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世の中からメンタルヘルスの不調が無くならないのはどうして?

メンタルの課題は、周囲からなかなか理解されにくいものです。本人は周りが思っているほど容易に自分をコントロールすることができません。 では、そのような問題を抱えている人たちは、本当に「かわいそうで弱い人たち」なのでしょうか? 今回は、進化論的な話も交えながら、精神医学の知見について紹介していきます。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm19/ メンタルヘルスは遺伝的な問題? メンタルヘルスの問題を抱える人々にとって、自分の内面と周りからの見え方のズレは非常に辛いものです。 例えば、悩みを抱えながらも少しでも自分を好きでいられるように良い写真をSNSに載せると、「承認欲求の塊だ」「可愛いって言ってもらいたいだけなんでしょ」と批判されてしまうことがあります。 しかし前回もご紹介したように、メンタルヘルスの問題では、自己責任論を唱えられることが多いのですが、本人たちが好きで醜形恐怖症や摂食障害になっているかと言ったら、きっと違うと思います。 そのようなメンタルの問題は、性別や遺伝などの、私たちにはどうしようもできない生物学的なところで、抱えることが多いと分かっています。それこそメンタルの問題は女性のほうが発症しやすいのが事実です※。 女性として生まれたというだけで、発症しやすいことを自己責任論にしてしまうのは、少し違う気がしますよね。鬱でいうと、セロトニン関連の調節遺伝子が発症に関わっています。もちろん遺伝子だけで、メンタルヘルスの問題を語れるわけではありませんが、遺伝子も好きで選んで生まれてきたわけではないため、自己責任論は考えるべきところが多そうです。 また遺伝だけでなく、発症の一つの原因として環境も考えられます。ネグレクトや虐待などの、幼い頃のストレス経験があったりすると、メンタルヘルスの課題に直面しやすいと言われています。子どもは、決して自ら選んだわけではありません。メンタルヘルスを自己責任論にすることは、辛辣であると感じます。 ジェネティックな要因や環境要因など、本人が選べないところでメンタルの問題を抱えてしまうことは間違いなく存在します。本人が好き好んで甘えているわけではないという理解が、メンタルヘルスの問題に対する適切な対応の第一歩となるでしょう。 ※出典:Utilising quantitative methods to study the intersectionality of multiple social disadvantages in women with common mental disorders: a systematic review | International Journal for Equity in Health | Full Text (biomedcentral.com), 2024年10月16日参照 メンタルヘルスの問題は、人類の進化にとって重要なこと 以前、感謝やバイアスが進化の過程でどのように残ってきたのかについて紹介しましたが、一部の人々にとって生きにくさを生み出してしまっているメンタルの不調は、なぜ進化の過程で残ってきたのでしょうか? 大前提として、進化の過程でセレクションが起こる際、人間の幸せを最大化するようには進化の仕組みは作られていません。実は、人間の脳が高度に発達していくことと、メンタルヘルスの問題に直面することには関連があると考えられています。 ある研究によると、双極性障害の遺伝子を持つ人々は、持たない人々と比較して、言語能力や創造性が高いことが示されています※。特に、創造的な職業に従事する人々と精神疾患の間には、共通の遺伝的変異が存在することが明らかにされました。これにより、精神疾患と創造性が遺伝的に関連している可能性が支持されています。もちろん発症してしまうことで、その能力が一時的に落ちてしまうことはありますが、社交性の高さも評価されているのです。 また、前回もご紹介したように、メンタルの課題を抱えた人は、完璧主義傾向も高く、メンタル不調に陥るリスクは高いけれど、学業成績や認知能力が高いということが分かっています。 また、優秀な人ほど「インポスター症候群」と呼ばれる、自分の実力を認められず、まるで周囲を騙しているような感覚に陥る問題に直面しやすい傾向があります。対人スキルが非常に高い人に多く見られ、たとえば、元Facebookの最高執行責任者であるシェリル・サンドバーグもこの症状を抱えていたことで知られています。 このような課題を抱えている人々は、弱くてかわいそうな人ではなく、むしろ優秀で仕事ができる人々であることが多いです。