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ウェルビーイング経営の新潮流:脳科学とテクノロジーで実現する社員の幸福と企業成長

従業員一人ひとりの心身の健康と幸福(ウェルビーイング)を組織の成長エンジンと捉える「ウェルビーイング経営」。今、多くの企業がこの新しい経営スタイルに注目しています。特に、リモートワークの普及や働き方の多様化が進む現代において、メンタルヘルスケアやストレス対策の重要性はかつてないほど高まっています。 本記事では、ウェルビーイング経営の基本的な考え方から、その重要性が増している社会的背景、さらには脳科学やAIといった最新テクノロジーを活用した先進的な取り組みまでを深掘りします。具体的な企業事例を交えながら、従業員のエンゲージメントと企業の持続的成長を両立させるウェルビーイング経営の魅力と可能性に迫ります。 ウェルビーイング経営とは?社員の幸福が企業成長の鍵 まず、「ウェルビーイング経営」が具体的に何を指し、なぜ現代の企業経営において重要視されているのか、その基本的な概念と背景について理解を深めましょう。 ウェルビーイング経営の基本概念と人的資本経営との関連 ウェルビーイング経営とは、従業員が身体的、精神的、社会的に良好な状態(ウェルビーイング)でいられるよう、企業が戦略的に支援し、それを通じて組織全体の活性化、生産性向上、そして持続的な企業成長を目指す経営アプローチです。 近年注目される「人的資本経営」において、従業員は単なる「資源(リソース)」ではなく、価値創造の源泉である「資本(キャピタル)」として捉えられます。この文脈において、従業員のウェルビーイングは、その資本価値を最大化し、維持・向上させるための不可欠な要素として位置づけられています。つまり、ウェルビーイング経営は人的資本経営を具体的に推進する上での重要な柱の一つと言えるでしょう。 国内外のウェルビーイング市場について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。 https://mag.viestyle.co.jp/well-being-market-landscape/ 従業員の心身の健康が企業パフォーマンスに与える影響 従業員の心身の健康状態は、企業のパフォーマンスに直接的な影響を及ぼします。経済産業省の資料(※1)でも指摘されているように、従業員が健康であれば、仕事への集中力や意欲が高まり、創造性や問題解決能力も向上します。 特にメンタルヘルスが安定している状態では、職場内のコミュニケーションが円滑になり、チームワークが醸成されやすくなるため、組織全体の生産性向上に繋がります。逆に、健康状態が悪化すると、欠勤率の上昇、生産性の低下(プレゼンティーイズム)、さらには離職リスクの増大といった形で、企業経営にマイナスの影響を与えかねません。 (※1)健康経営の推進について - 経済産業省:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeiei_gaiyo.pdf なぜ今、ウェルビーイング経営が企業に不可欠なのか? 現代社会において、企業がウェルビーイング経営に取り組む必要性はますます高まっています。その背景には、働き方の変化や従業員が抱える課題の複雑化があります。 働き方改革とコロナ禍が加速させた「個」の課題 働き方改革の推進や、コロナ禍を契機としたリモートワーク、ハイブリッドワークの急速な普及は、従業員の働き方に大きな変化をもたらしました。通勤時間の削減や柔軟な時間活用といったメリットがある一方で、コミュニケーションの希薄化、仕事とプライベートの境界の曖昧化、孤独感の増大といった新たな課題も生まれています。 これにより、従業員一人ひとりが抱えるストレスや心身の不調が顕在化しやすくなっています。 リモートワーク時代のメンタルヘルス問題と生産性への影響 リモートワーク環境下では、従業員自身による高度な自己管理能力が求められます。業務の進捗管理やパフォーマンス維持に対するプレッシャー、対面での気軽な相談機会の減少、オンオフの切り替えの難しさなどから、メンタルヘルスに不調をきたすケースが増加傾向にあります。 このような状態は、集中力の低下、モチベーションの減退を招き、結果として個人および組織全体の生産性に悪影響を及ぼします。 メンタル不調が企業経営に与えるリスクとその対策の重要性 従業員のメンタルヘルス不調は、個人の問題に留まらず、企業経営における重大なリスクとなり得ます。欠勤や長期休職による人材不足、医療コストの増加、職場全体の士気低下、さらには優秀な人材の離職といった事態を招きかねません。 そのため、企業はこれらのリスクを未然に防ぎ、軽減するために、メンタルヘルス対策を積極的に講じることが不可欠です。従来のカウンセリングサービスや相談窓口の設置に加え、近年ではAIや脳科学などの最新テクノロジーを活用し、よりパーソナライズされた効果的なウェルビーイング支援を提供する動きが活発化しています。 【最新トレンド】脳科学とテクノロジーを活用したウェルビーイング施策 ウェルビーイング経営の進化において、脳科学の知見と先端テクノロジーの融合は、従業員のメンタルヘルスケアやパフォーマンス向上に新たな可能性をもたらしています。ここでは、その具体的な例をいくつかご紹介します。 EEG(脳波)データで見える化するメンタルヘルスと集中状態 EEG(Electroencephalography:脳波計測)は、脳の電気的な活動を記録する技術です。この技術を活用することで、従業員のストレスレベル、集中度、リラックス度といったメンタル状態を客観的なデータとして「見える化」できます。 例えば、脳波パターンからストレスの高まりが検知されれば、適切なタイミングで休憩を促すアラートを出したり、リラクゼーションコンテンツを推奨したりすることが可能です。従業員自身も自らの脳の状態を把握することで、セルフケア意識の向上や早期対処に繋がります。 EEGについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。 https://mag.viestyle.co.jp/eegmeasurement/ ニューロフィードバックによる脳の自己調整力トレーニング ニューロフィードバックは、リアルタイムで計測した自身の脳波データ(主にEEG)を基に、特定の脳活動を意識的にコントロールする力を養うトレーニング手法です。 例えば、リラックスしたい時にはリラックス状態に対応する脳波パターンを、集中したい時には集中状態に対応する脳波パターンを目標とし、その状態に近づけるよう脳を訓練します。 これにより、ストレス下でも冷静さを保つ、あるいは必要な時に高い集中力を発揮するといった、脳の自己調整能力を高める効果が期待されています。 ニューロフィードバックについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。 