を悪化させる原因にもなります。そのため、多くの企業がハラスメント防止策を強化し、健全な職場環境を維持する取り組みを進めています。 【事例】ソニー銀行株式会社のハラスメント対策 ソニー銀行株式会社では、企業理念である「自由豁達で愉快な業務環境を整備する」を基盤に、ハラスメント防止に積極的に取り組んでいます。特段ハラスメントが多発していたわけではありませんが、多様な人材が集まる企業であるからこそ、さまざまなハラスメントが発生する可能性があると考え、予防的な対策が必要と判断しました。 こうした背景を踏まえ、ソニー銀行では全従業員を対象にセクシュアルハラスメント防止研修を定期的に実施し、管理職には適切なコミュニケーション方法の指導を強化。また、社内外に3つの相談窓口を設置し、従業員が匿名で相談しやすい体制を整えました。これにより、ハラスメントの兆候が見られた際の早期対応が可能となり、従業員が安心して働ける環境づくりが進められています。 参照:https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/jinji/another-company/archives/2 個人でできるメンタルケア メンタルヘルスを守るためには、企業のサポートや周囲の理解も重要ですが、それと同じくらい「自分自身でできる対策」も大切です。毎日のストレスをうまくコントロールし、心の健康を維持することが、長期的なメンタルヘルスの向上につながります。 すぐに実践できるストレスマネジメント 日々の生活や仕事の中で、知らず知らずのうちにストレスが溜まっていることがあります。ストレスを完全になくすことはできませんが、適切に発散することで心の負担を軽減できます。 1. 深呼吸やマインドフルネスを取り入れる ストレスが高まったとき、無意識に呼吸が浅くなっていることがあります。そんなときは、一度ゆっくりと深呼吸をしてみましょう。鼻からゆっくり息を吸い込み、口から細く長く吐き出すことで、自律神経が整い、気持ちが落ち着いていきます。 また、「マインドフルネス瞑想」も効果的です。数分間、目を閉じて深く呼吸しながら、自分の内面に意識を向けるだけでも、気持ちがリセットされることがあります。 こちらの記事もチェック:瞑想の記事 2. 書くことで気持ちを整理する(ジャーナリング) ストレスや悩みを頭の中だけで抱えていると、余計に気持ちがモヤモヤしてしまいます。そんなときは、「書くこと」を習慣にしてみましょう。紙やノートに思っていることを書き出すことで、自分の気持ちを客観的に整理でき、ストレスの軽減につながります。 特に、1日の終わりに「今日よかったこと」を3つ書き出すだけでも、前向きな気持ちになりやすくなります。 3. 「今できること」に集中する ストレスがたまると、「あれもやらなきゃ」「この先どうなるんだろう」と不安が膨らみがちです。そんなときは、「今この瞬間にできること」に意識を向けることで、気持ちを整理しやすくなります。 例えば、「とりあえずコーヒーを飲んでひと息つく」「5分だけ散歩をする」など、小さな行動から始めることで、気持ちが落ち着きやすくなります。 健康的な生活習慣で心を整える メンタルヘルスは、心の問題だけでなく、体の健康とも深く関わっています。食事や睡眠、運動などの生活習慣を見直すことで、ストレス耐性を高めることができます。 1. 睡眠の質を向上させる 睡眠不足は、メンタルヘルスに大きな影響を与えます。寝不足が続くと、集中力が低下し、ストレス耐性も下がってしまいます。睡眠の質を向上させるためには、以下のような工夫を取り入れると良いでしょう。 ・寝る前にスマホやPCの画面を見る時間を減らす(ブルーライトは睡眠の質を下げる) ・寝る1時間前にはリラックスする時間を作る(読書やストレッチなど) ・朝起きたら太陽の光を浴びることで、体内リズムを整える 2. バランスの良い食事を意識する 食事の栄養バランスも、メンタルヘルスに影響を与えます。特に、「腸内環境」が心の健康に密接に関わっていることが研究で明らかになっています。発酵食品や食物繊維を意識的に摂取することで、腸内環境を整え、メンタルの安定にもつながります。 また、カフェインやアルコールの過剰摂取はストレスを増幅させることがあるため、適度に抑えることが大切です。 3. 軽い運動を習慣にする 運動は、ストレス解消に非常に効果的です。激しい運動でなくても、1日10分のストレッチやウォーキングをするだけで、気分がスッキリしやすくなります。運動によって脳内に「セロトニン(幸福ホルモン)」が分泌され、精神的な安定を促します。 特に、自然の中でのウォーキング(森林浴)は、リラックス効果が高いと言われています。週末に公園や自然の多い場所で散歩をするのもおすすめです。 職場でも、自分でも。心の健康を大切にしよう メンタルヘルスは、個人の問題ではなく、職場全体、そして社会全体で取り組むべき重要な課題です。仕事や日常生活の中で、ストレスやプレッシャーを完全になくすことはできません。しかし、企業と個人がそれぞれの立場で意識し、適切な対策を講じることで、ストレスを軽減し、心の健康を守ることは可能です。 メンタルヘルスは、仕事のパフォーマンスや人生の質を大きく左右するものです。心の健康を維持することは、自分自身を大切にすることであり、職場や社会にとってもプラスになる行動です。企業と個人がともに支え合い、メンタルヘルスを守るための環境をつくることが、より良い未来へとつながります。今日から、自分自身の心の声に耳を傾け、職場でもプライベートでも、心の健康を大切にしていきましょう。

女性特有のPMSの症状を薬に頼らず改善する方法とは?

