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脳波

ワーキングメモリって何?鍛え方・効果・日常での活用法を初心者向けに解説

仕事中に情報を整理できなかったり、勉強してもすぐに内容を忘れてしまったり──そんな日常の“うまくいかない”背景には、脳の働きの一つ「ワーキングメモリ」が関係しているかもしれません。ワーキングメモリは、情報を一時的に記憶しながら処理する力で、集中力や判断力、学習効率に大きな影響を与えます。 この記事では、ワーキングメモリの基本から、科学的に効果があるトレーニング法、日常で活かすための工夫、そして脳の状態を「見える化」する最新の方法までをわかりやすく解説します。 ワーキングメモリとは?脳の作業台を鍛えて思考力アップ ワーキングメモリ(作業記憶)とは、頭の中で「覚える」と「考える」を同時に行う能力のことです。たとえば、人の話を聞きながら要点を整理してメモを取ったり、英語のリスニング中に内容を保持しつつ、質問に答える準備をしたりする時に使われています。 このように、情報を一時的に覚えておきながら、必要な処理を行う働きがワーキングメモリの本質です。この能力は知能や学力、集中力とも深く関係しており、脳の「作業台」や「メモ帳」にたとえられることもあります。 ここでは、ワーキングメモリの基本的な仕組みや、短期記憶との違い、そして生活における重要性についてわかりやすく解説します。 ワーキングメモリが果たす3つの重要な役割 ワーキングメモリには、聞いたことや見たことをしばらく頭の中にとどめておく力があります。たとえば、文章を読んでいるとき、前の文をすぐに忘れてしまっては内容がつながりません。ワーキングメモリがあるからこそ、少し前に読んだ内容を覚えておきながら、次の文を読み進めて意味を理解することができるのです。 さらに、この情報をただ覚えるだけでなく、頭の中で順序を入れ替えたり、計算したりといった操作や処理を同時に行うことも、ワーキングメモリの重要な機能です。暗算や、複数の予定を整理して段取りを組むといった日常の行動にも関わっています。 また、ワーキングメモリの働きは、実行機能という「脳の司令塔機能」と深く連携しており、「集中したいことに意識を向ける力(注意制御)」もその一つです。たとえば、勉強しているときに外から車の音が聞こえても、それを気にせずに目の前の問題に集中できるのは、実行機能に含まれる必要な情報に意識を向ける力や、関係ない情報を無視する力が働いているからです。 このように、ワーキングメモリは「覚える力」だけでなく、「考える力」や「集中する力」にも関わっていて、こうした複数の働きが組み合わさることで、私たちは複雑な作業や会話、判断をスムーズに行うことができるのです。 短期記憶との違いとは? 短期記憶とワーキングメモリは、どちらも「情報を短時間覚えておく」働きを持っていますが、その役割には明確な違いがあります。 短期記憶は、聞いたことや見たことなどの情報を、比較的シンプルな形で短時間だけ保持する機能です。たとえば、友達から聞いた電話番号を、スマートフォンに入力するまでの数秒間、頭の中で反復して覚えているような場面がこれにあたります。 一方でワーキングメモリは、情報を保持しつつ、その内容を頭の中で操作したり、考えたり、判断したりする機能です。たとえば、「3+5−2=?」のような計算を暗算で行うとき、まず「3+5」で「8」と出し、その後「−2」をして「6」という答えを導き出します。このとき、途中の計算結果を一時的に記憶しつつ、次のステップを考える必要があります。こうした「覚える」と「考える」を同時にこなす力こそが、ワーキングメモリの本質です。 つまり、短期記憶は「一時的なメモ」、ワーキングメモリは「そのメモを見ながら作業する能力」だと言い換えると、違いがよりイメージしやすくなります。 生活・学習・仕事におけるワーキングメモリの重要性 ワーキングメモリは、学習や仕事のパフォーマンスに直結する重要な能力です。子どもの読み書きや計算、理解力にも大きく関係しており、教育現場でも注目されています。 また、大人にとっても、会議中の情報整理、段取りの把握、複数のタスクをこなす場面などでワーキングメモリが活用されます。 さらに、高齢者にとっては、認知機能の維持や認知症予防の観点からもワーキングメモリの維持・向上が重要です。 鍛えると何が変わる?ワーキングメモリの向上効果 近年の研究により、ワーキングメモリは意識的なトレーニングによって向上できることがわかってきました。かつては「記憶力は生まれつきの能力」と考えられていましたが、今では繰り返しの訓練によって強化が可能な「認知機能のひとつ」とされています。 ワーキングメモリを鍛えることで、脳の情報処理能力が高まり、日常生活のさまざまな場面でメリットが生まれます。集中力の向上や学習効率の改善、仕事の生産性アップ、さらには加齢による認知機能の低下予防にもつながります。 ここでは、ワーキングメモリを鍛えることによって得られる具体的な効果を、年代や目的ごとに詳しく紹介します。 集中力の向上 ワーキングメモリが強くなると、注意のコントロールがしやすくなり、必要な情報に集中し続ける力が高まります。たとえば、勉強中に周囲の雑音が気にならなくなったり、スマートフォンの通知を無視して作業に没頭できるようになったりと、「集中が切れにくくなる」という変化が見られます。 これは、頭の中で重要な情報を整理しながら、不必要な刺激を抑える能力が高まるためです。 学習効率アップ 子どもや学生にとって、ワーキングメモリは「覚える」「理解する」「応用する」という一連の学習プロセスを支える中核的な力です。たとえば、文章題を読むときに前の文を覚えておく力、複数の条件を同時に処理して答えを導く力など、教科学習のあらゆる場面で必要とされます。 ワーキングメモリが鍛えられることで、学習内容の理解がスムーズになり、忘れにくくなるため、学力全体の底上げにつながります。 仕事の生産性アップ ビジネスシーンでは、複数の情報を同時に扱いながら正確に判断し、効率よく行動する力が求められます。ワーキングメモリが強化されると、会議での内容を記憶しながら発言を整理したり、複数の案件の進行状況を把握しつつ優先順位を決めたりといった高度な思考がスムーズになります。 また、注意力や切り替え力も向上するため、ミスの削減や業務効率の改善にもつながります。 高齢者の認知機能維持 年齢を重ねると、ワーキングメモリの機能は自然と低下していきます。これが進むと、「話の流れがつかみにくい」「忘れ物が増える」「段取りが混乱する」といった変化が日常生活に表れやすくなります。 定期的にワーキングメモリを鍛えることで、記憶や注意の力を保ち、認知症の予防や進行の遅延につながるとする研究報告もあります。認知機能の維持は、高齢者が自立した生活を続けるために欠かせない要素です。 参考:Nordnes, P. R., Edwin, T. H., Flak, M. M., Løhaugen, G. C. C., Skranes, J., Chang, L., Hol, H. R., Ulstein, I., & Hernes, S. S. (2025). The effect of working memory training on patient and informant reported executive function in mild cognitive impairment: an interventional study. BMC Neurology, 25(1), 404.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41029506/ 科学的に効果がある!ワーキングメモリの鍛え方7選 ワーキングメモリは先天的な能力だけでなく、日常的なトレーニングによって高めることができるとされています。実際、認知科学や教育心理学の分野では、さまざまな研究を通じてワーキングメモリの向上に効果がある方法が報告されています。 ここでは、その中でも科学的根拠が比較的多く、かつ実生活で実践しやすい方法を7つ紹介します。 1. 数字の逆唱(ワーキングメモリの基本訓練) 数字の逆唱とは、聞いた数字の列を逆順に言い直すトレーニングです。たとえば「7・2・9」と聞いて、「9・2・7」と答えるような形です。聞いた数字を頭の中に覚えておきながら、それを順番を逆にして言い直すという作業は、「覚える」と「並べ替える」の2つのことを同時に行う必要があります。このように、記憶した情報をただそのまま出すのではなく、頭の中で並び替えたり処理したりする力が、ワーキングメモリの重要な働きなのです。 このトレーニングは、実際に記憶力や思考力を測る心理検査でも取り入れられている方法で、専門家の間でも信頼性のある訓練として知られています。最初は3桁から始め、徐々に桁数を増やしていくと効果的です。 