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睡眠

効率よく暗記する方法は?「睡眠」と「学習」の関係性は?

寝る前に勉強をすると暗記に効果的である、ということを聞いたことはありませんか?これは、脳科学的に考えると「記憶の定着には睡眠をとることが大切である」と言い換えることができます。 今回は『睡眠と学習の関係性』について深掘りしていきます。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm08/ 記憶の定着には睡眠が大事!一夜漬けがNGな理由とは? ビールを好きになる脳の仕組み でご紹介したように、私たちの脳は、繋がりのなかったシナプス同士が新しく繋がることで、ビールがだんだん好きになったり、できなかったことができるようになったりします。 このように、起こった新しい変化を維持することを「固着」と呼ぶのですが、固着が起こるのは睡眠の最中です。そのため学習とって睡眠は非常に重要ですが、睡眠の中でも学習において重要な現象が2つあります。 1つは「オフラインパフォーマンスゲイン」です。ここでの「オフライン」は、お風呂に入っていたり、寝ていたりする、勉強している時間以外を指します。このような「オフライン」の状態を勉強の合間に挟むことで、パフォーマンスが向上することを「オフラインパフォーマンスゲイン」と呼びます※1。 私たちの脳には、「ハイパーアムネジア」(アムネジア:amnesia=記憶喪失)と呼ばれる仕組みがあります。これは、一度覚えたことを再び思い起こそうとすることで、頭の中でその記憶が蘇ってきて固着し、さっきまで思い出せなかったことが思い出せるようになる、というものです。この仕組みにおいて、合間に「休む」ということがとても重要です。 よく昔から、良い発想は馬の上や、ベッドの上からなどという、ことわざのようなものがありますが、このようなオフラインの状態というのは、脳科学的にも固着が起きる重要なポイントだったのです。 睡眠と学習において重要な2つの現象のうちの、もう1つは「スタビライゼーション:stabilization=固定化」です。実は何かを学んだ後は「今起きたことは脳にとって大事なものなのか」を脳が考えている状態になります。必要でないものは削除していかないと、容量がいっぱいになってしまうため、覚えたての記憶は、そのような天秤にかけられている不安定な状態にあります。そこで睡眠を挟むことにより、何が起きても忘れないようにする、固定化を図ることができます※2。 睡眠にもさまざまな種類がありますが、「オフラインパフォーマンスゲイン」には、ノンレム睡眠の深い眠りが必要であり、「スタビライゼーション」には、レム睡眠の浅い眠りが大事になってきます。このように、記憶の定着には睡眠が大切になってくるため、テスト前に十分な睡眠をとることには、大きな意味があるのです。 ※1 出典:Offline memory consolidation during waking rest | Nature Reviews Psychology, 2024年7月9日参照 ※2 出典:Consolidating the Effects of Waking and Sleep on Motor-Sequence Learning | Journal of Neuroscience (jneurosci.org), 2024年7月9日参照 効率の良い勉強方法は「自分に合った学習方法」を学ぶこと 睡眠の他にも学び方というのは、「ラーニングストラテジー」といってさまざまなことが言われてきています。 例えば、「認知方略」ではリハーサルといって、フラッシュカードのように繰り返し英単語を流していくやり方であったり、自分で覚えたことを要約してみる「精緻化方略」、グラフや絵を書いてみる「体制化方略」などがあります。また「メタ認知方略」といって、自分が何を勉強するかを計画し、どれくらい達成できたかをモニタリングし、できたできなかったを自分で評価して、次の計画に活かすというような方略もあります。 どれが正しいというより、どの方略をどの勉強に使うのが自分にとって最適であるのかを知ることが大切です。それを知る知識が、効率の良い勉強において重要になるのです。 脳波計をつけて記憶の固着を図る!? 最近では、睡眠時の脳波をモニタリングし、記憶の固着をする脳活動が起きているときに、それと同じような脳活動を起こす音を流すだけで、その脳活動を増やして固着の補助をすることも可能になっています※。実際にこのような技術が、一部では商品化されており、私たちの会社 VIE でも挑戦したいと思っています。 まとめ 睡眠は脳が覚えたことを固定化し、翌日以降も忘れないようにするための大事なプロセスです。そのため学ぶことと同じくらい寝ることは大切になります。最近のニューロテクノロジーでは、睡眠中の記憶活動を助けることができるので、「勉強したら脳波計をつけて寝る」というような未来が実現したら面白いですね。 脳波を活用したビジネスについてはこちらの記事でも紹介しています。 https://mag.viestyle.co.jp/eeg-business/ 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/2GHsHGSFh8AWP2tpwlQWUF?si=I3GgiTIoSvm148ueR1n6cw 次回 次回のコラムでは、『ダイエットと脳科学』についてご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm10/

褒め方1つで成績が変わる!?褒められて伸びるかどうかは遺伝子の違い?

