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ニューロマーケティングとは?脳科学を活用した新たなマーケティング手法

消費者の心を掴むためには、表面的なデータだけでなく、深層心理を理解することが重要です。ニューロマーケティングは、脳科学を活用し、消費者の無意識の反応を捉えて、より効果的なマーケティング戦略を作り出す手法です。この記事では、ニューロマーケティングの基本概念から具体的な活用方法、さらに大手企業の成功事例までを詳しく解説します。 ニューロマーケティングとは? ニューロマーケティングとは、脳科学の知識を利用してマーケティングを行う手法です。例えば、広告を見る際に脳がどのように反応するかを測定して、広告の効果を高めることができます。 これにより、人々が広告を見たときに感じる興奮や興味などの無意識の反応を理解し、マーケティング戦略を最適化することが可能です。さらに、製品デザインの改善やブランドロイヤルティの強化なども実現できます。 ニューロマーケティングを活用することで、人々の内面的な反応に基づいた意思決定プロセスを深く理解でき、より効果的なマーケティング活動が可能になります。 ニューロマーケティングと従来のマーケティングの違い 従来のマーケティング手法は、アンケートやインタビューといった自己報告に基づくデータ収集が主流でした。これらの方法は、個人の意識的な回答に依存しており、無意識の反応や真の感情を捉えるのが難しいという制約があります。 これに対し、ニューロマーケティングでは、EEG(脳波計測)やfMRI(機能的磁気共鳴画像法)などの先進技術を用いて、人々の無意識の反応を直接測定します。この手法により、消費者の深層心理や感情を正確に捉えることができ、より深いインサイトを得ることが可能です。 その結果、マーケティング戦略の精度が向上し、消費者行動の予測が容易になります。 脳波測定の基本的な知識を得たい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。 https://mag.viestyle.co.jp/eegmeasurement/ ニューロマーケティングを活用するメリット 消費者行動の理解につながる ニューロマーケティングを活用することで、人々の無意識下の反応を捉え、行動や意思決定の背景にある心理をより深く理解することが可能になります。 例えば、広告を見る際にどの部分に目が引かれるか、どの場面で感情が高まるかを測定したり、商品を手に取った時の心拍数や瞳孔の変化を観察したりすることで、消費者がその商品にどれほど興味を持っているかを知ることができます。 特定の広告が若年層の感情反応を強く引き出すことが分かった場合は、その広告を若年層が多く利用するメディアに集中させることで、より効果的なプロモーションが実現できます。 この結果、ターゲティングの精度が上がり、広告やプロモーションの効果がさらに向上します。また、広告予算を無駄なく使え、より高い収益を得ることが可能です。 製品開発の最適化が実現できる 消費者の脳の反応を分析することで、製品デザインや機能の改善点を特定し、より魅力的な製品を開発することが可能になります。また、新製品のコンセプトテスト時には、消費者の反応をリアルタイムで測定し、成功の可能性が高い製品を選定することができます。 従来のフィードバック方法では得られなかった無意識の反応を活用することで、消費者が真に求める製品を見極めることができ、製品の魅力を最大限に引き出すことが可能です。これにより、市場での競争力を高めることができます。 顧客ロイヤルティの向上が見込める ニューロマーケティングを活用することで、例えば顧客がウェブサイトを訪れた際に、その人に合わせたおすすめ商品を表示するなど、よりパーソナライズされたマーケティング戦略が展開可能です。これにより、顧客とのエンゲージメントが強化され、ロイヤルティの向上が期待できます。 また、顧客が競合製品よりも自社製品を選ぶ可能性が高まり、リピーターとなる可能性が増えます。持続的な関係を築くことで、長期的な顧客満足度を高め、安定したビジネス成長に大きく貢献できます。 ニューロマーケティングの応用領域 前述の内容と一部重なりますが、ここからはニューロマーケティングが実際にどのような分野で活用されているのか、そして具体的な施策についてご紹介します。 