TAG

ブレインテック

ニューロテックを活用した医療の最前線を紹介

ブレインテック(脳技術)は、脳の機能を解析し治療する革新的な技術であり、医療分野で急速に重要性を増しています。診断精度の向上や個別化医療、新しい治療法の開発、リハビリテーションの効率化など、多くの利点がありますが、その普及には法規制や倫理的な課題が伴います。あなたや大切な人がより良い医療を受けるために、ブレインテックが果たす役割とその課題を理解し、未来の医療を見据えたブレインテックの可能性を共に探ってみましょう。 医療分野でのニューロテック(ブレインテック)の重要性 ニューロテック(ブレインテック・脳技術)は、脳の機能を解析し治療するための革新的な技術です。近年、この分野の進歩は著しく、医療分野での重要性が急速に高まっています。 診断の精度向上 医療分野でニューロテックの大きな貢献の一つは、診断の精度向上です。たとえば、脳波測定デバイス(EEG)は、脳の電気的な活動をリアルタイムで記録し、異常なパターンを検出することができます。 これにより、てんかんや脳腫瘍、認知症などの神経疾患を早期に発見することが可能になります。早期発見は、適切な治療計画の立案や患者の予後改善に直結するため、非常に重要です。 ブレインテックはこのように、診断の精度を高めることで医療の質を向上させています。 個別化医療の推進 ニューロテックは、患者一人ひとりの脳の状態に基づいた個別化医療を推進しています。例えば、ニューロフィードバック技術を用いることで、患者自身が脳波をリアルタイムで観察し、自分で状態をコントロールできるようになります。 これにより、うつ病や不安障害、ADHDなどの治療が個別化され、より効果的な治療が期待されます。従来の治療法は一律的でしたが、ブレインテックの導入により、個々の患者に合わせた治療が実現し、治療効果が向上しています。 新しい治療法の開発 ​​ニューロテックは、従来の治療法に代わる新しい治療法の開発にも大きく貢献しています。例えば、脳深部刺激療法(DBS)は、脳の特定の部位に電極を埋め込み、電気刺激を与えることで、パーキンソン病や強迫性障害の治療に使用されています。この方法は、従来の薬物療法に比べて副作用が少なく、より効果的な治療が期待されています。 ニューロテックはこのように、新たな治療法を提供することで、患者に対する治療の選択肢を広げ、より良い治療結果をもたらすことに貢献しています。 リハビリテーションの効率化 ニューロテックは、脳卒中や外傷性脳損傷後のリハビリテーションにも大きな役割を果たしています。たとえば、バーチャルリアリティ(VR)を使ったリハビリプログラムや、ニューロフィードバックを活用した訓練プログラムは、従来のリハビリよりも効果的であることがわかっています。 ゲーム感覚でリハビリに取り組めることで、患者の意欲が高まり、回復のスピードが上がる可能性があります。このように、ニューロテックはリハビリテーションの効率を高め、患者の生活の質を向上させるために重要な役割を担っています。 参考文献 Li, Z., Han, X., Zhang, Q., & Huang, L. (2023). A systematic review and meta-analysis on the effect of virtual reality-based rehabilitation for people with Parkinson’s disease. Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation, 20, 14.  Berger, T., Kober, S. E., & Neuper, C. (2023). Effects of virtual reality-based feedback on neurofeedback training performance—A sham-controlled study. Frontiers in Human Neuroscience, 17, 105.  医療分野でのニューロテック(ブレインテック)の活用事例 ブレインテックは、医療分野において多岐にわたる活用がされています。以下に代表的な活用事例をいくつか紹介します。 脳波測定デバイス(EEG) 脳波測定デバイス(EEG)は、脳の電気活動をリアルタイムで記録する装置です。これは、てんかんの診断と管理に広く使用されています。EEGを用いることで、てんかん発作の発生部位と頻度を特定し、適切な治療計画を立てることができます。 実際の使用例 世界的に有名なてんかんチームが所属する、アメリカのメイヨークリニックのてんかん治療ユニットでは、入院中の患者に対してビデオEEGモニタリングを実施しています。