2. デュアルタスクトレーニング デュアルタスクとは、2つの作業を同時に行うトレーニングで、注意力や処理速度、作業記憶の統合力を高める効果があります。たとえば、「歩きながら計算する」「音読しながら手を動かす」といった形式が一般的です。 このようなタスクでは、頭の中で複数の情報を同時に管理し、切り替えながら処理する力が求められます。デュアルタスクは、まさにこの力を鍛えるのに効果的な方法です。実際、高齢者の転倒予防や認知機能トレーニングの一環としても利用されています。 3. マインドフルネス瞑想 マインドフルネスは、「今ここ」に意図的かつ判断を加えずに注意を向ける訓練法で、ストレスの軽減や集中力の向上に効果があることが知られています。さらに、マインドフルネス介入がワーキングメモリのパフォーマンスを改善することを示す研究も報告されています。 具体的には、静かな場所で呼吸や身体感覚に意識を集中し、雑念が浮かんだらそれに気づいて再び注意を戻すという練習を繰り返します。この実践を通じて、注意の制御と持続といった実行機能が鍛えられます。 参考:Moradi, A., Ghorbani, M., Pouladi, F., Caldwell, B., & Bailey, N. W. (2025). The effects of mindfulness on working memory: a systematic review and meta-analysis. bioRxiv. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2025.03.21.644687v1.full 4. 脳トレゲーム・アプリ ワーキングメモリを専門的に鍛えることを目的としたトレーニング用アプリやソフトウェアも存在します。なかでも「Cogmed(コグメッド)」は、スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究に基づいて開発されたプログラムで、一定期間の使用でワーキングメモリの機能改善がみられたという報告があります。 数字記憶や空間記憶、反応制御など、ワーキングメモリのさまざまな要素にアプローチできるため、特に子どもや発達特性のある人、高齢者への活用も進められています。ただし、継続と負荷調整が重要です。 参考:Cogmed公式HP:https://www.workingmemory.training/ 5. 読書・音読による反復記憶 文章を読む・音読する行為は、目や耳から入る情報を処理しつつ、内容を理解して保持するという複合的な認知活動です。特に音読は、記憶・言語処理・注意の3つを同時に使うため、ワーキングメモリのトレーニングに効果的とされています。 難しすぎる内容ではなく、自分のレベルに合った文章を毎日少しずつ読み上げる習慣を持つだけでも、認知の持続力と理解力が高まるという実感が得られることが多いです。 6. 運動(有酸素運動による脳活性) ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、脳の血流を改善し、前頭前野の働きを活性化することが知られています。前頭前野はワーキングメモリの中心的な役割を担っている部位であるため、運動習慣がワーキングメモリにも良い影響を与えると考えられています。 実際に、多くの研究をまとめた分析(レビュー研究)でも、運動を取り入れることで、ワーキングメモリを含む「実行機能」と呼ばれる脳の働きが明らかに改善されることが報告されています。なかでも、「ややきつい」と感じる程度の運動を週に3回ほど、数ヶ月続けると、記憶力や集中力の向上につながる傾向があるとされています。 参考:Singh, B., Bennett, H., Miatke, A., Dumuid, D., Curtis, R., Ferguson, T., Brinsley, J., Szeto, K., Petersen, J. M., Gough, C., Eglitis, E., Simpson, C. E., Ekegren, C. L., Smith, A. E., Erickson, K. I., & Maher, C. (2025). Effectiveness of exercise for improving cognition, memory and executive function: a systematic umbrella review and meta-meta-analysis. British Journal of Sports Medicine, 59(1), 40–50. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40049759/ 7. 日常生活での工夫 日常の中でも、ワーキングメモリを意識的に使う工夫を取り入れることでトレーニング効果が期待できます。たとえば、すぐにメモを取るのではなく、あえて頭の中で覚えておくようにしたり、買い物リストを記憶して出かけたりといった行動です。 また、料理の手順を見ずに思い出しながら進める、予定を口頭だけで確認して管理してみるなど、あえて記憶と処理を同時に行う場面をつくることがワーキングメモリの自然なトレーニングになります。 これらの方法は、継続的に取り組むことで少しずつ効果が現れるものです。短期間で劇的な変化を求めるのではなく、自分に合った方法を無理なく取り入れ、習慣化することが、ワーキングメモリ向上への近道といえるでしょう。 トレーニング効果を「見える化」する方法 ワーキングメモリのトレーニングは、継続することで効果が現れますが、「本当に鍛えられているのか?」と不安になることもあるかもしれません。そんな時に役立つのが、自分の変化を見える形で確認できる方法です。 ここでは、日常的に取り組めるチェック方法から、専門的な測定手段まで、効果を可視化する3つの方法をご紹介します。 自己チェックリストで日常の変化に気づく まずは、日常生活の中で起こる集中力・記憶力・段取り力の変化に注目しましょう。 「人の話を最後まで聞けるようになった」「買い物中にメモを見なくても品物を覚えられた」など、具体的な行動の変化を週単位で記録することで、少しずつ伸びている実感を得ることができます。 自作のメモやアプリで記録すると、モチベーション維持にもつながります。 認知テストで客観的に測定する(n-backなど) より客観的に測りたい場合は、ワーキングメモリの負荷を段階的に変えられる認知課題を活用するのがおすすめです。代表的なものに「n-backテスト」があります。 これは、数列や図形の並びを見て、何手前と同じだったかを答える課題で、記憶と操作を同時に求められるため、トレーニング効果の確認に適しています。オンラインで無料で試せるツールもあります。 脳波計で脳の状態を見える化 より専門的なアプローチとしては、脳波を測定して集中状態や認知負荷を数値で可視化する方法があります。VIEの脳波計は、脳の活動をリアルタイムで測定することが可能で、たとえばワーキングメモリのトレーニング中に、どのくらい集中できているかを画面上に表示することも可能です。 自分の成長をデータで確認できることで、継続のモチベーションにもつながり、トレーニングの質も高まります。 VIEの脳波計で実践的に脳を鍛える 脳波を活用した研究や教育現場での介入に、VIEのEEGヘッドフォンは革新的な選択肢となります。高度な脳波センサーを内蔵したオーディオデバイスとして、リアルタイムで集中・リラックス・認知負荷といった状態を非侵襲かつ高精度に可視化することが可能です。 特許取得済みのセンシング技術と、研究・開発向けのSDK/データ出力機能を備えており、神経科学・心理学・教育など多様な分野での応用が期待できます。 VIE製品の特徴と仕組み(集中状態を測定) VIEのEEGヘッドフォンは、装着するだけで脳波を自然な状態で記録できるウェアラブル型の計測デバイスです。市販の脳波計と異なり、音楽再生機能と脳波計測が統合されており、自然な生活環境下で脳の状態を記録・解析できます。 集中度や覚醒度、ストレスレベルといった脳の状態を定量的に評価するためのインターフェースも、SDKを活用して自由に構築が可能です。使用目的に応じた計測・可視化ツールの設計が行えます。 詳細はこちら:VIE EEG Headphone公式HP ワーキングメモリを鍛えて人生を豊かに(まとめ) ワーキングメモリは、私たちの「覚える」「考える」「集中する」といった日常的な認知活動を支える大切な力です。年齢や職業にかかわらず、この能力を鍛えることで、学習効率や仕事のパフォーマンスが上がり、人とのコミュニケーションも円滑になります。 さらに、日常のちょっとした工夫や習慣の積み重ねで、ワーキングメモリは誰でも少しずつ向上させることができます。脳の働きを意識して鍛えることは、自分らしい生き方や、将来の健康にもつながる第一歩です。 今日からできる小さな取り組みで、より豊かで快適な毎日を目指してみませんか?