彼らは完璧主義であり、努力家であるためにメンタルの問題を抱えやすいのです。 ※出典:New study finds proof that creativity and mental illness are genetically linked (sciencenordic.com), 2024年10月16日参照 まとめ メンタルヘルスの課題は、自己責任論に帰されがちですが、実際には自分の選択で避けることのできない遺伝的要因や生育環境の影響が大きいです。 また、そのような人たちは、優秀な人が多いというのが科学的に分かっています。日本人の5人に1人がメンタルヘルスの問題を抱えている現状が進化の過程で淘汰されずに残っているのは、これらの特性が人間や社会にとって有益な側面を持っているからです。 自信がないからこそ努力をし、努力しても結果が伴わないことで病んでしまう。このような苦しみがあるからこそ努力できる特性は、生き残るために必要な形質だったのです。メンタルの苦しみは人間の進化の一部であり、知的能力や社交性が高い人々が生き残る過程で、その裏にある心の脆さも一緒に残っているのです。 しかし、それをすべて受け入れるべきだというわけではなく、メンタルヘルスの課題から逃れるための手段や方法を探していくことは、私たちにとって非常に重要です。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/0DgOla9hehV0eC0ARmP2vU?si=RJWDwAzVTOSfC672L5BRTw 次回 次回のコラムでは、『メンタル不調を克服する方法』をご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm21/

アニメの女の子の目が大きく描かれるのはどうして?進化の過程で引き継いだ「悲しいバイアス」

好きなアイドルグループのコンサートに行ったとき、何だか自分の推しのファンがやたらと目に入ってきて、みんなと推しが被っている気がする…というような経験はありませんか? 前回は意識に基づいた判断が、必ずしも正しい結果を招くわけではないということを学びましたが、この例のように、意識のうえで客観的事実とは異なる情報を上乗せしてしまう「バイアス」も、私たちの意思決定を歪めるものの1つです。 ありのままの世界を見ることができず、事実でないことに基づいて判断してしまうことは、わたしたちにとって大きなリスクに繋がります。そこで今回は、「なぜ人間はバイアスをもってしまうのか」について深掘りしていこうと思います。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm16/ オーストラリアのカブトムシが絶滅の危機に!?性選択のバイアス 以前「感謝」の回で、感謝の気持ちが時代を超えて残っているのは、感謝は人間関係の強化に役立つメリットがあるからという話を紹介しました。 バイアスは感謝とは異なり、ときにリスクを招きかねないものではありますが、感謝と同様に、進化の過程で残ってきたものであると言われています。 私たちの脳は、必ずしも自分や周りの人の幸せ、健康を最大化するものではありません。それらを犠牲にしてでも、自分の遺伝子を残すのに有利な形質であれば、進化の過程で残っていく仕組みになっているのです。これこそがバイアスが残っている理由であると考えることができます。 虫の例でいうと、光に引き寄せられるバイアスがあります。そのおかげで虫は飛ぶことができているのですが、その光が火であっても、虫はそこに行ってしまうため、命を落としてしまいます。進化の過程で生き残ったからといって、必ずしも良いものとは限らず、欠点のあるバイアスも存在するのです。 性選択のバイアスで面白い事例があります。オスとメスの進化的な競争の中で、側から見るとお互いアンハッピーに見える事例をご紹介します。 ゾウムシという虫は、オスの交尾器にたくさんの棘が生えています。それは交尾をすると、メスが命を落としてしまうほどです。 そのため、メスは対抗手段として、進化の過程で、交尾をしようとしてくるオスを、後ろ足で蹴り上げる力を強くしていきます。これを対抗形質と呼ぶのですが、メスが蹴る力を強めていくにつれ、オスもメスに蹴られても交尾器が抜けないように、どんどん棘を強くしていきます。結果として、お互いアンハッピーになってしまう、棘の形質なのですが、このような事例が知覚的なものにもあるのではないかと言われています。 あるとき、オーストラリアの生物学者が、高速道路を運転していたところ、捨てられていたビール瓶に、カブトムシがたくさん集っているのを目撃したそうです。よく見ると、それは全てオスのカブトムシで、ビール瓶に交尾を試みようとしていたのです。