効率の良い学習方法や、結果に結びつくのに最適な勉強方法は、常に親も子も模索していると思います。実は「スペース学習」といって、効率の良い勉強方法というものは脳科学的に解明されているのです! 今回は、そのような『勉強の悩みに対する解決策』や、『言語学習とニューロテクノロジーの話』についてご紹介します。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm07/ 同じことをやり続けるのはダメ?効率の良い勉強の仕方! 効率の良い暗記の方法や、勉強の仕方を知りたい人は、大勢いるはずです。個人差はありますが、「声に出しながら文字を書く」というように、マルチモーダルで視覚や聴覚など、あらゆる感覚を研ぎ澄まして覚えていくことは、効率が良いとされています。 また「分散学習」といって、例えば英語の勉強をしたいというときに、ひたすら英語をやるのではなく、途中で数学や古文を挟むなどして、ブロックに分けて取り組むほうが、効率よく勉強できるとも言われています。同じことをやり続けることは、必ずしも効率が良いわけではなく、「スペーシング」「スペース学習」といって、一回やったら間に何か他のことをやる時間を作ることにより、集中力を発揮しながら、効率の良い勉強が期待できます。 褒め方一つで成績が変わる!結果に結びつく褒め方とは? 以前 やる気の引き出し方 で、報酬やご褒美はあまり良いパフォーマンスをもたらさない、ということが示された実験をご紹介しました。しかし、実は悪くないご褒美も中にはあります。 ある実験で、テストで良い結果が出たらご褒美のシールをもらえる群と、テスト勉強をしたらシールをもらえる群に分けたところ、後者の方が明確にテストで良い結果を残したことが分かりました。 どのように頑張れば成績が上がるのか不明確な中で、テストの点がたまたま良かった時に、ご褒美を与えられても、何をしたから良かったのかが分からないままです。 しかし、「インプット・アウトプットアプローチ」といって、勉強をして結果を出す因果関係の中で、その過程を評価することによって、「本を読んだから結果が出せたんだ」「この問題集に取り組めば出来るようになるんだ」というように、成績が上がるための勉強方法が強化されていき、結果としてアウトプットの成績が良くなっていきます。インプットに報酬を与えてやる気を出させれば、しっかりとアウトプットに繋がっていくのです。 日本の親は、子どものテストの点数や結果を褒める傾向にありますが、実はテストの点数が上がりそうなことをしているときに、子どもを褒めてあげるのが、一番良いとされています。 また「褒められて伸びるタイプ」と「叱られて伸びるタイプ」というように、2つに分けて考えることもできます。実際、日本人の8割は「褒められて伸びるタイプ」、2割は「叱られて伸びるタイプ」と答えるそうです。 学習をするときに働く、やる気に関わる「ドーパミンニューロン」には、遺伝的な個人差があります。何か物事がうまくいって、報酬がもらえたときに学習が促進するタイプの遺伝子を持っている人と、失敗をしてしまい、罰が来たときに「もうこんなことはやらない!」というように学習が促進するタイプの遺伝子を持つ人がいて、その割合はおよそ 8:2 だそうです。 このように、脳の中でのドーパミンニューロンのタイプは遺伝的に決まるため、「褒められて伸びるタイプ」であるか、「叱られて伸びるタイプ」であるかには個人差があるのです。 また、先ほどの「インプット・アウトプットアプローチ」とも関わってきますが、「あなたは頭がいいね」というように能力を誉められるのと、「勉強をして偉いね」というように努力を誉められるのとでは、後者の方が良い結果を出した、という実験もあります※。これは勉強だけでなく、「可愛いね」と言われるより、「毎日スキンケア頑張っていて偉いね」と言われる方が、もしかしたら、より嬉しく感じ、「もっと自分磨きを頑張ろう」と思えるようになるかもしれません。 このように、褒め方一つで、結果の良し悪しが変わってくるのです。 ※出典:Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance. (apa.org), 2024年7月9日参照 「L」と「R」の違いが聞き取れるように!?語学学習の未来 英語や韓国語などの、日本語以外の語学学習に苦労する人は、たくさんいると思います。自分にとっての第一言語を話す時に、「言語中枢」といって、発話に関する脳の部分が働くのですが、第二言語、第三言語を話すときは、その処理の仕方が少し変わってしまいます。これが、第一言語以外の語学を習得する難しさに繋がっています。しかし、ニューロテクノロジーを活用することで効果的に語学学習をおこなうことができる、ということが分かっています。 例えば、言語に関わるような脳の領域に、電極を貼って電気を流すと、外国語学習や単語の記憶力が促進されるということが分かっています※。 また、言語の聞き取りに関しては、私たちの会社VIE の成瀬さんが開発した技術があります。英語の「L」と「R」は、聞き取ることも、発音することも日本人にとっては困難です。しかし、わずかな違いを脳が感知している様子をリアルタイムで画面に映し出し、ニューロフィードバックを行うことによって、何十年も聞き取れなかった「L」と「R」の違いを、聞き取れるような聴覚経路に脳を再配線してあげることが可能になるのです。 また、最近では語学学習に向いている「性格」がある、ということが言われています。人と話すことが好きな「外交性」や、オープンマインドといった「開放性」のような特性を持っている人は、語学の習得が早いことが分かっています。 ニューロフィードバックについてはこちらの記事でも紹介しています。 https://mag.viestyle.co.jp/columm36/ ※出典:Learning of Foreign Language Sounds Boosted by Non-invasive Nerve Stimulation (scitechdaily.com), 2024年7月9日参照 まとめ 学び方には人それぞれの方法がありますが、その方法が適切でないことも多々あります。一つのことに集中した方がいいと思っていても、実は分散した方がよかったり、やる気の出し方も誉め方一つで変わったりするのです。 また最近では、脳に直接アプローチするような刺激や、ニューロフィードバックの力を使って、第二言語の学習を促進する、夢のような学習技術が実現しつつあります。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/6wbqS2XZFerTYCPa6QKlFG?si=2-OFlUTFQ-q0Oi-6-0FkCA 次回 次回のコラムでは、『睡眠と学習の関係性』について脳科学的な視点からご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm09/

生活の質を高めるお酒の話/お酒によってコミュ障を克服!?

