今回のテーマは「恋愛」です。好きな人に好意を寄せられると、相手が気持ち悪くなってしまう「蛙化現象」は、「自信の無さ」や「自己肯定感の低さ」が原因であると一般に言われています。
では、そのような人たちの脳の中では、どんな反応が起きているのか、蛙化現象を克服する方法は存在するのかについて、深掘りしていきたいと思います。
前回のコラムはこちらです。
蛙化現象とは?20%の女性が経験している
好きな人が自分に好意を寄せていると気づいた瞬間に、相手のことを気持ち悪く感じてしまう。巷では「蛙化現象」と呼ばれているこの現象ですが、みなさんの周りにも悩んでいる人はいませんか?
蛙化現象の起きやすい人たちには、共通していることが多いかもしれません。例えば、相手の気持ちを執拗に確かめようとしてしまったり、付き合う中で不安を感じながら相手を束縛したり、逆に相手からも束縛されるようになり、早く別れてしまったり…。
先行研究の中での「蛙化現象」の定義は、ある異性に対して、自分が一方的に好意を持っていると思っている状態で、相手も自分に対して好意を持っていると気がづくと、そのことがきっかけとなって相手のことを気持ち悪く感じてしまったり、嫌いになったりしてしまうことを言います。
蛙化現象は、女性に多い現象だと言われていますが、研究によると男性でも同様な現象が起こることは多いそうです。ただ女性の方が男性の2倍近く蛙化現象になりやすく、平均で20%ほどの女性が、蛙化現象を経験したことがあると言われています。
蛙化現象が起きるのはどうして?蛙化現象の脳のメカニズム
蛙化現象の原因には、「自信の無さ」や「自己肯定感の低さ」が挙げられます。特に、非常に優秀な人や容姿が端麗な人に多く見られる現象です。
これら人々は、周りから「優秀だね」「かわいいね」と褒められても、「自分なんて…」「まだまだだ…」と、自分を肯定することができずに苦しむことが多いです。このような人たちは、常に自分が周囲の期待に応えられているかどうか不安を抱え、その不安を解消するために努力を続けます。
蛙化現象においての「不安」や「恐怖」は、「相手の気持ちをコントロールできないこと」にあるのではないかと考えられています。
例えば、好きなアイドルが自分に好意を寄せてくれる可能性は、現実的に考えると、悲しいことにほとんどありません。そのため、自分の「好き」という一方的な気持ちだけで完結し、相手の気持ちに委ねることはありません。
しかし、実際の恋愛となると、相手の好意は自分がコントロールできるものではなく、自分が傷つくかもしれないという予測が、不安や恐怖と結びつき、相手の粗が見えてきてしまい、「なんか気持ち悪い」と感じてしまうと考えています。
他にも蛙化現象を起こしてしまう理由は考えられます。
みなさんは「サワーグレープス」(sour grapes)を知っていますか?イソップ童話の「キツネとブドウ」が語源となった、「負け惜しみ」という意味の言葉です。この物語で、キツネは高い木に実るブドウを、自分の手が届かないという理由だけで「あのブドウは酸っぱくて不味いだろうから、いらない」と言います。
ここでは、手の届かないものに対して、自分の中で価値を下げてしまう現象が起きているのですが、蛙化現象でも似たようなことが起きているかもしれません。つまり、相手が自分を好きという状況は、自分ではコントロールできないから、「あの人は好きじゃない。」「気持ち悪い。」と考えてしまうのかもしれません。
相手に求めるのではなく自分で考えよう!蛙化現象の克服方法
恋愛において理想が高くしすぎてしまうと、「コントロールできない。」という現実とのギャップで「不安」が大きくなり、蛙化現象も生まれやすいのです。
ある研究では、綺麗な人の写真を見続けていると、自分のパートナーの顔があまり可愛く(かっこよく)見えなくなってしまう、ということも証明されています。それほど理想を高く持たないことは、蛙化現象を避けるために大切なのです。
また、不安を抱えやすい人は、パートナーの褒め言葉を解釈するのが難しい人が多いと言われています。そのような人たちには「リフレーミング」をすることをお勧めします。
「リフレーミング」とは、「可愛くないのになんで可愛いって言うの!」と相手に答えを求めるのではなく、「どうしてパートナーは褒めてくれるのか?」「きっと私がこういう努力をしたからだ。」というように、自分の中で解釈していくことを言います。そのようにすることで、少し自信が持てるようになったり、2人の関係性がよくなることがわかっています※。
※参考:心理学のリフレーミングとは?効果&練習法をわかりやすく解説! – STUDY HACKER(スタディーハッカー)|社会人の勉強法&英語学習, 2024年9月6日参照
まとめ
巷で言われる蛙化現象は、一方的に好きだった時は大丈夫でも、相手が自分のことを好きになると気持ち悪くなってしまう現象のことを言います。
この原因については、よくわかっていない部分も多いですが、私の解釈では不安を持ちやすい人や、自信のない人がなりやすいと思っています。片想いをしているときはよくても、相手に好きになられると、相手の気持ちはコントロールできないためです。
急に不安になり、相手を嫌いになるような自己防衛が働き、脳の中には相手の悪いところしか入ってこなくなり、気持ち悪くなってしまいます。それを変えるためには、相手が自分にかけてくれる言葉をリフレーミングすることで、よりニュートラルに相手を見られるようになるかもしれません。
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次回のコラムでは、『恋愛に関する脳科学のお話』をご紹介します。