広告とプロモーション ニューロマーケティングは、広告とプロモーションの分野で広く利用されています。視線追跡(消費者が対象を見る際に視線がどこに集中するかを追跡する技術)や脳波計測技術を活用し、人々が広告にどのように反応するかを詳細に分析します。 こうしたデータに基づいて広告のデザインやメッセージを最適化することで、認知度や反応率の向上につなげることができます。 具体的な施策:視線追跡(Eye Tracking) 消費者が広告を見る際に、視線がどこに集中するかを追跡します。これにより、広告のどの部分が注目され、どの部分が見落とされているかを把握し、デザインや配置を最適化できます。 製品デザインと開発 製品開発にニューロマーケティングを用いることで、消費者の潜在的なニーズや好みを深く理解し、それに基づいた製品設計が実現されます。その結果、製品の市場競争力が高まり、消費者満足度の向上にも寄与することが期待されます。 具体的な施策:ユーザビリティテスト ユーザビリティテストでは、消費者が製品を使用する際の脳波や生理的反応を測定します。例えば、心拍数や皮膚の電気活動を測定して、使用中のストレスレベルや使いやすさを評価します。 これにより、製品の操作性を向上させ、消費者にとって直感的で使いやすいデザインを実現します。 ブランディングとブランドロイヤルティ ニューロマーケティングを活用することで、ブランドのロゴやカラー、メッセージが消費者にどのような印象や影響を与えているかを分析できます。例えば、視線追跡技術を使って、消費者がどの部分に視線を集中させるかを調べたり、脳波計測を用いて、特定の色やデザインに対する感情反応を測定します。 この分析により、ブランドの認知度や好感度を高めるための効果的な戦略を構築することが可能です。 消費者がブランドに対して感じる感情や印象を深く理解し、ブランドロイヤルティ(消費者がブランドに対して持つ愛着や信頼感)を向上させる施策を展開できるため、長期的なブランド価値の向上に寄与することが可能です。 具体的な施策:フェイシャルコーディング フェイシャルコーディングは、消費者がブランドロゴやメッセージを見た際の表情を分析する手法です。例えば、表情認識技術を使って、消費者が広告を見たときに笑顔になったり、驚いたりする瞬間を捉えます。 これにより、どの要素がポジティブな感情を引き出すかを評価し、ブランドのメッセージングが効果的に伝わるように調整します。 店舗レイアウトと体験デザイン 店内のレイアウトや商品陳列が人々の行動に与える影響を、視線追跡や脳波計測を用いて分析します。これにより、最適な店舗デザインを実現し、消費者の購買意欲を高めることが可能になります。 無意識の反応に基づく店舗レイアウトの改善により、顧客体験が向上し、結果として売上の増加につながるのです。 具体的な施策:ヒートマップ分析 視線追跡データをヒートマップとして視覚化し、店内で消費者の注目度が高いエリアと低いエリアを特定します。たとえば、注目度が低いエリアには人気商品の配置を見直すことで、消費者の関心を引きやすくします。また、注目度が高いエリアをさらに強化することで、購買意欲を高めることができます。 価格設定戦略 ニューロマーケティングを活用することで、消費者の価格に対する無意識の反応を分析し、より最適な価格設定に役立てることができます。この手法により、割引やキャンペーンが購買意欲に与える影響を評価し、効果的な価格戦略を練ることが可能です。 価格設定の微調整やプロモーション施策の改善を通じて、収益の最大化を図るとともに、価格戦略の精度を高め、市場における競争力を強化します。 具体的な施策:心理的価格設定 消費者の生理的データ(心拍数や皮膚の電気活動など)や無意識の反応を基に、心理的に魅力的な価格ポイントを設定します。例えば、99円や299円のような端数価格がどのように受け取られるかを評価し、購買意欲を高める価格設定を行います。 これにより、消費者にとって魅力的な価格を提供し、売上の増加につなげることができます。 ニューロマーケティングの活用事例 ここからは、ニューロマーケティングの活用事例を「広告キャンペーン」と「製品リリース」の2つのカテゴリに分けてご紹介します。 広告キャンペーンの成功事例 コカ・コーラ 取り組み:コカ・コーラは自社内にニューロマーケティングラボを設立し、脳波計測(EEG)を通じて消費者の脳活動を分析しました。 成果:視聴者が最も強く感情的に反応したシーンを特定し、それを軸に広告を再構成することで、記憶保持率とエンゲージメントの向上につながりました。 