その理由は単純で、茶色くて、光に反射して、突起のあるビール瓶の見た目が、メスのカブトムシによく似ていたからです。 道路に落ちているたくさんのビール瓶せいで、オーストラリアでは、カブトムシが絶滅の危機に瀕してしまうほどでした。このように、見た目だけでビール瓶に価値を見出して、交尾を試みようとするバイアスが、カブトムシたちにはかかっていたのです。 男性が女性を魅力的に思うポイントは「目」にあった!男性のバイアス では、人間にもオーストラリアのカブトムシと同じようなバイアスが、存在するのでしょうか? 日本のアニメや漫画では、女の子の目がかなり大きく描かれていて、それがなぜなのか、海外の研究者の間でも話題になっています。 人間の女性の目の虹彩を大きくしたり、目そのものを大きくしたり、さまざまな写真を並べて、男性にとって女性の目の大きさが、どれほど魅力的に感じる度合いと関わってくるのかを、確かめる実験をしたところ、虹彩が大きいことで、男性は女性を若く見て、繁殖可能なシグナルとして捉えるという結果が出ました※。 目の大きさ自体はあまり関係がないようで、人間のオスはカブトムシにとってのビール瓶と同じように、虹彩の大きなメスに対して、魅力を感じるようなバイアスがあるようです。 海外の研究でも、雑誌の表紙の女性の瞳孔を大きくするだけで、男性の購買率が高まるという結果が出ています。これは、私たちもオーストラリアのカブトムシを笑えない結果ですよね。 ※出典:Large irides enhance the facial attractiveness of Japanese and Chinese women - ScienceDirect, 2024年10月2日参照 女性は周期によって人の顔が変わって見える?女性のバイアス これと同じように、もちろん女性にもバイアスが存在します。進化の性選択の過程で、より異性に選ばれる形質の方が生き残っていく、というものがあります。その中でも、性内競争といって、より良いオスを捕まえるための、メスの中での競争があり、人間の女性はその競争を、水面下で行うことが多いということが分かっています。 具体的には、セルフプロモーションといって、「私はこんなに可愛くて、価値のある女よ」と、自分の宣伝をする戦略や、周りの女性を下げる戦術があります。 実は、女性のエストロゲンレベルの高い排卵期や、妊娠をする可能性の高い時期は、自分とは異なる他の女性が、異常に不細工に見えてしまうことがあるそうです※。周りの女性を下げるというバイアスがかかり、同じ人間でも見え方が変わってしまうのです。 しかし、そのバイアスを持っているからこそ、「私は他の女性よりも可愛い!」という自信をつけて、男性にアピールをし、生まれてきた子孫がいるのです。 このように、私たちはさまざまなバイアスを持っていますが、必ずしもそのバイアスが、私たちの健康や幸せに繋がるものではない、というのは何だか寂しいことですよね。 先ほどの性内競争に関して、女性の中でどれほど激しい競争に晒されているのかを確認するテストがあります。例えば、「自分より綺麗な女性を見ると、たまらなく辛くなるか」「とても魅力的な女性を見ると、粗探しをしてしまうか」などの質問に対して、「Yes」と応える女性は、とても激しい競争に晒されていて、摂食障害などのリスクが高まってしまうと言われています。 他の人から見たら、とても魅力的であるのに、自分ではそう思えずに「痩せなきゃ、可愛くならなきゃ」と思い込んでしまうのです。私たちは、バイアスのおかげで生き残ってきましたが、それを克服していくことも、未来の私たちには必要なことなのかもしれません。 ※出典:Fertile women rate other women as uglier | New Scientist, 2024年10月2日参照 まとめ 人間の意思決定には、多くのバイアスが存在します。バイアスは、悪いものとして扱われることが多いのですが、私たちが生きていくうえで、遺伝子を残すうえで、有利なものがバイアスとして私たちの脳に残っているのです。 しかし、バイアスが必ずしも健康や幸せに繋がるわけではないため、バイアスを認識し、適切な対策を講じることも重要です。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/2bktPtL097mUDwCdPt0y2G?si=Zfo4Y7O6QQK72vLkqhwcgA 次回 次回のコラムでは、『意思決定の質を高めるコツ』をご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm18/

目には見えない心の問題、メンタル不調に陥りやすい人の特徴は?