みなさんはアルコールに対してどのようなイメージがありますか?「アルコール中毒」といったマイナスな側面が強調されることがありますが、プラスな側面もたくさんあることが分かっています。 例えば、アルコールによって不安を軽減することができたり、初対面の人とも打ち解けることができたりなど、アルコールは社会における対人関係を手助けしてくれる要素も持ち合わせています。 初対面の人との交流の場で、アルコールが私たちをサポートしてくれるのは、アルコールにはセルフディスクロージャー(自己開示)を促す作用があるためです。 そんなアルコールに関連して、今回は『生活の質を高めるお酒に関する話』をご紹介します。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm01/ 対人関係に役立つ?アルコールは社会的な飲み物 人は誰しも「こんなことを言ったら嫌われるかな?」「恥ずかしいな?」といった不安や自意識過剰の念に駆られることがあります。 このような感情は、主に脳の前頭葉という部分で起こっています。前頭葉は、人の行動の開始や抑制を司る機能がありますが、アルコールの飲用によってこの「抑制」の機能が低下すると言われています。それにより、素面では恥ずかしさや不安で言えないようなことも、お酒が入ることによって自分をさらけ出しやすくなります。 自己開示をすると、相手も自分のことを話しやすくなる、このようにしてアルコールの力で初対面の人とも打ち解けやすくなるのです。 実際に、初対面の3人組がアルコールを飲みながら会話をする方が、飲まなかったグループよりも会話が弾み、笑顔が増え、終わった後に「自分たちは仲良しだ!」と感じる割合が高いということが示された研究※もあります。 初対面の相手とは「カフェから始める」よりも「お酒から始める」方が、仲良くなりやすいのかもしれません。しかし、先ほども述べたようにアルコールによって脳の「抑制」の機能が低下するため、その分リスクもあることは確かです。 ※出典:Moderate Doses of Alcohol Increase Social Bonding in Groups – Association for Psychological Science – APS, 2024年7月2日参照 適度な飲酒は快適な睡眠を導く? 最近の研究では、適度な飲酒は初期段階の睡眠を深める効果があることが示されています※。一方で、認知機能や感情の健康に影響を与える可能性があることも示唆されています。 はじめのうちはお酒をたくさん飲んだら、その分ぐっすりと眠られるかもしれません。しかし、それに味をしめて続けていくと、だんだん体も脳もアルコールに対する耐性がついてきてしまいます。 これは「辛いものを食べ続けると、同じ辛さでは満足できなくなっていく」のと同じ現象です。質の高い睡眠をアルコールによって誘発したいのであれば、一杯ほどの飲酒が良いのかもしれません。 ※出典:Alcohol before bed: New research uncovers its impact on sleep architecture (psypost.org) , 2024年7月2日参照 記憶はつくられていなかった!?「飲み過ぎて記憶を飛ばした」は間違い みなさんは「飲み過ぎて記憶飛ばしちゃったよ…」と誰かが言っているのを聞いたことはありませんか?この記事を読むお酒好きの方なら、自分でこのセリフを言ったことがある人もいるかもしれませんね。 しかし、実はこの言葉は間違いなのです。「記憶が飛ぶ」というのは、「ちゃんと記憶していたのに忘れちゃった」ということを指しますが、実際には飲み過ぎてしまった人の脳の中では「記憶をする」という機能自体が働いていないのです※。 もう少し説明すると、その人がその場で会話ややりとりをするのに必要な「短期記憶」は脳の中で働いています。しかし、次の日までその記憶を保持する「長期記憶」は働いていません。それにより、側から見ると普通に会話をしていた人でも、本人は次の日、記憶を無くしてしまっていることがあるのです。 つまり「記憶が飛んだ」ではなく、「記憶は作られていない」という方が正しいことになります。 ※出典:Interrupted Memories: Alcohol-Induced Blackouts | National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism (NIAAA) (nih.gov), 2024年7月2日参照 まとめ アルコールには健康のリスクはありますが、良い面もたくさんあります。不安を和らげたり、断りづらいことを断れるようになったり、新しい人との絆を強めたりなど、アルコールによって実現されることは数多くあります。さらに、適度な飲酒は睡眠の質を良くし、あなたの人生を豊かにするでしょう。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/25ZFcvkz3vnknJgI9cOJJ9?si=vl95oM6MR-iVXfsyAqOuNA 次回 次回のコラムでは、『お酒とニューロテクノロジーで実現する新しい世界』 をテーマにご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm03/

脳波とは?種類からビジネス活用まで徹底解説

脳波を活用したブレインテックの市場規模は急速に拡大し、多くのビジネス分野での応用が進んでいる一方で、海外に比べて日本では脳波を活用したビジネスは数が少ないのが現状です。 そこで本記事では、海外から日本における脳波を活用したビジネスの現状を包括的に解説し、脳波を活用することで得られる新たなビジネスチャンスについて探ります。 さらに、脳波が企業活動にどのような革新をもたらしているか、具体的な事例を通じて紹介します。脳波技術の最前線を知りたい方や新たなビジネス機会を模索している方に必見の内容となっていますので、ぜひご覧ください。 脳波とは 脳波とは、脳が活動しているときに発生する微小な電気信号のことです。私たちの脳内で、神経細胞が互いに情報を送り合う際には小さな電気的なパルスが生じ、これが集まって特定のリズムやパターンを形成します。この現象を脳波と呼んでいます。 睡眠の質やストレスの度合いを調べるために脳波を測定し、健康状態や心理状態の手がかりとして活用されています。 さらに、ブレインテックという、脳科学を活用したテクノロジーも世界的に注目されています。この技術は医療分野に限らず、ゲームなど様々な分野で応用されており、ビジネスの世界でも脳波の研究や活用に注力する企業が増えています。 