これにより、脳の活動を詳細に記録し、発作の発生部位とパターンを特定して適切な治療計画を立てる取り組みを行っています。 たとえば、ある患者は月に100回以上の発作に苦しんでいましたが、EEGモニタリングを通じて発作の原因を特定し、外科手術によって発作の頻度を大幅に減少させることができました。EEGを使用することで、てんかんの早期診断と治療計画の精度が向上し、患者の生活の質が大幅に改善されました。 参考:From 100-plus seizures a month to seizure-free 脳深部刺激療法(DBS) 脳深部刺激療法(DBS)は、脳の特定の部位に電極を埋め込み、電気刺激を与える治療法です。これは、パーキンソン病や強迫性障害(OCD)、うつ病などの治療に用いられます。 実際の使用例 ペンシルベニア大学の事例では、59歳の男性患者がパーキンソン病に11年間苦しんでいました。彼は手の震えや体の動きがうまくいかない問題を抱えており、薬が効かなくなってきていました。 そこで、脳に小さな電極を埋め込む手術(脳深部刺激療法)を受けた結果、症状は大幅に改善し、手術後6か月で薬の量を半分以上減らすことができました。 参考:Deep Brain Stimulation for Parkinson's Disease 認知行動療法(CBT)アプリ 認知行動療法(CBT)は、否定的な思考パターンや行動を特定し、それを前向きに変えることを目的とした心理療法です。うつ病や不安障害などの精神疾患に効果的で、多くの研究によりその有効性が証明されています。 実際の使用例 米国のHappify Healthによって開発されたアプリ「Ensemble」は、うつ病や全般性不安障害の治療を目的としています。このアプリは、認知行動療法、マインドフルネス、ポジティブ心理学に基づくトレーニングを提供し、患者がネガティブな思考パターンを変え、目標達成に向けて集中力を高めるスキルを学べるように設計されています。 このアプリは医師の処方によって使用されるもので、FDAの承認を取得しています。患者は自宅で治療を続けながら症状の改善を実感し、精神科医との面談時に進捗データを共有することで治療の効果を最大化することが可能です。 参考:Happify Launches the First Prescription Digital Therapeutics to Treat Both MDD and GAD ブレインマシンインターフェース(BMI) ブレインマシンインターフェース(BMI)は、脳の信号をキャッチして機械を操作する技術です。この技術は、失われた運動機能を取り戻すのに役立ち、脳卒中後のリハビリにも使われています。 実際の使用例 脳卒中後に上肢麻痺が残った患者が、BMIを用いたリハビリに取り組んだケースがあります。この患者は、脳の電気信号を利用して外部デバイスを操作する訓練を行いました。 具体的には、脳の活動を電気信号として捉え、その信号をもとに麻痺した手や腕の動きを再現する技術です。このアプローチにより、患者は意図した動きを再びコントロールできるようになり、患者の運動機能の回復が促進されました。 BMIを用いたリハビリは、脳の可塑性を高め、従来のリハビリよりも早期に効果を発揮することが確認されており、患者の生活の質を大幅に向上させる可能性があります。 参考:Brain–machine Interface (BMI)-based Neurorehabilitation for Post-stroke Upper Limb Paralysis ​BMIについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 https://mag.viestyle.co.jp/brain-machine-interface/ ニューロテック(ブレインテック)医療の課題 ブレインテック医療は革新的な治療法を提供する一方で、患者のプライバシー保護、データの安全性、倫理的な使い方などの問題にも直面しています。これらの問題を解決することは、安全で効果的に技術を利用するために非常に重要です。 法規制の課題 ブレインテック医療の発展には、法規制に関するさまざまな課題があります。これらの課題は、技術の安全性と有効性を保証するために重要ですが、同時に技術の開発と普及を妨げる要因にもなっています。 複雑な承認プロセス 新しい医療技術、特にブレインテックのような先端技術は、厳しい法規制の下で承認を受ける必要があります。安全性と有効性を証明するためには、多くの臨床試験や膨大なデータが必要であり、これらの試験は数年かかることがほとんどです。 