0.2秒の差が事故を左右する──ブレーキランプと脳の反応

皆さんは車間距離を十分に取って運転しているでしょうか?前の車のブレーキランプが光ったとき、とっさにブレーキを踏めるかどうか――その僅かなタイミングの差が追突事故を招くことがあります。 実は0.2秒程度の反応時間の違いが、高速道路では数メートルの制動距離差となり、事故を防げるかどうかを左右すると言われます。では、前の車のブレーキランプを目にしたとき、私たちの脳はどんな反応を示し、どうすればより素早くブレーキを踏めるのでしょうか? 最新の研究では、その問いに脳波(EEG)で迫りました。ブレーキランプを見たとき脳内で何が起こっているのかを直接測定することで、より安全なブレーキランプ設計につなげようという試みです。「脳科学×交通安全」というユニークなアプローチから、思わず「なるほど!」となる新事実が明らかになりました。 ブレーキランプを脳はいつ認識するのか? 自動車の追突事故原因の多くは、前車の減速に気付くのが遅れることにあります。従来、こうしたブレーキ反応時間 (Brake Reaction Time, BRT)は、ブレーキランプが点灯してからドライバーがブレーキペダルを踏むまでの時間として測られてきました。 しかし、人間の反応速度には、多くの要因が影響します。ドライバーの年齢や運転経験、集中力だけでなく、足の位置や靴の重さといった細かな条件まで差を生みます。さらに、ブレーキペダルを実際に踏む動作にも時間がかかるため、ブレーキランプに「気付く」までの時間と「足を動かす」までの時間が混ざった形で測定されてしまうのです。 そこで研究者たちは、脳波を活用し、ブレーキランプを『あ、光った!』と脳が認識した瞬間をとらえるアプローチに挑戦しました。脳波は脳の神経活動によって生じる微弱な電気信号で、刺激に対する脳の反応をミリ秒精度で捉えることができます。 P3成分で分かる脳の認知タイミング 特に注目されるのが『P3成分』と呼ばれる脳波の特徴です。これは、人が「重要だ」と感じる出来事を認識した直後、約0.3秒後に頭の中に現れる電気的なピークで、認知のタイミングを示すサインとして知られています。 たとえば、突然の音や光に対して「ハッ」と気付いた瞬間、頭の中ではP3という電位のピークが生じるのです。このP3は、単なる反射ではなく「気付いてから動くまで」の橋渡しをする過程を映し出します。言い換えれば、ブレーキランプを『あ、止まらなきゃ』と脳が認識したタイミングを教えてくれる指標なのです。 研究チームは、ブレーキランプが点灯してから脳がそれを認識するまでの時間を「認知反応時間」と定義し、この指標を脳波P3を使って測定しました。こうすることで、ペダルを踏む動作に要する時間を含めず、純粋に脳が気付く速さだけを比較できるのです。 過去の調査では、電球式のブレーキランプよりLEDランプの方がドライバーのブレーキ反応が平均0.17秒ほど速いことが報告されていました。しかし、それらは主にペダル操作の時間を測ったものです。今回の研究では脳の反応そのものに着目することで、ブレーキランプ設計が人間の認知に与える影響をダイレクトに評価しようとしました。 実験方法:ブレーキランプとシミュレーターを使った脳波計測 この実験では、実際のブレーキランプ部品を使い、できるだけ現実に近い状況でデータが集められました。まず様々な車種のブレーキランプ10種類を用意し(うち2種類は電球タイプ、8種類はLEDタイプ)、室内に再現した運転環境で被験者に運転してもらいます。 被験者は運転席に相当する椅子に座り、前方スクリーンには高速道路を走行する映像が映し出されます。足元にはアクセルとブレーキのペダルを設置しました。被験者は映像に合わせてアクセルを踏み続け、前方に設置された試験用のブレーキランプが光ったら、アクセルから足を離してブレーキを踏むよう指示されました。 しかし、被験者がいつランプが点くかを予測して身構えていては、現実の「不意のブレーキ」に対する反応とは異なってしまいます。そこで研究チームは、ランプをランダムなタイミングで点灯させる一方で、フェイントとしてランプ点灯とは関係のない黄色いリング状のライトも点滅させる工夫を取り入れました。 被験者にとっては、いつ本当のブレーキランプが光るかわからない状態にすることで、「注意はしているが不意に現れるブレーキ」に近い状況を再現したのです。この間、被験者の頭には8チャンネルの脳波計が装着されており、ブレーキランプ点灯の瞬間をマーカーとして脳波データが記録されました。 そして、測定した脳波データからP3成分を解析することで、認知反応時間を割り出しました。P3は頭頂部で最も大きく現れるため、解析には頭頂部に配置したPz電極の信号が用いられています。 具体的には、各試行(ランプ点灯ごと)の脳波を重ね合わせて平均化し、刺激から数百ミリ秒後に現れる陽性波(P3)のピーク時間を検出しました。このピークのタイミングこそが、脳がブレーキランプを認識した瞬間を示しているのです。 光の違いが脳を動かす:LED vs 電球 こうして得られた脳の認知反応時間には、興味深い傾向が表れました。最大のポイントは、電球タイプとLEDタイプで明確な差が見られたことです。 脳波P3の潜時(=認知までの時間)の平均を比べると、どの被験者でも電球式ランプはLED式より遅いことが統計的にも示されました。中でも最も遅かったのはFord車の電球式ランプで、最も速かったHonda車のLEDランプとは約0.13秒の差がありました。 同じ車種で電球とLEDを比べても、たとえばフォード・フォーカスの電球ランプは同型のLEDランプより平均0.17秒遅れて脳が反応しています。脳波の解析によって、LEDランプの方が電球式よりも素早く脳に認識されることが裏付けられたのです。 図1:脳波P3潜時の平均値(±標準偏差)による各ブレーキランプの比較(橙色は電球式ランプ2種、青色はLEDランプ8種)。電球式は全ての被験者でLED式より認知が遅く、特にFord車電球ランプ(左端)は最も遅い認知時間となった。一方、LED同士ではランプ形状の違いによる差は小さい。実験では被験者22名のデータを解析し、電球 vs LEDの差は統計的にも有意と報告されている。 なぜLEDは電球より早く脳に届くのか LEDが優れている理由のひとつは、光源そのものの性能差にあります。白熱電球の点灯には、電球の種類やフィラメントの構造によって数ミリ秒から数十ミリ秒程度の遅延が生じます。これに対し、LEDは瞬時に点灯するため、この遅延がほとんどありません。LEDは立ち上がりの速さにおいて白熱電球よりも優れているという点は事実です。 要するに「光り始めが遅い・ボンヤリ光る」のが電球、「パッと光ってハッキリ見える」のがLEDという違いがあるわけです。そのため視覚的な刺激強度の点でLEDランプは有利であり、結果として脳が気付くまでの時間が短縮されると考えられます。 実験では、LED同士でも形状や明るさの違いによるP3潜時の差が一部見られましたが、残念ながら統計的に有意とは言えませんでした。研究チームによると、被験者がブレーキを踏む足を動かした際のノイズ(筋電や体動によるアーティファクト)が脳波に混入し、微妙な差の検出を難しくした可能性があるといいます。 しかし、電球 vs LEDという大分類では明確な差が出たことで、車両の安全性を向上させる上で、LEDランプの採用が有効な選択肢であることを裏付けています。