HP:https://www.coca-cola.com/jp/ja フリトレー 取り組み:フリトレーは、広告に対する消費者の真の反応を評価するためにEEG(脳波計測)を用い、広告視聴中の脳波データを通じて、感情的および認知的な反応を分析しました。 成果:これにより、消費者の感情反応をより正確に捉えた上で、効果的な広告クリエイティブの開発が可能となり、結果としてエンゲージメント率と広告効果の向上につながりました。 HP:https://www.fritolay.co.jp/ 製品リリースの成功事例 ネスレ 取り組み:ネスレは2014年、キットカットチョコレートバーのパッケージデザイン刷新にあたり、ニューロマーケティングを活用しました。具体的には、EEG(脳波計測)や視線追跡技術を用いて、消費者の感情的・認知的な反応を測定しました。 成果:この分析を通じて、ネスレは好感度の高いデザインと広告コンセプトを見極めることができ、製品の支持拡大と売上向上に貢献しました。 HP:https://www.nestle.co.jp/ ヒュンダイ 取り組み:自動車メーカーのヒュンダイは、ニューロマーケティングを活用して30人の被験者(男女各15人)に対し、異なる車両モデルの各部を見せ、その際の脳活動を測定しました。この実験により、消費者が特に魅力を感じる車両の部分を特定しました。 成果:分析結果を新型車のデザインに活かし、消費者ニーズを先取りすることで、新車開発および市場投入時のリスク軽減に貢献する手法となりました。 HP:https://www.hyundai.com/jp/ ニューロマーケティングの新たな可能性 ニューロマーケティングの技術と応用は、今後ますます進化し、新たな可能性が広がります。将来的には、より精密な脳活動の解析が可能になり、個々の消費者に対するパーソナライズされたマーケティングが実現するでしょう。 また、バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)と組み合わせることで、さらに豊かな消費者体験を提供することが期待されます 。

脳波測定技術の基本とビジネス活用法

脳波測定技術は、医療、スポーツ、エンターテインメント、さらには個人のヘルスケア管理に至るまで、多岐にわたる分野でその利用が進んでいます。 本記事では、脳波測定の基本から、脳波測定が可能なデバイスの紹介、脳波測定のビジネス活用法までを解説します。 脳波の測定方法とは? 脳波測定とは、脳の電気活動を記録し解析する技術です。この技術により、脳の状態をリアルタイムで観察することが可能となり、睡眠研究、疾患の診断、神経科学の研究、さらにはユーザーインターフェースの開発など、多岐にわたる用途で利用されています。ここでは、代表的な脳波測定の流れをご紹介します。 STEP1:電極の配置 脳波測定は通常、多数の小さな電極を頭皮に配置して実施されます。これらの電極は、頭皮を通して脳から発せられる微小な電気信号を捉えます。 STEP2:信号の記録 配置された電極を通じて、脳の電気活動を記録します。この際、信号はアナログ形式(波形で表される形式)で得られます。しかし、現代の科学技術ではデジタル形式(数値データとして処理される形式)の方が分析しやすいため、このアナログ信号をデジタル信号に変換する必要があります。 この変換を行うためには、高度な信号処理技術が用いられます。具体的には、不要なノイズ(乱れや無関係な信号)を取り除き、必要な脳波の信号を明確にするための補強が行われます。このようにして脳の電気活動をより正確に、よりクリアに捉えることができるようになります。 STEP3:データの分析 記録された脳波データは、さまざまな波形(アルファ波、ベータ波、デルタ波など)に分析され、これに基づいて脳の活動パターンを評価します。これらの波形は、睡眠、リラクゼーション、集中、ストレスなど、異なる心理状態を反映しています。 脳波測定でわかることは? 脳波測定を通じて、ストレスレベル、注意力、感情状態など、多岐にわたる脳の活動情報を読み取ることができます。たとえば、睡眠中の脳波パターンを分析することで、睡眠障害の診断や改善策の検討が可能になります。また、癲癇(てんかん)の診断や瞑想の深さを知るためのツールとしても利用されています。 ビジネス面では、脳波測定で得られた情報を活用して従業員のウェルビーイングの向上を支援したり、顧客体験を向上させる製品開発につなげることで活用されています。 