TAG

ウェルビーイング

変化する国内外のウェルビーイング市場環境

働き方や価値観の多様化を背景に、ウェルビーイング市場は世界的に成長を加速させています。従来、心と体の健康を指す概念だったウェルビーイングは、いまや経営戦略や産業創出の中心的テーマとなりつつあります。その背景には、メンタルヘルス問題の深刻化や高齢化社会の進行、そして脳科学やニューロテクノロジーの進展があります。 本稿では、ウェルビーイング市場の変化と今後の展望について、ブレインテックに着目した視点からご紹介します。 脳科学×メンタルヘルス──「見える化」から始まるウェルビーイング支援 パンデミックを契機に、世界中でメンタルヘルスケアの重要性が改めて注目されるようになりました。働き方の変化や社会不安の高まりにより、孤独感の増加、ストレスの蓄積、意欲の低下といった問題が表面化し、ビジネスパーソンの生産性や企業の持続可能性にも影響を及ぼしています。こうした背景のもと、ウェルビーイングを支援する市場は国内外で急速に拡大しており、なかでも注目されているのが、脳科学の知見を活用した新しいアプローチです。 たとえば、脳波をリアルタイムで計測し、ストレスや集中度を可視化する技術は、近年急速に実用化が進んでいます。こうした脳波計測デバイスは、瞑想やマインドフルネスの効果測定や、集中状態の分析などに活用され、企業の健康経営の一環としても導入が進んでいます。さらに、AIを用いた脳波解析により、「どのような環境でパフォーマンスが上がるか」や「どの音楽がリラックスに貢献するか」といった個別最適化のアプローチも登場しています。こうした科学的アプローチは、従業員の主観に頼らずに、こころの状態を客観的に把握できる手段として期待されています。 認知機能ケアが日常へ──生活に溶け込む脳科学 また、近年では、認知機能を維持・改善するための技術にも脳科学が応用されるようになり、その広がりが注目されています。特に高齢化が進む日本においては、認知症予防や脳の健康管理が社会的な課題となっており、その解決手段としてニューロテクノロジーが注目されています。 その代表例が、ニューロフィードバックやデジタルセラピー(DTx)といった分野です。ニューロフィードバックは、脳波をフィードバックしながらトレーニングを行うことで、集中力や記憶力の改善、さらにはADHDやうつ病の緩和にも効果があるとされ、米国ではすでに一部がFDA認可を受けています。これに追随する形で、日本国内でも医療機関との連携や、保険適用を見据えた研究開発が活発化しています。 また、近年ではVRやAR、AI技術と連携した認知リハビリテーションも登場し、没入感のある環境で脳を刺激する手法が注目されています。このように、脳科学を活用したウェルビーイング支援の取り組みは、医療・介護の分野にとどまらず、教育現場や職場での学習支援、さらにはスポーツのパフォーマンス向上など、さまざまな領域へと広がりを見せています。 成長を続けるウェルビーイング市場と今後のビジネス機会 ウェルビーイング市場は、グローバルで見ても高成長を続ける分野です。Global Wellness Instituteの2024年の報告によると、世界のウェルビーイング関連市場は、2023年時点で6.3兆ドルに達しており、2028年には9兆ドルに拡大する見通しです(年平均成長率7.3%)1。なかでも、脳科学やAIとの融合によるソリューションは、他分野への波及効果も大きく、業界横断的な広がりを見せています。 出典:Global Wellness Institute たとえば、GoogleやAppleといったテック企業では、すでにウェルビーイング関連機能の開発に注力しており、スマートウォッチやヘルスケアアプリを通じて、ストレス、睡眠、集中度といった「脳と心」に関わる指標を、日常的に収集・分析できる時代が訪れています。 企業にとっては、こうしたデータを活用し、従業員のパフォーマンスを最大化する職場環境や、カスタマイズされた健康支援プログラムの設計が可能となります。実際に一部のグローバル企業では、眼電位や身体動作センサー、心拍データなどを活用して、「集中できる会議の時間帯の把握」や「リラックスできる空間デザイン」の実証が進んでおり、これは日本企業にとっても新たな競争力強化のヒントになるでしょう。 まとめ:ウェルビーイングを経営と社会の中心に ウェルビーイング市場は今後も、脳科学とテクノロジーを軸とした「見える化」と「最適化」によって進化を遂げていくことが予想されます。特に「脳」にアプローチすることは、私たちの行動・感情・判断の源に直接働きかける方法であり、医療だけでなく教育、働き方、まちづくりなど、あらゆる領域に影響を与える可能性を秘めています。 企業としては、単なる福利厚生やストレス対策ではなく、「科学に基づくウェルビーイング経営」をいかに早期に取り入れられるかが、これからの差別化要因となるでしょう。 ウェルビーイングと脳科学の接点を理解し、次の一手を見据えること、それこそが、持続可能で創造的な未来を築く第一歩になるのではないでしょうか。