https://mag.viestyle.co.jp/neuro_feedback/ 脳科学的アプローチがもたらす具体的なウェルビーイング効果 マインドフルネス瞑想や特定の音楽刺激など、脳科学的エビデンスに基づいたアプローチは、ストレス軽減、集中力向上、睡眠の質の改善といった具体的なウェルビーイング効果をもたらすことが示されています。 最近では、こうした脳科学の知見を活かした製品やサービスも登場しています。例えば、個室型ブース「VIE Pod」は、脳波に働きかける特殊な音楽(ニューロミュージック)を組み合わせることで、利用者が短時間で集中状態やリラックス状態に入りやすい環境を提供します。 これにより、オフィスにいながら手軽に心身のコンディションを整え、生産性向上とウェルビーイング向上を両立させることを目指しています。 VIE PODについて詳しく知りたい方は、以下のリンクをご参照ください。 https://lp.vie.style/vie-pod 最新技術を活用したウェルビーイングの企業事例 本セクションでは、実際に先進的な取り組みを行っている企業の事例をご紹介します。 マイクロソフト「MyAnalytics」 MyAnalyticsは、従業員の勤務時間、集中して作業できた時間、会議への参加時間、さらには休息やリフレッシュに充てた時間などをデータとして収集・分析します。このデータをもとに、従業員は自分の働き方の傾向を把握し、改善点を見つけることが可能です。 特に注目されるのは、従業員が無意識のうちに長時間労働に陥らないよう、適切な休息のタイミングやリフレッシュの必要性をアラートで知らせる機能です。これにより、従業員は過労を未然に防ぎ、心身の健康を維持しながら生産性を高めることができます。マイクロソフトのこの取り組みは、テクノロジーを活用して従業員が主体的に健康を管理できるよう支援する好例と言えるでしょう。 MyAnalyticsについて https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/blog/2019/01/02/myanalytics-the-fitness-tracker-for-work-is-now-more-broadly-available/ ロート製薬「健康社内通貨:ARUCO」 ロート製薬株式会社は、従業員の心身の健康向上を支援するため、健康社内通貨「ARUCO」を導入しています。この取り組みでは、日々の歩数や非喫煙などの健康活動に応じて「ARUCO」が付与され、ヘルシーランチの購入やリラクゼーション施設の利用、特別休暇の取得などに活用可能です。 従業員は楽しみながら健康的な生活習慣を築ける仕組みとなっており、企業全体のウェルビーイング向上を促進しています。ロート製薬の健康重視の経営方針は、従業員の満足度や生産性向上につながる、革新的なウェルビーイング経営の一例です。 健康社内通貨「ARUCO」について https://www.rohto.co.jp/news/release/2019/0207_01/ 味の素株式会社「味の素流セルフ・ケア」 味の素株式会社は、「従業員のウェルビーイングは人財資産の強化を支える基盤」として、多角的な施策を展開しています。その中心となるのが、従業員が主体的に取り組む「味の素流セルフ・ケア」です。従業員は自分の健康データをポータルサイトで確認し、健康改善を促進するアプリを活用。 さらに、健康診断結果をもとにした「健診戦」では、改善状況の順位づけや表彰を行い、健康意識を高めています。健康診断や個別面談といった基盤的施策と併せ、「持続可能なエンゲージメント・ウェルビーイング」を指標とし、すべての従業員が働きがいを感じる職場の実現を目指しています。この包括的な取り組みは、従業員と企業の成長を支える基盤となっています。 味の素流セルフ・ケアについて https://park.ajinomoto.co.jp/special/wellbeing/ ウェルビーイング経営の未来 ウェルビーイング経営は、単なるトレンドではなく、持続可能な企業運営を実現するための重要な要素として定着しつつあります。従業員の心身の健康を支援し、働きやすい環境を整えることは、企業の競争力を高め、長期的な成長を促進するために欠かせない戦略です。特に、テクノロジーや脳科学の進展により、個々の従業員に合わせたパーソナライズドなサポートが可能になり、ウェルビーイング経営の効果を一層高めています。 ウェルビーイング経営の未来は、よりパーソナライズドで予防的なサポートが主流になると考えられます。従業員の健康状態をリアルタイムでモニタリングし、適切なタイミングでサポートを提供することで、心身の不調を未然に防ぐ仕組みが進化していくでしょう。また、働く場所や時間に縛られない柔軟な働き方の普及により、ウェルビーイング経営の実践はさらに広がりを見せるはずです。 企業がウェルビーイング経営を真剣に取り組むことで、従業員と組織の双方が活力を得て、より強固な成長基盤を築くことができるでしょう。ウェルビーイング経営は、健康的で幸福な社会の実現に向けた第一歩とも言えます。

発達障害の人口は急増した?ADHDという言葉が拡まった理由

ここ数年、SNSやメディア、さらには芸能人の告白などを通じて、ADHD(注意欠陥・多動性障害)について話題にする人が増えています。日常生活でも「それ、ADHDじゃない?」というような会話を耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか。 ADHDは注意力の欠如や多動性、衝動性が特徴の発達障害の一つですが、なぜ最近になってこうした話題が急増しているのでしょうか? 今回は「発達障害」に焦点を当て、社会での認識がどのように変化しているのか、また、その背景に何があるのかを深掘りしていきたいと思います。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm24/ 最近ADHDの人は増えたの? アメリカの医学会が作成したDSM(精神疾患の診断マニュアル)は、精神疾患や発達障害を理解し支援するうえで大きな役割を果たしています。弊社の最高脳科学責任者である茨木も、このマニュアルの作成に関わった人たちと話す機会があり、「このような診断基準が普及することで、『私ADHDだから仕方ない!』と、自分の症状を理由に行動を正当化する人が増えるのではないか」と質問したことがあります。 彼らの返答は、「その懸念は理解できるが、まずは疾患についての啓蒙が必要だった」とのことでした。ADHDのような発達障害に関する症状が昔からあったにもかかわらず、それを障害として理解し、サポートが必要な人として社会が認識してこなかった歴史があります。そのため、まずは障害の存在を広く知ってもらうことが重要だった、という考え方です。診断基準が普及することは、そのような障害を抱えた人々への理解と支援の拡充に役立ってきたのです。 