人間の脳は、食べ物を見ただけでカロリーを計算する!?ダイエットに潜む危険とは?

コラム
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街を歩くと、周りの人が自分よりも痩せて魅力的に見えたり、脚が細く見えたりして、常にダイエットのことが頭から離れないと感じることはありませんか?

このようにダイエットのことばかり考えてしまう心理は、脳科学とも少し関係があります。

今回は、『ダイエットと脳科学』について深掘りしていきます。

前回のコラムはこちらです。

痩せたい動機はどこからくる?健康的なダイエットのために注意したいこと

「痩せたい」と感じる動機は、大きく分けて2種類あると言われています。1つ目は健康のため、2つ目は「アピアランス動機」といって「痩せて綺麗になりたい」「今の状態では醜いから痩せなきゃ」という見た目に関する動機です。

ある研究では、アピアランス動機でダイエットに取り組む人は、健康のためにダイエットする人に比べると、やる気が下がりがちになってしまうということが分かっています。

また「綺麗になるために痩せよう」という思いが強くなればなるほど、「自分の体型が本当にこれでいいのか」という、不安が大きくなってしまうことも分かっており、アピアランス動機でダイエットに取り組むことはあまり推奨されていません。健康を目的とする場合には、明確な目標が設定しやすいのに対して、アピアランス動機には数値的な目標がないことも、ダイエットが長続きしない理由の一つかもしれません。

さらに、ダイエットには「恋愛」のテーマで紹介した「蛙化現象」と似た側面があります。「蛙化現象」は、相手の気持ちをコントロールできない不安から生まれる現象です。ダイエットにおいても、食事を制限したり、食べても吐いたりすることで、体重を自分の意志でコントロールしようとする行動が見られます。

しかし、このような行動は摂食障害の症状でもあるため、アピアランスやコントロールのための無理をするダイエットは、健康的であるとは言えません。

お腹が空かなくても食べてしまう!こわい食習慣

ではそもそも、食欲が湧いてくるのはどのような現象なのでしょうか?

食欲にもダイエットの動機と同様にいくつかの種類があり、生きるために必要なカロリーを摂取するための、ホメオスタシス(恒常性)の食欲と、脳の回路が変化することによって、空腹感とは関係ないしに食べ物を食べてしまう「フードアディション(食べ物中毒)」の食欲があります。

脳科学の世界で、人間の行動は2種類に分けることができます。1つは「ゴールディレクティッド(目的思考型)」の行動、もう1つは「ハビチュアル(習慣)」の行動です。前者は目的があって食べ物を食べることを指しますが、後者は何も考えずに自動的に食べ物を口に運んでいくようなものを指します。

「お酒」をテーマとした回では、ネズミがチーズを報酬にレバーを引き続けるようになる、強化学習の話がありました。この段階では、ネズミは「エサをとる」という目的のためにレバーを引いています。そのため、例えば1週間ほど強化学習のトレーニングをしたネズミのエサに、毒を盛ると、「もうお腹が痛くなるからやめよう」とネズミは考えて、次からはレバーを引かなくなります。

しかし、1ヶ月ほどレバーを引くことをトレーニングしているネズミのエサに毒を盛っても、ネズミはレバーを引き続けます。これが習慣です。

「習慣」と聞くと、良い習慣を思い浮かべると思いますが、神経学の世界の「習慣」は、目的がなく、オートマティックでロボットのような、自動的な行動の繰り返しを指します。

ネズミの話は、人間でも同じようなことが言えます。実際の体験談ですが、最初はお腹が空いているときに、マクドナルドの赤と黄色のロゴを見て、「マック食べよう!」とお店に入ります。これを10年ほど繰り返すと、お腹が空いていなくても、気づいたらマクドナルドに入ってポテトを食べている、ということが起きてしまうのです。これが習慣的な食行動です。

食欲減退に効果的な食べ物は?

それでは反対に食欲を減退するものはあるのでしょうか?これも最近の研究で分かったことですが、私たちの脳は、食品を見ただけで、その食品にどれくらいのカロリーがあるのかを計算しています。

つまり、茶色くて油が含まれていそうなものには、私たちの脳は「カロリーがあるから手を伸ばしなさい」と反応するのですが、反対に青い食べ物などには普段見慣れていないため、カロリー計算ができず、報酬にはならないため食欲が湧かないとされています。

※出典:https://www.cambridge.org/core/services/aop-cambridge-core/content/view/695F08A4DE3E05FFBF9DB36DF25C3768/S0029665112000808a.pdf/div-class-title-food-induced-brain-responses-and-eating-behaviour-div.pdf, 2024年7月11日参照

まとめ

見た目を気にしすぎるような、「アピアランス動機」のダイエットは、不健康になる可能性もあるため、過度なダイエットには気をつけましょう。

また、空腹感があるから食べるのではなく、悪く習慣化されてしまった脳に原因があり、食べ物中毒になって食べてしまうことにも、十分に注意が必要です。

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次回のコラムでは、行動経済学に基づいたダイエットを継続させる方法についてご紹介します。

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