脳科学でわかる睡眠改善のコツ──脳とメンタルの深い関係

皆さんは最近、しっかりと眠れていますか?忙しい現代人は、つい睡眠時間を削りがちです。しかし、最新の脳科学の研究により、睡眠が私たちの脳や心の健康(メンタルヘルス)、そして日々の生活バランスに、決定的な役割を果たすことが明らかになってきました。 ここでは、2021年以降の睡眠改善に関する最新の脳科学的知見をもとに、睡眠とウェルビーイングの関係や、日常生活で活かせる改善ポイントを解説します。 最新の研究が示す、睡眠と脳の関係 2024年の研究では、睡眠中に脳内の神経ネットワークがポンプのように働き、脳組織にリズミカルな波を起こして、老廃物を洗い流す仕組みが確認されました1。このプロセスのおかげで、朝には頭がスッキリし、長期的にも脳の健康維持に役立つと考えられています。 また、睡眠は脳の老化や学習能力にも影響します。例えばMRIを用いた研究では、24時間の徹夜で脳の老化が1~2歳進んだ状態になると報告されています2。さらに慢性的な睡眠不足は、脳内に小さな損傷を蓄積し、将来的な脳卒中や認知症リスクの上昇とも関連するため、適切な睡眠を確保することが脳の健康には欠かせないのです。 学習や記憶の面でも、睡眠の重要性は再確認されています。慢性的な寝不足は新しい課題の習得能力を低下させることが分かっており、これは睡眠中に行われる記憶の定着(脳が情報を整理して保存する作業)が妨げられるためと考えられます。試験勉強や仕事のトレーニングでも、夜更かしで詰め込むよりしっかり寝たほうが効率よく成果が出るでしょう。 睡眠とメンタルヘルス、ライフバランスの深い関係 良質な睡眠は心の安定に直結しています。2023年末の大規模分析では、わずか数時間の睡眠不足でもポジティブな感情が減り、不安感が増すことが示されました3。寝不足の翌日に「なんだか気分が晴れない」「イライラしやすい」と感じた経験がある人も多いでしょう。 さらに慢性的な寝不足や不眠は、うつ病や不安障害のリスクを大幅に高めます4。逆に睡眠を改善すれば、こうした精神的ストレスが和らぐことも研究で示されています5。よく眠れるようになると気持ちが前向きになり、日常の小さなトラブルにも柔軟に対処できるようになるでしょう。 しかし残念ながら、日本では慢性的な睡眠不足が蔓延しています。厚生労働省の調査では、働き盛り世代の4割以上が1日6時間未満しか眠れていません6。睡眠不足は作業能力の低下や重大事故につながることも指摘されています。しっかり眠ることは、心の健康を保つだけでなく、仕事で力を発揮し、毎日を気持ちよく過ごすための基本になります。 今日からできる睡眠改善のポイント 最後に、脳科学の知見を踏まえた、日常生活で実践しやすい睡眠改善のヒントを紹介します。できるものから取り入れてみてください。 生活リズムを整える 平日も休日も毎日なるべく同じ時間に就寝・起床し、体内時計を安定させましょう。朝起きたら太陽の光を浴びて脳に朝を知らせ、睡眠リズムを整える習慣も効果的です。 寝る前のリラックスタイム 就寝前1時間はスマホやパソコンなど光るスクリーンを見るのを控え、心身をリラックスさせましょう。明るい光は脳を覚醒させて眠気を妨げます。照明を落とし、読書やストレッチなど静かに過ごすのがおすすめです。 睡眠環境を快適に 寝室は静かで暗く、室温も快適に整えましょう。自分に合った寝具を使うことも大切です。音や光が気になる場合は耳栓やアイマスクも有効です。 日中の適度な運動 日中に適度に体を動かして程よく疲れておくと、夜はぐっすり眠れます。有酸素運動やストレッチは、ストレス解消にもなり一石二鳥です。ただし就寝直前の激しい運動は避け、寝る2~3時間前までに済ませましょう。短い昼寝(20分程度)は効果的ですが、長すぎる昼寝は夜の睡眠を妨げるので注意です。 カフェインとアルコール 夕方以降はコーヒーや緑茶などカフェインを含む飲み物は避けましょう。アルコールは一時的に寝つきをよくしますが、眠りを浅くするため、寝酒も控えるのが無難です。 これらのポイントを意識すれば、睡眠の質と量は少しずつ改善していくでしょう。十分な睡眠が確保できれば脳の働きが高まり心も安定します。その結果、日中のパフォーマンスが向上し、人生全体の満足度(ウェルビーイング)も上がっていくはずです。毎日の睡眠を大切にして、心身ともに健やかな生活を送りましょう。