さらに、各国の規制機関(例えばアメリカのFDAや欧州のEMA)に提出するための書類作成や手続きも複雑です。このため、多くの専門知識とリソースが必要になります。結果として、開発者には時間とコストの大きな負担がかかり、技術の市場投入が遅れることがあります。 地域ごとの規制の違い また国や地域によって異なる法規制が存在し、企業が各地域ごとに異なる承認プロセスを経る必要があることも課題の一つです。 例えば、アメリカではFDAが医療機器や薬品に対して厳しい基準を設けており、製品の承認には詳細な臨床試験データと安全性評価が必要です。一方、欧州では製品がEUの安全性、健康、環境保護の基準に適合していることを示すCEマークの取得が求められます。 アメリカで承認を得た製品を欧州に展開するには、再度CEマークの取得が必要であり、この手続きの中には重複するものも多く存在し、かなりの労力を伴います。これにより、技術のグローバル展開が遅れ、市場への迅速な導入が妨げられることがあります。 このような課題が存在するため、今後ブレインテックの普及に伴い、各国の法規制も整備が進むと予想されます。国際的な規制の統一が進むことで、各地域ごとの異なる承認プロセスが簡素化され、開発者は一度の承認で複数市場に参入でき、時間とコストの負担が軽減されるかもしれません。 倫理的な課題 ブレインテック医療の発展に伴い、倫理的な問題も浮上しています。特にプライバシーの懸念と患者の意思決定に関連する倫理的なジレンマが重要な課題として挙げられます。 プライバシーの懸念 ブレインテックは、脳活動データを収集・解析し、大量の個人データを扱うため、データのプライバシーとセキュリティは大きな課題となっています。患者の脳波データや治療履歴などの機密情報が不正アクセスやデータ漏洩のリスクにさらされる可能性があり、これに対する適切なセキュリティ対策と法的整備が求められます。 患者の意思決定への影響 ブレインテックは脳に直接関与する技術であるため、倫理的な問題が伴います。 たとえば、脳深部刺激療法(DBS)や脳マシンインターフェース(BMI)の使用には、患者の同意や倫理的なガイドラインの遵守が必要です。これらの技術が悪用された場合のリスクについても考慮する必要があります。 さらに、ブレインテックの利用は患者の意思決定に影響を与える可能性があり、たとえばニューロモデュレーション(脳に電気や磁気の刺激を与えて神経活動を調整する技術)による治療は、患者の意識や行動に直接影響を与えるため、その適用範囲や方法について慎重な検討が求められます。 ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードする ブレインテックが拓く新時代の医療 ブレインテック医療は、診断技術の向上や個別化治療の実現に大きな可能性を秘めています。しかし、その進展には法規制や倫理的な課題、技術的な限界など多くの障害が伴います。 これらの課題を克服し、未来の医療をより良いものにするためには、技術の進化とともに、法規制の整備や倫理的な配慮が不可欠です。ブレインテック医療の未来は、これらの課題を乗り越え、新しい治療法や診断技術の開発を通じて、患者に対する医療サービスを向上させる可能性を持っています。

脳波測定技術の基本とビジネス活用法

脳波測定技術は、医療、スポーツ、エンターテインメント、さらには個人のヘルスケア管理に至るまで、多岐にわたる分野でその利用が進んでいます。 本記事では、脳波測定の基本から、脳波測定が可能なデバイスの紹介、脳波測定のビジネス活用法までを解説します。 脳波の測定方法とは? 脳波測定とは、脳の電気活動を記録し解析する技術です。この技術により、脳の状態をリアルタイムで観察することが可能となり、睡眠研究、疾患の診断、神経科学の研究、さらにはユーザーインターフェースの開発など、多岐にわたる用途で利用されています。ここでは、代表的な脳波測定の流れをご紹介します。 STEP1:電極の配置 脳波測定は通常、多数の小さな電極を頭皮に配置して実施されます。これらの電極は、頭皮を通して脳から発せられる微小な電気信号を捉えます。 STEP2:信号の記録 配置された電極を通じて、脳の電気活動を記録します。この際、信号はアナログ形式(波形で表される形式)で得られます。しかし、現代の科学技術ではデジタル形式(数値データとして処理される形式)の方が分析しやすいため、このアナログ信号をデジタル信号に変換する必要があります。 この変換を行うためには、高度な信号処理技術が用いられます。具体的には、不要なノイズ(乱れや無関係な信号)を取り除き、必要な脳波の信号を明確にするための補強が行われます。このようにして脳の電気活動をより正確に、よりクリアに捉えることができるようになります。 