事実、近年の車はほぼ全てブレーキランプがLED化されつつありますが、もし古い電球タイプを使い続けている車があれば、安全のためにも早めに交換した方が良いかもしれませんね。 運転熟練度と脳の反応、その関係とは 脳波データをさらに分析すると、ドライバーの経験や熟練度による違いも一部で見えてきました。被験者は運転経験の豊富なグループ(平均13年)と初心者グループ(平均4年)に分けられていましたが、LEDランプに対するP3潜時は初心者の方がやや遅い傾向があったのです。 統計的にも、経験者の方がわずかに速いという結果が得られました。有意水準5%でかろうじて差が確認され、両グループ内で遅めの反応を示した人たちに注目すると、経験者では約0.50秒、初心者では約0.55秒という差がありました。 一方で、電球ランプでは運転経験による差はほとんど見られませんでした。著者らは「電球は誰にとっても反応が遅いため、経験の影響が表れにくい。しかしLEDなら、そのわずかな差が現れるのだろう」と推測しています。経験を積んだドライバーほど、不意のブレーキランプにも素早く気付ける可能性が示された点は興味深い発見です。 脳波は運転の未来をどう変えるのか? この研究は、ブレーキランプ設計と脳の認知メカニズムを結びつけた先駆的な試みですが、今後の展開次第では様々な分野への応用が考えられます。 たとえば車両設計だけでなく、ドライバー教育や運転支援システムへの応用も考えられます。脳波を活用すれば、ドライバーが重要な信号を見落としていないか、その注意喚起がどれほど効果的かを客観的に評価できるのです。 また、ブレーキ以外の警報(車間アラートや歩行者検知アラームなど)についても、音や光のデザインを脳反応の観点から最適化できるでしょう。企業にとっては「人間の脳に響くUI/UX」を開発するヒントになるかもしれません。 さらに研究チームは、今後実際の道路環境で脳波計測を行い、ブレーキランプ認知の脳内プロセスを詳細に調べたいと述べています。 今回のようなシミュレーション実験では、被験者も「失敗しても事故にはならない」と分かっているため若干気が緩む可能性があります。リアルな運転状況であれば、より慎重になる分だけ、脳の反応も変わるかもしれません。 そのような生の脳データを集めれば、ドライバーの注意散漫やヒヤリハットの兆候を脳波から検知してアラートを出す、といった未来のニューロテック安全システムも夢ではありません。 今回紹介した論文📖 Ramaswamy Palaniappan, Surej Mouli, Howard Bowman, Ian McLoughlin (2022). “Investigating the Cognitive Response of Brake Lights in Initiating Braking Action Using EEG.” IEEE Transactions on Intelligent Transportation Systems, 23(8), 13878-13883research.aston.ac.ukresearch.aston.ac.uk.(オープンアクセス)

脳活動の共通パターンを探る──最新研究が見せた幾何学的アプローチ

「脳はどんな風に動いているのか」という問いに対して、これまで私たちは波形や数値で説明してきました。脳波計で測定すれば、ゆらめく線がモニターに映し出され、それをアルファ波やベータ波といったリズムで分類する方法が一般的でした。 しかし2024年9月に発表された研究が示したのは、もっと直感的で視覚的な答えです。脳の活動を多次元空間にマッピングすると、そこには共通して現れる基本の「型」が浮かび上がってきました。研究者たちはこれを「脳の動きを支える幾何学的な土台」と呼んでいます。 脳の活動を立体的に映し出す「スペクトルアトラクタ」 脳波には、アルファ波やベータ波などの周期的なリズム成分と、特定の周波数を持たない非周期的な背景成分(いわゆる1/fゆらぎ)が含まれています。従来の脳波研究では、これら周波数ごとの強さ(パワー)やリズムの同期性を分析し、脳の状態を探ってきました。 しかし、今回の研究チームは発想を転換し、脳波データの「形そのもの」を追いかけました。具体的には、まず脳波を周波数ごとに分け、それぞれの強さが時間とともにどう変化するかを取り出し、その動きを多次元空間に写し込みました。すると、点が集まって軌跡を描くようにまとまりが現れます。このまとまりは「アトラクタ」と呼ばれ、脳の活動を単なる波形ではなく立体的な形として表すことができるのです。 アトラクタとは、時間が経つにつれてシステムの動きが収束していく軌道のパターンのことを指します。たとえば振り子は最後に止まって一点に落ち着きますし、気象のような複雑な現象では蝶が羽ばたくような軌跡(ローレンツ・アトラクタ)が現れることがあります。では、脳波をアトラクタとして描くと、どのような形になるのでしょうか。図1がその結果です。 図1:EEGスペクトル・アトラクタの例(論文Figure 1より)(A) 若年層(黒)と高齢層(灰色)の平均脳波スペクトル。太い線は背景的な非周期成分を示す。 (B) 各周波数帯の強さ(色付き)と背景成分(緑)。 (C) 周波数ごとの強さの時間変化。 (D) 従来法で再構成した高次元アトラクタ(黒い軌跡)。 (E) 新手法(ETD)で主要成分に投影したアトラクタ。アルファ波や非周期成分はシンプルな軌道を描く一方、デルタ波やガンマ波は複雑でねじれた形になる。 このように脳波信号を「軌道=形」として表現することで、脳の状態を幾何学的に分析できるようになります。研究チームは、各アトラクタの形の複雑さ(次元数)を「幾何学的複雑度」と定義し、さらに異なるアトラクタ同士の形の類似性・予測関係を解析しました。 この解析には、収束的相互マッピングと呼ばれる手法が用いられています。難しい名前の手法ですが、簡単に言えば「ある軌道の動きから別の軌道をどの程度予測できるか」を調べるものです。こうした新しいアプローチによって、脳波の奥には共通する「型」のような動きが潜んでいることが見えてきました。 脳波の土台をつくるアルファ波と1/fゆらぎ 脳波と聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「アルファ波」ではないでしょうか。リラックス時に優勢になる8〜12Hz程度の波で、「閉眼時に現れるα波」は昔から知られています。参考:脳波で変わる日常生活!アルファ波(α波)の科学的効果とは 一方で、近年注目されているのが、1/fに近い傾きを持つ非周期的な背景成分です。このゆらぎは、脳の興奮度や覚醒度といった状態と関連している可能性が指摘されており、新たな脳活動の指標として研究が進められています。 今回の研究では、この非周期成分とアルファ波が、脳波ダイナミクスを支える中心的な役割を担っていることが明らかになりました。 解析の結果、アルファ波と非周期的なゆらぎから描かれるアトラクタは、とてもシンプルな形をしていました。さらに、その基本的な形は他のすべての周波数帯にも共通して見られたのです。つまり、複雑に見える脳波の動きの奥には、アルファ波と非周期成分がつくる共通の「型」があり、それが全体を支えていることが分かってきました。 