自分の“好き”に従い研究の道へ:『恋愛の脳科学』研究者・藤崎健二さんの背景と原点

今回は、京都大学大学院で「恋愛の脳科学」の研究に取り組まれている藤崎さんにお話を伺いました。インタビューの前半では、藤崎さんの研究に至るまでの背景やこれまでの研究成果などについて詳しくご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。 https://mag.viestyle.co.jp/interview05/ インタビューの後半では、藤崎さんのパーソナルストーリーに焦点を当て、幼少期の生活や現在の趣味、研究に関するエピソードなどについて伺いました。 研究者プロフィール 氏名:藤崎 健二(ふじさき けんじ)所属:京都大学大学院 文学研究科 博士後期課程研究室:阿部研究室研究分野:恋愛、対人認知、fMRI 就職か進学かーー背中を押したのは自身の経験と一冊の本 ── まずは改めて簡単に自己紹介をお願いします。 現在は京都大学大学院文学研究科に所属し、研究に取り組んでいます。学部時代は慶應義塾大学理工学部で、脳波や心拍などの生理指標の解析に取り組んでいました。その後、恋愛関係の維持や構築を支える脳の仕組みについて深く研究したいと思い、大学院から京都大学に進学しました。 ── 大学院への進学はいつから考え始めましたか? 大学3回生の冬頃から、大学院への進学を考え始めました。元々は大学卒業後に就職するつもりでしたが、就職活動を進める中で、自分の心の声に従って好きなことや楽しいと思えることを仕事にしたいと思うようになりました。そんなとき、学部時代に図書館で偶然手に取ったのが『人はなぜ恋に落ちるのか?: 恋と愛情と性欲の脳科学』という一冊でした。恋愛の脳研究を専門にする第一人者の研究に触れたことで、昔から関心のあった「恋愛のしくみ」について本格的に研究したいという気持ちが強まり、大学院進学を決めました。 ── 始めは研究者になることは考えていなかったのですね。研究テーマの根幹となる、恋愛のメカニズムへの関心はどういった経緯でもつようになったのでしょうか。 自分自身の恋愛経験が大きかったと思います。これまでの人生の中で、特定の相手に強く惹かれる経験を通じて、恋愛がもたらす多幸感や心の揺れ動きは、日常で経験する感情とは質的に異なる、非常に特別なものだと実感しました。そうした体験から、なぜ恋愛はこれほどまでに人の感情や行動に強く影響を与えるのか、その背景にある脳の働きについて関心を持つようになりました。 ── ご自身の経験が研究へのモチベーションだったのですね。元々考えていた進路を変更する上で、苦労されたことはありますか? 周りの友人のほとんどが大手企業の就職を目指す中で、別の道を選ぶのは不安もあり、勇気が要る決断でした。そんな中、幸いにも同じように研究の道を志す先輩方が身近にいて、その存在が自分の背中を押してくれました。 人生のモットーはイチロー選手への憧れから ── 子供のころは脳科学以外にどのようなことに興味を持っていましたか? 小さい頃から、生き物に強い興味がありました。幼稚園の頃は昆虫が好きで、「昆虫博士」と呼ばれていたこともあります。小学生になると犬を家に迎え、高校時代には海外の爬虫類などを飼育していました。今でもいろんな動物が好きですが、犬が1番愛おしいです。 ── 様々な生き物に関心をもち続けた半生だったのですね。子供のころからの興味が現在まで続いているとのことですが、他にも今の自分に影響を与えた出来事や影響を受けた人物はいますか? はい、元メジャーリーガーのイチロー選手から大きな影響を受けました。小学校から中学3年生まで野球を続けていたこともあり、当時からイチロー選手は馴染みのある存在でした。あるとき、読書感想文のために彼に関する本を読んだことをきっかけに、その生き方や考え方に深く共感し、自分も彼のように信念を持って道を切り開いていける人になりたいと思うようになりました。 ── 具体的にはイチロー選手のどのような姿に影響を受けたのでしょうか? 好きなことを徹底して追求する姿勢に、強く影響を受けました。イチロー選手が野球という好きなことに出会い、誰よりも打ち込んできたからこそ、あれだけの成果を残せたのだと思っています。その姿勢は、「好きなことや楽しいと感じられることを大切にしたい」という、私自身の価値観の原点となっており、大学院進学を決める上でも大きな指針になりました。 また、直面する課題に対して原因の仮説を立て、検証し、改善へとつなげていくというイチロー選手の姿勢にも強く惹かれました。単に努力するのではなく、常に思考を巡らせながら自分を高めていくその在り方に、深い知性と探究心を感じました。 とはいえ、「修学旅行でも握力トレーニングを終えるまでは友達と遊ばなかった」という彼のストイックさについては尊敬しつつも、自分にはまだ難しいと思ってしまいます(笑) 研究は楽しい!ーーこれからの研究者に伝えたいこと ── 普段はどのように過ごされているのですか? 研究活動が生活のほとんどを占めています。その他には、研究室のリサーチアシスタント業務や、学部時代にアルバイトとして勤めていた会社からの委託業務などに取り組んでいます。 ── 研究やその関連活動が生活の一部となっているのですね。息抜きとして何か取り組んでいることはありますか? 今は料理にハマっています。昔から美味しい料理が好きで、学部時代は服と食べ物にバイト代を費やしていました。しかし、3年前に東京から京都に引っ越したことで美味しいお店と出会う頻度が減ってしまったので、節約も兼ねて自分で料理をするようになりました。最近はお肉やチーズの燻製料理にハマっています。 ── 最後に、これから同じ領域に挑戦してみたい学生や若い研究者に向けて、メッセージをお願いします。 研究に興味がある方には、「研究は楽しい!」ということをお伝えしたいです。アカデミアには自分の興味関心を探究できる世界が広がっており、大変なことも多いですが、この道を選んで本当に良かったと思っています。 少しでも関心がある方は、ぜひ勇気を出して、実際に研究をしている方の話を聞いてみることをおすすめします。近い分野でご活躍されている研究者の方々とは、研究に関する議論を深めたり、将来的に共同研究を行うなどのかたちでつながりを持てれば幸いです。 BrainTech Magazineでは、ブレインテック関連の記事を中心にウェルビーイングや若手研究者へのインタビュー記事を投稿しています。また、インタビューに協力していただける研究者を随時募集しています。 応募はこちらから → info@vie.style

五月病対策:新生活の疲れを乗り越えて心も軽やかに

五月病ってなに? 4月は入学や就職など新生活のスタートでワクワクしますよね。しかし、ゴールデンウィーク明け頃になると「なんだかやる気が出ない…」と感じる人が増えてきます。日本ではこの時期に見られる軽い憂うつ症状のことを俗に「五月病」と呼びます。 五月病は、新しい環境に適応できないまま連休を挟んで心身の疲れが出てしまい、気分が落ち込んだり、無気力になったりする状態です。医学的には「適応障害」などと診断されることもあります。症状としては、憂うつな気分ややる気の低下のほか、不安感や焦りが出たり、人によっては不眠、疲労感、食欲不振など体の不調を感じることもあります。 実はこの五月病は、学生から新社会人、ベテランの社会人まで誰にでも起こり得るものです。新年度の緊張が一段落するとホッとしますが、その反動で心にぽっかり穴が空いたように感じたり、長い休み明けで日常に戻るのが億劫になったりすること、ありませんか?それが「五月病」のサインかもしれません。 五月病かな?と思ったら 「もしかして五月病かも」と思ったら、まずは自分の心と体の状態に気付いてあげましょう。「最近なんだか元気が出ないな」「朝起きるのがつらい」といったサインに気づくことが第一歩です。 五月病は一過性のことが多いので、深刻に捉えすぎずに「ああ、今ちょっと疲れているんだな」と受け止めてみてください。自分を責めたり無理に奮い立たせたりする必要はありません。大切なのは、少し肩の力を抜いてリラックスすることです。 五月病の対策あれこれ では、気分が落ち込んでしまったときにどんな対策ができるでしょうか?ここでは、ビジネスパーソンから学生まで誰でも実践できるいくつかのヒントを紹介します。 適度に気分転換をする 勉強や仕事の合間に少し散歩をしたり、好きな音楽を聴いたりしてみましょう。新緑の季節でもありますし、外の空気を吸って軽く体を動かすだけでも、気分がリフレッシュします。趣味の時間をとることもおすすめです。 誰かと話す・つながる 一人で塞ぎ込まずに、信頼できる友人や家族に今の気持ちを話してみましょう。愚痴でも構いません。話すことで心が軽くなることがあります。また、以前の学校の友人や地元の仲間などと、久しぶりに会ってみるのも良い気分転換になります。 生活リズムを整える 夜更かしをせず十分な睡眠をとり、バランスの良い食事を心がけましょう。疲れているときほど基本的な生活習慣が乱れがちですが、実はそういう時こそ生活リズムを整えることが、心身の回復につながります。 逆に、ストレス発散のために暴飲暴食に走るのは逆効果です。お酒やジャンクフードに頼りすぎると、かえって体調を崩したり、後悔したりするので注意してください。 小さな目標を作る 「たまっていたメールの返信を全部片付けたら、自分にご褒美」「授業の後に好きなスイーツを食べる」など、ちょっとした楽しみを用意しておくのも効果的です。大きな目標でなくて構いません。小さな「楽しみ」や「達成感」を積み重ねることで、日々のモチベーションを維持しやすくなります。 必要なら専門家に相談を どうしてもつらいときや自分では対処しきれないと感じるときは、遠慮なく専門家に相談しましょう。学生であればスクールカウンセラーや保健室の先生、社会人であれば産業医や社内の相談窓口を利用するのも一つの手です。プロに話すのは勇気が要るかもしれませんが、心の健康のために恥ずかしがる必要はありません。 心のウェルビーイングとライフバランスを大切に 五月病の対策を考えることは、自分のメンタルヘルス(心の健康)やライフバランスを見直すことにもつながります。最近よく耳にする「ウェルビーイング」とは、心身ともに健康で充実した状態を指します。新生活で頑張ることも大切ですが、同時に自分が心地よく過ごせるバランスを取ることも同じくらい大事です。 今回紹介したように、適度に休息を取ったり人とつながったりすることは、心のウェルビーイングの第一歩です。心の元気が戻れば、新しい環境にも前向きに適応していけるでしょう。学校や仕事も大事ですが、自分自身の心と体はもっと大切にしてくださいね。 まとめ ゴールデンウィーク明けの憂うつ感は、決して珍しいものではありません。誰でも疲れたときはありますし、五月病かな?と思ったら焦らずに、今回紹介したような対策を試してみてください。そうすることで、「なんだ、意外と大丈夫かも」と心が軽くなってくるはずです。無理をしすぎず、自分のペースで日々を過ごすことで、きっと新しい季節を笑顔で乗り越えていけますよ。