https://mag.viestyle.co.jp/braintech/ 脳波の種類 脳波にはいくつかの種類があり、行っている活動によって種類が変わります。 たとえば、睡眠中やリラックスしているときにはデルタ波やシータ波が、集中しているときにはガンマ波が観測されるなど、活動に応じてそれぞれ異なる脳波が観測されます。 δ波(デルタ波):周波数が0.5〜4Hzの波で、深い睡眠時に主に見られます。 θ波(シータ波):周波数が4〜8Hzの波で、軽い睡眠やリラックスした状態、創造的な活動が行われる時に現れることがあります。 α波(アルファ波):周波数が8〜13Hzの波で、リラックスして目を閉じた状態で現れやすいです。瞑想やリラックスした覚醒状態に関連しています。 β波(ベータ波):周波数が13〜30Hzの波で、覚醒して活動的な思考や注意が行われている時に見られます。 ガンマ波:周波数が30Hz以上の波で、集中している状態や認知活動が高まっている時に観測されることが多いです。 https://mag.viestyle.co.jp/eegmeasurement/ 脳波が発生する仕組みとは 脳波は、私たちの脳内で神経細胞(ニューロン)が活動する際に発生します。これらの細胞は、情報を伝達するために電気信号を利用します。ニューロンが活動するとき、小さな電流が生じ、これらの電流が集まることで脳波と呼ばれる特定の波形が形成されます。 例えば、本を読んでいるとき、テレビを見ているとき、寝ているときなど、脳は異なる活動をしています。このとき、それぞれの活動に応じて異なるパターンの脳波(上述)が発生します。 リラックスしている時にはゆったりとした波が、集中している時には速い波が、それぞれ観測されるのです。 このように、私たちが何をしているかによって異なる脳波が発生しているので、脳波を測定することで、さまざまな活動や脳の状態を知る手がかりになります。 脳波を活用したビジネスの市場規模やトレンド 脳波を活用したブレインテック市場は、特にEEG(脳波計)デバイスの分野で急速に成長しています。2021年から2028年にかけての市場規模は約10億ドルから約17億ドルへと拡大すると予測されており、年間平均成長率は7.5%と見られています。 この市場の成長は、これまでの医療分野での技術進歩だけでなく、教育、エンターテイメント、個人向けウェルネスといった新しい市場の開拓によっても推進されています。特に、消費者向けの健康管理やストレス軽減を目的とした製品が人気を集め、脳波技術の普及を促進しています。 脳波をビジネスに活用する具体例 次の章で具体的な企業事例を紹介しますが、ここでは、脳波をビジネスに活用するとどのようなことが実現できるのか。その具体例を簡単に紹介します。 たとえば、教育分野では、学習者の集中度を測定し、カスタマイズされた教育プログラムを提供するために脳波が活用されています。また、ビデオゲームや仮想現実(VR)技術においても、プレイヤーの感情や反応をリアルタイムで把握し、より没入感のある体験を提供するために利用されています。 さらに、マーケティング分野では、消費者の広告に対する反応を分析し、より効果的な広告戦略を立てるために脳波データが用いられることがあります。これにより、消費者の未言語化された感情や本能的な反応を捉え、製品やサービスの改善につなげることが可能です。 これらの例からもわかるように、脳波技術は単に医療分野に留まらず、日常生活のさまざまな側面に革新をもたらす可能性を秘めています。このように多方面での応用が進むことで、脳波技術の市場はさらに広がりを見せ、新しいビジネスチャンスが生まれています。 海外の脳波ビジネスのトレンド それでは、海外では脳波を用いてどのようなことを行っているのかを紹介します。 特にブレインマシーンインターフェース(BMI)技術が様々な産業で革新をもたらしています。 アメリカ合衆国: 軍事アプリケーション: 米国国防総省(DARPA)は、脳波を利用して兵士の戦闘能力を向上させるプロジェクトを支援しています。具体的には、思考だけでドローンを操縦する技術の開発などが行われています。 医療アプリケーション: カリフォルニア大学バークレー校では、脳に直接埋め込むことができる「ニューラルダスト」と呼ばれる微小センサーの開発が進んでおり、これにより、神経活動を高精度でモニタリングできます​ (RAND)​。 https://mag.viestyle.co.jp/braintechmedical/ ヨーロッパ: 教育とトレーニング: ヨーロッパの一部の教育機関では、BCIを用いて学生の学習効率を高めるための研究が進められています。注意力や集中力のデータを基に、個別の学習プランを最適化する試みが行われています。 アジア: 産業オートメーション: 日本を含むアジアの国々では、BCI技術を産業用ロボットや自動化システムと組み合わせることで、製造ラインの効率化や作業者の負担軽減を目指しています。 脳波ビジネスを行う企業事例5選 ここからは、実際に脳波をビジネスに活用している企業事例を日本と海外に分けて紹介します。 日本の企業事例 VIE株式会社:イヤホン型脳波計と企業向け脳波解析プログラムの提供 VIE株式会社は、イヤホン型脳波計「VIE ZONE」と脳波解析プログラムの提供しています。 このプログラムは研究者や企業の研究開発部門向けに設計されており、イヤーチップが電極となることで耳から脳波を計測できます。従来の煩雑な装着手順を省き、日常的に使用できるこのデバイスは、ニューロテクノロジーの研究と応用を大きく前進させます。VIEは、これにより幅広い産業における脳波データの利活用を促進します。 また、脳情報を研究や事業に活用することのできるサービス「VIE Streamer」の提供もしています。 VIE Streamer:https://streamer.vie.style/ Ghoonuts株式会社 Ghoonuts株式会社は、脳刺激デバイスを開発し、治療が確立していない疾患の医療に貢献することを目指す会社です。 特に失語症の患者向けに言語トレーニングアプリを開発中で、どこにいても言語リハビリを利用できるサービスを提供することを目標としています。さらに、認知症や統合失調症など、薬だけでは解決できない分野への挑戦も計画しています。 HPはこちら:https://ghoonuts.com/ 海外の企業事例 EMOTIV社:脳波による感情分析技(アメリカ) EMOTIV社は、高度な脳波測定デバイスと感情分析ソフトウェアを開発しています。