研究チームは、アルファ波と非周期成分を脳活動の中心的なダイナミクスと位置づけました。これらは常に揺らぎながら全体をまとめる土台のような存在で、その上に他の複雑な活動が積み重なっていくと考えられます。例えるなら、オーケストラで常に響いている低音のベースのようなもので、派手に主張するわけではないけれど、全体の調和とリズムを支えている存在です。 興味深いことに、従来の線形解析では周波数帯同士の相関はごく一部(例:アルファとベータ間)でしか強くありませんでした。しかしこの幾何学的アプローチでは、アルファ波と非周期成分が全ての周波数帯と強い結びつきを示すことが分かりました。 脳内の信号同士がどのように影響し合っているかを見る新たな指標として、この「幾何学的クロスパラメータ結合(異なる周波数帯同士の結合)」は非常に有望と言えるでしょう。 加齢がもたらす脳のシンプル化 では、この幾何学的コアは年齢によって変化するのでしょうか。研究では、20代前後の若年成人138名と、60代前後の高齢成人63名を対象に、安静時の脳波データが比較されました。 その結果、高齢者では若年者に比べてアトラクタの幾何学的複雑度が全体的に低下していることが明らかになりました。つまり、脳波の軌跡を表現するために必要な次元の数が減り、全体として脳の動きがよりシンプルになる傾向が見られたのです。 一方で、異なる周波数帯同士の結びつき(クロスパラメータ結合)は、高齢者の方が強まる傾向にあることも分かりました。その背景には、加齢に伴い、脳の機能的な専門性(分化)が低下することが示唆されています。 今回の研究で観察された、ガンマ波の活動パターンが他の周波数帯と似通ってくる傾向は、この加齢に伴う脳の機能変化の一端を捉えているのかもしれません。 この発見は、脳の加齢に伴う機能変化を新たな視点で捉えるものです。高齢になると情報処理が遅くなったり柔軟性が低下したりすると言われますが、その一因として脳のダイナミクスの多様性(複雑さ)が減少し、柔軟性が失われることが示唆されています。 一方で、アルファ波や非周期成分といったコアの影響力が相対的に強まることは、脳が安定性を保とうとする一種の適応かもしれません。研究者たちは、この結果を「動的コア仮説」と呼ばれる考え方と関連づけています。これは、脳には統合と分化を同時に支える中心的な仕組みがあるという理論です。 今回の研究は、この理論を踏まえ、脳が発達や加齢に応じて、大きな枠組みから細かな構造へと形作られていく過程を説明する新しいモデルとして位置づけられました。 脳波の軌跡から見える意識のパターン では、この幾何学的コアと私たちの意識状態や思考の内容には、どのような関係があるのでしょうか。脳波の複雑さは、昔から意識の深さや種類と関わっていると考えられてきました。たとえば、覚醒しているときと眠っているときでは、脳信号の複雑さが大きく異なります。今回の研究でも、このつながりを裏付けるような興味深い結果が示されています。 被験者は別日に実施したfMRIセッションで、「ニューヨーク認知質問票」というアンケートに回答しており、自分の心が安静時にどんな内容(過去や未来のこと、ポジティブなこと・ネガティブなことなど)や形式(映像的か言語的か、曖昧かはっきりしているか)をさまよっているかを自己評価しました。 そのデータとEEGアトラクタの複雑度を照らし合わせたところ、ある周波数帯の複雑さだけが特定の思考内容と有意に関連していたのです。それはガンマ帯のアトラクタの複雑さで、これが高い人ほど「ネガティブな反すう的思考」傾向が強いことが示されました。 ガンマ波は集中や認知負荷と関係が深いとされますが、確かに悩み事などで頭がぐるぐるしているとき、脳は高速で複雑な活動をしているのかもしれません。逆に、マインドフルネス瞑想などで心が静まっている状態では、ガンマ活動が抑えられ、より低周波側が優勢になるという報告もあり、この結果は直感的にも頷けるものになっています。 他にも興味深い傾向として、高齢者では非周期成分アトラクタの複雑さが高い人ほど、ポジティブな内容や映像的な思考をしている傾向が見られました。一方、若年者ではそういった相関は明確でなく、年齢による違いも示唆されています。 これらの結果はまだ探索的な段階ですが、脳波の描く形からその人の内的な思考の傾向が読み取れる可能性を示しており、非常に興味深いポイントです。 まとめ:脳波の形に隠されたメッセージ 今回の研究は、脳波を「形」として読み解く新しい視点を示しました。アルファ波と1/fゆらぎが全体を支えるコアとして働き、加齢によりそのダイナミクスがシンプルになること、さらに脳波の形が思考の内容と結びつく可能性があること。どれも脳の奥深さを改めて感じさせる発見と言えるでしょう。 脳科学の世界ではしばしば、「意識とは脳内の統合と分化の産物だ」と語られますが、本研究はその考えを裏付ける幾何学的な証拠を提示したとも言えます。 もちろん、今回の成果は安静時のデータに基づいたものであり、因果関係や細かな仕組みについては今後の研究に委ねられます。それでも、古くから使われてきた脳波という手法に新しい視点を与え、脳の動きを形として「見る」試みに挑んだこと自体に大きな価値があります。 脳のリズムを単なる波としてではなく、奥に潜む形や構造として捉える発想は、これからの脳科学やニューロテックの可能性を広げていくきっかけになるかもしれません。 この技術は、将来的には意識レベルの評価や神経疾患の診断などに応用できる可能性も秘めており、ニューロテック分野に新たなインスピレーションを与える研究と言えそうです。 今回紹介した論文📖 Parham Pourdavood, Michael Jacob (2024). EEG spectral attractors identify a geometric core of brain dynamics. Patterns, 5(9): 101025. https://www.cell.com/patterns/fulltext/S2666-3899%2824%2900158-2

脳波に出会って見えた未来:研究者・R.I.さんの研究に活かされたインターンでの日々

今回は、慶応義塾大学で「簡易型脳波測定器を用いた意図画像探索」について研究されているR.I.さんにお話を伺いました。インタビューの前半では、R.I.さんの研究に至るまでの背景やこれまでの研究成果などについて詳しくご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。 前半記事 ▶脳波による画像生成:慶應義塾大学・R.I.さんが語る「想起イメージの再現」 今回のインタビューの後半では、R.I.さんのパーソナルストーリーに焦点を当て、大学での生活や現在の趣味、研究活動に関するエピソードなどについて伺いました。 研究者プロフィール 氏名:R.I.所属:慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科研究室:中澤・大越研究室研究分野:EEG、ニューロアダプティブ、画像生成 インターンでの経験が研究方針を決めた 前半の記事で「インターンがきっかけで脳に興味をもった」と述べられていましたが、インターンではどのようなことをしていたのでしょうか? 当初は主に脳科学の研究論文をまとめる業務を担当していました。