生理前にイライラしたり、感情の起伏が激しくなったりする症状は、「PMS(月経前症候群)」として広く知られています。この女性特有の現象について、脳科学の視点からどのようなメカニズムが解明されているのでしょうか? 今回は特に「感情」に焦点を当て、PMSの背景にある科学的な要素やその影響について掘り下げてみたいと思います。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm30 女性が生涯PMSの症状に悩まされる期間は○年? PMS(月経前症候群)については、現代の医学や脳科学をもってしても、未だそのメカニズムの詳細は解明されていません。この点では発達障害と似ており、症状自体は明確であるものの、その根本的な原因については分からない部分が多いのが現状です。 PMSの代表的な心理的症状として挙げられるのが、気分の落ち込みです。重い症状を持つ場合には、自殺に至るケースもあるほど深刻であり、社会的にも注目すべき課題といえます。このほか、イライラや攻撃性の増加、不安感、パニック発作、やる気の低下など、多岐にわたる心理的影響が報告されています。 心理的な影響に加えて、PMSには身体的な症状も伴います。例えば、ニキビの発生、腹部膨満感(お腹の張り感)、甘いものへの渇望、頭痛などが挙げられます。これらの症状の組み合わせは人によって異なり、その程度も軽度から重度まで幅広いものです。 統計によると、50〜80%の女性が何らかのPMS症状を経験するとされており、特に若い女性に多い傾向があります。その中でも、4つ以上の症状に該当する女性は約35%に達し、一生のうち約7年間もPMSに悩まされると言われています。月経前の2週間から症状が始まると考えると、生理中の不調も含め、多くの女性が1ヶ月のうちわずか1週間程度しか元気に過ごせないのではないか、と感じさせられるほどです。 以前、思考バイアスに関する回で、排卵日に女性の心理や認知に変化が生じるという話を紹介しました。例えば、競争が激しい環境にいると、美しい顔立ちの人や魅力的な人物が不快に感じられることがあるという研究結果もあります※。これは感情が外部の刺激や環境要因に左右されることを示していますが、PMSの場合は、ホルモンの変動が感情や心理状態に直接影響を及ぼしているのです。 このようなホルモンの影響は女性特有のものと思われがちですが、実際には男性にも当てはまります。男性がホルモンバランスを崩すことで、感情的な問題が生じることもあるとされています。 PMSはその症状の多様性と深刻さから、個人だけでなく社会全体での理解と支援が必要です。女性特有の周期的な変化がどのように感情や身体に影響を及ぼすのかを知ることは、性別を問わず重要な課題と言えるでしょう。 ※出典:Fertile women rate other women as uglier | New Scientist, 2024年12月19日参照 PMSを改善させるさまざまな方法とは? PMSの改善策として、ピルや漢方薬が処方されることもありますが、それらが体に合わないと感じる人も少なくありません。PMSは本人がつらいだけでなく、感情のコントロールが難しいため、対人関係にも影響を及ぼしてしまうことがあります。 例えば、生理周期の影響で、1ヶ月に1度はカップル間で大きな喧嘩をしてしまうこともあるかもしれません。男性側は「毎月のことだから何とかしてほしい」と思う一方で、女性も「どうにかしたいけれど難しい」と感じている場合が多く、互いにとってつらい問題です。 では、PMSの症状を少しでも和らげる方法はあるのでしょうか? PMSの原因の一つとして、ホルモンの変動が挙げられます。特にエストロゲンと呼ばれるホルモンが一時的に減少することが症状に関係していると言われており、これを補うホルモン療法が存在します。また、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬を用いることで、セロトニンレベルを増やし、症状を軽減できる可能性も指摘されています。 運動やストレスの回避、良質な睡眠を心がけることも、PMSの症状を和らげる上で有効です。運動には気分を前向きにする効果があり、特に生理前に直接効くというより、全体的なメンタルヘルスに良い影響を与えると考えられています。 最近注目されているのは、副作用のない非薬物的な治療法です。中でも音楽療法は興味深いアプローチとして注目されています。人によって効果的な音楽は異なることがありますが、自分に合った音楽を見つけることで、不安の軽減やリラクゼーション効果が得られ、快眠や症状の緩和につながることが示されています※。 PMSは、場合によってはうつ病と同じくらい深刻な影響を与えることがあります。そのため、ホルモン療法や認知行動療法(CBT)のような心理的アプローチを含む治療法のさらなる発展が望まれます。 ピルや漢方、さらには市販薬に頼ることも一つの選択肢ですが、副作用のリスクを考えると、薬に頼らない治療法が重要です。運動や音楽療法など、身近で取り入れやすい方法を試しつつ、自分に合った解決策を見つけることが大切です。特に好きな音楽を楽しむことで、心が落ち着き、より良い睡眠を得られる可能性があるというのは、誰にでも手軽に試せる朗報と言えるでしょう。 ※出典:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/49406/1/16_89.pdf?utm_source=chatgpt.com, 2024年12月19日参照 まとめ 人間の感情はさまざまな要因で変化しますが、特にホルモンバランスの影響で怒りやすさや落ち込みやすさが生じることは、特に女性にとって大きな課題です。薬物療法が提案される場合もありますが、副作用や体に合わないといった問題から、必ずしも簡単な解決策ではありません。そのため、薬に頼らない改善方法への関心が高まっています。 音楽療法や生活習慣の見直し、さらにはニューロテクノロジーの発展により、感情をより効果的にコントロールできる未来が期待されています。これからも多くの人が自分に適した方法を見つけ、穏やかな心で過ごせる時間が増えることを願います。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/7sYXaDaeBsfddRlYsiBleA?si=_PRt1fgPQ-65BsYI9w2Yxg 次回 次回のコラムでは、ネガティブな感情が生じる理由や、その対処法について詳しくご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm32

働きやすい職場とは?日本の課題とブレインテックが拓く未来のオフィス環境

「働きやすい職場」とは、単に快適なオフィス空間を指すのではありません。従業員一人ひとりが心身ともに健康で、安心して能力を最大限に発揮し、成長を実感できる環境こそが求められています。しかし、長時間労働、メンタルヘルスの課題、柔軟な働き方の遅れなど、日本の多くの職場では理想と現実の間に依然として大きなギャップが存在します。 この記事では、真に「働きやすい職場」を実現するための本質的なポイントを深掘りし、日本企業が抱える根深い課題を明らかにします。さらに、脳科学とテクノロジーを融合させた「ブレインテック」が、これらの課題解決にどのように貢献し、未来の働き方をどう変革し得るのか、具体的なソリューション「VIE Pod」や「ジョブクラ」の事例を交えながら、社員が輝く職場づくりのヒントをお届けします。 「働きやすい職場」の定義とは?なぜ今、その実現が急務なのか まず、「働きやすい職場」という言葉が具体的にどのような状態を指すのか、そして現代の日本において、なぜこれほどまでにその実現が強く求められているのか、その背景にある深刻な課題と共に見ていきましょう。 従業員が能力を発揮できる「真に働きやすい職場」の条件 「働きやすい職場」とは、物理的なオフィス環境の整備(例:清潔で機能的な設備)はもちろんのこと、それ以上に、従業員が心理的な安全性を感じられる風通しの良い組織文化が根付いている状態を指します。具体的には、以下のような要素が重要となります。 自分の意見やアイデアを気兼ねなく発信できる雰囲気 公正な評価とキャリアアップの機会 仕事へのやりがいと自己成長の実感 ワークライフバランスの尊重 互いを尊重し合える良好な人間関係 このような環境があってこそ、従業員は安心して自身の能力を最大限に発揮し、組織への貢献意欲を高めることができるのです。 退職代行増加が示す、日本の職場環境の深刻な現状と課題 しかしながら、日本の職場環境は理想とは程遠い状況にあるケースも少なくありません。その一つの象徴が「退職代行サービス」の利用急増です。報道によれば、東京の大手退職代行サービス「モームリ」では、2025年1月6日に1日の依頼件数が過去最多の256件を記録し、SNSでも大きな話題となりました。また、自治体や労働基準監督署に寄せられる職場でのハラスメントやいじめに関する相談件数は、年間12万件を超えるなど、依然として高止まりしています。 これらの事実は、多くの従業員が現在の職場環境に深刻な問題を抱えていることを示唆しています。 参考:「退職代行」1年で最も利用の多い日 1日だけで256件 理由にみなみかわが納得 課題1:根深い長時間労働の常態化 政府主導の働き方改革によって一定の進展は見られるものの、いまだ多くの企業で長時間労働が常態化しています。「定時退社」が推奨されていても、周囲の目や評価を気にして退社しづらい雰囲気や、そもそも個人のキャパシティを超える業務量が割り当てられているといった問題が散見されます。 このような状態は、従業員の心身の健康を蝕み、生産性の低下や燃え尽き症候群、そして最終的には離職へと繋がる負のスパイラルを生み出します。 課題2:見過ごせないメンタルヘルスの問題 コロナ禍を契機に一時的にリモートワークが広がりましたが、その後「オフィス回帰」を進める企業も多く、多様な働き方が十分に定着しているとは言えません。 フレックスタイム制度や在宅勤務制度が導入されていても、実質的には利用しづらい企業文化や業務プロセスが障壁となっているケースも少なくありません。育児や介護といったライフステージの変化に対応できる柔軟性が乏しいことは、優秀な人材の流出リスクを高める要因ともなっています。 働きやすい職場がもたらす企業と従業員双方への多大なメリット 働きやすい職場環境を整備することは、単に従業員の満足度を高めるだけでなく、企業経営の観点からも多くの具体的なメリットをもたらします。ここでは、その代表的な効果を見ていきましょう。 集中力・生産性の向上と業務効率の最大化 従業員が心身ともに健康で、安心して業務に集中できる環境は、個々の生産性向上に直結します。適切な休憩が取れ、不要なストレスが少ない職場では、従業員は質の高いアウトプットを効率的に生み出すことができます。 