STEP3:データの分析 記録された脳波データは、さまざまな波形(アルファ波、ベータ波、デルタ波など)に分析され、これに基づいて脳の活動パターンを評価します。これらの波形は、睡眠、リラクゼーション、集中、ストレスなど、異なる心理状態を反映しています。 脳波測定でわかることは? 脳波測定を通じて、ストレスレベル、注意力、感情状態など、多岐にわたる脳の活動情報を読み取ることができます。たとえば、睡眠中の脳波パターンを分析することで、睡眠障害の診断や改善策の検討が可能になります。また、癲癇(てんかん)の診断や瞑想の深さを知るためのツールとしても利用されています。 ビジネス面では、脳波測定で得られた情報を活用して従業員のウェルビーイングの向上を支援したり、顧客体験を向上させる製品開発につなげることで活用されています。 脳波測定ができるデバイスを紹介 脳波測定には、さまざまな種類のデバイスが利用されています。これらのデバイスは、それぞれ特定の用途や環境に適した機能を持っています。 医療現場で使用される高精度の機器から、一般の方が日常生活で使用できる手軽なウェアラブルデバイスまで、その範囲は広大です。以下では、脳波測定に必要な代表的なデバイスをいくつか紹介し、それぞれの特徴と主な用途について詳しく解説します。 脳波測定に必要なデバイスは? fMRI fMRI(機能的磁気共鳴画像法)とは、脳内の血流の変化を見ることで、どの脳の部分が活動しているかを映像で示す技術です。この方法は、脳のどの部位が特定の作業に関与しているかを調べるのに使われています。 非常に高度な技術で、主に病院で利用されており、fMRIを使って脳の構造を詳しく見ることで病気の診断に役立てられています。 EEG EEG(脳波計)は、頭皮に配置されたセンサーを通じて脳の電気活動を測定するデバイスです。比較的低コストで手軽に使用でき、臨床はもちろん、日常生活やビジネスシーンでの使用が可能です。 MEG MEG(磁気脳波計)は、脳が活動する際に発生する非常に小さな磁場を測定する高度な装置です。MEGを使用することで、どの脳の部分がいつ活動しているかを非常に詳細に追跡できます。 MEGは脳の活動をリアルタイムで正確に観察できるため、脳の働きを研究する認知科学や神経科学でよく利用され、特定の脳の障害を診断する際にも役立てられています。 NIRS NIRS(近赤外線分光法)は、脳に近赤外線を当てて、脳内の血中酸素濃度の変化を測ることで、脳の活動を調べる技術です。NIRSは小型で持ち運びが可能なため、動きながらでも使用することが可能です。 特に小児の発達の研究や、スポーツ選手のトレーニング中の脳状態を研究する際など、実際の活動状況での脳の働きをリアルタイムで観察する際に用いられています。 PET PET(陽電子放射断層撮影)は、特殊な放射性物質を体内に入れて、脳の活動を映像で見ることができる医療技術です。この放射性物質は体内で分解される際に信号を出し、その信号を捉えることで、脳のどの部分が活発に動いているか、またどの部分に問題があるかを詳しく調べることができます。 この技術は主に、アルツハイマー病やがんなど、特定の病気を持つ脳の状態を調べる際に利用されています。 ウェアラブル脳波計 最近ではウェアラブル脳波計が開発されており、帽子やヘッドバンド、イヤホンなどの形をしたデバイスで、日常生活の中で簡単に脳波を測定することがで可能です。 これらのデバイスを使うことで、ストレスの管理、瞑想の効果測定、集中力の向上など、自分の心の状態(脳の状態)を知り、健康やウェルネス(心身の健康状態)を向上させるのに役立ちます。日常的に使える手軽さが魅力で、多くの人々に利用されています。 これらのデバイスは、それぞれ特有の利点と制限があり、使用する状況や目的に応じて選択されています。脳波測定では、求められる精度、利便性、コストのバランス等を考慮して行うことが重要です。 イヤホン型脳波計VIE ZONEの事例紹介 VIE株式会社では、イヤホン型のウェアラブル脳波計「VIE ZONE」を提供しています。このデバイスは、耳に装着するイヤーチップに特別な電極が組み込まれており、耳から脳波を測定することが可能です。 事例 1 :ポーラ化成工業株式会社 ポーラ化成工業株式会社との共同プロジェクトにおいて、脳波からマインドフルネス状態を推定する技術の開発を支援しました。本取り組みでは、VIEのイヤホン型脳波計を用いて心理状態をリアルタイムに可視化し、化粧品がもたらす感性価値の分析に活用しました。 具体的には、ユーザーの脳波データを収集し、個人差を考慮した学習アルゴリズムを構築して、マインドフルネス状態を正確に推定するというものです。