ニューロテクノロジーを使って見たい夢を見る方法とは?

コラム
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ストレスが溜まっているときに、怖い夢や悲しい夢を見た経験はありませんか?

以前「学習」に関する回でお伝えした通り、睡眠は日中に得た記憶を再構成する大切な時間です。そのため、私たちが見る夢には、寝る直前に体験したことや、その日に感じた感情が反映されやすいと考えられています。

今回は、そんな「夢」をテーマに、睡眠についてさらに深掘りしていきましょう。

前回のコラムはこちらです。

見たい夢を自分で作れる!ドリームエンジニアリングとは?

みなさんは、ドラえもんの「気ままに夢見る機」をご存じでしょうか?これは、のび太くんの「せめて夢の中だけでも活躍したい!」という願いに応えて、ドラえもんが見せてくれた道具で、見たい夢のカセットを入れると、その夢を見ることができるというものです。

もちろんこれは漫画の中の話ですが、実は現実世界でも、見たい夢をテクノロジーの力で実現しようとする「ドリームエンジニアリング」と呼ばれる研究が進んでいます。脳科学の分野で注目されているこの技術は、夢を自分でコントロールできるようにすることを目指しています。

その手法のひとつとして、「ターゲッテッド・ディアクティベーション」という方法が挙げられます。これは、寝る前に見たい夢に関連するコンテンツを視聴したり聞いたりしておき、寝ている間に同様の刺激を与えることで、その内容を夢として再現しやすくするという技術です。例えば、好きなアイドルの夢を見たい場合、寝る前にそのアイドルの動画を視聴し、さらに寝ている間にアイドルの声を聞かせることで、記憶が再活性化されて夢に反映されやすくなります。

将来的には、ニューロンを一つひとつターゲットにして刺激できるようになれば、完全に自由な夢を構成して見せることも可能になるかもしれません。ただし、これはまだ少し先の話です。しかし、夢を自らの意図に近づける試みとして、ディアクティベーション戦略は非常に注目されているテーマです。

最近では、VRとの組み合わせも試されています。たとえば、寝る前に空を飛ぶVR体験をすると、その感覚が記憶に残り、夢の中で空を飛ぶ夢を見やすくなるといった効果も報告されています。今後、テクノロジーが進化することで、夢の中でも自由に楽しむことができる未来が訪れるかもしれません。

寝ている人が見ている夢を解読!

日本のSFドラマ「悪夢ちゃん」では、人が見ている夢を他者が覗くことができるという設定が描かれていますが、実はこうした技術は、脳科学の分野で少しずつ実現に近づいています。

現在の研究では、被験者がfMRI(機能的核磁気共鳴機能画像法)の中で眠っている間に脳活動を測定し、「その人がどんな映像を見ているか」を解析する試みが進められています。夢を見ているとされるレム睡眠中に、被験者を起こして「今どんな夢を見ていたか?」と尋ね、実際に見ていた内容と脳活動のパターンを記録することで、特定の映像や夢に関連する脳活動をデータとして蓄積していきます。この方法を繰り返しデータを集めることで、夢の内容を解読できるようにする技術が開発されつつあります。

ただし、夢は主にレム睡眠中に発生するため、夢を解読するには、被験者がレム睡眠に入っているかを脳波で確認する必要があります。このタイミングで、夢の内容を記憶として残しやすくするためにディアクティベーション技術が使われることもあります。たとえば、レム睡眠中に関連する音を聞かせるなどして記憶を活性化することで、夢の記憶が鮮明に残る可能性があるのです。

このように、夢の内容を把握し、それを記録する技術は急速に進化しており、いずれ「夢の内容を正確に再現できる」日が訪れるかもしれません。

睡眠領域で挑戦したいこと

睡眠覚醒リズムの調整に薬を使うのは、現代ではある程度やむを得ない部分もあります。しかし、睡眠薬の長期使用や大量処方により、薬に依存してしまったり、過剰摂取(オーバードーズ)の問題が発生したりと、依存のリスクも顕在化しています。

そこで、薬に頼らず安全に自然な眠りを誘発できるよう、脳の活動を自分で整える方法を模索したいです。例えば、心地よく眠れる音楽を自動的に選んでくれるようなデバイスやサービスの開発は、誰でも手軽に利用できる新しい選択肢になるでしょう。

さらに、「見たい夢を自らコントロールできる」ようなドリームエンジニアリングにも挑戦してみたいと考えています。レム睡眠中に脳に特定の刺激を与えることで夢の内容を調整し、ニューロテクノロジーを活用して、思い通りの夢を楽しめる世界が実現できるかもしれません。

睡眠に関しては、これまで睡眠障害や「睡眠負債」といった問題が取り上げられてきましたが、もし睡眠がもっと楽しく、クリエイティブな体験になれば、私たちの生活も豊かになるはずです。「早く寝たい!」と思える人が増え、睡眠の質が向上すれば、生産性や日中のパフォーマンスも上がります。睡眠を通じて、より健やかで創造的な社会作りに貢献できるような技術やサービスの実現を目指しています

まとめ

私たちが眠っている間に見る夢は、記憶の再統合の役割を持ち、寝る直前の体験や感情が反映されることが多いとされています。

近年では「ドリームエンジニアリング」と呼ばれる技術が注目されており、見たい夢を意図的に見るためのテクニックが開発されつつあります。脳波の測定や特定の刺激を用いて、夢の内容を推定・誘導することも現実のものとなってきています。

「早く寝て夢を見たい!」というような感覚が広がれば、睡眠不足が深刻な日本でも、睡眠への意識が高まり、健康的な睡眠が広がる未来が期待できるのではないでしょうか。

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