また、個々の業務スタイルやニーズに合わせたサポート(例:静かな集中スペースの提供)があることで、パフォーマンスの最大化が期待できます。 メンタルヘルスの改善とストレスの軽減効果 働きやすい職場は、従業員のメンタルヘルスを良好に保ち、過度なストレスを軽減する効果があります。ハラスメントのない健全な人間関係、適切な業務負荷、相談しやすい雰囲気、そして必要に応じた専門的なサポート体制などが整っていることで、従業員は精神的な安定を保ちやすくなります。 これにより、メンタル不調による休職や離職を防ぎ、組織全体の活力を維持できます。 離職率低下と人材定着による採用・育成コストの削減 魅力的な労働環境は、従業員のエンゲージメント(企業への愛着や貢献意欲)を高め、結果として離職率の低下と定着率の向上に繋がります。優秀な人材が長く会社に留まることで、採用コストや再教育コストを大幅に削減できるだけでなく、組織内に知識やノウハウが蓄積され、企業の競争力強化にも貢献します。 オープンなコミュニケーションとチーム力の強化 心理的安全性が確保された風通しの良い職場では、従業員同士のコミュニケーションが活発になります。部門や役職を超えた建設的な意見交換や情報共有がスムーズに行われることで、誤解や認識の齟齬が減り、チームとしての一体感や協力体制が強化されます。 これは、イノベーションの創出や迅速な意思決定にも不可欠な要素です。 働きがいも向上!「働きやすい職場」を実現する5つの重要ポイント 「働きやすさ」だけでなく、従業員が仕事を通じて成長を実感し、貢献意欲を持てる「働きがい」も両立させることが、現代の職場づくりにおいては極めて重要です。ここでは、その実現に向けた5つの重要なポイントを解説します。 ポイント1:多様なニーズに応える柔軟な働き方の導入・推進 画一的な働き方を押し付けるのではなく、従業員一人ひとりのライフスタイルや価値観、業務特性に応じた多様な働き方を選択できる制度を導入し、実際に利用しやすい文化を醸成することが重要です。 リモートワーク、フレックスタイム制、時短勤務、週休3日制など、選択肢を増やすことで、従業員は仕事と私生活のバランスを取りやすくなり、生産性向上にも繋がります。 ポイント2:キャリア成長支援と自己実現の機会提供 従業員が自身のキャリアパスを描き、成長を実感できる環境は、「働きがい」に不可欠です。 企業は、研修制度の充実、資格取得支援、メンター制度の導入、ジョブローテーション、挑戦的な業務へのアサインなどを通じて、従業員のスキルアップとキャリア形成を積極的にサポートする必要があります。定期的なキャリア面談を通じて、個々の目標や希望を把握し、共に成長戦略を考える姿勢も大切です。 ポイント3:心理的安全性を高めるメンタルヘルスサポート体制 従業員が安心して本音を話せ、失敗を恐れずに挑戦できる「心理的安全性」の高い職場環境を構築することが、メンタルヘルスを守る上で極めて重要です。 具体的には、上司や同僚との信頼関係構築、ハラスメント防止策の徹底、相談しやすい窓口の設置(産業医、カウンセラー等)、ストレスチェックの結果を活かした職場環境改善などが挙げられます。また、適度なリフレッシュを促す施策も有効です。 心理的安全性については以下の記事でも解説しています。 https://mag.viestyle.co.jp/psychological-security-event/ ポイント4:信頼関係を築く透明性の高いコミュニケーション 経営層から現場の従業員まで、双方向のコミュニケーションが円滑に行われ、経営方針や重要事項に関する情報が透明性をもって共有されることは、従業員の会社への信頼感を高め、エンゲージメント向上に繋がります。 定期的な全社ミーティング、1on1ミーティングの実施、社内SNSやチャットツールの活用、経営層からの積極的な情報発信などが効果的です。 ポイント5:生産性を高める快適な物理的オフィス環境の整備 従業員が日常的に過ごすオフィスの物理的環境も、働きやすさや生産性に大きく影響します。人間工学に基づいた家具の導入、適切な照明・空調管理、騒音対策(パーティション設置、集中ブースの導入など)、緑化、リフレッシュスペースの確保など、従業員が快適かつ効率的に業務に取り組める環境を整備することが求められます。 働きやすい職場をブレインテックでサポート VIE株式会社は、ブレインテック技術を活用し、従業員の集中力向上やモチベーション改善などをサポートする事業を複数展開しています。ここでは、VIEの事業と、その具体的なソリューションをご紹介します。 ブレインテックとは? ブレインテック(BrainTech)とは、脳(Brain)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、脳科学の知見とAIやセンサー技術などの先端テクノロジーを融合させ、脳の状態を可視化したり、脳機能に働きかけたりする技術やサービスの総称です。これにより、個人の集中力やストレス状態を客観的に把握したり、パフォーマンス向上やメンタルヘルスケアに役立つソリューションを提供したりすることが可能になります。 VIEは、このブレインテックを活用し、企業が抱える課題を解決するための製品やサービスを展開しています。次に、具体的な事例をご紹介します。 ブレインテックについてさらに知りたい方はこちらの記事をご参照ください。 