心理的安全性を高める職場づくり|企業の取り組み事例10選を紹介

「安心して話せる」「間違いや反対意見を言っても否定されない」――そんな職場の空気が、チームの力を最大限に引き出す鍵になると言われています。注目を集める「心理的安全性」は、単なる理念ではなく、日々の行動や制度設計によって育まれる文化です。 本記事では、実際に心理的安全性の向上に取り組み、成果をあげている企業の具体的な事例を10社分紹介します。上司の関わり方、評価制度、対話の場づくりなど、今すぐ実践できるヒントを豊富にまとめました。 自社の組織づくりに取り入れられる工夫が、きっと見つかるはずです。 心理的安全性とは?職場に求められる「安心して話せる環境」 職場のチームワークや生産性を高めるうえで、近年多くの企業が注目しているのが「心理的安全性」です。マネジメントや組織開発の分野でも取り上げられる機会が増えており、持続可能で健全な職場づくりには欠かせない概念となりつつあります。 この章では、「心理的安全性とは何か?」という基本から、その重要性、組織にもたらす効果までをわかりやすく紹介します。 心理的安全性の定義と注目されている背景 「心理的安全性(Psychological Safety)」とは、自分の意見や気持ちを安心して表現できる職場の状態を意味します。1999年にハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授が提唱し、近年ではGoogleの大規模な社内調査「プロジェクト・アリストテレス」によって、その重要性が広く知られるようになりました。 プロジェクト・アリストテレスでは、「成果を出すチームに共通する要素は何か?」を分析し、その結果、最も重要なのが「心理的安全性」であると結論づけられました。どれだけ優秀なメンバーが揃っていても、発言しにくい雰囲気の中では、創造性やチームワークが十分に発揮されないことが分かったのです。 心理的安全性が高いチームでは、メンバーが失敗を恐れずに意見を出し合い、互いを尊重する文化が根付いています。そうした関係性があるからこそ、情報共有やアイデアの発信が活発になり、チームの成長にもつながっていきます。 心理的安全性がもたらす3つのメリット 心理的安全性が高い職場には、次のようなメリットがあります。 離職率の低下:安心して働ける職場では、人が辞めにくくなります 創造性・イノベーションの向上:自由な発言が、新しいアイデアのきっかけになります エンゲージメントの向上:信頼関係が深まり、仕事への意欲や自発性が高まります これらのメリットだけでなく、「心理的安全性」そのものについてさらに深く理解したい方は、こちらの記事も参考にしてみてください:👉 心理的安全性を高める4つの因子とその実践方法 心理的安全性を高める企業の取り組み事例10選 心理的安全性を高める取り組みは、業種や企業規模を問わず注目されています。ここでは、実際に社内文化の改善やチームの活性化に成功した企業の事例を紹介します。どの事例も、大小さまざまな組織で再現可能なヒントに満ちています。 1. カヤック|評価の「見える化」とフィードバック文化の定着 カヤックでは、全社員の360度評価を社内で完全公開するというユニークな制度を導入しています。360度評価とは、上司だけでなく同僚や部下など、さまざまな立場の人から意見をもらう多面的な評価手法で、個人の強みや課題をより客観的に把握することができます。 同社では、半期ごとの自己評価に対して、同職種の社員がコメントをつける仕組みで、過去の記録も全社員が閲覧可能です。これにより、誰がどのように評価されているかをオープンに共有し、透明性と信頼感を育んでいます。 また、社員同士が毎月ランダムにマッチングされ、良い点(スマイル)と改善点(コブシ)をコメントし合う取り組みも実施しており、直接の業務を知らない相手とのやりとりでも、公開されている評価を参考にフィードバックを行います。 「書かないこと」が最もネガティブに捉えられる文化の中で、社員は率直な意見を歓迎し、対話を通じて互いの成長を支える風土が根づいています。 参考:リクルートマネジメントソリューションズ 特集「組織の成果や学びにつながる心理的安全性のあり方」 2. メルカリ|ピアボーナス「mertip」で感謝が飛び交う職場に メルカリでは、社員同士がリアルタイムで感謝や賞賛を贈り合えるピアボーナス制度「mertip(メルチップ)」を導入しています。この制度はSlackや専用Webフォームを通じて簡単に贈ることができ、感謝の気持ちとともに少額のインセンティブも付与される仕組みです。 もともと社内には、Thanksカードを贈る「All for One賞」という文化がありましたが、mertipにより拠点や部署を超えた日常的・即時的なコミュニケーションがさらに活性化し、導入後の社内アンケートでは満足度87%と高い評価を得ています。 社員からは「感謝が見える形になったことで、他部署との連携がしやすくなった」「お互いに見てもらえていると実感できる」という声もあり、心理的安全性の土台となる信頼と相互理解の強化に大きく貢献しています。 参考:mercan 公式HP「贈りあえるピアボーナス(成果給)制度『mertip(メルチップ)』を導入しました。」 3. ねぎしフードサービス|店舗同士のつながりと1on1で信頼関係を構築 飲食店「牛たん とろろ 麦めし ねぎし」を展開するねぎしフードサービスでは、過去に起きた“店舗に従業員が誰も出社しない”という出来事を機に、企業ビジョンを売上重視から「人中心の永続性」へと転換しました。 この方針転換以降、同社は従業員との信頼関係を深めるためのさまざまな取り組みを実施しています。たとえば、同地域内に似た形態の店舗を複数出店することで、店舗間の交流を活発化させました。また、アルバイトを含めた定期的なミーティングでは、立場に関係なく発言しやすい場づくりが徹底されています。 さらに、独自の人材育成プログラム「100ステッププログラム」や、店長とスタッフの月1回の1on1ミーティングを通して、個人の成長や課題を丁寧にサポートし、多様な人材が安心して働けるよう、外国人アルバイト向けの研修制度も整備されています。 こうした施策の積み重ねにより、従業員満足度は65%から85%に大きく向上しました。 参考:ねぎしフードサービス 公式Youtube「100年企業への人財共育と風土づくり|牛たん とろろ 麦めし ねぎし」 4. 