現在、日本では5人に1人が、うつ病などのメンタルヘルスの不調に悩んでいると言われています。こうした人々に共通する特徴のひとつに、完璧主義であり、非常に優秀である点が挙げられます。高い理想を掲げ、それに向けて努力を惜しまない一方で、その過程で心が疲れ切ってしまうことが多いのです。 今回は、社会問題化しつつあるメンタルヘルスの問題について深掘りしていきます。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm18/ メンタルヘルスに問題を抱える人は優秀な人が多い? みなさんは「醜形恐怖症」という言葉を耳にしたことがありますか? これは、自分の顔や体に対して過度に否定的な認識を持ち、自分の欠点ばかりが気になってしまうことで、精神的な苦痛を引き起こすメンタルヘルスの不調の一種です。自分の外見に対するゆがんだ自己評価が原因となり、日常生活にも大きな影響を与えることがあります。 この症状を抱える人々を調査すると、完璧主義であり、非常に優秀な人が多いという傾向があることがわかっています※。彼らは学業や仕事においても非常に高い成果を上げることが多いようです。摂食障害のある人々にも似た傾向が見られ、理想を追求するあまり、過度に努力し続けた結果として発症することが少なくありません。 現在、日本では5人に1人が何らかのメンタルヘルスの不調に直面しているとされています。では、なぜ職場や社会において、こうした症状がなくならないのでしょうか? その原因について、詳しく掘り下げていきます。 ※出典:大学生における身体醜形懸念に対する完全主義の影響 (jst.go.jp), 2024年10月16日参照 「おいしいごはんが食べられますように」からみる日本の社会問題 2022年に芥川賞を受賞した高瀬隼子さんの「おいしいごはんが食べられますように」という本を、みなさんは読んだことがあるでしょうか?少しネタバレになりますが、この本はメンタルヘルスに問題を抱えた女の子の話です。 その子は会社で、周りがどんなに忙しくても、絶対に定時で帰ることができます。「早く帰っていいからね」「難しい仕事はやらなくていいよ」と上司から言われているのです。 しかし、その状況に周りの人々はモヤモヤした感情を募らせていきます。その女の子も、自分だけ早く帰ることに罪悪感を感じているため、家に帰ってケーキを作り、それを会社に持ってきて配ったりしています。しかし、周囲の人々は「こんなに難しいケーキが焼けるなら、仕事をしてほしい」と思い、その感情が次第にエスカレートしていき、ケーキを女の子の机に捨てるなど、さまざまな事件が起きていきます。 この本では、メンタルヘルスに問題を抱えた人に対して過剰に多様性を受け入れる対応が、かえって分断を生んでしまう状況が描かれています。 メンタルヘルスで悩んでいる本人はとても辛い思いをしていますが、心の中で起きている問題のため、外部の人にはその不調が理解されにくいです。メンタルヘルスの不調は、外からは見えない点が他の病気と大きく異なる部分です。 例えば、風邪を引いたり骨折したりした場合は、その症状が目に見えてわかるため、「かわいそう」と思いやすいですが、メンタルの症状は理解することが困難です。周りからは「可愛いのにどうして?」「痩せてるからいいじゃん」と思えても、自分ではそう思えず、お互いに理解し合えないところが、メンタルヘルス特有の課題のように感じます。 鬱は甘え?分断を生む「スティグマ」とは 「鬱は甘え」という言葉を聞いたことがありますか?メンタルヘルスを理解しようとしていても、心の中では「甘えではないか?」と周囲の人々や本人が感じてしまうことがあるようです。 なぜメンタルがそのように思われてしまうのか、様々な要因が考えられています。 1つには、メンタルヘルスの問題は目に見えないため、自己責任論になりやすいという点があります。見た目には分からないため理解されにくく、周囲からだけでなく本人も「メンタルの不調は自分の甘えだ」「歪んだ自己認識による自己責任だ」と感じてしまいます。このような現象を「スティグマ」と呼びます。 スティグマが存在することで、周囲の人々が本人に期待しなくなり、難しい仕事を与えなくなったり、本人も「自分は問題を抱えている」と感じ過ぎてしまい、その結果として能力が下がってしまうことがあります。それでは、メンタルヘルスに不調を抱えた人は本当に何もできなくなってしまうのでしょうか。この点については、次回のコラムでご紹介したいと思います。 まとめ 鬱や双極性障害など、さまざまなメンタルヘルスに関わる疾患は、非常に身近な存在になってきています。日本でも5人に1人が人生の中で関わることになる問題であり、みなさん自身や周りの人々がそのような課題に直面する可能性は大いにあります。 しかし、これほど当たり前の存在であるにもかかわらず、メンタルの問題はいまだに分断を生み出してしまいます。見た目には分からないという点や、メンタルヘルスへの理解不足から、本人の甘えや自己責任論に結びつけられがちなのです。このようなスティグマが存在することで、本人も自信を失い、悪循環に陥ることがあります。 メンタルヘルスへの理解と支援が広がることが重要であり、スティグマをなくし、誰もが適切なケアを受けられる社会を目指すことが大切です。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/03MRfGDsfa09meDNVlrNSM?si=FyD_l_bjSg6stqsvvsr7QA 次回 次回のコラムでは、精神医学の知見から『メンタル不調』についてさらに深堀していきます。 https://mag.viestyle.co.jp/columm20/

じっくり考えるよりも直感で選ぶ方が正しい選択をしている?

