付き合って幸せなのは一瞬!?/好きじゃない人も付き合うと好きになる?

コラム
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恋愛をしている人は、どこか幸せそうな空気をまとっていますよね。実際に恋愛は幸福度(ウェルビーイング)を高めるのに、最も関連性が高いことが証明されています。しかし、脳科学的に「人の幸せは長くは続かない」ということも事実です。

今回は、人を好きになることに関連した『幸福や恋愛の必要性』について深掘りしていきます。

前回のコラムはこちらです。

脳科学で蛙化現象を克服?/好きな人に好意を寄せられると嫌いになるのはどうして?
今回のテーマは「恋愛」です。好きな人に好意を寄せられると、相手が気持ち悪くなってしまう「蛙化現象」は、「自信の無さ」や「自己肯定感の低さ」が原因であると一般に言われています。 では、そのような人たちの脳の中では、どんな反応が起きているのか、...

永遠に続く幸せはない!?パートナーがいると幸せの基準は上がっていく!

彼氏や彼女がいる人は、シングルの人よりも幸せに見えることがありませんか?

ある研究では、結婚している人は独身の人よりも幸福度が高いことが確認されています。人との繋がりは「社会的資本」などと言われることがありますが、パートナーがいて孤独でないということは、私たちの脳にとって幸福度を上げることと結びついていると証明されているのです。 

しかし、実際にパートナーと付き合っていく中で、幸せに満ち溢れた感情は長くは続きません。逆を言うと、パートナーと別れてしまった後の悲しみや不安といった、ネガティブな感情もずっと続くわけではありません。

人間の脳が、どのようにして幸せを感じ取るのか、さまざまな研究がおこなわれている中で、「プレディクションエラー仮説」というものが一番有力だとされています。これは、「私たちが何を幸せに感じるかは、自分の脳が予測していることと、実際に起きることとの間のギャップによる」というものです。

例えば、同じ「100万円を貰える」としても、1,000万円貰えると思っていたのに100万円を貰うのと、10万円貰えると思っていたのに100万円を貰うのとでは、後者の方が喜びは大きいはずです。前者のように、予測との誤差がネガティブになると悲しい、反対に予測との誤差がポジティブになると嬉しいというように、脳が予測していたものとは異なるエラーが、幸せに関連していると言われています。

ここで重要なのは、私たち人間は一度経験すると、脳の予測が変わってしまうということです。

恋愛でいうと、片思いをしているときに「あの人と付き合えたら幸せだろうな」と考えるとします。実際に付き合ってみると、自分が予測していたよりも楽しいことがたくさんあり、最初は幸せを感じます。しかし、付き合い続けるにつれて、予測(恋愛においては理想)も高まっていくため、それ以上のものでないと幸せを感じなくなってしまいます。その理由は単純で、プレディクションエラー(予測誤差)が生じなくなるからです。

これは恋愛だけではなく、「収入」などに関しても同じ現象が起こると言われています。

脳は学習をしていく臓器であるため、一度経験をすると幸せの基準は高まり、その基準を超えないと「幸せ」というものを感じなくなってしまいます。そのため、恋愛に関わらず、人の幸せは長くは続かないと言われているのです。

※出典:結婚と幸福:サーベイ (jst.go.jp), 2024年9月6日参照

脳の機能を高めるためには恋愛が大切?

学習をしながら予測の精度を高めていくことは、脳の大事な機能ですが、恋愛をすることは、予測の力を伸ばすことにも繋がると言われています。

ある実験では、自分のパートナーが痛めつけられている姿を見るのと、知らない人が痛めつけられている姿を見るのとでは、前者の方が脳が共感を示し、自分も同じように痛い思いをしているときの脳活動が生じることがわかっています。

この共感は予測力と同様に、より愛が深まっていくと、より相手に起きていることが自分の身に起きているように感じやすいとされています。

「相手にこういうことが起きたら、こういう感情になるだろう」ということを、脳が予測しているから起こる共感であり、その予測は愛の深まりとも関連していると考えられています。

※出典:(PDF) Empathy for Pain Involves the Affective But Not Sensory Components of Pain (researchgate.net), 2024年7月5日参照

付き合ったら好きになる?人を好きになる瞬間とは?

「人を好きになるのに理由はいらない」なんて言葉を、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。「背が高いから」「顔が好みだから」というような、明確な要素があって人を好きになることもあるかもしれませんが、その反対で「付き合ってみたら、ここが好きになった」というようなことも多いのではないか、とされています。

例えば、同じくらい好きな異性2人のうち、どちらか一方を選んで付き合った場合、付き合った人への好感度は上がり、選ばなかった人への好感度は下がることがわかっています。

これは、選んだという事実だけで、「この人には価値がある」というように脳が学習するためです。前回 脳科学で蛙化現象を克服で紹介した、「サワーグレープス」(=手の届かないもの) に対して自分の中で価値を下げてしまう現象と似ていますね。

まとめ

恋愛をすることやパートナーがいるということは、幸せに関係しているといえます。しかし、脳の予測は変化していくため、永遠の幸福というものはありません。良いことがあれば脳が予測する期待値も高まり、その期待値を超えなければ幸せにはなれないのです。そのような脳の学習機能があるからこそ、相手の気持ちを学んでいくことができます。

また、好きだから愛が深まることもあるかもしれませんが、「付き合ったから」や「選んだから」という「行動」が先にあって、後から「好き」という感情が湧き上がってくることもあります。

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次回

次回のコラムでは、脳科学の視点から『好きな人と関係を持続させるコツ』についてご紹介します。

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