これらの製品を通じて、ユーザーの感情状態や認知パターンをリアルタイムで把握することができ、ウェルネス、マーケティング、教育など多岐にわたる分野で活用されています。特に、企業が消費者の無意識の反応を分析するのに利用されることがあります。 HPはこちら:https://www.emotiv.com/ NeuroPro社:脳波による精密なデータ分析(スイス) NeuroProは、脳波データの解析と可視化を行う高度なソリューションを提供するスイスの企業です。この技術は医療診断、リサーチ、そしてパーソナルヘルス管理に利用されており、脳の活動パターンを詳細に把握することが可能です。特に、神経科学の研究や臨床試験において重要なツールとされています。 HPはこちら:https://www.neuropro.ch/ NeuroSky社:脳波を利用した教育ツール(アメリカ) NeuroSky社は、脳波計測技術を活用した教育向けアプリケーションを提供しています。これにより、学習者の集中力やリラックス状態を測定し、個別の学習プランの最適化やストレス管理に貢献しています。学校や教育機関での導入事例が増えており、効果的な学習サポートツールとして注目されています。 HPはこちら:https://neurosky.com/ ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードする 脳波を活用したビジネスの今後に注目 脳波技術は、ビジネスや日常生活において大きな可能性を秘めています。市場規模は急速に拡大しており、医療や教育、エンターテイメントなど多岐にわたる分野での応用が進んでいます。 脳波を活用した製品やサービスは、私たちの生活をより便利で効率的なものに変える力を持っています。今後も脳波技術の進化が続く中、新たなビジネスチャンスを見逃さないためには、この分野への理解と関心を持ち続けることが重要です。

認知症予防・治療におけるニューロテックの活用事例を紹介

高齢化が進む中、認知症は誰にとっても身近な課題となりつつあります。患者本人の生活の質を保ちつつ、家族や介護者の負担をどう軽減するか──その鍵を握るのがニューロテック(ブレインテック)です。この記事では、世界中のニューロテック企業による最新の技術と取り組み事例を紹介し、未来の医療に広がる可能性を探っていきます。 高齢社会が直面する認知症の現状 高齢化が進む現代社会において、認知症はますます大きな問題となっています。世界中で高齢者の数が増える中、認知症の発症率も上昇しており、多くの家庭や医療機関がその対策に取り組んでいます。 高齢社会における認知症の課題 高齢化が進む中、認知症は患者数の増加とケアの負担という2つの大きな課題を抱えています。日本では2025年に約675万人が発症すると見込まれ、65歳以上の約5.4人に1人が認知症になると推定されています。 また、認知症は記憶力の低下や認知機能の障害を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたします。さらに、認知症患者のケアには多大な労力と費用が必要であり、介護者や医療機関にとって大きな負担となります。 さらに、認知症は患者本人だけでなく、家族や介護者にも大きな心理的・経済的負担をもたらします。進行を遅らせるための決定的な治療法がまだ確立されていないことも、深刻な課題です。こうした背景から、認知症の予防と早期発見の重要性がますます高まっています。 参考:公益財団法人生命保険文化センター.認知症患者はどれくらい? https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1105.html 2024年6月3日時点 認知症の早期発見と予防の重要性 認知症の早期発見は、その進行を遅らせ、患者の生活の質を向上させるために不可欠です。また、予防策を講じることで認知症の発症リスクを低減できます。早期に診断されることで、患者は適切な治療や支援を受けることができ、症状の進行を遅らせる可能性が高まります。 認知症の予防には、バランスの取れた食事、定期的な運動、十分な睡眠、ストレス管理が重要です。また、社会的な交流を維持し、脳を活発に保つための活動も推奨されており、これらの取り組みが、認知症の発症リスクを低減させることが科学的に証明されています​。 早期診断は、個別に最適なケアプランを立てることを可能にし、患者とその家族が適切なサポートを受ける準備を整える手助けとなります。これにより、介護の負担を軽減し、家族や介護者が心理的・経済的な準備を行うための時間を確保することができます。 WHO.Adopting a healthy lifestyle helps reduce the risk of dementia https://www.who.int/news-room/detail/14-05-2019-adopting-a-healthy-lifestyle-helps-reduce-the-risk-of-dementia 2024年6月3日現在 ニューロテック(ブレインテック)と認知症の関連性 ニューロテックは、脳の健康を維持・改善するための技術として注目を集めています。認知症という複雑で進行性の疾患に対して、ニューロテックは予防から治療まで幅広いアプローチの提供が可能です。以下では、ニューロテックが認知症予防と治療のそれぞれの領域でどのように役立っているかを詳しく見ていきます。 ニューロテックについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 https://mag.viestyle.co.jp/braintech/ 認知症「予防」×ニューロテックの役割 ニューロテックは認知機能のトレーニングやストレス管理、健康モニタリングなど、様々な方法で認知症予防に寄与しています。 たとえば、AIを用いた認知症の診断ツールは、大量のデータを分析し、認知機能の微細な変化を検出することで、早期の認知症リスクを特定します。これにより、症状が進行する前に適切な対策を講じることが可能となります。 さらに、ニューロテックを活用した認知機能向上を目的とするゲーム型アプリも登場しています。これらのアプリは、記憶力や注意力、問題解決力などを鍛える多様なトレーニングを提供しており、日常的に使用することで認知機能の低下を防ぎ、将来的な認知症リスクの軽減が期待されています。 さらに、これらの技術は、定期的な評価とフィードバックを通じて、個々のユーザーに最適化されたプログラムを提供し、より効果的な予防策を実現します。 