私たちは日常生活の中で多くの選択を行います。例えば、虫が光に引き寄せられて飛んでいくような単純な反応とは異なり、人間の意思決定は複雑で、単純な反射ではありません。 同じ選択肢であっても、その時々の状況や環境によって適切な判断をし、対応を変える必要があります。このため、人間の選択行動は一対一の対応ができないことが多く、状況に応じて柔軟に判断する能力が求められます。 今回は、そんな人間の意思決定について深掘りしていこうと思います。 前回のコラムはこちらです。 右脳と左脳で信じる宗教が違う!? 意思決定というものは、「これが来たらこう動く」というような、一対一の対応ではなく、脳の中で色々な選択をして決めていくものです。しかし、日常の選択の中には「なんとなく、これがいいから決めた」ということも多いのではないでしょうか。この「なんとなく」は、一見しっかりと判断していない、適当な感じがしてしまいますが、実際はそうでもないのです。 恋愛の回でも、好きだから選んだのではなく、選んだから相手を好きになるという話がありましたが、選んだ本人は意識的に好きになっているのではなく、気づかないうちに相手を好きになっていました。 就職活動の面接でも、「私はこういう人間で、このような経験があって、こういうことがしたいから御社を希望します」というような言い回しが是とされていますが、本当の「正しい意思決定」とは一体どんなものなのでしょうか? みなさんは「スプリットブレイン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 昔、癲癇(てんかん)という脳の慢性疾患で、痙攣などの症状を起こしてしまう人たちに対して、右脳と左脳を繋ぐ脳梁(のうりょう)を切る治療法がありました。それにより、癲癇の症状は治るのですが、右脳と左脳が分断されてしまうため、両者の対話・連携が取れなくなってしまいます。 実際の患者例であったのが、「将来の夢は何ですか?」という質問をして、右手だと「私は大工になりたい」と書くのですが、左手で書くと「私はカーレーサーになりたい」というように、全く異なる職業を書いてしまう人がいたそうです。 このように意思決定は、同じ脳の中でも、複数の選択肢が存在していることもあるのです。その人が本当になりたい職業は何なのか、どちらが正しい意思決定なのか、どちらも同じ脳の中でその人が確かに持っている意思であるため、その答えはわかりません。 正しい選択肢を選ぶためには直感が大切? アメリカの神経科学者ベンジャミン・リベットの研究によると、人間が意識的に意思を持つと感じるよりも前に、脳の活動が既に始まっていることが示されています。実際、現代の脳計測技術により、人間の行動は数秒前から脳の動きで予測できることがわかっています※1。 つまり、意識的な決断が行われると感じる瞬間は、脳の無意識的な活動の結果に過ぎない可能性があるということです。これにより、必ずしも人間がすべての行動を意識的にコントロールしているとは限らないと考えられます。 何となくで決めるのが悪く、意識的に熟慮して決めることが正しいと思われがちですが、実はそれほど意識の役割は大きいものではないのかもしれません。  無意識の優位性について述べた有名な論文のひとつに、アポ・ディークステルフースの「無意識思考理論」※2があります。この論文では、意識と無意識による判断の結果を比較し、どちらがより優れた判断を下せるかを調査した結果が示されています。 具体的には、複雑な選択肢を提示された被験者を、意識的に熟考して決断を下すグループと、無意識に判断を委ねるグループに分けて比較しました。結果として、無意識に頼ったグループは、意識的に長時間考えたグループよりも優れた選択をすることがありました。 この結果をもとに、ディークステルフースは、無意識の思考が特に複雑な問題において効果的であると結論づけています。ただし、この優位性は複雑な選択肢が絡む場合に限られ、単純な問題では意識的な判断が有効であることも強調しています。 テストで何度も見直した結果、最初の答えが正しかったという経験がある方も多いのではないでしょうか。これは無意識的な判断が意外と正確なことを示す一例かもしれません。 ※1 出典:Decision-making May Be Surprisingly Unconscious Activity | ScienceDaily, 2024年10月2日参照 ※2 出典:What the Science Actually Says About Unconscious Decision Making | The MIT Press Reader, 2024年10月2日参照 正しい意思決定とは? 意識に基づいて判断することだけが、正しい結果に至るわけではないようで、それは商品選びだけではなく、カップルのパートナー選びでも同じことが言えるようです。 「あなたは今の彼氏をどう思っていて、2人の関係をどのように感じていますか?」というように、意識で評価させるテストと、彼氏の顔の写真が出てきて、そのあと次々に出てくる「ポジティブ」「ネガティブ」というような単語を、素早く選ばせる無意識的なテストがあります※。 