4年目の現在は、脳波実験環境のプログラミングを始めとした技術的な仕事を任せてもらっています。 普段からプログラミングはされているのですか? はい。普段は、主に研究に利用するモデルの構築と、競技プログラミングへの参加を通してプログラミングには触れています。 業務以外で何かアプリケーションを開発した経験はありますか? 過去にシステム開発の手順を学ぶために、フリーライドシェアの予約を行うアプリケーションを開発しました。他にもエアホッケーゲームなどのちょっとしたアプリケーションの開発は何度か経験しています。 R.I.さんが制作したエアホッケーゲーム 脳波に興味をもつようになった具体的なエピソードはありますか? インターンでは脳科学の知見を用いたコンサルティングも行っています。そこでの活動を通じて脳科学、および脳波計測による実験を通してクライアントの要望を解決する様子を目の当たりにして、その応用可能性と社会貢献性の高さに強く惹かれました。 趣味は読書、科学に留まらない幅広い知的好奇心 研究以外で現在ハマっている趣味はありますか? 読書にハマっています。小学校から高校までオランダで過ごしていたため、文学を多く読む教育を受けていたこともあり、小さい頃から日常的に本を読んでいました。もともとは科学系の本を中心に読んでいたのですが、現在は文学や哲学といった幅広いジャンルの本を読んでいます。 長い間海外で過ごされていたのですね。最近読んだおもしろい本はありますか? 最近読んだおすすめの本は、ミラン・クンデラさんが書かれた「存在の耐えられない軽さ」です。この本では、プラハの春というチェコスロヴァキアで起きた民主化運動の中での人間関係の話が綴られています。 一般的な文学では愛や責任といった人間関係の重さに着目しているものが多いのですが、この本はその逆で、政治体制が変わってしまったことで、自分がそれまでに積み上げてきたものが一瞬で崩れ去ってしまう虚しさや、誠実に生きてこなかったために、人生の中盤でミッドライフ・クライシスを感じて人間関係が崩れてしまうといった、人間という存在の軽さが描かれていて、とても興味深い内容でした。 オランダに住み始めた当初はどのような気持ちで過ごしていたのですか? 初めは言語がわからない中で面識のない外国人に囲まれて過ごしていたため、非常に心細かったです。人間関係を構築することも困難であったため、住み始めてからしばらくはひたすら耐え忍ぶ日々が続き、その間すがる思いで本を読んでいました。 現地での生活に慣れ始めたのは、引っ越してからおよそ2年後でした。拙いながらも自分からコミュニケーションを取れるようになった瞬間から、当初あった不安な思いはなくなりました。それからは、毎日が学びの連続でした。日本と異なる言語や文化に触れた経験は自分の価値観の形成に大きく影響しており、現在の活動や意思決定の根底に深く根付いていると感じています。 海外生活で得た学びが、現在のご自身を形作っているのですね。 データサイエンスで国を代表する人間を目指して 将来の夢や目標はありますか? 大学で学んだことを活かして、データサイエンスの分野で日本を代表するような人間になりたいと考えています。長い間海外で生活してきたことで、世界で活躍することに強い関心をもっているので、自身の専門性を活かしてこの国の技術を底上げするような存在になりたいです。 その夢を達成するために、これからどのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか? データに関する技術、運用、ガバナンス戦略など、あらゆる側面において深い知識を身につけていきたいと考えています。そのためには、キャリアの中で様々な立場を経験しながら、データに対して幅広く向き合っていくことが重要だと思っています。 また、最先端技術の動向を常に把握する必要があるため、将来的には海外での経験を積む機会を持ちたいと考えています。 それでは最後に、これから同じ領域に挑戦してみたい学生や若い研究者に向けて、メッセージをお願いします。 脳波を扱う研究は常にノイズとの闘いであり、非常にチャレンジングな分野だと考えています。それゆえに、まだまだ発展途上の領域でもあります。そんな可能性に満ちた脳科学に興味を抱き、日々研究に取り組んでいます。もしそういった思いをお持ちでしたら、ぜひ挑戦してみてほしいと思います。 NeuroTech Magazineでは、ブレインテック関連の記事を中心にウェルビーイングや若手研究者へのインタビュー記事を投稿しています。 また、インタビューに協力していただける研究者を随時募集しています。応募はこちらから→info@vie.style

脳波による画像生成:慶應義塾大学・R.I.さんが語る「想起イメージの再現」

脳の仕組みを解明し、人類の可能性を広げる研究分野として注目を集める「脳科学」。私たちVIEでは、この魅力的なテーマに挑む若手研究者に焦点を当て、彼らの研究内容や情熱に迫るインタビュー企画を行っています。 本企画は、さまざまな視点から脳科学の最新研究を紹介することで、読者の皆さまに脳の神秘や研究の楽しさをお届けするとともに、新しい視点で脳について考えるきっかけとなることを目指しています。 今回のインタビューでは、慶應義塾大学で「簡易型脳波測定器を用いた意図画像探索」について研究されているR.I.さんにお話を伺いました。インタビューの後半では、R.Iさんのパーソナルストーリーをたっぷりご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。 研究者プロフィール 氏名:R.I.所属:慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科研究室:中澤・大越研究室研究分野:EEG、ニューロアダプティブ、画像生成 脳波から頭で想像した景色を読み解く試み 現在取り組まれている研究について教えてください。 私の研究テーマは、簡易型脳波測定機を用いた意図画像探索です。具体的には、VIEのイヤホン型脳波計を使って、人が頭で思い浮かべた画像(イメージ)を脳波から読み取り、それを認識・再構成する技術の研究に取り組んでいます。 このテーマを選んだきっかけや理由を教えてください。 学部1年生のときに、友人の紹介で参加したインターン先で、偶然脳科学に携わる機会を得たことが脳波に関心を抱いたことがきっかけです。そこで脳波を使った技術の可能性の広さを感じ、自分もその研究に携わりたいと考えるようになりました。 また 加えて、インターン先でVIEのイヤホン型脳波計を使った実験を行っていたため、このような簡易型 的な脳波計が人間の脳活動をどこまで読み解けるのか試してみたいと興味を持つようになり、いう思いから、現在のテーマに取り組むことを決めました。 R.I.さんが研究で使用されている脳波計画像引用元:VIE Zone/Chill - Neuro Earphones どのような実験を通して画像の認識・再構成を行っているのですか? 以前に私が取り組んでいた研究では、まず被験者に対して10秒ほど画像を表示した後に、目を閉じてその画像を思い出すタスクに取り組んでもらい、その際のEEG(脳波)を計測していました。 その脳波データをもとに、機械学習の分類モデルを用いて被験者がどの画像を見ていたのかを識別する研究に取り組んでいました。 