認知症「治療」×ニューロテックの役割 認知症の治療においても、ニューロテックは革新的なアプローチとして注目されています。既存の治療法と組み合わせることで、症状の進行を緩やかにし、患者の生活の質を高めることが可能です。 たとえば、簡易的に脳波を測定できるウェアラブルデバイスは、認知症患者の健康状態をリアルタイムでモニタリングし、異常を早期に検出するのに役立ちます。これらのデバイスは、心拍数や活動量、睡眠パターンなどのデータを収集し、医療従事者が患者の状態を詳細に把握できるようにします。これにより、異常を早期に発見し、迅速に対応することができます。 またVRやAR技術は、認知症患者のリハビリテーションへの応用にも期待されています。これらの技術を用いることで、患者は安全な環境でリアルな体験をすることができ、認知機能のトレーニングや社会的スキルの維持に役立ちます。 たとえば、VRを用いたトレーニングは、空間認識能力や記憶力の改善に利用されており、患者は仮想環境内で日常生活を体験することで、現実世界での生活スキルを向上させることができます。 認知症予防に効果的なDTx 認知症は、世界的な高齢化に伴い増加し続けている深刻な疾患です。しかし現在のところ、その進行を完全に食い止める治療法は確立されていません。こうした背景から、近年ではデジタルセラピューティクス(DTx)に注目が集まっています。 DTxとは?その仕組みと利点 デジタルセラピューティクス(Digital Therapeutics、DTx)とは、デジタル技術を活用して疾患の予防、管理、治療を行う新しい医療分野です。具体的には、ソフトウェアを用いた治療プログラムやアプリケーションを指します。これらのプログラムやアプリケーションは、臨床試験で効果が証明された後、医療機関や患者に提供されます。 DTxの重要性 デジタルセラピューティクス(DTx)は、患者一人ひとりの状態に合わせた個別化された治療を提供します。DTxは、認知機能のトレーニングや行動療法をデジタル化することで、患者の進捗状況をリアルタイムで把握し、必要に応じて調整が可能です。患者のデータを収集・分析し、その結果に基づいて治療を最適化するため、治療の効果を最大化し、副作用を最小限に抑えることができます。 また、スマートフォンやタブレットを通じて提供されるDTxは、地理的な制約を受けずに利用できるため、遠隔地に住む高齢者や外出が困難な患者にもアクセスしやすくなります。これにより、場所に関係なく高品質なケアが提供されるため、患者の生活の質が向上します。 DTxの流行と普及 DTxは、近年急速に注目を集め、その市場は拡大し続けています。この流行と普及の背景にはいくつかの要因があります。 まず、DTxが注目される背景には技術の進歩があります。スマートフォンやウェアラブルデバイスの普及により、デジタル治療プログラムがより多くの人々に届くようになりました。これにより、いつでもどこでもアクセス可能な治療が実現し、特に遠隔地に住む高齢者や外出が困難な患者にとって大きな利便性をもたらしています。 また、高齢化社会の進行と新型コロナウイルスの影響で、非接触型医療の需要が増加したことも、DTxの普及を後押ししています。パンデミックによって対面での医療サービスが制限されたため、リモートでの治療が重要視されるようになり、DTxの需要が急増しました。 さらに、医療規制当局による承認プロセスの整備も、DTxの信頼性を高める要因となっています。FDAなどの規制機関がDTxを正式に承認することで、医療従事者や患者の間での受け入れが進み、治療の一環として利用されるケースが増えています。 これらの要因が相まって、DTxは今後もさらに普及し、認知症をはじめとするさまざまな疾患の予防と治療において重要な役割を果たすことが期待されています。 ニューロテック×認知症に取り組む企業の事例紹介 ここでは、認知症対策に取り組む企業の事例を紹介し、どのようにブレインテックを活用しているかを詳しく見ていきます。 認知症予防アプリの開発と普及 認知症のリスクを低減するための有効な手段として、認知症予防アプリの開発が注目されています。以下は、アプリの開発と普及に取り組む企業です。 Evoke Neuroscience アメリカのEvoke Neuroscience社は、認知症予防および認知機能向上のための「Evoke」というアプリを開発しています。このアプリでは、認知トレーニングゲームを提供しており、ユーザーの認知機能を向上させることを目指しています。 Evokeは認知機能の低下を早期に検出し、適切な介入を可能にする先進的なシステムです。FDA承認を受けているため、医療現場での信頼性が高く、多くの患者に効果的なケアを提供することが期待されています。 このアプリは、ユーザーが日常的に利用することで、記憶力、注意力、問題解決能力などの認知機能を鍛えることができます。これにより、認知機能の低下を防ぎ、認知症リスクを軽減する効果が期待されています。 参考:https://evokeneuroscience.com/ Lumos Labs アメリカのLumos Labs社では、Lumosityという脳の健康を維持し、認知機能を向上させるためのゲームベースのアプリを開発しています。このアプリは、記憶力、速度、柔軟性、問題解決などの様々な認知スキルを強化する40以上のアクティビティを提供しており、新しい方法で脳を刺激し、認知機能の研究を進めるために作られました​。 Lumosityは、科学的に設計されたゲームを通じて、楽しく効果的に脳をトレーニングすることができるアプリです。FDA承認の医療機器ではありませんが、多くのユーザーから認知機能の維持や向上に役立つとの高い評価を得ています。 このアプリは、ユーザーが日常的に利用することで、認知機能の向上を目指しています。例えば、記憶力を鍛えるパズルゲームや、注意力を向上させる反応速度ゲームなど、様々なアクティビティが用意されています。これにより、ユーザーは楽しみながら脳をトレーニングし、日常生活においてもその効果を実感することができます。 参考:https://www.lumoslabs.com/about 認知症治療のためのDTxソリューション DTxソリューションの普及により、より効果的でアクセスしやすい治療法が提供されることが期待されています。以下は、DTxの開発に取り組む企業の事例です。 Brain+ デンマークのBrain+は、アルツハイマー病などの認知症治療に特化したDTx企業です。科学的根拠に基づく認知刺激療法(CST)や、認知機能を強化するデジタルプログラムを開発し、治療の選択肢を広げています。 