生活の質を高めるお酒の話/お酒によってコミュ障を克服!?

コラム
この記事は約5分で読めます。

みなさんはアルコールに対してどのようなイメージがありますか?「アルコール中毒」といったマイナスな側面が強調されることがありますが、プラスな側面もたくさんあることが分かっています。

例えば、アルコールによって不安を軽減することができたり、初対面の人とも打ち解けることができたりなど、アルコールは社会における対人関係を手助けしてくれる要素も持ち合わせています。

初対面の人との交流の場で、アルコールが私たちをサポートしてくれるのは、アルコールにはセルフディスクロージャー(自己開示)を促す作用があるためです。

そんなアルコールに関連して、今回は『生活の質を高めるお酒に関する話』をご紹介します。

前回のコラムはこちらです。

ビールを好きになる脳の仕組みとは?
みなさんは「パブロフの犬」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? ベルが鳴ると餌が出る仕組みを理解した犬は、ベルの音が聞こえるだけでヨダレを垂らすようになるというものです。元々はベルの音を聞く聴覚系の神経細胞と、ヨダレを出す神経細胞はなん...

対人関係に役立つ?アルコールは社会的な飲み物

人は誰しも「こんなことを言ったら嫌われるかな?」「恥ずかしいな?」といった不安や自意識過剰の念に駆られることがあります。

このような感情は、主に脳の前頭葉という部分で起こっています。前頭葉は、人の行動の開始や抑制を司る機能がありますが、アルコールの飲用によってこの「抑制」の機能が低下すると言われています。それにより、素面では恥ずかしさや不安で言えないようなことも、お酒が入ることによって自分をさらけ出しやすくなります。

自己開示をすると、相手も自分のことを話しやすくなる、このようにしてアルコールの力で初対面の人とも打ち解けやすくなるのです。

実際に、初対面の3人組がアルコールを飲みながら会話をする方が、飲まなかったグループよりも会話が弾み、笑顔が増え、終わった後に「自分たちは仲良しだ!」と感じる割合が高いということが示された研究もあります。

初対面の相手とは「カフェから始める」よりも「お酒から始める」方が、仲良くなりやすいのかもしれません。しかし、先ほども述べたようにアルコールによって脳の「抑制」の機能が低下するため、その分リスクもあることは確かです。

※出典:Moderate Doses of Alcohol Increase Social Bonding in Groups – Association for Psychological Science – APS, 2024年7月2日参照

適度な飲酒は快適な睡眠を導く?

最近の研究では、適度な飲酒は初期段階の睡眠を深める効果があることが示されています。一方で、認知機能や感情の健康に影響を与える可能性があることも示唆されています。

はじめのうちはお酒をたくさん飲んだら、その分ぐっすりと眠られるかもしれません。しかし、それに味をしめて続けていくと、だんだん体も脳もアルコールに対する耐性がついてきてしまいます。

これは「辛いものを食べ続けると、同じ辛さでは満足できなくなっていく」のと同じ現象です。質の高い睡眠をアルコールによって誘発したいのであれば、一杯ほどの飲酒が良いのかもしれません。

※出典:Alcohol before bed: New research uncovers its impact on sleep architecture (psypost.org) , 2024年7月2日参照

記憶はつくられていなかった!?「飲み過ぎて記憶を飛ばした」は間違い

みなさんは「飲み過ぎて記憶飛ばしちゃったよ…」と誰かが言っているのを聞いたことはありませんか?この記事を読むお酒好きの方なら、自分でこのセリフを言ったことがある人もいるかもしれませんね。

しかし、実はこの言葉は間違いなのです。「記憶が飛ぶ」というのは、「ちゃんと記憶していたのに忘れちゃった」ということを指しますが、実際には飲み過ぎてしまった人の脳の中では「記憶をする」という機能自体が働いていないのです

もう少し説明すると、その人がその場で会話ややりとりをするのに必要な「短期記憶」は脳の中で働いています。しかし、次の日までその記憶を保持する「長期記憶」は働いていません。それにより、側から見ると普通に会話をしていた人でも、本人は次の日、記憶を無くしてしまっていることがあるのです。

つまり「記憶が飛んだ」ではなく、「記憶は作られていない」という方が正しいことになります。

※出典:Interrupted Memories: Alcohol-Induced Blackouts | National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism (NIAAA) (nih.gov), 2024年7月2日参照

まとめ

アルコールには健康のリスクはありますが、良い面もたくさんあります。不安を和らげたり、断りづらいことを断れるようになったり、新しい人との絆を強めたりなど、アルコールによって実現されることは数多くあります。さらに、適度な飲酒は睡眠の質を良くし、あなたの人生を豊かにするでしょう。

🎙ポッドキャスト番組情報

日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。

  • 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜
  • パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花

次回

次回のコラムでは、『お酒とニューロテクノロジーで実現する新しい世界』 をテーマにご紹介します。

脳情報で事業や研究をアップデート「VIE Streamer」

           

こんなお悩みありませんか?

・脳波を活用したいが方法がわからない
・研究開発から事業化まで時間がかかる
・脳科学の専門家がいない

会社にあった脳波活用の支援を実現します。

コラム
この記事を書いた人
BrainTech Magazine編集部

BrainTech Magazine編集部のアカウントです。
運営する株式会社VIEは、「Live Connected, Feel the Life~」をミッションに、ニューロテクノロジーとエンターテイメントで、感性に満ちた豊かな社会をつくることをサポートするプロダクトを創造することで、ウェルビーイングに貢献し、さらに、脳神経に関わる未来の医療ICT・デジタルセラピューティクスの発展にも寄与していきます。

BrainTech Magazine編集部Follow
タイトルとURLをコピーしました