この技術により、化粧品の使用がどの程度マインドフルネス状態を引き起こすかを評価できるようになり、製品の処方設計や香料、容器形態などの改善に役立てられました。 参考: VIE STYLE、ポーラ化成工業が行なったマインドフルネス状態を脳波計測から推定する技術開発を支援 事例 2 :株式会社リコー 株式会社リコーと共同で、ブレインテックとゲーミフィケーションを活用し、仕事への内発的動機(働きがい)を高めるための共同研究を行いました。ゲーミフィケーションとは、ゲームの楽しい要素を仕事や学習などの活動に取り入れて、やる気や集中力を高める方法です。 このプロジェクトでは、VIEのイヤホン型脳波計を使用して、仕事に対する内発的動機をリアルタイムで評価し、ゲーミフィケーション要素を取り入れることで働きがいの向上を目指します。 イヤホン型脳波計で、ユーザーの脳波を計測し、心理状態をリアルタイムでモニタリングすることで、仕事中のモチベーションや集中度を把握することが可能です。リコーの目指す「はたらく歓び」の実現をサポートするため、このデバイスとゲーミフィケーションを組み合わせ、業務の効率化だけでなく、従業員の創造力を引き出し、自己実現の実感を高めることが期待されています。 参考:リコーとVIE STYLE、ブレインテックを活用した仕事への内発的動機向上に関する共同研究を開始 事例 3 :国立がん研究センター東病院 国立がん研究センター東病院と共同で、内視鏡処置中における患者の鎮静深度推定に関する研究を実施し、日本臨床麻酔学会第42回大会にて成果を発表しました。この研究ではイヤホン型脳波計を使用し、患者の脳波をリアルタイムでモニタリングすることで、鎮静深度を高精度に推定する方法を検証しています。 内視鏡処置を受ける患者の脳波を記録し、鎮静深度指標(RASS)および使用薬剤の情報を同時に取得できるシステムを開発しました。このデータをもとに機械学習モデルを構築した結果、中等度以上の鎮静状態を81.68%の精度で分類できることが確認されました。本技術により、内視鏡処置中の鎮静管理がより簡便かつ正確に行えるようになり、患者と医療従事者双方の安全性向上と負担軽減が期待されます。 参考:国立がん研究センター東病院とVIE STYLE、ウェアラブル外耳道脳波計を用いた内視鏡処置における鎮静深度推定法に関する研究成果を発表 ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードする ビジネスでの活用も期待される脳波測定 脳波測定技術は、医療、スポーツ、エンターテインメント、ヘルスケア管理など多岐にわたる分野で活用されています。脳波測定により従業員のストレス管理や集中力向上に役立て、消費者向け製品開発でもパーソナライズされたユーザー体験を提供することに取り組む企業も増えてきています。 多様なビジネス分野で新たな価値を創出し続けている脳波測定技術は、今後もその応用範囲はさらに広がっていくでしょう。

ブレインテックとは?最新の活用事例を紹介

ブレインテックとは? ブレインテックとは、脳(Brain)と技術(Technology)の融合を表す言葉で、脳科学に関連したテクノロジーやサービスのことを指します。 ブレインテックは高度なIT技術を駆使して、人の好みやストレスレベル、脳疾患などのあらゆる「脳の情報」を収集します。これらのデータはマーケティングに活かしたり、アプリケーションとして集中度や睡眠の深さを可視化したり、モニタリング用の診断機器に応用したりなど幅広い展開が可能であり、多くの期待が寄せられている分野です。 これまでヒトの脳は解明されていない部分が多く、医療や私たちの生活の中で応用する機会はなかなかありませんでした。しかし、近年のIT技術の進歩や脳科学分野での研究が進んだことにより、ブレインテックを活用した新しいサービスが次々と生み出されています。 アメリカでは、神経(Neuro)と技術(Technology)を組み合わせて、ニューロテックとも呼ばれることもあり、世界的に注目を集めている領域の1つです。 世界的に注目されている理由 ブレインテックが注目されている理由の1つは、技術の進歩です。 例えば、脳波は今から100年ほど前にドイツのハンスベルガーという人物によって発見されています。しかしその脳波がデバイスやアプリに用いられたり、BMI(Brain Machine Interface)といわれる脳情報とコンピューターを繋ぐ技術が開発され、実生活に応用されるようになったのは、2000年に入ってからのつい最近の出来事です。 ブレインテックは脳波計測技術の向上やコンピューターの性能向上など、さまざまな技術の進歩のおかげで、これまでになかったビジネスやサービスが生まれ注目されています。 BMIについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェック: https://mag.viestyle.co.jp/brain-machine-interface/ どのような分野で活用されているのか ブレインテックはさまざまな分野で活用されています。以下は主な例です。 医療・・・ 脳波計測や脳画像解析技術を活用した、診断や治療支援が行われています。例えば脳波を計測して、てんかんの発作を予測したり、脳疾患のリハビリテーションに活用されています。 ヘルスケア・・・ストレスレベルのモニタリングや睡眠の分析など、生活習慣の改善を促進させてくれる技術として活用されています。 エンターテイメント・・・ユーザーの脳活動から操作が可能なゲームや、リラクゼーションやストレス解消に効くブレインテックを用いた音楽アプリが開発されています。 教育・・・ニューロフィードバックといわれる、自身の脳活動を記録し、その情報をフィードバックすることで脳をトレーニングする方法を用いて、集中力や記憶力の向上を目指すプログラムが提供されています。 他にもあらゆる分野でブレインテックは活用されており、幅広い応用が期待されています。 国内外のブレインテック企業を一挙紹介 ブレインテックはベンチャー企業から大手企業まで、幅広い企業が積極的に参入しています。その中には、日本のスタートアップからアメリカの大手テクノロジー企業までさまざまな企業が挙げられます。ここでは注目を集めている国内外のブレインテック企業を一挙紹介していきます。 海外のブレインテック企業 Neuralink(米) Kernel(米) BioSerenity(仏) Neuralink(米) アメリカの実業家イーロン・マスク氏が設立したNeuralinkは、脳とコンピューターを繋ぐBCI(Brain Computer Interface)技術の開発に取り組む、世界的に注目されている企業の一つです。 この技術は、脳で思考しただけで機械を直接制御できるようになることを目指しており、Neuralinkでは埋め込み型(侵襲型)デバイスの開発に注力しています。2024年に入ってからは、マスク氏がXにて臨床試験の被験者の募集も行っており、近い将来の実用化に目が離せません。 HPはこちら:https://neuralink.com/ Kernel(米) 2016年に設立されたKernelは、ヘッドセットの形をした非侵襲型の脳モニタリングデバイスを開発・提供している企業です。 Kernelのヘッドセットは、TD-fNIRSといわれる高度な脳波測定技術が使われています。この技術に挑戦する企業は少ないため、Kernelは既存のハードウェアが無い0からの開発に成功しました。現在はFDA承認に向けて臨床試験が行われています。 HPはこちら:https://www.kernel.com/ BioSerenity(仏) BioSerenityは、2014年にフランス・パリで設立された医療技術の分野で活動する企業です。 リモートでの患者のモニタリングサービスを提供しており、2021年1月にはウェアラブルEEGデバイスがFDAの承認を受けました。これにより、てんかん患者の脳状態を医師が遠隔で監視・評価することが可能になっており、てんかんモニタリングデバイスの需要増加を支える主力のサービスとなっています。 HPはこちら:https://bioserenity.com/ 日本のブレインテック企業 株式会社LIFESCAPES VIE株式会社 Ghoonuts株式会社 株式会社LIFESCAPES 株式会社LIFESCAPESは、BMI技術を駆使したリハビリ機器の開発に取り組み、脳卒中後の重度麻痺患者のQoL向上を目指す取り組みを行なっています。 慶應義塾大学 牛場潤一研究室の研究成果活用企業として、BMIによる新たなトレーニングやリハビリ方法の提案を行い、BMIの可能性を追求している企業です。 HPはこちら:https://lifescapes.jp/ VIE株式会社 VIE株式会社は、イヤホン型のウェアラブル脳波計を開発しており、電極のついたイヤーチップから脳波を簡易的に取得することを可能にしています。 この脳波計を用いて、製薬企業との共同研究から睡眠や集中に特化した音楽アプリの配信まで、メディカル、エンターテイメントなど幅広い分野でブレインテックを活用しています。独自の解析キットも提供しており、一般のユーザーも気軽に脳波に触れることができる機会を創出しています。HPはこちら:https://www.viestyle.co.jp/ Ghoonuts株式会社 Ghoonuts株式会社は、脳刺激デバイスの開発を通じて、治療が確立していない疾患に対する医療への貢献を目指しています。 