そのテストの4年後、テストを受けたカップルを再び調査したところ、意識下で評価が高かったカップルよりも、無意識下で評価の高かったカップルの方が、2人の関係性がよく、カップルが長続きしていたことが分かりました。意識で感じる相性よりも、無意識なところで未来の二人の関係性を予測できるという面白い実験です。 ※出典:Do you really love your valentine? How to analyze unconscious negative feelings toward our partners | Department of Psychology (cornell.edu), 2024年10月2日参照 まとめ 人間の意思決定は、動物のように一対一の対応ではなく、状況や選択肢に応じて複雑な計算をして、判断を下します。 意識的に下す判断は、正しいと感じてしまいがちですが、実はそれほど「正しい意思決定」というわけではなく、無意識で選択したものが、より優れた結果を招くこともあるのです。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/7tGiXFs2HcvmEwvwT9Oj7n?si=ab2tREX1Tg6OZANnMlGm2w 次回 次回のコラムでは、『意思決定における思考バイアス』についてご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm17/

集中ブース完全ガイド|導入メリット・選び方5つの秘訣・活用法と注意点

テレワークやハイブリッドワークが働き方の主流となる中、オフィス内での「集中できる環境づくり」は多くの企業にとって喫緊の課題です。周囲の音や視線を気にせず業務に取り組みたい、プライバシーを守りながらWeb会議を行いたい――こうしたニーズに応えるのが「集中ブース」です。この記事では、集中ブースの基本的な役割から、導入によって企業が得られる具体的なメリット、後悔しないための選び方の秘訣、さらに意外な活用アイデアまでを網羅的に解説します。導入前に必ず確認すべき消防法についても触れていますので、自社に最適な集中ブース選びの参考にしてください。最近注目のニューロミュージックを取り入れたリフレッシュ機能を持つブースについてもご紹介します。 集中ブースとは? なぜ今、オフィスに必要なのか 集中ブースとは、個人の集中作業やWeb会議、少人数での打ち合わせなどを目的としてオフィス内に設置される、個室型または半個室型のスペースのことです。「Web会議ブース」「テレワークブース」「個室ブース」「ワークブース」などとも呼ばれます。 集中ブースの基本機能とオフィスでの役割 主な機能としては以下の点が挙げられます。 防音・遮音性: 外部の騒音を遮断し、ブース内の音が外に漏れるのを防ぎます。これにより、静かな環境での作業や、秘匿性の高い会話が可能になります。 プライバシー確保: 視線を遮ることで、作業内容や表情が周囲から見えにくくなり、安心して業務に集中できます。 快適な設備: 多くの場合、デスク、チェア、電源コンセント、換気設備などが備え付けられており、快適に作業できる環境が提供されます。 オフィスにおいて集中ブースは、オープンなオフィス環境の中で「静」と「動」の空間を効果的に分け、従業員一人ひとりがその時の業務内容に合わせて最適な場所を選べるようにする役割を担います。 テレワーク普及とハイブリッドワーク化で高まる需要 コロナ禍を機にテレワークやWeb会議が急速に普及し、働き方のスタンダードとなりました。2023年以降、オフィス回帰の動きも見られますが、多くの企業はオンラインの利便性を維持しつつ出社も組み合わせる「ハイブリッドワーク」を採用しています。 このような状況下で、オフィス内でも個人の集中作業やオンライン会議に適した環境の必要性が高まりました。オープンなオフィスでは、周囲の話し声や雑音がWeb会議の妨げになったり、重要な作業への集中を削いだりする課題が顕在化。こうした問題を解決し、生産性と快適性を両立させるソリューションとして、集中ブースへの需要が急速に高まっているのです。 集中ブース導入で得られる3大メリット 集中ブースをオフィスに導入することで、企業や従業員は具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは主要な3つのメリットをご紹介します。 メリット1:Web会議や通話のプライバシー保護と情報漏洩対策 オンラインでの会議や商談が日常化した今、会話内容のプライバシー保護は非常に重要です。集中ブースは、周囲への音漏れを大幅に軽減し、外部からの音も遮断するため、機密情報を含む会話や重要なクライアントとのやり取りも安心して行えます。 これにより、情報漏洩リスクを低減し、企業の信頼性を高める効果も期待できます。 メリット2:周囲の騒音を遮断し、個人の集中力を最大化 オープンオフィスでは、他の従業員の会話や電話、移動などが気になり、集中力が途切れやすいという声も少なくありません。 集中ブースは、そのような周囲のノイズを物理的にシャットアウトし、静かでパーソナルな作業空間を提供します。