お金をあげるのは逆効果!?子どものやる気を出させる教育方法!
みなさんの「やる気」はどこから生まれますか?「お金がもらえるから」「楽しい予定が待っているから」など、さまざまあると思います。「やる気」「モチベーション」は、その行動のパフォーマンスや成果に繋がってきます。 今回は『やる気の持ち方』や、『やる気の出ない時の対処法』について深掘りしていきます。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm06/ どうしてもやる気が起きないときの心の持ち方とは? もうすぐテストがあるのに、どうしてもやる気が起きない...そんな経験はありませんか?「5分だけでもいいから、机に向かってみることが大切」なんていうことも、よく耳にしますよね。実はこれ、脳科学的にも正しいと言えることなのです。 例えば「卒論を完成させる」という目標は、あまりにも壮大すぎてやる気を喪失してしまいます。しかし「1ページだけでも本を読もう」という目標に変えてみると、「ちょっとやるかぁ」と気持ちも前向きになってくるはずです。このように、小さな成功の積み重ねがモチベーションや生産性を大きく向上させることがわかっています※。 完璧なゴールを思い描くことも大切ですが、遠い未来のことに価値を持って行動できる人は、とても少ないのです。何もしない状態でいることは、脳にとってとても居心地の良いもので、何かを始める、動き出すことは、脳にとてもコストがかかります。 そのため卒論の例では、とりあえず名前と学籍番号を書いてみる、というような小さなことから始めてみると、モードが切り替わって書き進められたりします。 ※出典:The Power of Small Wins (hbr.org), 2024年7月9日参照 やる気はどこから生まれるの? 「1時間勉強したら、好きなアイドルの動画を1本見よう!」というように、物事の動機と報酬は、切っても切り離せない関係にあります。このようにやる気というものは、何かご褒美があると生まれやすいという風に考えられています。 しかし、例えばバイトを選ぶときには、時給が高い方がやる気が出そうと思われることが多いのですが、実はそうではないことがわかっています。 ある研究で、「あなたのやる気が出ることはなんですか?」と尋ねたものがあります。その答えは、「お金をもらうと頑張れます!」というように、金銭的インセンティブを挙げる人と、「褒められたりすれば頑張れます」と言う人に分かれるそうです。 しかし面白いことに、前者のように「お金をもらえたら頑張れる」と言う人にボーナスを与えても、実際にパフォーマンスが全く上がっていませんでした※。つまり自己申告の「やる気が出る」というのと、「生産性が上がる」というのは、別物だということが、この実験の結果からわかったのです。 またお金の報酬があることによって、パフォーマンスが悪くなる場合があることもわかっています。簡単な問題解決力を問う問題で、「この問題が解けたらお金をあげる」と言われると、問題の正答率が低くなってしまうという結果が出た実験もあります。 お金がもらえるからといって、必ずしもやる気が出て、良い成績を残せるとは限らないようです。反対に、セルフインセンティブと言って、「これを頑張ったらケーキ食べよう!」と言うようにご褒美を与えていくものは、良いパフォーマンスを生み出しやすいと言われています。 ※出典:Does the size of rewards influence performance in cognitively demanding tasks? | PLOS ONE, 2024年7月9日参照 子どものやる気を伸ばす教育の方法 子どもに勉強を頑張ってもらうために、「何番以内に入ったらお小遣いを増やしてあげる」と言う教育は、アンダーマイニング効果といって、子どもが「お金をもらわないと勉強しなくなる」ようになってしまうこともあります。元々は自分の意志でやっていたものも、外発的な報酬がもらえると、それを目的に行動するようになってしまうのです。 勉強のパフォーマンスが発揮されやすいモチベーションとしては、「内発的な動機」が大切になってきます。人から報酬をもらえるからやるのではなく、「自分が楽しいからやる」「これができるようになると嬉しいからやる」というような内発的動機を持つ傾向にある人は、学業成績だけでなく、運動能力や仕事、さらには年収も高い傾向にあると言われています。 しかし、そうは言っても自分からやる気を出すことは、なかなか難しいことです。子どものやる気を引き出してあげるためには、「自律性」と言って、「何をやるか」「いつやるか」「どのくらいやるのか」を自ら選択させる、裁量をあげることが大切だとされています。 また個人差はありますが、「自分がもっと学んで成長していきたい」というような思考や目的意識を持っている人は、やる気も出しやすいと言われています。 まとめ やる気には、お金やご褒美をもらうからやる外発的なものと、自分が楽しいからやる内発的なものの2種類があります。直感的には、お金やご褒美をあげれば、人はやる気を出して頑張れると思われがちですが、実は頑張れなかったり、成績が上がるわけではなく、むしろ悪い影響が出てしまうこともあります。 内発的な動機を持つことは難しいですが、そのような動機を持っている人は、パフォーマンスが良かったり、社会で成功しやすいことが多いのです。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/0AwufjF1ibX29HCGQbzdo3?si=k8QIlqI4Q-Oum2WIRyfH6w 次回 次回のコラムでは、脳科学的に解明された『成績が上がる褒め方』をご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm08/