Brain+の製品は主に医療機関やケア施設で使用されていますが、家庭向けのCST製品も開発しています​。セラピストや介護者が患者に対して効果的にCSTを提供するためのサポートを行い、今後さらに多くの国での利用が見込まれています。 このようなDTxソリューションは、患者が自宅で治療を受けることを可能にし、医療機関への負担を軽減するとともに、患者の生活の質を向上させることが期待されています。 参考:https://www.brain-plus.com/  Neurophet Neurophetは韓国に拠点を置く医療技術企業で、アルツハイマー病や認知症の早期診断と治療支援に注力しています。2023年には、Neurophet AQUAという製品がアメリカのFDAとシンガポールのHSAの認可を受けました。 Neurophet AQUAは、脳のMRI画像を解析し、アルツハイマー病や他の神経変性疾患の早期診断を支援する製品です。この製品は、脳萎縮や白質変性の程度を定量化し、患者ごとの病態を詳細に把握します。これにより、個々の患者の脳の状態に基づいて、個別化された治療プランを提供することが可能になります。 Neurophet AQUAの導入により、医療従事者はより正確で早期の診断を行うことができ、適切な治療計画を立てることができます。この技術は、認知症の進行を遅らせ、患者の生活の質を向上させる上で重要な役割を果たします。 参考:https://www.neurophet.com/ 認知症患者の生活改善に向けたサポートシステム 特に認知症患者においては、デジタル技術を活用したプラットフォームやデバイスによって、健康状態をリアルタイムでモニタリングし、必要なケアを迅速に提供することが可能になります。 Isaac Health Isaac Healthは、認知症およびその他の脳の健康状態に対する、包括的なケアを提供するデジタルヘルス企業です。患者が自宅から脳の健康診断、治療、継続的なケア管理を受けることができるプラットフォームを提供しており、これにより専門医にアクセスするまでの待ち時間を短縮し、患者が迅速に必要なケアを受けられるようにしています​。 Isaac Healthのプラットフォームは、特に脳神経科医が不足している地域に住む患者に対して、高品質のケアを提供することを目指しています。患者や介護者は24時間アクセスできるホットラインを利用でき、認知症管理に関するサポートを受けることができます。このように、Isaac Healthは認知症患者の生活の質を高めるとともに、家族や介護者の負担を軽減するための、重要なサポートシステムを提供しています。 このプラットフォームの導入により、認知症患者とその家族は、より安心して日常生活を送ることができ、医療リソースの効率的な利用が促進されます。 参考:https://www.myisaachealth.com/ 認知症予防・治療における社会的インパクト ニューロテックは、認知症の予防と治療において大きな可能性を秘めています。AIを活用した診断ツールやコンピュータ化された認知トレーニングプログラム、VRやAR技術など、多様な技術が開発され、患者の認知機能の向上や生活の質の改善に寄与しています。 特に、Brain+やNeurophet、Isaac Healthなどの企業は、先進的なデジタルソリューションを提供し、早期発見から治療、日常生活のサポートまで幅広いサービスを展開しています。これらの取り組みは、認知症患者だけでなく、その家族や介護者にとっても大きな助けとなり、社会全体に対するポジティブなインパクトをもたらします。 これからもニューロテックの進化と普及が進むことで、認知症対策がさらに強化され、多くの人々が健康で充実した生活を送ることが期待されます。最新の技術を活用し、認知症の予防・治療における新しいアプローチを取り入れることで、個々のニーズに応じた最適なケアが提供されるでしょう。

脳波測定技術の基本とビジネス活用法

脳波測定技術は、医療、スポーツ、エンターテインメント、さらには個人のヘルスケア管理に至るまで、多岐にわたる分野でその利用が進んでいます。 本記事では、脳波測定の基本から、脳波測定が可能なデバイスの紹介、脳波測定のビジネス活用法までを解説します。 脳波の測定方法とは? 脳波測定とは、脳の電気活動を記録し解析する技術です。この技術により、脳の状態をリアルタイムで観察することが可能となり、睡眠研究、疾患の診断、神経科学の研究、さらにはユーザーインターフェースの開発など、多岐にわたる用途で利用されています。ここでは、代表的な脳波測定の流れをご紹介します。 STEP1:電極の配置 脳波測定は通常、多数の小さな電極を頭皮に配置して実施されます。これらの電極は、頭皮を通して脳から発せられる微小な電気信号を捉えます。 STEP2:信号の記録 配置された電極を通じて、脳の電気活動を記録します。この際、信号はアナログ形式(波形で表される形式)で得られます。しかし、現代の科学技術ではデジタル形式(数値データとして処理される形式)の方が分析しやすいため、このアナログ信号をデジタル信号に変換する必要があります。 この変換を行うためには、高度な信号処理技術が用いられます。具体的には、不要なノイズ(乱れや無関係な信号)を取り除き、必要な脳波の信号を明確にするための補強が行われます。このようにして脳の電気活動をより正確に、よりクリアに捉えることができるようになります。 STEP3:データの分析 記録された脳波データは、さまざまな波形(アルファ波、ベータ波、デルタ波など)に分析され、これに基づいて脳の活動パターンを評価します。これらの波形は、睡眠、リラクゼーション、集中、ストレスなど、異なる心理状態を反映しています。 脳波測定でわかることは? 脳波測定を通じて、ストレスレベル、注意力、感情状態など、多岐にわたる脳の活動情報を読み取ることができます。たとえば、睡眠中の脳波パターンを分析することで、睡眠障害の診断や改善策の検討が可能になります。また、癲癇(てんかん)の診断や瞑想の深さを知るためのツールとしても利用されています。 ビジネス面では、脳波測定で得られた情報を活用して従業員のウェルビーイングの向上を支援したり、顧客体験を向上させる製品開発につなげることで活用されています。 脳波測定ができるデバイスを紹介 脳波測定には、さまざまな種類のデバイスが利用されています。これらのデバイスは、それぞれ特定の用途や環境に適した機能を持っています。 医療現場で使用される高精度の機器から、一般の方が日常生活で使用できる手軽なウェアラブルデバイスまで、その範囲は広大です。