https://mag.viestyle.co.jp/braintech/ VIE Pod:集中力向上とリラックス効果を提供する個室ブース(コクヨ×VIE) VIE Podは、脳科学に基づいたニューロミュージック(音楽刺激)を活用し、従業員の集中力向上とリラクゼーションを同時にサポートする個室型ブースです。ニューロミュージックは、集中力を高めるα波や、リラクゼーションを促進するθ波を効果的に引き出し、使用者が短時間で最適な精神状態に切り替えられる環境を提供します。 利用者は、その日の気分や目的に応じてブースの使用方法を自由に選択でき、集中ブースとして、リラックススペースとしてなど、様々な方法で活用することが可能です。 VIE Podについては、以下のサイトをご参照ください。 https://lp.vie.style/vie-pod ジョブクラ:若手従業員の意識改革・キャリア支援(RICOH×VIE) ジョブクラは、ニューロテクノロジーとゲーミフィケーションを活用して、仕事を楽しいものに変えるスキルを育むソリューションです。「Playful Work」という考え方を提案し、遊び心を仕事に取り入れることで、仕事を「苦痛」から「楽しい」に変えることを目標としています。 特に、入社2~3年目の若手社員など、仕事へのモチベーションが低下しやすい層への効果が期待されています。現在は試験的な導入を一部の企業で行なっている段階ですが、仕事に対するネガティブな感情を解消し、「楽しい」と感じられる環境をつくることで、従業員の成長を支え、企業全体の競争力を高める可能性を秘めています。 ジョブクラについては、以下のサイトをご参照ください。 https://jp.ricoh.com/technology/tech/128_playfulwork 共同研究パートナーも募集中! VIE株式会社では共同研究パートナーを募集しています。働く環境や従業員の意識改革に課題を抱える企業の皆様とともに、より良い働き方を共創することで、企業全体の成長と社会全体の活力向上に寄与したいと考えています。 共同研究にご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。 info@vie.style 働きやすい職場のこれから 現代の職場環境は、従業員一人ひとりが心身ともに健康で、生産性を高められる環境づくりが求められています。柔軟な働き方やメンタルヘルスのサポート、キャリア支援などの施策は、従業員満足度を向上させ、企業全体の成長につながる基盤です。 また、ブレインテックを活用した「VIE Pod」や「ジョブクラ」のようなソリューションは、働きやすい職場づくりを次の段階へと引き上げる力を持っています。これからの働き方改革には、テクノロジーを活用しながら、人間中心のアプローチで従業員一人ひとりのニーズに応える柔軟性が不可欠です。 VIEの取り組みに興味をお持ちの方は、ぜひお問い合わせいただき、未来の職場づくりを共に進めていきましょう。

健康経営導入ガイド:企業と従業員の健康を支える取り組み

近年、企業が従業員の健康管理を重要な経営課題と捉え、戦略的に投資する「健康経営」への注目が急速に高まっています。従業員が心身ともに健康で、いきいきと働ける環境を整備することは、生産性の向上、医療費の適正化、さらには企業イメージの向上といった、多岐にわたる経営効果をもたらします。この記事では、「健康経営とは何か?」という基本的な疑問から、具体的な導入メリット、実践的な取り組み内容、国内外の先進企業事例、そしてスムーズな導入ステップと活用できる助成金制度に至るまで、網羅的に解説します。企業の持続的な成長と、従業員の幸福なキャリアの両立を目指すすべての方にとって、健康経営を具体的に推進するための一助となれば幸いです。 健康経営とは?企業成長を支える新たな経営スタイル まず、「健康経営」という言葉の基本的な意味合いと、なぜ現代の企業経営においてこれほどまでに重視されるようになったのか、その背景と目的を掘り下げていきましょう。 健康経営の定義と基本的な考え方 健康経営とは、企業が従業員の健康保持・増進に関する取り組みを「コスト」ではなく「投資」と捉え、経営的な視点から戦略的に実践していく経営手法です。従業員一人ひとりの活力向上や生産性の向上を通じて、結果的に企業全体の業績向上や組織価値の向上を目指します。このアプローチは、従業員のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)と企業の持続的な成長を両立させるための重要な経営戦略として位置づけられています。 なぜ今注目?健康経営の目的と社会的背景(健康経営優良法人認定制度など) 健康経営が注目される背景には、少子高齢化による労働力人口の減少、従業員の高齢化、医療費の増大、働き方改革の推進といった社会構造の変化があります。企業にとって、人材の確保と定着、生産性の維持・向上は喫緊の課題であり、その解決策の一つとして従業員の健康がクローズアップされています。 健康経営の主な目的は、単に従業員の健康状態を改善するだけでなく、以下のような多角的な効果を目指すことにあります。 従業員の活力向上と生産性の向上 組織の活性化と創造性の向上 医療費の適正化 企業イメージの向上とブランド価値の強化 従業員の満足度向上と離職率の低減(リテンション効果) 優秀な人材の採用競争力強化 国も健康経営を積極的に推進しており、経済産業省と日本健康会議が共同で「健康経営優良法人認定制度」を設けています。