怒っている相手と会話をするとき、「今のこの人は少し冷静さを欠いているな」と感じたことはありませんか?感情が高ぶっている相手と円滑にコミュニケーションを取るには、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。
今回は「感情」をテーマに、怒っている相手との対話をスムーズに進めるためのポイントを紹介します。
前回のコラムはこちらです。
感情を出し過ぎてしまわないために注意すべきこと
「怒り」や「苛立ち」といった感情は、過剰に表出するとトラブルの原因になります。怒りが爆発したり、泣き続けたり、ひどく落ち込んだりする状態は、これまで紹介してきた鬱やPMSの症状とも共通する部分があります。一方で、感情を全く表に出さないのも問題です。では、適度に感情を表現するために、人はどのように向き合っていけばよいのでしょうか。
感情のコントロールを見直す方法の一つに、「パースペクティブ(視点)の入れ替え」があります。たとえば、過去に経験した印象的な喧嘩を振り返り、自分が当時腹を立てた相手の立場になりきって、誰かとその場面を再現してみるのです。そうすることで、「あの人はこういう気持ちで私にあの言葉を投げかけたのか」と共感できる部分が見えてくるかもしれません。逆に、「やはり当時の私は正当な理由で怒っていたのだ」と、自分の感情を肯定できることもあるでしょう。
自分が傷ついたり、怒ったりした出来事に対して、一度相手の視点に立つことで、新たな気づきが得られます。「自分にも非があったかもしれない」「やはり自分は悪くなかった」といった形で、感情を整理し、消化することができるのです。視点を入れ替えるのは簡単ではありませんが、これを意識的に行うことで、より客観的に自分の感情を見つめ直すことができるでしょう。
感情が高ぶると、自分の視点だけで物事を判断しがちですが、意識的に視点を切り替えることで、物の見え方が変わり、人間関係の改善にもつながります。感情と上手に向き合うために、この「視点の入れ替え」を試してみてはいかがでしょうか。
適度な感情表現が必要な理由とは
一方で、感情をほとんど表に出さない人もいます。「この人は何を考えているんだろう?」と不安に感じることはありませんか?辛い時や苦しい時、あるいは楽しい時でさえ、感情を口にしない人を見ると、「もっと自分の気持ちを表現すればいいのに」と思うこともあるでしょう。
感情をあまり表に出さなくなる背景には、「感情を伝えても意味がない」と感じるような経験を積んできたことが関係しているのかもしれません。実際、感情を適切に言葉にする「ラベリング」の重要性が指摘されています。なるべく気持ちを言葉にすることが望ましいものの、怒りを爆発させてしまえば人間関係が悪化してしまうため、そのバランスが大切です。感情に課題を抱えている人は、大きく分けて「感情を出しすぎる」か「出さなさすぎる」かのどちらかに偏っていることが多いのです。
感情の表現が極端であることは、対人関係の構築にも影響を与えます。怒りをぶつけ続ける人とは距離を置きたくなりますし、逆に何を考えているのか分からない人とは、どう接すればいいのか戸惑ってしまいますよね。自分の感情を適切にコントロールしながら人と関わることで、よりスムーズな人間関係を築き、生きやすくなるのではないでしょうか。
まとめ
感情は、出しすぎても抑えすぎても対人関係に影響を与えます。怒りを爆発させれば人を遠ざけてしまい、逆に感情をまったく表に出さなければ、周囲は不安を感じてしまうでしょう。
大切なのは、自分の感情を適切に認識し、バランスよく表現することです。視点を入れ替えて相手の気持ちを想像したり、感情を言葉にして整理する習慣を身につけることで、より円滑なコミュニケーションが可能になります。感情と上手に向き合い、より良い人間関係を築いていきましょう。
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次回のコラムでは、脳科学の視点から『自由意志』についてご紹介します。