以下では、脳波測定に必要な代表的なデバイスをいくつか紹介し、それぞれの特徴と主な用途について詳しく解説します。 脳波測定に必要なデバイスは? fMRI fMRI(機能的磁気共鳴画像法)とは、脳内の血流の変化を見ることで、どの脳の部分が活動しているかを映像で示す技術です。この方法は、脳のどの部位が特定の作業に関与しているかを調べるのに使われています。 非常に高度な技術で、主に病院で利用されており、fMRIを使って脳の構造を詳しく見ることで病気の診断に役立てられています。 EEG EEG(脳波計)は、頭皮に配置されたセンサーを通じて脳の電気活動を測定するデバイスです。比較的低コストで手軽に使用でき、臨床はもちろん、日常生活やビジネスシーンでの使用が可能です。 MEG MEG(磁気脳波計)は、脳が活動する際に発生する非常に小さな磁場を測定する高度な装置です。MEGを使用することで、どの脳の部分がいつ活動しているかを非常に詳細に追跡できます。 MEGは脳の活動をリアルタイムで正確に観察できるため、脳の働きを研究する認知科学や神経科学でよく利用され、特定の脳の障害を診断する際にも役立てられています。 NIRS NIRS(近赤外線分光法)は、脳に近赤外線を当てて、脳内の血中酸素濃度の変化を測ることで、脳の活動を調べる技術です。NIRSは小型で持ち運びが可能なため、動きながらでも使用することが可能です。 特に小児の発達の研究や、スポーツ選手のトレーニング中の脳状態を研究する際など、実際の活動状況での脳の働きをリアルタイムで観察する際に用いられています。 PET PET(陽電子放射断層撮影)は、特殊な放射性物質を体内に入れて、脳の活動を映像で見ることができる医療技術です。この放射性物質は体内で分解される際に信号を出し、その信号を捉えることで、脳のどの部分が活発に動いているか、またどの部分に問題があるかを詳しく調べることができます。 この技術は主に、アルツハイマー病やがんなど、特定の病気を持つ脳の状態を調べる際に利用されています。 ウェアラブル脳波計 最近ではウェアラブル脳波計が開発されており、帽子やヘッドバンド、イヤホンなどの形をしたデバイスで、日常生活の中で簡単に脳波を測定することがで可能です。 これらのデバイスを使うことで、ストレスの管理、瞑想の効果測定、集中力の向上など、自分の心の状態(脳の状態)を知り、健康やウェルネス(心身の健康状態)を向上させるのに役立ちます。日常的に使える手軽さが魅力で、多くの人々に利用されています。 これらのデバイスは、それぞれ特有の利点と制限があり、使用する状況や目的に応じて選択されています。脳波測定では、求められる精度、利便性、コストのバランス等を考慮して行うことが重要です。 イヤホン型脳波計VIE ZONEの事例紹介 VIE株式会社では、イヤホン型のウェアラブル脳波計「VIE ZONE」を提供しています。このデバイスは、耳に装着するイヤーチップに特別な電極が組み込まれており、耳から脳波を測定することが可能です。 事例 1 :ポーラ化成工業株式会社 ポーラ化成工業株式会社との共同プロジェクトにおいて、脳波からマインドフルネス状態を推定する技術の開発を支援しました。本取り組みでは、VIEのイヤホン型脳波計を用いて心理状態をリアルタイムに可視化し、化粧品がもたらす感性価値の分析に活用しました。 具体的には、ユーザーの脳波データを収集し、個人差を考慮した学習アルゴリズムを構築して、マインドフルネス状態を正確に推定するというものです。この技術により、化粧品の使用がどの程度マインドフルネス状態を引き起こすかを評価できるようになり、製品の処方設計や香料、容器形態などの改善に役立てられました。 参考: VIE STYLE、ポーラ化成工業が行なったマインドフルネス状態を脳波計測から推定する技術開発を支援 事例 2 :株式会社リコー 株式会社リコーと共同で、ブレインテックとゲーミフィケーションを活用し、仕事への内発的動機(働きがい)を高めるための共同研究を行いました。ゲーミフィケーションとは、ゲームの楽しい要素を仕事や学習などの活動に取り入れて、やる気や集中力を高める方法です。 このプロジェクトでは、VIEのイヤホン型脳波計を使用して、仕事に対する内発的動機をリアルタイムで評価し、ゲーミフィケーション要素を取り入れることで働きがいの向上を目指します。 イヤホン型脳波計で、ユーザーの脳波を計測し、心理状態をリアルタイムでモニタリングすることで、仕事中のモチベーションや集中度を把握することが可能です。リコーの目指す「はたらく歓び」の実現をサポートするため、このデバイスとゲーミフィケーションを組み合わせ、業務の効率化だけでなく、従業員の創造力を引き出し、自己実現の実感を高めることが期待されています。 参考:リコーとVIE STYLE、ブレインテックを活用した仕事への内発的動機向上に関する共同研究を開始 事例 3 :国立がん研究センター東病院 国立がん研究センター東病院と共同で、内視鏡処置中における患者の鎮静深度推定に関する研究を実施し、日本臨床麻酔学会第42回大会にて成果を発表しました。この研究ではイヤホン型脳波計を使用し、患者の脳波をリアルタイムでモニタリングすることで、鎮静深度を高精度に推定する方法を検証しています。 内視鏡処置を受ける患者の脳波を記録し、鎮静深度指標(RASS)および使用薬剤の情報を同時に取得できるシステムを開発しました。このデータをもとに機械学習モデルを構築した結果、中等度以上の鎮静状態を81.68%の精度で分類できることが確認されました。本技術により、内視鏡処置中の鎮静管理がより簡便かつ正確に行えるようになり、患者と医療従事者双方の安全性向上と負担軽減が期待されます。 参考:国立がん研究センター東病院とVIE STYLE、ウェアラブル外耳道脳波計を用いた内視鏡処置における鎮静深度推定法に関する研究成果を発表 ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードする ビジネスでの活用も期待される脳波測定 脳波測定技術は、医療、スポーツ、エンターテインメント、ヘルスケア管理など多岐にわたる分野で活用されています。脳波測定により従業員のストレス管理や集中力向上に役立て、消費者向け製品開発でもパーソナライズされたユーザー体験を提供することに取り組む企業も増えてきています。 多様なビジネス分野で新たな価値を創出し続けている脳波測定技術は、今後もその応用範囲はさらに広がっていくでしょう。

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