三菱電機モビリティ|自分たちから始める対話型の風土改革 三菱電機モビリティ株式会社では、設立当初から心理的安全性の向上を重視し、全社員が主体となって取り組む風土改革を推進しています。 同社が掲げるテーマは「自分たちから始める風土改革」。その実現に向けて、役職や部門を越えて対話を行う全社参加型ワークショップ「変革フェスティバル」を開催しています。この場では、社員一人ひとりが自身の「ありたい姿」を言語化し、本音で意見を交わすことで、現場ごとの心理的安全性に関する課題も自然と浮き彫りになっています。 こうした取り組みにより、「対話する文化」が少しずつ根づき始めており、社員が変革を“自分ごと”としてとらえる意識が社内に広がっています。 この活動は、心理的安全性AWARD2024にも選出されるなど、社外からも高く評価されています。 参考:三菱電機モビリティ株式会社 プレスリリース「「心理的安全性AWARD2024」において最高評価の「PLATINUM RINGを受賞」 5. ZOZOテクノロジーズ|情報の“見える化”でデジタル心理的安全性 ZOZOグループの技術部門を担うZOZOテクノロジーズでは、心理的安全性を“イノベーションの前提条件”と位置づけ、デジタル環境下での信頼構築に本格的に取り組んでいます。 以前は、Slack上にプライベートチャンネルやDMが乱立し、情報の流れが不透明になっていたことから、社員同士の助け合いや本音の発信がしづらい状況が続いていました。そこで、まず着手したのが情報のオープン化と構造化です。 SlackのプライベートチャンネルとDMの原則禁止、チャンネルの命名ルール制定、月1回の「棚卸しデー」の導入により、誰がどこで何を話しているかが見える状態を整備しました。また、経営会議の議事録も原則公開とし、トップ自らオープンな姿勢を示すことで、全社的な信頼醸成につなげています。 参考:BUSINESS INSIDER「DM禁止、原則オープン、ZOZOテクノロジーズが「デジタル心理的安全性」のためにやったこと」 6. 電通総研|全社と現場の両軸で築く心理的安全性の土台 電通総研では、心理的安全性を育むために、全社と部署の両面から取り組みを進めています。同性・事実婚パートナーを配偶者として認める制度や、多様な働き方を支援する仕組み、心身の健康を支える施策などを通じて、エンゲージメント向上の土台づくりを強化しています。 現場レベルでは、人と組織に関するサービスを担うHCM(Human Capital Management)事業部が中心となり、部署横断チーム「WST」を結成しました。WSTでは、社員アンケートをもとに、「縦割りの関係」や「相互理解の不足」などの課題を洗い出し、趣味をテーマにした投稿「タグトーーク!」、懇親会、新入社員紹介動画などの取り組みを実施しました。 こうした活動が社内外で評価され、OpenWork「若手社員がおすすめする企業ランキング」1位(2024年)にも選出されました。 参考:電通総研 人事ソリューションサイト「事例から学ぶ「風通しのいい職場」の条件と心理的安全性」 7. 三井住友海上火災保険|柔軟で対話の多い働き方 三井住友海上火災保険のCXマーケティング戦略部では、従来のように順を追って計画通りに進める仕事の進め方から、チームで話し合いながら柔軟に進行できる新しいスタイルへと切り替えました。社外の研修を通じてその考え方を学んだことで、企画・データ分析・実行・改善の流れが大幅にスピードアップし、従来3か月以上かかっていた施策が、1か月以内で実現できるようになりました。 日々の業務では、朝の短いミーティングで全員が進捗や悩みを共有し合っています。これにより、職種や立場を超えて声をかけ合う機会が増え、誰でも自由に意見を言いやすい空気が生まれました。以前は会話が少なく孤独を感じることもありましたが、今では自然と助け合う場面が増え、チームの一体感が高まっています。 こうした変化を通じて、心理的安全性が高まったと多くのメンバーが実感しています。 参考:scrumic.japan HP「三井住友海上火災様 セミナー受講インタビュー」 8. LIFULL|対話を促す仕組みで心理的安全性を向上 株式会社LIFULLでは、社員が安心して意見や感情を表現できる心理的安全性の確保を重視しています。全社ガイドラインで「敬意をもって意志を伝え、決定には全力を尽くす」と明文化し、率直な対話を前提とした組織文化の浸透を図っています。 現場レベルでは、1on1ミーティングの定期実施や「コミュニケーションデイ」の設定により、チーム内での対話機会を確保しています。また、チームビルディングやオンボーディング施策も工夫されており、新入社員が早期に安心して働ける環境づくりがおこなわれています。さらに、社員一人あたりに設定されたコミュニケーション予算を活用し、会食やイベントによる交流も活性化しています。 部門を越えた関係性を築くために、サークル活動支援やピザパーティ、バースデーパーティの開催といった施策も実施し、こうした制度と風土の両輪により、社員同士の相互理解が深まり、自然と心理的安全性が高まる職場が実現されています。 参考:LIFULL HP「チームへの投資」 9. NTTコミュニケーションズ|全社横断の対話型アプローチ NTTコミュニケーションズでは、NTTドコモ、NTTコムウェアとのグループ再編に伴う組織変化を背景に、社員のエンゲージメントスコアが低下傾向にあることに危機感を抱き、2023年秋から「Go Together Next Stage」を掲げた組織開発プロジェクトを始動しました。150名以上の社員で構成された「組織開発ワーキンググループ(WG)」が中心となり、透明性、つながり、対話、挑戦、価値観の共有といった5つの目標を掲げ、心理的安全性を軸とした職場づくりに取り組んでいます。 初期段階では、役員によるセミナーや組織長向けのワークショップを通じて、心理的安全性の理解促進とアクション宣言を実施し、その後、部門単位でワークショップを展開し、現場レベルでの具体的な行動計画に落とし込んでいます。 また、有志社員が中心となって進める「ワクワクプロジェクト」や、マネジャー層向けの研修「Manager Meetup」など、上下の垣根を越えた対話の機会も増加し、今後は、社員一人ひとりの行動に結びつくハンドブックの作成や、ツール活用による職場づくりを通じて、心理的安全性をより深く組織に根づかせていく方針です。 