この制度は、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等を顕彰するもので、認定された企業は社会的な評価が高まり、投資家や求職者へのアピールにも繋がります。また、特に優れた企業は「健康経営銘柄」として選定され、株式市場での評価にも影響を与えることがあります。 参考:「健康経営銘柄2025」及び「健康経営優良法人2025」の申請受付について - 経済産業省:https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240820001/20240820001.html 健康経営が企業にもたらす4つの主要メリット 健康経営を実践することは、単なるCSR(企業の社会的責任)活動としての意味合いを超え、企業経営に具体的なプラスの効果をもたらします。ここでは、健康経営が企業にもたらす代表的な4つのメリットを解説します。 メリット1:従業員の生産性向上と組織全体の活性化 従業員が心身ともに健康であることは、個々の集中力や業務遂行能力の向上に直結します。健康経営の取り組みを通じて、従業員が体調不良による欠勤(アブセンティーイズム)や、出勤はしているものの体調やメンタルの不調で十分なパフォーマンスを発揮できない状態(プレゼンティーイズム)を減らすことが期待できます。 これにより、組織全体の生産性が向上し、業務効率の改善、さらにはイノベーションの創出にも繋がります。 メリット2:離職率の低下と優秀な人材の確保・定着 従業員の健康や働きやすさを重視し、手厚いサポート体制を整えている企業は、従業員からのエンゲージメント(愛着や貢献意欲)が高まりやすくなります。結果として、職場への満足度が向上し、離職率の低下に繋がります。 また、採用市場においても「従業員を大切にする企業」というポジティブなイメージが広がり、優秀な人材の獲得競争において有利になります。 メリット3:医療費の適正化と将来的なコスト削減効果 従業員の健康増進は、中長期的には企業が負担する医療費の適正化に繋がります。定期的な健康診断の実施や生活習慣病予防の取り組み、メンタルヘルスケアなどを通じて、従業員の健康リスクを早期に発見し、重症化を防ぐことができれば、将来的な医療コストの抑制が期待できます。 これは、企業の財務健全性の維持にも貢献します。 メリット4:企業イメージ向上と採用競争力の強化 健康経営に積極的に取り組む企業は、社会的に「従業員の健康と安全に配慮するホワイト企業」としての評価が高まります。 これは、顧客、取引先、株主、地域社会といったステークホルダーからの信頼獲得に繋がり、企業ブランドのイメージ向上に貢献します。前述の「健康経営優良法人」などに認定されると、その効果はさらに高まり、採用活動においても大きなアドバンテージとなります。 【実践編】健康経営の具体的な取り組み施策7選 健康経営を推進するためには、どのような具体的な施策があるのでしょうか。ここでは、従業員の身体的・精神的健康をサポートし、働きやすい環境を整備するための代表的な取り組みを7つのカテゴリーに分けてご紹介します。 定期健康診断の実施徹底と結果に基づくフォローアップ 法定の健康診断を全従業員が確実に受診できるようにすることは基本中の基本です。さらに、有所見者に対する再検査の勧奨、医師や保健師による個別指導、生活習慣改善プログラムの提供など、診断結果に基づいたきめ細やかなフォローアップ体制を整備することが重要です。 運動機会の提供と食生活改善支援(フィットネス、健康メニュー等) 従業員の健康的な生活習慣を後押しするために、以下のような施策が考えられます。 フィットネスクラブの利用補助、社内運動施設の設置 ウォーキングイベントやスポーツレクリエーションの開催 階段利用の奨励、スタンディングデスクの導入 社員食堂でのヘルシーメニューの提供、栄養バランスに関する情報提供 管理栄養士による栄養指導やセミナーの実施 ストレスチェック義務化対応と積極的なメンタルヘルスケア 身体の健康だけでなく、心の健康も重要です。 労働安全衛生法に基づくストレスチェックの実施と、その結果に基づく集団分析、職場環境改善 産業医やカウンセラーによる相談窓口の設置、カウンセリング費用の補助 メンタルヘルスに関する研修の実施(セルフケア、ラインケア) リラクゼーションルームの設置やマインドフルネスプログラムの導入 (ストレスチェック制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。) ストレスチェック制度については下記の記事でも解説しています。 https://mag.viestyle.co.jp/stresscheck-mandatory/ https://mag.viestyle.co.jp/stresscheck/ ワークライフバランス推進(柔軟な働き方、休暇取得促進) 仕事と私生活の調和は、従業員の心身の健康維持に不可欠です。 フレックスタイム制度、テレワーク制度、短時間勤務制度などの柔軟な働き方の導入 年次有給休暇の計画的付与や取得奨励、時間単位での休暇取得制度 ノー残業デーの設定、残業時間の上限設定と管理徹底 ワークライフバランスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 https://mag.viestyle.co.jp/worklifebalance-situation/ 育児・介護と仕事の両立支援制度の充実 育児や介護といったライフイベントと仕事を両立できるよう支援することも、従業員の安心感と定着率向上に繋がります。 