しかし一方で、ADHDという名前が一般化しすぎると、それがアイデンティティの中心になりすぎるリスクもあるといいます。たとえば、ADHDの人がドタキャンや遅刻を繰り返し、「ADHDだから仕方ない」と言い訳にしてしまうことがあるかもしれません。ある専門医も「それだけで許されてしまうのは、治療者としては複雑な気持ちになる」と語っていました。 自分の症状をアイデンティティの核としてしまうと、本人も周りも苦しくなってしまう場合があります。適切なサポートと理解を得るためには、障害や特性を受け止めつつも、それに依存せず、少しずつ対処法を模索する姿勢が大切かもしれません。 原因の究明が難しい発達障害 他の臓器とは異なり、脳の特徴や障害は非常に複雑で、診断や理解が難しい面があります。 たとえば、「咳が出る」という症状には、コロナ感染や喉への異物の侵入など、さまざまな原因が考えられます。この場合、診断では「咳がある」とだけ言うのではなく、「ウイルス感染ですね」「インフルエンザですね」と具体的な原因を特定し、咳止めなどの対症療法と並行して、原因そのものへの治療を行います。 しかし、発達障害などの精神分野では、こうした原因の究明が非常に難しく、現在もそのメカニズムは明確にわかっていません。症状としては、自閉症やアスペルガー症候群、ディスレクシア(読字障害)といった分類が存在しますが、これらはあくまで「症状」として捉えられます。日本の医学会もアメリカのDSM(精神疾患の診断マニュアル)を基に診断基準を設けており、その基準に該当する症状があれば、診断名がつけられる仕組みになっています。 そのため、現状では発達障害に対して根本的な治療はなく、症状を緩和する対症療法が主な手段です。また、これが「個性」や「性格」とどのように異なるのかについても、まだ曖昧な部分が多くあります。遺伝や脳機能の違いがある程度解明されつつありますが、なぜそのような違いが生まれるのか、その根本原因は脳の構造や発達の違いに関連しているとされながらも、性格や個性とどう線引きできるかは、非常に難しいテーマです。 ADHDの診断基準を作成した医師たちは、「ADHDを個性とは言わないものの、一種の『体質』のようなもの」と表現していました。これは、本人が望んでその特性を持つわけではない一方で、ある程度自分で対処する努力も可能であるという意味です。どんなに理解されるべき特性であっても、それを理由に責任を回避したり、開き直る態度は周囲との関係を損なう可能性があります。そのため、「体質」としての特性と向き合いながら、自分なりの工夫をすることが大切であり、発達障害の理解においてもこの姿勢が重要かもしれません。 まとめ 発達障害は、脳機能の発達に関連する問題であり、主に自閉症、アスペルガー症候群、ADHD、学習障害などが含まれます。臨床の現場では、特に子どもの問題として診断・支援が行われる分野です。 発達障害は、遺伝的な要因や脳の器質的・機能的な違いに起因する症状として捉えられていますが、その診断には、具体的な症状に基づいたチェックリストが用いられています。そのため、ADHDとアスペルガー症候群が併存するように、複数の症状が同時に見られるケースも少なくありません。こうした併存が発達障害や精神分野の特徴であり、診断の難しさにもつながっています。 最近では発達障害を公表する人も増え、理解は広がりつつありますが、症状の捉え方や治療の必要性についてはまだ社会的なコンセンサスが十分に形成されていない部分があります。障害という呼称がつけられているのも、その複雑さゆえかもしれません。 発達障害は時に「体質」に近い側面もあり、本人や周囲がその特徴を受け止める姿勢が求められます。本人が開き直ることも、周囲が無理解であることもお互いに生きづらさを生むため、共存と理解の時代が求められていると感じます。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/4EMtlXBnZua3vbBgkQIHZw?si=udtZBim-S6efq3TyHi5sRA

ニューロテクノロジーを使って見たい夢を見る方法とは?

ストレスが溜まっているときに、怖い夢や悲しい夢を見た経験はありませんか? 以前「学習」に関する回でお伝えした通り、睡眠は日中に得た記憶を再構成する大切な時間です。そのため、私たちが見る夢には、寝る直前に体験したことや、その日に感じた感情が反映されやすいと考えられています。 今回は、そんな「夢」をテーマに、睡眠についてさらに深掘りしていきましょう。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm23/ 見たい夢を自分で作れる!ドリームエンジニアリングとは? みなさんは、ドラえもんの「気ままに夢見る機」をご存じでしょうか?これは、のび太くんの「せめて夢の中だけでも活躍したい!」という願いに応えて、ドラえもんが見せてくれた道具で、見たい夢のカセットを入れると、その夢を見ることができるというものです。 もちろんこれは漫画の中の話ですが、実は現実世界でも、見たい夢をテクノロジーの力で実現しようとする「ドリームエンジニアリング」と呼ばれる研究が進んでいます。脳科学の分野で注目されているこの技術は、夢を自分でコントロールできるようにすることを目指しています。 その手法のひとつとして、「ターゲッテッド・ディアクティベーション」という方法が挙げられます。これは、寝る前に見たい夢に関連するコンテンツを視聴したり聞いたりしておき、寝ている間に同様の刺激を与えることで、その内容を夢として再現しやすくするという技術です。例えば、好きなアイドルの夢を見たい場合、寝る前にそのアイドルの動画を視聴し、さらに寝ている間にアイドルの声を聞かせることで、記憶が再活性化されて夢に反映されやすくなります。 将来的には、ニューロンを一つひとつターゲットにして刺激できるようになれば、完全に自由な夢を構成して見せることも可能になるかもしれません。ただし、これはまだ少し先の話です。しかし、夢を自らの意図に近づける試みとして、ディアクティベーション戦略は非常に注目されているテーマです。 最近では、VRとの組み合わせも試されています。たとえば、寝る前に空を飛ぶVR体験をすると、その感覚が記憶に残り、夢の中で空を飛ぶ夢を見やすくなるといった効果も報告されています。今後、テクノロジーが進化することで、夢の中でも自由に楽しむことができる未来が訪れるかもしれません。 寝ている人が見ている夢を解読! 日本のSFドラマ「悪夢ちゃん」では、人が見ている夢を他者が覗くことができるという設定が描かれていますが、実はこうした技術は、脳科学の分野で少しずつ実現に近づいています。 現在の研究では、被験者がfMRI(機能的核磁気共鳴機能画像法)の中で眠っている間に脳活動を測定し、「その人がどんな映像を見ているか」を解析する試みが進められています。夢を見ているとされるレム睡眠中に、被験者を起こして「今どんな夢を見ていたか?」と尋ね、実際に見ていた内容と脳活動のパターンを記録することで、特定の映像や夢に関連する脳活動をデータとして蓄積していきます。