参考:docomo business HP「NTT Com流組織開発~全社横断の組織づくりの本質に迫る!第2回「心理的安全性で変わる職場 NTT Com流組織開発の歩みとは?」」 10. トリプルバリュー|全員が挑戦しやすい職場づくり 株式会社トリプルバリューでは、社員一人ひとりが安心して意見を伝え、互いに尊重し合いながら挑戦できる職場環境づくりに取り組んでいます。その姿勢が高く評価され、2024年の「心理的安全性AWARD」において、最上位のゴールドリング賞を受賞しました。 同社では、自社開発のエンゲージメントカードや社内イベントを通じて、自由に話し合える空気づくりを推進しています。また、育児中のパート社員が働きやすいよう、出勤日数や時間を自由に選べる柔軟な勤務制度を整備し、互いに助け合える働き方を実現しています。 さらに、役割に応じて「Chief Flower Officer(オフィスの花を管理・演出する責任者)」などユニークな肩書きを設定し、個人の強みを活かして活躍できる機会を提供しており、こうした数々の取り組みにより、社内では自発的に新しいプロジェクトが次々と立ち上がり、心理的安全性の高い風土が企業の成長エンジンとして機能しています。 参考:トリプルバリュー HP「心理的安全性の高い場づくりに取り組むチームを讃える「心理的安全性AWARD2024」にて、トリプルバリューがゴールドリングを受賞」 事例から見える心理的安全性を高める共通の工夫とは ここでは、これまでに紹介した事例をもとに、特に多くの組織に共通していた実践ポイントを4つに整理して紹介します。 共通ポイント1:上司の関わり方が空気をつくる 多くの企業が、上司の「聴く力」や「対話の姿勢」の重要性を認識し、マネジメント層への研修や働きかけを行っています。たとえば、三井住友海上火災保険では傾聴スキルの強化を通じて、相談しやすい関係性を築きました。NTTコミュニケーションズでは、幹部や組織長による心理的安全性に関するアクション宣言が、現場の対話文化を後押ししています。 このように、上司が対話の姿勢を示すことは、職場全体の心理的安全性の土台づくりにつながります。 共通ポイント2:定期的な1on1・チーム対話の「場」を設ける LIFULLやねぎしフードサービスのように、定期的な1on1やチームでのコミュニケーションデイを設けている事例も多数見られました。短時間でも顔を合わせて話す時間を持つことで、日常の悩みや違和感を共有しやすくなり、安心して働ける空気感が醸成されています。 このように、日常的な対話の機会を仕組みとして取り入れることが、関係性の強化に直結しています。 共通ポイント3:評価制度に「安心して話す」行動を組み込む カヤックのように、360度評価を全社員に公開する制度を導入している企業では、「本音で話すこと」そのものが組織にとっての価値として明確に位置づけられています。また、三菱電機モビリティのように、対話の質そのものを風土改善のKPIと捉える動きも見られました。 このように、評価制度に対話の視点を組み込むことで、安心して発言できる文化が根づきやすくなります。 共通ポイント4:「可視化」や「感謝」を通じて心理的障壁を取り除く Slackチャンネルの見える化(ZOZOテクノロジーズ)やピアボーナス制度(メルカリ、Chatwork)のように、行動や感謝の気持ちを「見える化」する仕組みも心理的安全性の向上に寄与しています。Uniposのような仕組みを通じて「ありがとう」が飛び交う職場では、信頼とつながりが自然と育まれます。 このように、目に見えるかたちで感謝や貢献を共有することが、心理的な壁を和らげる鍵になります。 心理的安全性の取り組みを自社で始めるには? 心理的安全性の取り組みを始めるには、いきなり全社的な改革に着手するのではなく、小さな一歩から始めることが成功のカギです。ここでは、取り組みを自社でスタートするための基本ステップを3つご紹介します。 まずは小さなチームから始めてみる 最初から全社での導入を目指すよりも、3〜5人ほどの少人数チームや一部門単位での導入が現実的です。たとえば、週1回「10分間の1on1ミーティング」を設けて、上司が部下に「最近どう?」と気軽に声をかけるだけでも、安心して話せる雰囲気づくりが始まります。 また、「週に1回、30分の雑談ランチを設定」「朝礼でありがとうを一言伝える時間を作る」など、業務の中で無理なくできる工夫から試してみましょう。小さな成功体験が積み重なれば、他のチームへの波及も自然と起こります。 導入目的を明確にし、施策をカスタマイズ 施策を考える前に、「なぜ取り組むのか」を明確にすることが重要です。たとえば「メンバーの発言量が少ない」「離職が続いている」「部署間の壁が厚い」といった課題があるなら、それに合った施策を設計する必要があります。 具体的には、発言しやすい雰囲気を作りたい場合は「ファシリテーション研修」や「発言しやすい会議ルールの整備」、信頼関係を深めたいなら「月1のチームビルディング」「シャッフルランチ」などが有効です。会社に合ったちょうどよい方法を見つけて、小さく試しながら柔軟に見直していくのがポイントです。 効果測定の仕組みもセットで考える 施策をやりっぱなしにせず、「現場で実感されているか?」を確認する仕組みも大切です。たとえば、施策の前後に3問程度の簡易アンケート(例:「自分の意見を言いやすくなったと思う」「上司に相談しやすいと感じる」など)を実施したり、1on1のあとに「今日の話しやすさはどうだった?」と3段階でフィードバックをもらう方法があります。 無料で使えるGoogleフォームや社内チャット(Slack、Teams)で手軽に実施できるため、初期コストはほとんどかかりません。アンケート結果をもとに、必要があれば微調整しながら続けていくことで、現場の信頼感と取り組みへの納得感も高まります。 誰でも実践できる、心理的安全な職場づくり 心理的安全性のある職場は、特別なリーダーシップや大規模な制度改革がなければ実現できない、というものではありません。多くの成功事例が示すように、誰もが実践できる工夫の積み重ねが、安心して話せる空気を育てていきます。 上司の聴く姿勢、日常的な1on1、フィードバックの可視化、小さな「ありがとう」の言葉――これらは、どんな組織でも今日から取り入れられる行動ばかりです。 大切なのは、小さく始めて、継続しながら改善していくこと。心理的安全性は、「文化」として育てることで、チームにも事業にも確かな変化をもたらします。

