「ありがとう」を伝えると生産性が上がる!感謝できる人とできない人の違いとは?

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相手に何かをしてあげたときに「ありがとう」と言われると嬉しくなったり、反対に感謝をされないと、少し残念な気持ちになったり、このような経験はありませんか?

人間にはさまざまな感情がありますが、「ありがとう」という感謝の気持ちには、脳科学的にもたくさんのパワーが秘められているのです。今回は、人間関係や健康、仕事でのパフォーマンスなど、感謝の気持ちが発揮する力について深掘りしていきます。

前回のコラムはこちらです。

感謝の気持ちはなぜ存在する?「ありがとう」の言葉に秘められた力とは?

古代ローマの時代、政治家であり哲学者でもあるキケロは、「感謝の心は最大の美徳のみならず、すべての美徳の起源である」と言いました。人間のあらゆる感情の中で1番の美徳だとキケロが言うほど、「感謝」は私たちにとって大切な感情なのです。

脳科学の研究では、感謝の感情を持つことは、人間関係の維持や強化に貢献することが分かっています。また、嫌なことや不安なことなことがあっても、何かに対して感謝の気持ちを持つことができれば、抑うつ効果が期待されることが証明されています1

また、感謝を「する側」と「される側」とでは、「感謝」が持つ力に差があることも分かっています。自分のやる気を上げてくれたり、人間関係をよくしてくれたりするのは、「ありがとう」と言うことであり、感謝の気持ちを持つ側なのです。感謝をされるよりも、感謝をする回数を増やしたり感謝の質を高めることが大切です。

とは言っても、感謝の気持ちを積極的に持つことは、なかなか難しいことです。その場では「ありがとう」と思っても、その記憶は長くは続きません。

そこでオススメなのは、感謝の気持ちを書き留めた日記をつけることです。今日1日で起きた、感謝できる物事や感謝の気持ちを、日記に書いてみることを繰り返すと、意識して感謝が身についてきたり、感謝できるようになったりします。日記をつけるだけで、幸福度が上がったり、ストレス耐性が上がることも分かっています2

ではそもそも、感謝という感情はなぜ存在するのでしょうか?

感謝の感情は、進化の過程で人間社会を強化するために発展してきたと考えられています。「プロソーシャルビヘイピア」といって、感謝の気持ちはその人をポジティブな気分にさせ、その気持ちを維持したり、より高めたりするために、今度は自分が他の人の役に立つことをして、感謝されようという行動が増えていきます。

このように人間関係において、「感謝」という気持ちが存在することで協力行動が生まれ、それが広がり、人間集団が強化されていくのです。

そのため、感謝の気持ちは、人間の進化の過程で残り続け、存在し続けていると言われています。

1 出典:The Neuroscience of Gratitude and Effects on the Brain (positivepsychology.com), 2024年7月11日参照

2 出典:How Gratitude Changes You and Your Brain (berkeley.edu), 2024年7月11日参照

感謝をしやすい環境と感謝をしにくい環境の違い

「ありがとう」をしっかりと言葉にできる人は、「良い人」というイメージが付きやすいと思います。しかし、感謝のしやすさにも個人差があることが分かっており、感謝をしやすい人と感謝をしにくい人が存在します。

例えば、所属している組織が堅苦しい場合だと、感謝の気持ちが生まれにくいと言われています。そのため、公的な機関である役所や病院、会社などは、感謝が少ない傾向にあります。また、ストレスの多い職場や、人間関係が円滑でない職場では、何かに貢献しているという意識を持ちにくくなり、感謝の気持ちが生まれにくくなります。

反対に感謝の気持ちが多い組織は、ボランティア組織や宗教組織、慈善組織などです。これらの組織では、ストレスが少なく、貢献意識が高くなりやすい傾向にあります。そして貢献意識が高い人が集まると、より他の人から感謝をされたり、他の人に感謝したり、感謝を認識する機会が多くなります。

感謝の気持ちを持てるようにするための方法とは?

冒頭でも紹介したように、感謝をすると生産性が上がるということが実際に分かっています。そのため感謝の気持ちを持つことは、職場においても大事なことです。職場で感謝の気持ちを持ちやすくするためには、先ほど紹介した「感謝日記」が有効であると言われています。

最近の研究では、2週間大学生にオンラインで感謝日記をつけてもらい、日々自分に起きた出来事で感謝できることを綴ってもらうだけで、彼らのやる気が上がっていったという結果も出ています。

他にも、悲しかったことや辛かった出来事の中に、感謝できる部分を探してみるという方法があります。例えば、一緒に映画を見る約束をしていた友人が寝坊をしたため、延期になってしまったとします。そのような悲しい出来事の中にも、今日の予定が無くなったことで、自分の時間が持てたことに対する感謝や、楽しみな予定が来週に引き伸ばせたことに対する感謝など、さまざまな感謝できる点を見つけられると思います。

このように悲しい出来事の中にも感謝できる点を見つけていくことによって、気持ちがとても楽になり、苦痛やストレスが軽減することができるのです。

まとめ

感謝という感情は、人間が互いに協力しあって存続してきた感情です。この感情は、人間関係を維持したり、社会関係を築くためにとても役に立ちます。

「辛い出来事」や「嫌な記憶」もポジティブに変換できる、人間にとって大切な感情なのです。

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次回

次回のコラムでは、脳科学的に解明された『感謝のコツ』についてご紹介します。

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