この方法を繰り返しデータを集めることで、夢の内容を解読できるようにする技術が開発されつつあります。 ただし、夢は主にレム睡眠中に発生するため、夢を解読するには、被験者がレム睡眠に入っているかを脳波で確認する必要があります。このタイミングで、夢の内容を記憶として残しやすくするためにディアクティベーション技術が使われることもあります。たとえば、レム睡眠中に関連する音を聞かせるなどして記憶を活性化することで、夢の記憶が鮮明に残る可能性があるのです。 このように、夢の内容を把握し、それを記録する技術は急速に進化しており、いずれ「夢の内容を正確に再現できる」日が訪れるかもしれません。 睡眠領域で挑戦したいこと 睡眠覚醒リズムの調整に薬を使うのは、現代ではある程度やむを得ない部分もあります。しかし、睡眠薬の長期使用や大量処方により、薬に依存してしまったり、過剰摂取(オーバードーズ)の問題が発生したりと、依存のリスクも顕在化しています。 そこで、薬に頼らず安全に自然な眠りを誘発できるよう、脳の活動を自分で整える方法を模索したいです。例えば、心地よく眠れる音楽を自動的に選んでくれるようなデバイスやサービスの開発は、誰でも手軽に利用できる新しい選択肢になるでしょう。 さらに、「見たい夢を自らコントロールできる」ようなドリームエンジニアリングにも挑戦してみたいと考えています。レム睡眠中に脳に特定の刺激を与えることで夢の内容を調整し、ニューロテクノロジーを活用して、思い通りの夢を楽しめる世界が実現できるかもしれません。 睡眠に関しては、これまで睡眠障害や「睡眠負債」といった問題が取り上げられてきましたが、もし睡眠がもっと楽しく、クリエイティブな体験になれば、私たちの生活も豊かになるはずです。「早く寝たい!」と思える人が増え、睡眠の質が向上すれば、生産性や日中のパフォーマンスも上がります。睡眠を通じて、より健やかで創造的な社会作りに貢献できるような技術やサービスの実現を目指しています。 まとめ 私たちが眠っている間に見る夢は、記憶の再統合の役割を持ち、寝る直前の体験や感情が反映されることが多いとされています。 近年では「ドリームエンジニアリング」と呼ばれる技術が注目されており、見たい夢を意図的に見るためのテクニックが開発されつつあります。脳波の測定や特定の刺激を用いて、夢の内容を推定・誘導することも現実のものとなってきています。 「早く寝て夢を見たい!」というような感覚が広がれば、睡眠不足が深刻な日本でも、睡眠への意識が高まり、健康的な睡眠が広がる未来が期待できるのではないでしょうか。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/6zzwxTGuF7NFZ1t6aylmGX?si=DN-6fPkZQ267hb25lKOM-A 次回 次回のコラムでは、ADHDをはじめとする『発達障害』について深堀していきます。 https://mag.viestyle.co.jp/columm25/

夢を忘れてしまうのはどうして?睡眠の質を上げる意外な食べ物とは?

たくさん睡眠をとったはずなのに、授業中にどうしても眠くなってしまう。そんな経験がある方もいるのではないでしょうか。 起きていなければならない状況で、何とかして眠気を覚まそうと工夫を凝らしたことがある人も少なくないはずです。 しかし、もしかすると問題は「睡眠時間」ではなく、「睡眠の質」にあるのかもしれません。今回は睡眠の質に注目し、「良い眠り」について考えていきましょう。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm22/ 睡眠妨害だけじゃない!ブルーライトの効果的な一面とは? 良い睡眠のために「睡眠の量」と「質」のどちらがより重要なのでしょうか?もちろん個人差はありますが、睡眠にはある程度の「量」が欠かせないのは確かです。一方で、どれだけ深く眠れているか、つまり「質」も重要なポイントです。どちらか一方が重要だと言い切ることは難しく、両方が揃ってこそ良質な睡眠が得られるといえます。 また、睡眠の質に悪影響を及ぼす要因もわかってきています。たとえば、眠りにくくする要因の一つが、寝る前のブルーライトです。網膜にはRGB(レッド、グリーン、ブルー)の3種類の光を感知する錐体細胞があり、ブルーライトはその中でも短波長の光にあたります。特にデジタル画面にはこの短波長の光が多く含まれているため、就寝前にスマートフォンやタブレットを使うと、網膜神経節細胞がブルーライトを感知し、脳に「朝だ!起きろ!」と信号を送ります。これにより、脳が覚醒し、入眠が遅くなってしまうのです。 人間の体は、24時間の生活リズムである「サーカディアンリズム」を持ち、光がそのリズムを整える重要な要素となっています。そのため、ブルーライトは睡眠の質に大きな影響を与えます。一方、朝にブルーライトを浴びると、目覚めが良くなりやすいこともわかっています※。自然の光を浴びることで、覚醒が促進され、スムーズな朝のスタートが切れるのです。長距離トラックのドライバーや、長時間フライトのパイロットなども、時差ボケを緩和するために「ライトセラピー」と呼ばれるブルーライトを使った療法を利用することがあります。つまり、適切なタイミングであれば、ブルーライトは有効な手段ともいえるのです。 一般的にブルーライトは「悪者」として扱われがちですが、寝る前以外では覚醒をサポートする側面もあります。例えば、スマホのナイトモードはブルーライトをカットし、画面を少し黄色味がかった色にすることで夜のリラックスに役立てています。このように、朝と夜でブルーライトの使い分けを意識することが、質の良い睡眠と日中の覚醒度を保つために役立つかもしれません。 ※出典:https://academic.oup.com/sleep/article/47/Supplement_1/A431/7654950, 2024年11月6日参照 夢を見る人と見ない人の睡眠の違いは? 睡眠の質と関わりが深い「金縛り」の仕組みについてもご紹介しましょう。 まず、睡眠にはいくつかのステージが存在します。入眠後、深いノンレム睡眠に入ると、脳波もゆったりとした1〜3Hzのデルタ波が見られるようになり、この段階で記憶の固定などが行われます。その後、眠りが浅くなり目が動く「レム睡眠」に移行します。このレム睡眠中に、金縛りが起こるのです。金縛りは、脳が覚醒状態に近いものの、体が動かないために発生し、夢を見ている状態に近い感覚が引き起こされると考えられています。 「夢も見ないほどぐっすり眠れた!」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。また、「毎日夢を見るから眠りが浅いのかも」と思ったことがある方もいるのではないでしょうか。しかし実際には、夢は主にレム睡眠中に見られており、睡眠の質を直接示すものではありません。 夢は経験がシナプスに記憶として残るプロセスで生まれると言われます。