現在は、ある刺激に反応して約300ミリ秒後に発生する「P300」と呼ばれる脳波と、生成される画像との関連性を最適化することで、被験者が思い浮かべたイメージを画像として再構成する研究に取り組んでいます。 実験の中で注力している部分について教えてください。 実験では、特にEEGの特徴量を抽出する前処理の工程に重きを置いています。具体的には、EEGの記録を7.5ミリ秒ごとの小さな時間ウィンドウに区切り、各ウィンドウごとに標準偏差を始めとする統計的な特徴量を計算して、分類モデルへの入力データとして使用しています。 このような前処理を施すことで、データの細かな時間的変化や重要な特徴量を捉えやすくなるという利点があります。詳細な特徴を捉えることで、分類の精度を高めることができるのです。 実験フローの概要図 簡易脳波計でどこまで脳活動を読み解けるのか 研究プロセスを進める上で、困難に感じたことはありますか? 現在直面している課題は、簡易型脳波計を使用しているため、空間分解能(spatial resolution)が限定的である点です。そのため、脳内のどの部位からの活動なのかを高い精度で識別することが難しく、脳波の詳細な情報を十分に取得できないことがあります。また、EEGは脳の微弱な電気活動であるため、ノイズの影響を考慮しなければならない点も困難だと感じています。 文字に囚われない自由なコミュニケーションを目指して ご自身の研究成果は社会にどのような影響を与えると考えますか? 簡易型脳波計測装置でも画像認識が可能になれば、肢体不自由な方の支援や、デジタル空間における手軽なコミュニケーション手段の一つとして、広く普及する可能性があると考えています。 たとえば、現在は体に麻痺症状を抱えていて、発話が困難な人のコミュニケーション手段としては眼球運動による文字入力(スペリング)が主流となっています。しかし、伝達媒体が文字である特性上、言語化できないものは表現できないという課題があります。それに対して、私が目指しているものは脳活動に対応する画像を探索して最適化することです。この研究が実現すれば、肢体不自由な方のより自由なコミュニケーションに貢献できるのではないかと考えています。 脳活動から画像を生成できれば、より自由で快適な意思伝達が実現できそうですね。それでは、ご自身の研究が社会に影響を与えるために必要だと考えていることはありますか? 研究を進める際に、脳波計測・特徴量抽出・分類・画像再構成といった各プロセスが異なるツールや環境に分散してしまっているので、これら一連の処理を一貫して行えるEnd-to-Endのアプリケーションがあれば、作業効率が大幅に向上し、再現性の高い研究がしやすくなると感じています。 そのようなパッケージ化された環境が整えば、よりこの分野の研究も広がるのではないかと考えています。 技術を社会に実装するためには研究内容そのものだけでなく、環境を整えることも重要なのですね。最後に、今後の研究活動の方針を教えてください。 現段階では画像をイメージする際にP300が生じることの検証まで完了しているため、ここからは実験環境を整備し、実際に多くの人の脳波を計測してモデルを訓練する過程に入ります。これまで取り組んでいた理論の構築や方針の決定といった作業よりも、忍耐力を必要とする段階に突入するため、粘り強く頑張りたいと考えています。 インタビューの後半では、R.I.さんのパーソナルストーリーや現在の研究に取り組むきっかけとなった出来事について伺いました。特に、現在進路決定に悩んでいる学生さんは必見の内容となっています。ぜひ併せてご覧ください。 後半記事 ▶脳波に出会って見えた未来:研究者・R.I.さんの研究に活かされたインターンでの日々

共通のコミュニティが脳をつなげる?──脳波から紐解く集団意識

スポーツ観戦中、自分と同じチームを応援する相手とプレーの見え方や盛り上がるタイミングがぴったり合って「気が合うな」と感じた経験はありませんか? その「気が合う感覚」は、単なる気のせいではないかもしれません。2025年に発表された最新研究によって、同じ集団に属している人同士では、脳波の活動が同期する可能性が示されたのです。 今回は、『EEG synchronisation reveals the impact of group identity and membership duration on social cognitive bias』という論文をもとに、「集団意識(group identity)」が、私たちの脳と認知にどのように影響するのかを解き明かしていきます。 「同じ集団」の人とは、脳活動も似る? 人は、自分がどの集団に属しているかによって、出来事の受け止め方や感情の動きが変わる傾向があります。これを「社会的アイデンティティ」と呼び、自分が所属する「内集団」には肯定的な感情を抱きやすく、対立する「外集団」に対しては否定的になりがちです。 たとえば、同じプレーでも、自分の応援するチームが得点したときは喜び、ライバルチームなら「運が良かっただけ」と感じるような現象がこれにあたります。 こうした主観の偏り、つまり「認知バイアス」は、近年の神経科学の研究により、感情や報酬の処理に関わる脳活動にも表れることがわかってきました。しかし、これまでの多くの実験は、短く単純な映像や課題を用いたものが中心で、実際のスポーツ観戦のように複雑で変化の多い社会的な状況で、脳がどう反応するかは、十分に解明されていませんでした。 このような背景のもと、今回の研究は「集団意識」や「ファン歴」が、現実に近い状況での脳活動にどう影響するのかを探るために行われました。 実験:脳波から読み取る「ファンの一体感」 野球ゲーム観戦中の脳波をリアルタイムで測定 研究の対象となったのは、阪神タイガースとオリックス・バファローズ、それぞれの熱心なファンたちです。研究チームは、各チームから16名ずつ、合計32名を招き、プロ野球スピリッツ2019というゲームを用いて自動生成された試合映像を視聴してもらいました。実際の試合映像ではない理由は、すでに見たことがある映像に対する既知効果を排除するためであり、ゲーム映像であっても、リアルなグラフィックや実況、歓声などによって、十分に臨場感のある観戦体験が再現されました。 映像は、阪神が勝つ試合、オリックスが勝つ試合、そして引き分けの試合の3パターンが用意されており、それぞれが約26〜33分の長さです。試合の内容は6回表から始まる構成で、その前半の流れは冒頭に30秒間の静止画像で要約されました。参加者は、4メートル先の大型スクリーンを一人ずつ観戦し、その間の脳波を測定しました。 視聴自体は個別に行われましたが、分析では、同じチームを応援する者同士のペア(内集団ペア)と、異なるチームのファンのペア(外集団ペア)を比較し、それぞれの脳波の類似度が検討されました。また、各参加者のファン歴も記録され、そのうち短い方の年数をペアの「所属歴」として設定し、ファン歴の長さが脳活動に与える影響についても分析が行われました。 Fig. 1. 参加者は、没入感のある体験が得られるよう、大型スクリーンで野球の試合映像を観賞しました。この図に示されたスクリーンは、複数の画像を合成したものです。図中では実験室の様子をわかりやすくするために明るい照明が使われていますが、実際の実験中は映像を見やすくするために部屋を暗くして行われました。 