脳波測定ができるデバイスを紹介 脳波測定には、さまざまな種類のデバイスが利用されています。これらのデバイスは、それぞれ特定の用途や環境に適した機能を持っています。 医療現場で使用される高精度の機器から、一般の方が日常生活で使用できる手軽なウェアラブルデバイスまで、その範囲は広大です。以下では、脳波測定に必要な代表的なデバイスをいくつか紹介し、それぞれの特徴と主な用途について詳しく解説します。 脳波測定に必要なデバイスは? fMRI fMRI(機能的磁気共鳴画像法)とは、脳内の血流の変化を見ることで、どの脳の部分が活動しているかを映像で示す技術です。この方法は、脳のどの部位が特定の作業に関与しているかを調べるのに使われています。 非常に高度な技術で、主に病院で利用されており、fMRIを使って脳の構造を詳しく見ることで病気の診断に役立てられています。 EEG EEG(脳波計)は、頭皮に配置されたセンサーを通じて脳の電気活動を測定するデバイスです。比較的低コストで手軽に使用でき、臨床はもちろん、日常生活やビジネスシーンでの使用が可能です。 MEG MEG(磁気脳波計)は、脳が活動する際に発生する非常に小さな磁場を測定する高度な装置です。MEGを使用することで、どの脳の部分がいつ活動しているかを非常に詳細に追跡できます。 MEGは脳の活動をリアルタイムで正確に観察できるため、脳の働きを研究する認知科学や神経科学でよく利用され、特定の脳の障害を診断する際にも役立てられています。 NIRS NIRS(近赤外線分光法)は、脳に近赤外線を当てて、脳内の血中酸素濃度の変化を測ることで、脳の活動を調べる技術です。NIRSは小型で持ち運びが可能なため、動きながらでも使用することが可能です。 特に小児の発達の研究や、スポーツ選手のトレーニング中の脳状態を研究する際など、実際の活動状況での脳の働きをリアルタイムで観察する際に用いられています。 PET PET(陽電子放射断層撮影)は、特殊な放射性物質を体内に入れて、脳の活動を映像で見ることができる医療技術です。この放射性物質は体内で分解される際に信号を出し、その信号を捉えることで、脳のどの部分が活発に動いているか、またどの部分に問題があるかを詳しく調べることができます。 この技術は主に、アルツハイマー病やがんなど、特定の病気を持つ脳の状態を調べる際に利用されています。 ウェアラブル脳波計 最近ではウェアラブル脳波計が開発されており、帽子やヘッドバンド、イヤホンなどの形をしたデバイスで、日常生活の中で簡単に脳波を測定することがで可能です。 これらのデバイスを使うことで、ストレスの管理、瞑想の効果測定、集中力の向上など、自分の心の状態(脳の状態)を知り、健康やウェルネス(心身の健康状態)を向上させるのに役立ちます。日常的に使える手軽さが魅力で、多くの人々に利用されています。 これらのデバイスは、それぞれ特有の利点と制限があり、使用する状況や目的に応じて選択されています。脳波測定では、求められる精度、利便性、コストのバランス等を考慮して行うことが重要です。 イヤホン型脳波計VIE ZONEの事例紹介 VIE株式会社では、イヤホン型のウェアラブル脳波計「VIE ZONE」を提供しています。このデバイスは、耳に装着するイヤーチップに特別な電極が組み込まれており、耳から脳波を測定することが可能です。 事例 1 :ポーラ化成工業株式会社 ポーラ化成工業株式会社との共同プロジェクトにおいて、脳波からマインドフルネス状態を推定する技術の開発を支援しました。本取り組みでは、VIEのイヤホン型脳波計を用いて心理状態をリアルタイムに可視化し、化粧品がもたらす感性価値の分析に活用しました。 具体的には、ユーザーの脳波データを収集し、個人差を考慮した学習アルゴリズムを構築して、マインドフルネス状態を正確に推定するというものです。この技術により、化粧品の使用がどの程度マインドフルネス状態を引き起こすかを評価できるようになり、製品の処方設計や香料、容器形態などの改善に役立てられました。 参考: VIE STYLE、ポーラ化成工業が行なったマインドフルネス状態を脳波計測から推定する技術開発を支援 事例 2 :株式会社リコー 株式会社リコーと共同で、ブレインテックとゲーミフィケーションを活用し、仕事への内発的動機(働きがい)を高めるための共同研究を行いました。