覚醒中はシナプスが活発に働いていますが、睡眠中にはその活動が抑えられるため、夢はすぐに忘れられてしまう傾向があります。そして、「毎日夢を見る」と感じる人は、たまたまレム睡眠のタイミングで目覚めているため、夢を覚えているのです。 つまり、多くの人は夢を見ていますが、レム睡眠中に起きない限り忘れてしまうだけなのです。そう考えると、良い夢を見て覚えている人は、幸せなスリープサイクルを楽しんでいると言えるかもしれませんね。 音や食べ物で睡眠の質が変わる!? 睡眠の質を高めるうえで、睡眠ステージも重要な要素です。たとえば、ノンレム睡眠(特に徐波睡眠)時には、ゆったりとした音を聞かせることで、その状態を維持しやすくなるとされています。具体的には、脳が1〜3Hzのデルタ波を発しているときに、そのリズムに合わせた音を流すことで、深い眠りを持続させる効果が期待できます。光だけでなく、音も脳のリズムに影響を与え、質の良い深い睡眠のサポートに役立つのです。 また、睡眠の質には、音や光以外にも食べ物や飲み物が大きく影響を与えます。アルコールの回でも紹介しましたが、適度な飲酒はリラックス効果をもたらし、良質な睡眠に繋がることがあります。しかし飲み過ぎると逆に眠りが浅くなり、夜中に目が覚めやすくなる原因にもなってしまいます。睡眠を促進するためには、適切なタイミングと量を守ることが大切なのです。 このように、睡眠の質を高めるためには、音、光、食事のタイミングなど、さまざまな要素が関わっています。どれか一つの要素に注目するだけでなく、総合的に見直していくことが、より良い睡眠を得るための鍵と言えるでしょう。 https://open.spotify.com/episode/25ZFcvkz3vnknJgI9cOJJ9?si=GnbQFtCoRuCqOCeccEfXxg 睡眠の質を高める方法として、メラトニンを増やす食事も注目されています。時差ボケ対策のサプリメントとしても知られるメラトニンですが、自然に増やす手段として「牛乳」が効果的とされています。特に夜間に搾乳された牛乳は、昼間の牛乳に比べてメラトニンの含有量が約10倍も高いとされ、メラトニンが豊富な「ナイトミルク」としても注目されています。このような牛乳は、まるで自然の睡眠補助剤のような役割を果たします※。 また、キウイやさくらんぼなどのフルーツも、睡眠の質を向上させる効果があるというエビデンスが示されています。さらに、ビールの香り付けに使われるホップもリラックス効果があり、入眠をサポートするとされています。これらの食品を寝る前に取り入れることで、ぐっすり眠れる可能性が高まります。 このように、食べ物や飲み物の選択も、快適な睡眠に影響を与える要素です。日中の活動やリラックス習慣と合わせて、睡眠を助ける食材を取り入れることで、より良いスリープサイクルを実現できるかもしれません。 ※出典:https://www.milkgenomics.org/?splash=medicating-the-elderly-with-night-milk, 2024年11月6日参照 まとめ 睡眠の質を左右する要因には、さまざまなものがあります。たとえば光の影響では、ブルーライトは寝る前には悪影響を及ぼすものの、朝や日中の覚醒には効果的です。また、音も深い睡眠中の脳の状態をサポートする手助けとして利用できます。食べ物では、夜に搾った牛乳は昼間のものに比べてメラトニンの含有量が約10倍とされ、リラックス効果が期待されています。 将来的には、快適な睡眠を促す食べ物や飲み物、さらにはその効果を最大限に活用できるデバイスが登場するかもしれません。睡眠環境のさらなる改善に役立つ技術が進むことで、より健康的で質の高い睡眠が身近になることを期待したいですね。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/73ln9cr7EdI3Zyptf2AY2O?si=STeged6ETkqEUkaz_XULIw 次回 次回にコラムでは、見たい夢を見られる『ドリームエンジニアリング』についてご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm24/

健康経営導入ガイド:企業と従業員の健康を支える取り組み

近年、企業が従業員の健康管理を重要な経営課題と捉え、戦略的に投資する「健康経営」への注目が急速に高まっています。従業員が心身ともに健康で、いきいきと働ける環境を整備することは、生産性の向上、医療費の適正化、さらには企業イメージの向上といった、多岐にわたる経営効果をもたらします。この記事では、「健康経営とは何か?」という基本的な疑問から、具体的な導入メリット、実践的な取り組み内容、国内外の先進企業事例、そしてスムーズな導入ステップと活用できる助成金制度に至るまで、網羅的に解説します。企業の持続的な成長と、従業員の幸福なキャリアの両立を目指すすべての方にとって、健康経営を具体的に推進するための一助となれば幸いです。 健康経営とは?企業成長を支える新たな経営スタイル まず、「健康経営」という言葉の基本的な意味合いと、なぜ現代の企業経営においてこれほどまでに重視されるようになったのか、その背景と目的を掘り下げていきましょう。 健康経営の定義と基本的な考え方 健康経営とは、企業が従業員の健康保持・増進に関する取り組みを「コスト」ではなく「投資」と捉え、経営的な視点から戦略的に実践していく経営手法です。従業員一人ひとりの活力向上や生産性の向上を通じて、結果的に企業全体の業績向上や組織価値の向上を目指します。このアプローチは、従業員のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)と企業の持続的な成長を両立させるための重要な経営戦略として位置づけられています。 なぜ今注目?健康経営の目的と社会的背景(健康経営優良法人認定制度など) 健康経営が注目される背景には、少子高齢化による労働力人口の減少、従業員の高齢化、医療費の増大、働き方改革の推進といった社会構造の変化があります。企業にとって、人材の確保と定着、生産性の維持・向上は喫緊の課題であり、その解決策の一つとして従業員の健康がクローズアップされています。 健康経営の主な目的は、単に従業員の健康状態を改善するだけでなく、以下のような多角的な効果を目指すことにあります。 従業員の活力向上と生産性の向上 組織の活性化と創造性の向上 医療費の適正化 企業イメージの向上とブランド価値の強化 従業員の満足度向上と離職率の低減(リテンション効果) 優秀な人材の採用競争力強化 国も健康経営を積極的に推進しており、経済産業省と日本健康会議が共同で「健康経営優良法人認定制度」を設けています。この制度は、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等を顕彰するもので、認定された企業は社会的な評価が高まり、投資家や求職者へのアピールにも繋がります。