風通しの良い職場を目指すなら知っておきたい特徴・メリット・デメリットをわかりやすく解説

働くうえで「人間関係のストレス」や「意見が通らない空気感」に悩んだ経験は、多くの人にとって身近なものではないでしょうか。そんな課題を解決するキーワードとして、いま注目されているのが「風通しのいい職場」です。 組織内でのコミュニケーションや情報共有が活発で、誰もが安心して意見を言える職場は、従業員の満足度や生産性を高めるだけでなく、企業全体の成長にもつながります。 本記事では、風通しのいい職場の定義や特徴、メリット・デメリット、そして実践的な改善方法までをわかりやすく解説します。 風通しのいい職場とは?わかりやすく解説 風通しのいい職場とは、社員同士が立場や役職に関係なく、自由に意見や情報を共有できる環境のことです。上司・部下の関係においても壁がなく、チーム全体で協力し合えるオープンな雰囲気が特徴です。 近年では、「心理的安全性(Psychological Safety)」という考え方が注目されており、自分の意見を安心して発言できる職場づくりが重視されるようになっています。こうした風通しの良い環境は、社員のエンゲージメント(仕事への主体性や熱意)を高める要因とされ、結果的に生産性や離職率にも影響を与えるとされています。 働き方が多様化する今、風通しのよさは職場選びや組織運営において、ますます重要な評価軸となりつつあります。 風通しのいい職場の特徴とは?5つのポイントで解説 風通しのいい職場では、単に仲が良いだけでなく、建設的なコミュニケーションが活発に行われ、組織としての一体感や柔軟性が高まりやすくなります。 ここでは、風通しの良い職場に共通する代表的な5つの特徴を紹介します。 1. 上司と部下のコミュニケーションが活発 上下関係に関わらず、業務上の相談やフィードバックが気軽にできる職場では、自然と問題の早期発見・解決が可能になります。 定期的な1on1ミーティングやカジュアルな雑談の場が設けられている企業では、信頼関係が深まりやすく、結果として風通しの良さにつながります。 2. 意見を言いやすい雰囲気がある 社員が自由に自分の考えを話せる雰囲気があるかどうかは、職場の風通しを大きく左右します。 会議での発言が歓迎される文化や、「誰の意見も尊重される」という共通認識がある職場では、アイデアが活発に生まれ、組織の成長スピードも加速します。 3. トラブルや課題に対する対応がオープンで迅速 風通しの良い職場では、問題が起きた際に責任のなすり合いではなく、「どう改善するか」を前向きに議論できます。 情報が隠されることなく共有されるため、対応も早く、職場全体で課題に立ち向かう姿勢が根付きます。 4. チームメンバー間の相互理解がある 役職や部署を越えて、互いの強み・弱みを理解し合える関係性も、風通しの良さに欠かせない要素です。 日頃から感謝や称賛を伝え合う文化があると、信頼関係が深まり、チームとしての結束力が高まります。 5. 組織全体に透明性がある(例:Slackの企業文化) 社内の方針や情報が一部の人だけでなく、全員にオープンに共有されている組織では、不安や不信感が生まれにくくなります。 たとえば、Slackではチャンネルベースでの情報共有が活発に行われており、「誰が何をしているか」が可視化されている点が特徴です。こうした透明性が、風通しのよい組織運営に大きく貢献しています。 風通しのいい職場のメリットとデメリット 一見すると良いことばかりのように思える「風通しの良さ」ですが、状況によっては逆効果になることもあります。 ここでは、風通しのいい職場が企業や働く人に与えるメリットと、注意すべきデメリットについて、それぞれ詳しく解説します。 メリット1:離職率の低下 風通しのいい職場では、社員が上司や同僚に対して不満や課題を率直に伝えることができるため、問題が深刻化する前に対処できます。 たとえば、「人間関係の悩み」や「業務量の偏り」といったよくある不満も、早期に共有されれば適切な対応が可能です。 このように、声が届く環境が整っていることで、社員のストレスが軽減され、結果的に離職防止へとつながります。 メリット2:チームの生産性向上 チーム内での意見交換が活発な職場では、改善アイデアや課題解決策が日常的に生まれやすくなります。 また、上下関係に縛られず「こうしたほうがいい」と気軽に発言できることで、現場の声をもとに業務が見直される機会が増えます。 結果として、業務フローの効率化や意思決定のスピード向上につながり、チーム全体の柔軟性と生産性が高まります。 メリット3:従業員満足度の向上 「自分の意見が受け入れられている」と実感できる環境は、働く人の自己肯定感やモチベーションを高めます。 また、評価やフィードバックがオープンにおこなわれることで、自分の成長を実感しやすくなります。Slackなどのオープンチャットツールを活用して「Thanksメッセージ」や「称賛チャンネル」を設けることも効果的でしょう。 デメリット1:意思決定が遅れる可能性 誰もが自由に意見を出せる環境は素晴らしい反面、会議やプロジェクトの意思決定が複雑になることもあります。特に、多様な視点が飛び交う場では「全員の納得を得よう」としてしまい、結論がなかなか出ない事態もあります。 そのため、あらかじめ決定プロセスや最終決裁者を明確にしておくことが重要です。 デメリット2:慣れすぎるとルーズな雰囲気になる懸念 風通しの良さを「なんでも言っていい、なんでもやっていい」と誤解されると、規律が緩み、仕事の品質や責任感が低下する恐れがあります。 たとえば、遅刻やルール違反に対して誰も注意しなくなったり、建設的でない意見が許容されたりするケースが挙げられます。自由な文化の中にも「守るべき基準」や「共通の価値観」を設定し、組織としての軸を保つことが不可欠です。 このように、風通しのいい職場には多くの利点がある一方で、行き過ぎることで課題も生じます。 理想は、「意見が言いやすく、かつ組織としての秩序や方向性が保たれている状態」です。運用面での工夫が、真に働きやすい職場づくりの鍵となります。 風通しの悪い職場に共通する問題点とは? 風通しの悪い職場では、コミュニケーションの断絶が慢性化し、組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことが少なくありません。 