法定を上回る育児休業・介護休業制度の整備 復職支援プログラムの提供 企業内保育施設の設置や保育費用補助 介護に関する相談窓口の設置や情報提供 長時間労働の是正と適切な勤務時間管理 過重労働は心身の健康を著しく損なうため、厳格な管理が求められます。 勤務間インターバル制度の導入 PCログや入退室記録による客観的な労働時間把握 36協定の遵守と、時間外労働・休日労働の事前申請・承認ルールの徹底 長時間労働者への医師による面接指導の実施 快適で健康的なオフィス環境整備(集中ブース「VIE Pod」活用など) 従業員が日常的に過ごすオフィス環境も、健康に大きな影響を与えます。 適切な温度・湿度・照度の維持、空気清浄機の設置 人間工学に基づいたデスクやチェアの導入 リフレッシュスペースや仮眠室の設置 集中作業やWeb会議に適した個室ブースの設置 脳をととのえるワークブース「VIE Pod」 オフィス環境を整えることで、従業員がよりリラックスして仕事に取り組めるようになります。例えば、「VIE Pod」のように、集中やリラックスを目的とした個室ブースを設置することで、仕事の合間にリフレッシュできる空間が生まれ、心身の健康をサポートし、社員の生産性も向上することが期待されます。 VIE Podについてはこちら=>https://lp.vie.style/vie-pod 健康経営の取り組み事例:日本と海外の企業の実践例 健康経営に取り組む企業は、従業員の健康増進や生産性向上を目指してさまざまなプログラムを実施しています。ここでは、日本と海外の具体的な企業の事例を紹介し、それぞれがどのような成果を上げているかを紹介します。 全社員参加型健康経営プログラム(カゴメ株式会社) カゴメ株式会社は、健康経営の一環として「全社員参加型健康経営プログラム」を実施しています。従業員の健康意識を高め、実際に生活習慣を改善するため、健康診断だけでなく、栄養指導やフィットネスプログラムも導入しています。 このプログラムの成果として、健康診断の受診率は100%を達成し、従業員の野菜摂取量や運動習慣の改善が見られました。また、健康状態の見える化を進めることで、従業員の健康リテラシーが向上し、結果として欠勤率の低減や生産性の向上にもつながっています。 参考:https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/humancapital/04/ 「健康経営優良法人」取得と社内サポート体制(住友商事株式会社) 住友商事株式会社は「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されており、従業員の健康促進に積極的に取り組んでいます。社内には専門チームが設置され、定期的な健康診断に加えて、ストレスチェックやカウンセリングサービスが導入されています。これにより、メンタルヘルスの改善が進み、高ストレス者の割合が減少するなどの成果が見られています。 さらに、フィジカルヘルスの管理についても特定保健指導の実施率が向上し、従業員全体の健康レベルが高まっています。このような施策により、住友商事は従業員の健康を維持・増進するだけでなく、長期的な生産性向上とエンゲージメントの強化を目指しています。 参考:https://sumitomocorp.disclosure.site/ja/themes/33 社員と家族が安心して働ける健康サポート体制(東京海上ホールディングス株式会社) 東京海上ホールディングス株式会社では、社員とその家族が安心して働けるよう、健康サポート体制を充実させています。ウェルネス推進室には看護職チームが配置され、社員の健康相談やカウンセリングを行い、メンタルおよびフィジカルケアを支援しています。また、全国200以上の拠点で一貫した支援を提供できるよう、データの一元管理により、どこにいても均等なサポートが受けられる体制を整備しています。 生活習慣病予防プログラムや特定保健指導の徹底により、健康リスクを早期に発見・対応しするなど、このような取り組みにより、従業員の高ストレス者割合が減少し、全体の健康レベルが向上しており、持続的な生産性向上にも寄与しています。 参考:https://www.tokiomarinehd.com/news_insights/ni17.html 資料配布と動画活用で健康意識向上(前出産業株式会社) 前出産業株式会社は、「健康経営優良法人2022」に認定され、従業員の健康意識向上に向けた施策を展開しています。同社は、従業員の健康意識が低いことが課題であったため、生命保険会社の提案をきっかけに健康経営を本格導入しました。 具体的には、毎月健康に関する資料を給与と共に配布し、健康アドバイスを含む動画を従業員に視聴させることで、健康意識を高める活動を実施。これにより、健康意識の高い従業員の割合は62%から73%に向上し、従業員全体の健康リテラシーが向上しました。 参考:​https://www.maede.co.jp/healthmanagement/ コミュニケーションと健康を重視した職場環境づくり(株式会社Phone Appli) 株式会社Phone Appliは、従業員のウェルビーイング向上を目指し、包括的な健康経営を推進しています。