また、特に優れた企業は「健康経営銘柄」として選定され、株式市場での評価にも影響を与えることがあります。 参考:「健康経営銘柄2025」及び「健康経営優良法人2025」の申請受付について - 経済産業省:https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240820001/20240820001.html 健康経営が企業にもたらす4つの主要メリット 健康経営を実践することは、単なるCSR(企業の社会的責任)活動としての意味合いを超え、企業経営に具体的なプラスの効果をもたらします。ここでは、健康経営が企業にもたらす代表的な4つのメリットを解説します。 メリット1:従業員の生産性向上と組織全体の活性化 従業員が心身ともに健康であることは、個々の集中力や業務遂行能力の向上に直結します。健康経営の取り組みを通じて、従業員が体調不良による欠勤(アブセンティーイズム)や、出勤はしているものの体調やメンタルの不調で十分なパフォーマンスを発揮できない状態(プレゼンティーイズム)を減らすことが期待できます。 これにより、組織全体の生産性が向上し、業務効率の改善、さらにはイノベーションの創出にも繋がります。 メリット2:離職率の低下と優秀な人材の確保・定着 従業員の健康や働きやすさを重視し、手厚いサポート体制を整えている企業は、従業員からのエンゲージメント(愛着や貢献意欲)が高まりやすくなります。結果として、職場への満足度が向上し、離職率の低下に繋がります。 また、採用市場においても「従業員を大切にする企業」というポジティブなイメージが広がり、優秀な人材の獲得競争において有利になります。 メリット3:医療費の適正化と将来的なコスト削減効果 従業員の健康増進は、中長期的には企業が負担する医療費の適正化に繋がります。定期的な健康診断の実施や生活習慣病予防の取り組み、メンタルヘルスケアなどを通じて、従業員の健康リスクを早期に発見し、重症化を防ぐことができれば、将来的な医療コストの抑制が期待できます。 これは、企業の財務健全性の維持にも貢献します。 メリット4:企業イメージ向上と採用競争力の強化 健康経営に積極的に取り組む企業は、社会的に「従業員の健康と安全に配慮するホワイト企業」としての評価が高まります。 これは、顧客、取引先、株主、地域社会といったステークホルダーからの信頼獲得に繋がり、企業ブランドのイメージ向上に貢献します。前述の「健康経営優良法人」などに認定されると、その効果はさらに高まり、採用活動においても大きなアドバンテージとなります。 【実践編】健康経営の具体的な取り組み施策7選 健康経営を推進するためには、どのような具体的な施策があるのでしょうか。ここでは、従業員の身体的・精神的健康をサポートし、働きやすい環境を整備するための代表的な取り組みを7つのカテゴリーに分けてご紹介します。 定期健康診断の実施徹底と結果に基づくフォローアップ 法定の健康診断を全従業員が確実に受診できるようにすることは基本中の基本です。さらに、有所見者に対する再検査の勧奨、医師や保健師による個別指導、生活習慣改善プログラムの提供など、診断結果に基づいたきめ細やかなフォローアップ体制を整備することが重要です。 運動機会の提供と食生活改善支援(フィットネス、健康メニュー等) 従業員の健康的な生活習慣を後押しするために、以下のような施策が考えられます。 フィットネスクラブの利用補助、社内運動施設の設置 ウォーキングイベントやスポーツレクリエーションの開催 階段利用の奨励、スタンディングデスクの導入 社員食堂でのヘルシーメニューの提供、栄養バランスに関する情報提供 管理栄養士による栄養指導やセミナーの実施 ストレスチェック義務化対応と積極的なメンタルヘルスケア 身体の健康だけでなく、心の健康も重要です。 労働安全衛生法に基づくストレスチェックの実施と、その結果に基づく集団分析、職場環境改善 産業医やカウンセラーによる相談窓口の設置、カウンセリング費用の補助 メンタルヘルスに関する研修の実施(セルフケア、ラインケア) リラクゼーションルームの設置やマインドフルネスプログラムの導入 (ストレスチェック制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。) ストレスチェック制度については下記の記事でも解説しています。 https://mag.viestyle.co.jp/stresscheck-mandatory/ https://mag.viestyle.co.jp/stresscheck/ ワークライフバランス推進(柔軟な働き方、休暇取得促進) 仕事と私生活の調和は、従業員の心身の健康維持に不可欠です。 フレックスタイム制度、テレワーク制度、短時間勤務制度などの柔軟な働き方の導入 年次有給休暇の計画的付与や取得奨励、時間単位での休暇取得制度 ノー残業デーの設定、残業時間の上限設定と管理徹底 ワークライフバランスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 https://mag.viestyle.co.jp/worklifebalance-situation/ 育児・介護と仕事の両立支援制度の充実 育児や介護といったライフイベントと仕事を両立できるよう支援することも、従業員の安心感と定着率向上に繋がります。 法定を上回る育児休業・介護休業制度の整備 復職支援プログラムの提供 企業内保育施設の設置や保育費用補助 介護に関する相談窓口の設置や情報提供 長時間労働の是正と適切な勤務時間管理 過重労働は心身の健康を著しく損なうため、厳格な管理が求められます。 勤務間インターバル制度の導入 PCログや入退室記録による客観的な労働時間把握 36協定の遵守と、時間外労働・休日労働の事前申請・承認ルールの徹底 長時間労働者への医師による面接指導の実施 快適で健康的なオフィス環境整備(集中ブース「VIE Pod」活用など) 従業員が日常的に過ごすオフィス環境も、健康に大きな影響を与えます。 適切な温度・湿度・照度の維持、空気清浄機の設置 人間工学に基づいたデスクやチェアの導入 リフレッシュスペースや仮眠室の設置 集中作業やWeb会議に適した個室ブースの設置 脳をととのえるワークブース「VIE Pod」 オフィス環境を整えることで、従業員がよりリラックスして仕事に取り組めるようになります。例えば、「VIE Pod」のように、集中やリラックスを目的とした個室ブースを設置することで、仕事の合間にリフレッシュできる空間が生まれ、心身の健康をサポートし、社員の生産性も向上することが期待されます。 VIE Podについてはこちら=>https://lp.vie.style/vie-pod 健康経営の取り組み事例:日本と海外の企業の実践例 健康経営に取り組む企業は、従業員の健康増進や生産性向上を目指してさまざまなプログラムを実施しています。ここでは、日本と海外の具体的な企業の事例を紹介し、それぞれがどのような成果を上げているかを紹介します。 