これにより、従業員は質の高い集中状態を維持しやすくなり、思考を要する作業やクリエイティブな業務の生産性向上が見込めます。 メリット3:限られたオフィススペースの有効活用と効率化 大規模な会議室を少人数で利用したり、逆に会議室が足りずに予約が取れなかったりといった問題は、多くのオフィスで聞かれます。集中ブースは1人用から数人用まで様々なサイズがあり、比較的コンパクトな設計のため、オフィスのデッドスペースや空きスペースにも柔軟に設置できます。 これにより、会議室不足の解消や、スペース利用の最適化が図れ、オフィス全体の効率的な運用に貢献します。 併せて読みたい記事: https://mag.viestyle.co.jp/wellbeing_office/ 後悔しない!集中ブース選び方5つの秘訣と比較ポイント 集中ブースの導入効果を最大限に引き出すためには、自社のニーズやオフィス環境に合った製品を選ぶことが不可欠です。ここでは、選定時に特に重視すべき5つの秘訣と比較ポイントを解説します。 秘訣1:防音性能は最重要!音響設計も確認 集中ブースの核となる機能は防音性です。Web会議や集中作業の妨げとなる外部の音をどれだけ遮断できるか(遮音性能)、そしてブース内の音がどれだけ外部に漏れないか(吸音・防音性能)は必ず確認しましょう。 さらに、「防音」だけでなくブース内の「音響設計」も重要です。音がこもりすぎたり、逆に反響しすぎたりすると、Web会議での音声が聞き取りにくくなることがあります。例えば、「テレキューブ」のような製品は、高い防音性能に加え、内部の音響バランスにも配慮した設計が特徴です。 ・テレキューブ公式サイト:https://jp.vcube.com/telecube 秘訣2:設置場所と用途に合うサイズ・レイアウト オフィスのどこに、どの程度の大きさのブースを、何台設置するのかを事前に計画しましょう。ブースのサイズ(幅・奥行・高さ)はもちろん、扉の開閉方向(内開き・外開き・引き戸)や設置に必要なスペースも確認が必要です。 天井高が低いオフィスや、限られたスペースに設置する場合はコンパクトなモデルを、少人数でのミーティングにも使用したい場合は少し大きめのモデルを選ぶなど、用途とスペースに応じて検討します。 「WORK POD」は、様々なサイズバリエーションがあり、オフィスのスペースや用途に合わせて柔軟に選ぶことができます。また、扉の開き方も重要です。引き戸タイプや外開きのドアなど、オフィスのレイアウトに合わせて選べる製品も多く、限られたスペースを有効活用できる設計が施されています。 ・ WORK POD公式サイト:https://www.kokuyo-furniture.co.jp/products/office/workpod/ 秘訣3:快適性と機能性を両立するデザイン・設備 従業員が長時間利用することも考慮し、快適性も重要な選定ポイントです。ブース内のデスクの広さや高さ、チェアの座り心地、照明の明るさや色温度、換気性能などをチェックしましょう。圧迫感を軽減するガラス面の使用や、オフィスの内装と調和するデザインかどうかも、利用促進に繋がります。 また、電源コンセントの数や位置、USBポートの有無、LANポートの有無など、業務に必要な設備が整っているかも確認が必要です。 Framery Oneは、高い防音性能と快適さを追求したブースで、タッチスクリーンによる温度や照明の調整機能を備えています。コンパクトながらも、作業しやすい広さと、オフィスのインテリアに合うスタイリッシュなデザインが魅力です。 ・Framery One公式サイト:https://framery.com/jp/office-pods-and-booths/framery-one/ 秘訣4:コストとROI – 購入?サブスク? 導入コストは製品の機能やサイズ、デザインによって大きく異なります。初期費用だけでなく、メンテナンス費用や移設の際の費用なども含めた長期的な費用対効果(ROI)を考慮することが大切です。 最近では、初期投資を抑えられるサブスクリプション(月額レンタル)型のサービスも増えています。必要な期間だけ利用できたり、最新機種への変更が容易だったりするメリットがあります。 たとえば、ITOKI(イトーキ)の集中ブースでは、サブスクリプション型での提供があり、契約期間終了後に延長・買取・返却を選ぶことができるため、非常に柔軟に導入を進めることが可能です。 ・ITOKI公式サイト:https://workstyle.itoki.jp/lp/subscription2022 秘訣5:【要注意】消防法への適合と設置手続き 集中ブースの設置にあたっては、消防法規を遵守する必要があります。ブースの構造や材質、設置場所によっては、自動火災報知設備の感知器やスプリンクラーヘッドの増設、避難経路の確保などが求められる場合があります。 法的な要件を満たさないまま設置してしまうと、万が一の際に重大な問題に繋がる可能性があります。導入前には必ずメーカーや販売店、場合によっては所轄の消防署に確認し、必要な手続きを行いましょう。 