特に失語症の患者向けに、言語トレーニングアプリの開発に着手しており、どこにいても誰もが言語リハビリを利用できるサービスの展開を目標としています。他にも認知症や統合失調症など、薬だけでは解決できない分野への挑戦も行う計画です。 HPはこちら:https://ghoonuts.com/ 最新ブレインテックの活用事例5選 医療分野からビジネス分野まで、ブレインテックは近年幅広い領域で盛り上がりを見せています。今後も技術の進化が期待されており、新しい情報が日々アップデートされていく中で、2023年以降に発表された最新のブレインテック活用事例を厳選して紹介します。 英 Neurovalens|不眠症を改善するデバイス アース製薬株式会社|脳波計を装着して商品パッケージを改良 日産自動車株式会社|脳波トレーニングでドライバーのパフォーマンス向上 アットアロマ株式会社|香り体験を可視化して購買行動をサポート VIE株式会社|「なりたい状態」に脳を近づけるニューロミュージック 英 Neurovalens|不眠症を改善するデバイス Neurovalensは、不眠症の改善に新たなアプローチを提供する「MODIUS SLEEP」というヘッドセットを開発しました。 このデバイスは2023年10月にFDAによる医療機器認可を取得しており、非侵襲的な電気刺激によって睡眠の改善を図ることが可能になっています。就寝前の30分間の着用で、睡眠スコアの向上や睡眠に対する満足度を高めることが期待されています。 HPはこちら:https://neurovalens.com/ アース製薬株式会社|脳波計を装着して商品パッケージを改良 アース製薬は、商品パッケージのデザイン改良に、ブレインテックを活用しています。 脳波計を装着した被験者に商品パッケージを提示し、視線や脳波を計測・解析することで、「どのような商品が目に止まるのか」「好感を示すデザインはどれか」といった評価を行います。この新しいマーケティング手法はすでに特許を取得しており、商品開発においてお客様の潜在的なニーズに入りこむことを可能にしています。 HPはこちら:https://www.earth.jp/ 日産自動車株式会社|脳波トレーニングでドライバーのパフォーマンス向上 日産自動車は脳波測定を用いた運転支援技術を開発し、ドライバーの脳機能や認知機能を向上させる取り組みを展開しています。 国際カーレースのフォーミュラEでは、「ブレイン・トゥ・パフォーマンス」と呼ばれる脳の潜在能力を引き出すトレーニングを採用し、さらなる運転パフォーマンスの向上を目指しています。 HPはこちら:https://www.nissan.co.jp/ アットアロマ株式会社|香り体験を可視化して購買行動をサポート アットアロマは、脳波計を用いて店頭で香りを体感した時のリラックス度を測定し、AIが顧客に最適なアロマを分析・提供するイベントを開催しました。 これまで主観的でのみ評価していた香りを、アロマの用途に合わせて「リラックス」という指標を掲げることで、顧客が客観的かつ定量的に商品を選択することが可能になりました。 HPはこちら:https://www.at-aroma.com/ VIE株式会社|「なりたい状態」に脳を近づけるニューロミュージック VIEは、ユーザーがリラックスや集中などの「なりたい状態」を選択することで、その状態に脳を近づける音楽を流す、脳チューニング音楽アプリ「VIE Tunes」を配信しました。 特定の脳活動を増減させる効果が科学的に確認されている「ニューロミュージック」は、さまざまなアーティストとのコラボレーションもおこなわれ、世界中で活用されています。 HPはこちら:https://www.viestyle.co.jp/ ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードする 幅広い応用が期待されるブレインテック ブレインテックは、脳と技術を融合させた新たな領域として、医療、エンターテイメント、ビジネスなど、幅広い分野で活用されています。 世界中のさまざまな企業が革新的な取り組みを行なっており、日々進化するブレインテックは、私たちの生活の中にも浸透していき、より身近に感じられる日も近いでしょう。

1 3 4 5

Ready to work together?

CONTACT

ニューロテクノロジーで新たな可能性を
一緒に探求しませんか?

ウェアラブル脳波計測デバイスや、
ニューロミュージックに関心をお持ちの方、
そして共同研究や事業提携にご興味のある
企業様、研究機関様からの
お問い合わせをお待ちしております。