全社員参加型健康経営プログラム(カゴメ株式会社) カゴメ株式会社は、健康経営の一環として「全社員参加型健康経営プログラム」を実施しています。従業員の健康意識を高め、実際に生活習慣を改善するため、健康診断だけでなく、栄養指導やフィットネスプログラムも導入しています。 このプログラムの成果として、健康診断の受診率は100%を達成し、従業員の野菜摂取量や運動習慣の改善が見られました。また、健康状態の見える化を進めることで、従業員の健康リテラシーが向上し、結果として欠勤率の低減や生産性の向上にもつながっています。 参考:https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/humancapital/04/ 「健康経営優良法人」取得と社内サポート体制(住友商事株式会社) 住友商事株式会社は「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されており、従業員の健康促進に積極的に取り組んでいます。社内には専門チームが設置され、定期的な健康診断に加えて、ストレスチェックやカウンセリングサービスが導入されています。これにより、メンタルヘルスの改善が進み、高ストレス者の割合が減少するなどの成果が見られています。 さらに、フィジカルヘルスの管理についても特定保健指導の実施率が向上し、従業員全体の健康レベルが高まっています。このような施策により、住友商事は従業員の健康を維持・増進するだけでなく、長期的な生産性向上とエンゲージメントの強化を目指しています。 参考:https://sumitomocorp.disclosure.site/ja/themes/33 社員と家族が安心して働ける健康サポート体制(東京海上ホールディングス株式会社) 東京海上ホールディングス株式会社では、社員とその家族が安心して働けるよう、健康サポート体制を充実させています。ウェルネス推進室には看護職チームが配置され、社員の健康相談やカウンセリングを行い、メンタルおよびフィジカルケアを支援しています。また、全国200以上の拠点で一貫した支援を提供できるよう、データの一元管理により、どこにいても均等なサポートが受けられる体制を整備しています。 生活習慣病予防プログラムや特定保健指導の徹底により、健康リスクを早期に発見・対応しするなど、このような取り組みにより、従業員の高ストレス者割合が減少し、全体の健康レベルが向上しており、持続的な生産性向上にも寄与しています。 参考:https://www.tokiomarinehd.com/news_insights/ni17.html 資料配布と動画活用で健康意識向上(前出産業株式会社) 前出産業株式会社は、「健康経営優良法人2022」に認定され、従業員の健康意識向上に向けた施策を展開しています。同社は、従業員の健康意識が低いことが課題であったため、生命保険会社の提案をきっかけに健康経営を本格導入しました。 具体的には、毎月健康に関する資料を給与と共に配布し、健康アドバイスを含む動画を従業員に視聴させることで、健康意識を高める活動を実施。これにより、健康意識の高い従業員の割合は62%から73%に向上し、従業員全体の健康リテラシーが向上しました。 参考:​https://www.maede.co.jp/healthmanagement/ コミュニケーションと健康を重視した職場環境づくり(株式会社Phone Appli) 株式会社Phone Appliは、従業員のウェルビーイング向上を目指し、包括的な健康経営を推進しています。具体的には、社内のコミュニケーションの活性化とメンタルヘルスケアに注力し、従業員が安心して働ける環境づくりを進めています。 従業員同士がオンラインで交流できるイベントや、フィットネスプログラムを実施し、運動不足の解消とコミュニケーションの促進を図り、従業員のエンゲージメントが向上し、職場全体の生産性向上につながっています。 参考:https://phoneappli.net/corp/company/policy/well-being/ 健康経営導入のステップと助成金の活用 企業が健康経営を導入するためには、計画的かつ体系的なアプローチが重要です。ここでは、健康経営を効果的に進めるための3つの主要なステップを紹介します。 ステップ1: 健康経営導入の準備と目標設定 最初のステップは、健康経営の導入に向けた準備と目標設定です。この段階では、企業の現状分析と目指すべきゴールの明確化が重要です。 現状分析 企業全体および従業員の健康状況を把握するため、健康診断結果やメンタルヘルスの状況、欠勤率などのデータを収集し、課題を特定します。健康経営に適用する対象や範囲を明確にすることで、効果的な施策の設計が可能になります。 目標設定 健康経営を導入する目的や、達成したい成果を明確に設定します。例えば、従業員の健康診断受診率100%の達成や、特定保健指導の実施率向上、離職率の低減など、具体的な数値目標を設けることが重要です。このようなKPI(重要業績評価指標)を設定することで、後の施策の評価がしやすくなります。 計画策定 健康経営を推進するための具体的なアクションプランを策定します。ここでは、リソース(予算、人材、ツール)の確保や、スケジュールの設定が必要です。適切な計画があることで、導入プロセスが円滑に進みます。 健康経営に関する方針と体制の構築 健康経営を成功させるためには、しっかりとした方針策定と組織体制の整備が重要です。助成金を活用することで、企業の健康経営推進に必要な資金を確保し、持続可能な体制を構築することが可能です。 以下に、特にこのステップで利用可能な助成金の具体例とその活用方法について説明します。 働き方改革推進支援助成金 労働時間の短縮や休暇取得促進、勤務間インターバルの導入などにかかる費用を補助する助成金です。特に、システム改善や研修の実施に対して、最大730万円が支給されるケースがあります。これにより、健康経営の施策に合わせて労働環境を改善する企業が支援を受けられます。 参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692.html 小規模事業場産業医活動助成金 健康経営の推進には産業医や保健師などの専門家のサポートが重要です。この助成金は、特に中小企業が産業医を配置し、従業員の健康管理体制を整備する際に活用できます。従業員50名以下の企業が産業医や保健師を導入する費用の一部が助成されるため、資金的な負担を軽減し、しっかりとした健康管理体制の確立をサポートがされます。 参考:https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/content/contents/000941543.pdf 人材確保等支援助成金(テレワークコース) 人材確保等支援助成金(テレワークコース)は、テレワークの導入促進を通じて健康経営を推進する企業に適した助成金です。