具体的には、社内のコミュニケーションの活性化とメンタルヘルスケアに注力し、従業員が安心して働ける環境づくりを進めています。 従業員同士がオンラインで交流できるイベントや、フィットネスプログラムを実施し、運動不足の解消とコミュニケーションの促進を図り、従業員のエンゲージメントが向上し、職場全体の生産性向上につながっています。 参考:https://phoneappli.net/corp/company/policy/well-being/ 健康経営導入のステップと助成金の活用 企業が健康経営を導入するためには、計画的かつ体系的なアプローチが重要です。ここでは、健康経営を効果的に進めるための3つの主要なステップを紹介します。 ステップ1: 健康経営導入の準備と目標設定 最初のステップは、健康経営の導入に向けた準備と目標設定です。この段階では、企業の現状分析と目指すべきゴールの明確化が重要です。 現状分析 企業全体および従業員の健康状況を把握するため、健康診断結果やメンタルヘルスの状況、欠勤率などのデータを収集し、課題を特定します。健康経営に適用する対象や範囲を明確にすることで、効果的な施策の設計が可能になります。 目標設定 健康経営を導入する目的や、達成したい成果を明確に設定します。例えば、従業員の健康診断受診率100%の達成や、特定保健指導の実施率向上、離職率の低減など、具体的な数値目標を設けることが重要です。このようなKPI(重要業績評価指標)を設定することで、後の施策の評価がしやすくなります。 計画策定 健康経営を推進するための具体的なアクションプランを策定します。ここでは、リソース(予算、人材、ツール)の確保や、スケジュールの設定が必要です。適切な計画があることで、導入プロセスが円滑に進みます。 健康経営に関する方針と体制の構築 健康経営を成功させるためには、しっかりとした方針策定と組織体制の整備が重要です。助成金を活用することで、企業の健康経営推進に必要な資金を確保し、持続可能な体制を構築することが可能です。 以下に、特にこのステップで利用可能な助成金の具体例とその活用方法について説明します。 働き方改革推進支援助成金 労働時間の短縮や休暇取得促進、勤務間インターバルの導入などにかかる費用を補助する助成金です。特に、システム改善や研修の実施に対して、最大730万円が支給されるケースがあります。これにより、健康経営の施策に合わせて労働環境を改善する企業が支援を受けられます。 参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692.html 小規模事業場産業医活動助成金 健康経営の推進には産業医や保健師などの専門家のサポートが重要です。この助成金は、特に中小企業が産業医を配置し、従業員の健康管理体制を整備する際に活用できます。従業員50名以下の企業が産業医や保健師を導入する費用の一部が助成されるため、資金的な負担を軽減し、しっかりとした健康管理体制の確立をサポートがされます。 参考:https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/content/contents/000941543.pdf 人材確保等支援助成金(テレワークコース) 人材確保等支援助成金(テレワークコース)は、テレワークの導入促進を通じて健康経営を推進する企業に適した助成金です。導入時の通信機器費用、システム改善費、従業員研修費用が助成対象で、最大100万円が支給されます。働きやすい環境を整えることで従業員の健康管理と生産性向上を目指す企業に有効な支援制度です。 参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/telework_zyosei_R3.html ステップ3: 具体的な健康施策の実施 健康経営の方針と体制が整ったら、実際の施策を計画に沿って実施します。企業のニーズや課題に応じた具体的なアプローチが重要です。 以上のステップを踏むことで、健康経営の導入が効果的に進められ、従業員と企業双方にメリットが生まれるでしょう。健康経営の成功には、適切な準備と体制、具体的な施策の効果的な実施が欠かせません。 企業と従業員のための健康経営戦略 健康経営は、企業が従業員の健康を支えることを経営戦略に取り入れることで、持続的な成長と企業価値の向上を図るものです。従業員の生産性向上や離職率低下、医療費の削減、企業イメージの向上など、健康経営には多くのメリットが期待されます。 具体的な取り組みには、定期的な健康診断やフィットネスプログラム、メンタルヘルスケア、リモートワーク制度の整備などがあり、従業員が心身ともに健康で働ける環境を整えています。また、「健康経営優良法人認定」や「健康経営銘柄」に認定されることで、企業は社会的な信頼性を高め、優秀な人材の確保にもつながります​。 さらに、健康経営の導入には、助成金の活用が役立ちます。例えば、「働き方改革推進支援助成金」や「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」などの支援制度を活用することで、企業は健康経営にかかるコストを軽減しつつ、効果的な施策を実施可能です。このような助成金の活用を通じて、企業は従業員の健康支援に対する投資を最適化し、経済的な成果と組織全体のパフォーマンス向上を実現できます。

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