ゲーミフィケーションとは、ゲームの楽しい要素を仕事や学習などの活動に取り入れて、やる気や集中力を高める方法です。 このプロジェクトでは、VIEのイヤホン型脳波計を使用して、仕事に対する内発的動機をリアルタイムで評価し、ゲーミフィケーション要素を取り入れることで働きがいの向上を目指します。 イヤホン型脳波計で、ユーザーの脳波を計測し、心理状態をリアルタイムでモニタリングすることで、仕事中のモチベーションや集中度を把握することが可能です。リコーの目指す「はたらく歓び」の実現をサポートするため、このデバイスとゲーミフィケーションを組み合わせ、業務の効率化だけでなく、従業員の創造力を引き出し、自己実現の実感を高めることが期待されています。 参考:リコーとVIE STYLE、ブレインテックを活用した仕事への内発的動機向上に関する共同研究を開始 事例 3 :国立がん研究センター東病院 国立がん研究センター東病院と共同で、内視鏡処置中における患者の鎮静深度推定に関する研究を実施し、日本臨床麻酔学会第42回大会にて成果を発表しました。この研究ではイヤホン型脳波計を使用し、患者の脳波をリアルタイムでモニタリングすることで、鎮静深度を高精度に推定する方法を検証しています。 内視鏡処置を受ける患者の脳波を記録し、鎮静深度指標(RASS)および使用薬剤の情報を同時に取得できるシステムを開発しました。このデータをもとに機械学習モデルを構築した結果、中等度以上の鎮静状態を81.68%の精度で分類できることが確認されました。本技術により、内視鏡処置中の鎮静管理がより簡便かつ正確に行えるようになり、患者と医療従事者双方の安全性向上と負担軽減が期待されます。 参考:国立がん研究センター東病院とVIE STYLE、ウェアラブル外耳道脳波計を用いた内視鏡処置における鎮静深度推定法に関する研究成果を発表 ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードはこちら ビジネスでの活用も期待される脳波測定 脳波測定技術は、医療、スポーツ、エンターテインメント、ヘルスケア管理など多岐にわたる分野で活用されています。脳波測定により従業員のストレス管理や集中力向上に役立て、消費者向け製品開発でもパーソナライズされたユーザー体験を提供することに取り組む企業も増えてきています。 多様なビジネス分野で新たな価値を創出し続けている脳波測定技術は、今後もその応用範囲はさらに広がっていくでしょう。

ブレインテックとは?最新の活用事例を紹介

ブレインテックとは? ブレインテックとは、脳(Brain)と技術(Technology)の融合を表す言葉で、脳科学に関連したテクノロジーやサービスのことを指します。 ブレインテックは高度なIT技術を駆使して、人の好みやストレスレベル、脳疾患などのあらゆる「脳の情報」を収集します。これらのデータはマーケティングに活かしたり、アプリケーションとして集中度や睡眠の深さを可視化したり、モニタリング用の診断機器に応用したりなど幅広い展開が可能であり、多くの期待が寄せられている分野です。 これまでヒトの脳は解明されていない部分が多く、医療や私たちの生活の中で応用する機会はなかなかありませんでした。しかし、近年のIT技術の進歩や脳科学分野での研究が進んだことにより、ブレインテックを活用した新しいサービスが次々と生み出されています。 アメリカでは、神経(Neuro)と技術(Technology)を組み合わせて、ニューロテックとも呼ばれることもあり、世界的に注目を集めている領域の1つです。 世界的に注目されている理由 ブレインテックが注目されている理由の1つは、技術の進歩です。 例えば、脳波は今から100年ほど前にドイツのハンスベルガーという人物によって発見されています。しかしその脳波がデバイスやアプリに用いられたり、BMI(Brain Machine Interface)といわれる脳情報とコンピューターを繋ぐ技術が開発され、実生活に応用されるようになったのは、2000年に入ってからのつい最近の出来事です。 ブレインテックは脳波計測技術の向上やコンピューターの性能向上など、さまざまな技術の進歩のおかげで、これまでになかったビジネスやサービスが生まれ注目されています。 BMIについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェック: https://mag.viestyle.co.jp/brain-machine-interface/ どのような分野で活用されているのか ブレインテックはさまざまな分野で活用されています。