導入時の通信機器費用、システム改善費、従業員研修費用が助成対象で、最大100万円が支給されます。働きやすい環境を整えることで従業員の健康管理と生産性向上を目指す企業に有効な支援制度です。 参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/telework_zyosei_R3.html ステップ3: 具体的な健康施策の実施 健康経営の方針と体制が整ったら、実際の施策を計画に沿って実施します。企業のニーズや課題に応じた具体的なアプローチが重要です。 以上のステップを踏むことで、健康経営の導入が効果的に進められ、従業員と企業双方にメリットが生まれるでしょう。健康経営の成功には、適切な準備と体制、具体的な施策の効果的な実施が欠かせません。 企業と従業員のための健康経営戦略 健康経営は、企業が従業員の健康を支えることを経営戦略に取り入れることで、持続的な成長と企業価値の向上を図るものです。従業員の生産性向上や離職率低下、医療費の削減、企業イメージの向上など、健康経営には多くのメリットが期待されます。 具体的な取り組みには、定期的な健康診断やフィットネスプログラム、メンタルヘルスケア、リモートワーク制度の整備などがあり、従業員が心身ともに健康で働ける環境を整えています。また、「健康経営優良法人認定」や「健康経営銘柄」に認定されることで、企業は社会的な信頼性を高め、優秀な人材の確保にもつながります​。 さらに、健康経営の導入には、助成金の活用が役立ちます。例えば、「働き方改革推進支援助成金」や「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」などの支援制度を活用することで、企業は健康経営にかかるコストを軽減しつつ、効果的な施策を実施可能です。このような助成金の活用を通じて、企業は従業員の健康支援に対する投資を最適化し、経済的な成果と組織全体のパフォーマンス向上を実現できます。

朝型と夜型はどっちがいいの?平日の日本人は時差ボケ状態にある!?

「学習」というテーマで、パフォーマンスを向上させるためには睡眠が重要であると学びました。しかし、緊張する試験を控えていたり、楽しみなイベントがあると、なかなか眠れないという方もいるのではないでしょうか。 実は、睡眠に効果的な食べ物や飲み物があったり、ニューロフィードバックの介入を通して、睡眠の質を高めるなど、現在さまざまな技術が生み出されています。そこで、今回は「睡眠」について深掘りしていこうと思います。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm21/ 電車で居眠りをする日本人を見た海外の人の驚きの反応は? 日本ではバスや電車の中で、居眠りをしている人をたくさん見かけますよね。しかし、ヨーロッパでは、そのような公共の場で眠っていると「体調が悪い」と見られてしまうそうです。実際、海外の友人に「移動の電車で多くの人が眠っているけれど、日本人はみんなナルコレプシーなのか?」と聞かれたことがあります。 ナルコレプシーとは、十分な睡眠をとっていても、日中に眠気が襲ってきて、自分でも制御できずに眠ってしまう症状のことです。きっと日本では、電車で眠っていても、物を盗られたり、襲われたりする危険が少ないから、安心して眠れてしまう、という文化の違いだと思います。 しかし、日本には睡眠不足の人が多いのではないかという考え方もあります。睡眠が不足していると、日中帯のパフォーマンスが低下してしまいます。アルコールを飲んでいる時と同じくらい、脳の機能が下がるとまでも言われているのです。 ある研究者が、睡眠不足がどれほどのコストになっているのかを計算したところ、日本ではGDPの2.9%ほどが、睡眠不足によって失われているのではないかという結果になりました。これは他の国と比べても、かなり大きな数値で、日本人は睡眠不足の人が多いということがわかります。これを改善することで、日本は経済的にも、便益を享受することができると言われています。 朝型と夜型の人の違いとは? 睡眠不足を表す指標の一つに、睡眠負債と言うものがあります。いつ眠くなっていつ起きるのかというのは個人差がありますよね。それをクロノタイプと言うのですが、そのため一概に夜遅くまで起きていることや朝遅くまで寝ていることが良くない、とは言い切ることができません。 朝、学校が始まる時間が早すぎると思ったことがある人もいるのではないでしょうか。日本の学校の始業時間は、クロノタイプが朝型の人に合わせて、作られているのだと思います。イギリスでは、人によってクロノタイプが違うのだから、10時始業のように時間を遅らせたら良いのでは?と考えられ、実際に成績も上がったという成果があります。 大昔の狩猟時代に、朝に活動して夜に眠る人たちを、動物に襲われないように守ってくれていた人がいると思います。そのような人たちが今の夜型になっているのかもしれませんね!代わりに朝型の人たちは朝に活動して、今の夜型の人たちを守っていたのかもしれません。 飛行機に乗らなくても時差ボケしてしまう人とは? このように睡眠には個人差があるため、みんながみんな同じような睡眠リズムを持っているわけではありません。平日は6時に起きるけれど、休日は10時まで寝てしまう、というように、平日と休日で、起きる時間が変わる人もいるのではないでしょうか? このような本来寝ていたい時間との差を、ソーシャルジェットラグと言います。ジェットラグというのは、飛行機に乗って時差ぼけをしてしまうことを指します。そして、ソーシャルのせいで、平日はずっと起きていて、休日だけたくさん寝てしまうことにより、睡眠のリズムが平日と休日で変わってしまい、ラグが生まれるのが、ソーシャルジェットラグです。 日本の睡眠研究で、平日働いた後に、好きなだけ休日に寝てくださいと言うと、平日よりも睡眠時間が数時間ほど長くなる人も多くいるそうです。普通に寝ると、人は8.4時間ほど眠るそうですが、平日は7時間ほどしか寝ない人が多いため、そこの差で睡眠不足が生じてしまいます。 まとめ 私たち日本人は、他の国の人と比べても、睡眠不足の人が多いです。このような睡眠負債を抱えていると、日中のパフォーマンスが下がってしまったり、経済的な負担にも繋がってしまいます。睡眠不足は平日と休日の睡眠時間の差にも現れていて、睡眠不足の解消は、社会的な課題であると言うことができます。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/4FsfTfp2A0oNGH4jEdlaUl?si=vj_70I7YQGmfyTO74vHXFQ 次回 次回もコラムでは、『睡眠の質を高める意外なヒント』をいくつかご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm23/

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