脳波の同期を測る2つの指標 本研究では、人と人の脳波がどれほど同じように反応しているかを調べるために、PLV(位相ロッキング値)とr(パワー相関)という2つの指標が使われました。 PLVは、映像や音といった刺激に対して、脳波のタイミング(=位相)がどれだけそろっているかを示すもので、注意や知覚など外部刺激への反応の一致をとらえます。 一方、rは脳波の強さの変化が他の人とどれだけ似ているかを示し、感情の動きや興奮度などの内面の状態の共通性を反映します。 この2つを組み合わせることで、外的な刺激に対する脳の反応と、内的な感情や覚醒の同期の両方をとらえることができ、より立体的に脳のつながりを理解することが可能になります。 Fig. 2. EEG同期指標を算出するためのプロセスを表す。まず、2人の被験者の脳波からバンドパスフィルタを通して特定の周波数の信号(アルファ波、デルタ波、シータ波)を抽出する。抽出した信号から周波数の特徴と、大まかな波形情報を分離して抽出し、被験者同士のそれぞれの信号の同期度をPLVとrで表す。 結果:同じチーム同士の脳波はより深く「共鳴」する 内集団では中心頭頂部におけるアルファ波の位相が同期 脳波の解析によって、同じチームのファン同士では、脳波の一種であるアルファ波(8~13Hz)の位相が高く同期していることが明らかになりました。この結果は、ファン歴の長さとは無関係に確認されました。アルファ波の位相は、注意や知覚の処理に関わるリズムとされており、特に外部刺激に対する初期の視覚処理や空間認識に関係があると言われています。 つまり、この結果から集団への所属歴に関係なく、「自分はこの集団の一員だ」という意識(社会的アイデンティティ)はどこに注目するか、何を見るかといった認知の向け方に影響を与えていると考えられます。 内集団のアルファ波の強さは所属歴の影響を受ける 興味深いことに、内集団では、ファン歴が長いほどアルファ波の強さが同期していることが明らかになりました。 今回の実験で見られたアルファ波の強さは、脳がどれくらい「目を覚ましているか」や「落ち着いているか」といった状態を表していると考えられます。特に、自分の意志で注意を集中させたり、感情に反応したりするときに、アルファ波の出方が変わることが知られています。したがって、この結果は集団への「帰属感」が、場面ごとの興奮状態や感情的な反応の一致に関係していることを示しています。つまり、長く同じチームを応援してきた人同士は、試合のどこで盛り上がるか、どこに注目するかが自然と似てくるのです。 所属歴が長くなるとデルタ波とシータ波の類似度が減少 一方で、アルファ波とは対照的に、より低周波であるデルタ波やシータ波の位相同期は、ファン歴が長くなるほど弱まる傾向が見られました。これらの周波数帯は、P300と呼ばれるより深い注意処理に関わる脳波成分に関連しているとされています。 この結果は、グループの違いにかかわらず、ファン歴が長くなると「注意が向くきっかけ」が人それぞれに多様化することを示唆しています。たとえば、経験豊富な野球ファンは、ホームランのような誰もが注目する場面だけでなく、選手の細かな動きや表情といったより繊細な要素にも目を向けるようになり、その違いがデルタ波やシータ波の位相同期に影響を与えているということが考えられます。 同じチームのファンでも、ライトなファン同士は感情の盛り上がりがそろいやすく、脳波の同期も高くなる一方で、コアなファン同士では、それぞれが独自の視点を持つために脳波の動きが多様化し、同期はやや弱まるという、まさに「人間らしい認知のクセ」が可視化された結果といえます。 所属歴が長くなると視野が広がる? さらに、前頭部のアルファ波の位相同期では、内集団・外集団の区別に関係なく、ファン歴が長い人ほど実況音声などの聴覚情報に注意を向けていた可能性が示唆されました。 脳の前頭部では、「聴覚N1」という聞いた音に対して脳が反応するときに出る信号が現れます。この信号は、アルファ波に近い周波数帯で観測されるため、前頭部のアルファ波の位相同期は、被験者の聴覚刺激に対する反応に関連していると考えられます。 したがって、この結果からファン歴の短い参加者は、主に映像に注意を向けていたと考えられるのに対し、ファン歴が長い参加者は、映像と実況の両方に注意を向けていた可能性があります。 その結果、実況に対する脳の反応がより似通い、聴覚に関係する脳波(前頭部アルファ波)の同期が強くなったと考えられます。 Fig. 5.(a) 散布図は、3つの電極位置(Fz、Cz、Pz)および3つの周波数帯域(デルタ、シータ、アルファ)ごとに整理されています。統計的に有意な効果はアスタリスク(* p < .05)で示されています。(b) アルファ帯域におけるCzおよびPz電極でのPLV(位相ロッキング値)の分布を示しており、ペアの種類(内集団と外集団)の違いが分かりやすくなるように設計されています。赤線と青線は、それぞれin-groupおよびout-groupの中央値を表しています。 Fig. 6. 強さの同期度の結果を表す。散布図は、3つの電極位置(Fz、Cz、Pz)および3つの周波数帯域(デルタ、シータ、アルファ)ごとに整理されています。統計的に有意な効果はアスタリスク(* p < .05)で示されています。"pair cat."および"fan hist."は、それぞれ「ペアの種類(内集団/外集団)」と「ファン歴(fan history)」を表す略語です。 「つながっている」と感じる感覚の正体 この研究は、スポーツ観戦というリアルな状況の中で、私たちが人と人との間に生まれる一体感や共通の関心が、実際に脳波の同期という形で裏づけられることを示しました。同じ出来事を見ていても、人は自分が属している集団や、そこにどれだけの時間関わってきたかによって、脳の処理の仕方そのものが変わってしまうのです。 このような「脳の共鳴」は、スポーツに限らず、日常のさまざまなコミュニケーションや集団行動のなかで起きている可能性があります。今後、社会的アイデンティティや認知バイアスに関する神経科学的な理解を深める上で、大きな手がかりとなる研究だといえるでしょう。 🧠 編集後記|BrainTech Magazineより 自分と同じチームを応援する人と「わかる!」「それな!」と感じる瞬間。その共鳴感覚は、どうやら「脳活動レベル」でも起きていたようです。 ただの気のせいではなく、脳波が共鳴することで「つながっている」と感じる。 この研究は、私たちの「好き」や「所属意識」が、感情だけでなく脳の働きそのものを通して人と人をつなぐという、見えないけれど確かな「共感の回路」を示してくれました。 📝 本記事で紹介した研究論文 Sanada, M., Naruse, Y. EEG synchronisation reveals the impact of group identity and membership duration on social cognitive bias. Sci Rep 15, 23719 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-08191-z

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