以下は主な例です。 医療・・・ 脳波計測や脳画像解析技術を活用した、診断や治療支援が行われています。例えば脳波を計測して、てんかんの発作を予測したり、脳疾患のリハビリテーションに活用されています。 ヘルスケア・・・ストレスレベルのモニタリングや睡眠の分析など、生活習慣の改善を促進させてくれる技術として活用されています。 エンターテイメント・・・ユーザーの脳活動から操作が可能なゲームや、リラクゼーションやストレス解消に効くブレインテックを用いた音楽アプリが開発されています。 教育・・・ニューロフィードバックといわれる、自身の脳活動を記録し、その情報をフィードバックすることで脳をトレーニングする方法を用いて、集中力や記憶力の向上を目指すプログラムが提供されています。 他にもあらゆる分野でブレインテックは活用されており、幅広い応用が期待されています。 国内外のブレインテック企業を一挙紹介 ブレインテックはベンチャー企業から大手企業まで、幅広い企業が積極的に参入しています。その中には、日本のスタートアップからアメリカの大手テクノロジー企業までさまざまな企業が挙げられます。ここでは注目を集めている国内外のブレインテック企業を一挙紹介していきます。 海外のブレインテック企業 Neuralink(米) Kernel(米) BioSerenity(仏) Neuralink(米) アメリカの実業家イーロン・マスク氏が設立したNeuralinkは、脳とコンピューターを繋ぐBCI(Brain Computer Interface)技術の開発に取り組む、世界的に注目されている企業の一つです。 この技術は、脳で思考しただけで機械を直接制御できるようになることを目指しており、Neuralinkでは埋め込み型(侵襲型)デバイスの開発に注力しています。2024年に入ってからは、マスク氏がXにて臨床試験の被験者の募集も行っており、近い将来の実用化に目が離せません。 HPはこちら:https://neuralink.com/ Kernel(米) 2016年に設立されたKernelは、ヘッドセットの形をした非侵襲型の脳モニタリングデバイスを開発・提供している企業です。 Kernelのヘッドセットは、TD-fNIRSといわれる高度な脳波測定技術が使われています。この技術に挑戦する企業は少ないため、Kernelは既存のハードウェアが無い0からの開発に成功しました。現在はFDA承認に向けて臨床試験が行われています。 HPはこちら:https://www.kernel.com/ BioSerenity(仏) BioSerenityは、2014年にフランス・パリで設立された医療技術の分野で活動する企業です。 リモートでの患者のモニタリングサービスを提供しており、2021年1月にはウェアラブルEEGデバイスがFDAの承認を受けました。これにより、てんかん患者の脳状態を医師が遠隔で監視・評価することが可能になっており、てんかんモニタリングデバイスの需要増加を支える主力のサービスとなっています。 HPはこちら:https://bioserenity.com/ 日本のブレインテック企業 株式会社LIFESCAPES VIE株式会社 Ghoonuts株式会社 株式会社LIFESCAPES 株式会社LIFESCAPESは、BMI技術を駆使したリハビリ機器の開発に取り組み、脳卒中後の重度麻痺患者のQoL向上を目指す取り組みを行なっています。 慶應義塾大学 牛場潤一研究室の研究成果活用企業として、BMIによる新たなトレーニングやリハビリ方法の提案を行い、BMIの可能性を追求している企業です。 HPはこちら:https://lifescapes.jp/ VIE株式会社 VIE株式会社は、イヤホン型のウェアラブル脳波計を開発しており、電極のついたイヤーチップから脳波を簡易的に取得することを可能にしています。 この脳波計を用いて、製薬企業との共同研究から睡眠や集中に特化した音楽アプリの配信まで、メディカル、エンターテイメントなど幅広い分野でブレインテックを活用しています。独自の解析キットも提供しており、一般のユーザーも気軽に脳波に触れることができる機会を創出しています。HPはこちら:https://www.viestyle.co.jp/ Ghoonuts株式会社 Ghoonuts株式会社は、脳刺激デバイスの開発を通じて、治療が確立していない疾患に対する医療への貢献を目指しています。 