以下では、風通しの悪い職場にありがちな3つの問題点を具体的に見ていきます。 1. 発言が躊躇される 「言ってもムダ」「どうせ聞いてもらえない」といった空気がある職場では、社員は次第に意見を言わなくなります。 これは心理的安全性の欠如によるもので、改善提案やリスクの指摘が行われにくくなるため、問題の長期化や業績悪化を招く原因となります。 2. 情報のブラックボックス化 意思決定のプロセスや組織の方針が明確に共有されていない職場では、「なぜこうなったのか」が見えず、社員の不信感が高まります。 特に、業務の背景や意図を知らされないまま指示される状況が続くと、やらされ感ばかりが強くなり、モチベーションの低下につながります。 3. 上層部と現場の距離がある 経営層や管理職が現場の声を拾わず、一方的に指示を出すだけの組織では、風通しの悪さが深刻化しやすくなります。 現場の実情を無視した意思決定は、業務の非効率化や人材流出の引き金にもなりかねません。 このような特徴に当てはまる職場に悩んでいる場合は、以下の記事も参考になります。 https://mag.viestyle.co.jp/badenvironment/ 風通しのいい職場をつくるための具体的な方法 風通しのいい職場をつくるためには、 「人間関係の良し悪し」だけではなく、制度・ツール・空間など多角的な改善が必要になります。 ここでは、今日から実践できる具体的な方法を4つ紹介します。 1. 定期的な1on1ミーティングの導入 1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で対話する時間を定期的に設ける仕組みです。業務の進捗確認だけでなく、「困っていることはないか」「挑戦したいことがあるか」など、個人にフォーカスした内容を話すことで、信頼関係の構築に直結します。 実践ポイント: 週1または隔週で15〜30分の時間を確保する 議題はあらかじめ共有し、部下が主導する形式にする 最初の5分は雑談からスタートし、緊張感をほぐす 導入直後は形式的になりがちですが、「聴く姿勢」を徹底することで、徐々に本音が引き出されるようになります。 2. フィードバック文化の醸成 フィードバックとは、他者の行動や成果に対して「よかった点」「改善できる点」を伝えるコミュニケーションのことです。これが活発に行われる職場は、互いに学び合い、成長できる風土が自然と醸成されます。 実践ポイント: 月1回のフィードバック面談を制度化する 日常の中でも「ありがとう」「助かったよ」などの感謝の言葉を増やす SlackやTeamsなどで「称賛チャネル」「ありがとうボット」を活用する 「指摘=批判」ではなく、「改善のチャンス」と捉えられるよう、ポジティブな伝え方を重視することが大切です。 3. 組織の情報共有ツールの導入 職場の風通しは、情報がどれだけ開かれているかによって大きく左右されます。TeamsやSlackのようなチャットツールを導入すれば、チームの会話や業務進行がリアルタイムで可視化され、誰でも状況を把握しやすくなります。 実践ポイント: 「#チーム共有」「#雑談」「#称賛」などのチャンネルを目的別に分ける 会議資料や議事録もツール上で共有し、見える化を徹底する できるだけDM(個人間メッセージ)を減らし、公開チャンネルで会話する文化をつくる オープンなコミュニケーションは、社員同士の信頼構築やナレッジの蓄積にもつながります。 4. 空間デザインの見直し 物理的な「風通し」も心理的な開放感に直結します。フリーアドレス制を導入したり、カフェスペースやリラックスエリアを設けたりすることで、偶発的な会話が生まれやすくなります。 実践ポイント: 固定席からフリーアドレスへの移行を段階的に進める 会議室ではなく「オープンスペース」での打ち合わせを増やす パーティションや壁を減らし、視界の抜けを意識する 会話の“きっかけ”を生み出すレイアウトは、風通しの良い社内文化の土台になります。 このような制度やツール、空間の工夫を通じて、職場全体のコミュニケーションが活性化され、信頼と安心感のある働きやすい環境が実現できます。 👉 職場改善に取り組みたい方は、こちらの記事も参考にしてください: https://mag.viestyle.co.jp/improveenviromentworking/ 心理的安全性がもたらす職場の変化とは?詳しく知りたい方はこちら 近年、職場における「心理的安全性」の重要性がますます注目されています。心理的安全性が確保されている組織では、メンバー同士が安心して意見を交わし、新しいアイデアや課題にも積極的に取り組むことができるため、チーム全体の生産性や満足度が大きく向上します。実際に、心理的安全性の高い職場環境は、離職率の低下やイノベーションの促進にもつながるといわれています。 もし、より具体的に「心理的安全性とは何か」「どのようにして職場に導入できるのか」を知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 https://mag.viestyle.co.jp/the-four-factors-of-psychological-safety/ 風通しのいい職場はチームの力を引き出す 風通しのいい職場は、社員一人ひとりの声が届き、信頼し合える関係性のなかで仕事が進む理想的な環境です。コミュニケーションが活性化することで、チームの力が最大限に引き出され、生産性や創造性の向上にもつながります。 とはいえ、いきなり職場全体を変えることは簡単ではありません。まずは「上司と雑談してみる」「ありがとうを言葉にする」といった小さな行動から始めてみましょう。 風通しのいい職場づくりは、一人ひとりの意識と行動の積み重ねから生まれます。今日からできる一歩を踏み出すことで、あなたの職場も少しずつ変わっていくはずです。

1 2 3 4 5

Ready to work together?

CONTACT

ニューロテクノロジーで新たな可能性を
一緒に探求しませんか?

ウェアラブル脳波計測デバイスや、
ニューロミュージックに関心をお持ちの方、
そして共同研究や事業提携にご興味のある
企業様、研究機関様からの
お問い合わせをお待ちしております。