特に失語症の患者向けに、言語トレーニングアプリの開発に着手しており、どこにいても誰もが言語リハビリを利用できるサービスの展開を目標としています。他にも認知症や統合失調症など、薬だけでは解決できない分野への挑戦も行う計画です。 HPはこちら:https://ghoonuts.com/ 最新ブレインテックの活用事例5選 医療分野からビジネス分野まで、ブレインテックは近年幅広い領域で盛り上がりを見せています。今後も技術の進化が期待されており、新しい情報が日々アップデートされていく中で、2023年以降に発表された最新のブレインテック活用事例を厳選して紹介します。 英 Neurovalens|不眠症を改善するデバイス アース製薬株式会社|脳波計を装着して商品パッケージを改良 日産自動車株式会社|脳波トレーニングでドライバーのパフォーマンス向上 アットアロマ株式会社|香り体験を可視化して購買行動をサポート VIE株式会社|「なりたい状態」に脳を近づけるニューロミュージック 英 Neurovalens|不眠症を改善するデバイス Neurovalensは、不眠症の改善に新たなアプローチを提供する「MODIUS SLEEP」というヘッドセットを開発しました。 このデバイスは2023年10月にFDAによる医療機器認可を取得しており、非侵襲的な電気刺激によって睡眠の改善を図ることが可能になっています。就寝前の30分間の着用で、睡眠スコアの向上や睡眠に対する満足度を高めることが期待されています。 HPはこちら:https://neurovalens.com/ アース製薬株式会社|脳波計を装着して商品パッケージを改良 アース製薬は、商品パッケージのデザイン改良に、ブレインテックを活用しています。 脳波計を装着した被験者に商品パッケージを提示し、視線や脳波を計測・解析することで、「どのような商品が目に止まるのか」「好感を示すデザインはどれか」といった評価を行います。この新しいマーケティング手法はすでに特許を取得しており、商品開発においてお客様の潜在的なニーズに入りこむことを可能にしています。 HPはこちら:https://www.earth.jp/ 日産自動車株式会社|脳波トレーニングでドライバーのパフォーマンス向上 日産自動車は脳波測定を用いた運転支援技術を開発し、ドライバーの脳機能や認知機能を向上させる取り組みを展開しています。 国際カーレースのフォーミュラEでは、「ブレイン・トゥ・パフォーマンス」と呼ばれる脳の潜在能力を引き出すトレーニングを採用し、さらなる運転パフォーマンスの向上を目指しています。 HPはこちら:https://www.nissan.co.jp/ アットアロマ株式会社|香り体験を可視化して購買行動をサポート アットアロマは、脳波計を用いて店頭で香りを体感した時のリラックス度を測定し、AIが顧客に最適なアロマを分析・提供するイベントを開催しました。 これまで主観的でのみ評価していた香りを、アロマの用途に合わせて「リラックス」という指標を掲げることで、顧客が客観的かつ定量的に商品を選択することが可能になりました。 HPはこちら:https://www.at-aroma.com/ VIE株式会社|「なりたい状態」に脳を近づけるニューロミュージック VIEは、ユーザーがリラックスや集中などの「なりたい状態」を選択することで、その状態に脳を近づける音楽を流す、脳チューニング音楽アプリ「VIE Tunes」を配信しました。 特定の脳活動を増減させる効果が科学的に確認されている「ニューロミュージック」は、さまざまなアーティストとのコラボレーションもおこなわれ、世界中で活用されています。 HPはこちら:https://www.viestyle.co.jp/ ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードはこちら 幅広い応用が期待されるブレインテック ブレインテックは、脳と技術を融合させた新たな領域として、医療、エンターテイメント、ビジネスなど、幅広い分野で活用されています。 世界中のさまざまな企業が革新的な取り組みを行なっており、日々進化するブレインテックは、私たちの生活の中にも浸透していき、より身近に感じられる日も近いでしょう。

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