オカムラでは、設置前に下見サービスを提供しており、設置予定場所のスペースに応じて、実際にブースが設置可能かどうかを専門家が確認します。このサービスにより、トラブルを未然に防ぐことができるほか、事前の下見で消防法の規制や安全対策についても確認できるため、安心してブースの導入が進められます。 オカムラ公式サイト:https://www.okamura.co.jp/ 集中ブースの意外な活用アイデア 集中ブースは、主にWeb会議ブースやテレワークブースとして活用されるイメージが強いですが、実はそれ以上に多用途な活用が可能です。オフィスの限られたスペースを効率的に使うためにも、工夫次第で様々なシーンで役立てられます。 集中して作業できるスペースとして活用 最も一般的な活用方法として、一人用の集中スペースとしての利用が挙げられます。オープンオフィスでは周囲の雑音や他の従業員の動きが気になり、集中力が削がれてしまうことが少なくありません。このような状況では、個室ブースを利用することで、雑音を遮断し、集中して作業できる環境を提供します。 特に、細かな業務に集中する必要がある場合や、クリエイティブな発想が必要な作業においては、一人用の集中ブースが効果的です。Web会議やテレワーク中に個人作業を行う際も、ブース内での作業により生産性が向上し、作業効率が劇的に上がることが期待できます。 オンライン面接やトレーニングルームとして利用 二人用ブースは、単なる集中スペースとしてだけでなく、オンライン面接や社員向けのトレーニングルームとしても多目的に活用できます。二人用のWeb会議ブースは、防音効果が高く、静かでプライバシーが確保された環境を提供するため、面接や研修に最適です。 特に、周囲の雑音を気にせず集中できる空間は、双方にとって効果的なコミュニケーションを実現し、業務の効率化にもつながります。限られたスペースで、多機能に対応できる点が大きなメリットです。 社員のリフレッシュやウェルビーイング向上に 近年、ウェルビーイング(Well-being)がオフィス環境でますます重視されています。集中ブースを単なる作業スペースとしてだけでなく、社員がリフレッシュできる空間として活用するアイデアが注目を集めています。例えば、「VIE Pod」のように、リラックス効果を高めるブースを導入することで、社員が短時間でもリフレッシュできる場所を提供できます。 特に、忙しいオフィス環境では、短時間の休憩や瞑想ができるスペースは非常に貴重です。「VIE Pod」は、ニューロミュージック(脳波に科学的効果が実証された音楽)や映像コンテンツを組み合わせ、集中力向上やリラクゼーションといった付加価値を提供する可動式ブースです。これにより、社員のストレス管理やメンタルヘルスの改善に寄与し、最終的にはパフォーマンス向上も期待できます。 VIE Podについて:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000063.000067474.html 会議スペースを補完する新たな活用法 集中ブースは、個人作業や小規模なコミュニケーションの場としてだけでなく、会議ブースとしても活用可能です。特に、4人用ブースは、スモールミーティングやチームミーティングに最適で、従来の大きな会議室を使用せずに、少人数での打ち合わせやオンライン会議を効率的に進めることができます。 4人用ブースは、Web会議だけでなく対面での会議にも対応できる広さがあり、外部クライアントとの打ち合わせやプレゼンテーションにも適しています。これにより、オフィスのスペース効率を向上させ、集中できる環境で会議を行うことで、成果を最大化します。 さらに、会議室の増設工事を行う必要がないため、ブースを導入する方がコストを抑えられ、賃貸オフィスにも簡単に設置可能です。 新しい働き方を支える集中ブース 集中ブースは、オフィスやテレワーク環境において業務効率を高め、従業員のウェルビーイング向上に寄与する重要なツールです。防音性能やサイズのバリエーション、デザイン性を考慮し、スペースや業務内容に合ったブースを選ぶことが成功のカギとなります。 また集中ブースは、Web会議やオンライン面接に最適な環境を提供するだけでなく、リフレッシュスペースや少人数の会議スペースとしても活用できる柔軟性が求められています。コスト面ではサブスクリプション型や買い切り型を検討し、費用対効果(ROI)を最大化することがポイントです。 集中ブースを賢く導入することで、現代の多様な働き方に対応した快適で効率的なオフィス環境を整えることができます。

ニューロフィードバック入門:脳を最適化する方法

日々のストレスや集中力の低下に悩んでいませんか? そんなあなたに注目してほしいのが、ニューロフィードバックという最新の脳トレーニング技術です。脳波をリアルタイムで測定し、自分の脳の状態を“見える化”することで、脳の自己コントロールを促します。 この画期的な手法は、メンタルヘルスの改善や認知機能の向上に役立つだけでなく、仕事やスポーツのパフォーマンスアップにもつながります。 心と脳のコンディションを整えたい方へ――。自分の脳と向き合う、新しい習慣を始めてみませんか? ニューロフィードバックとは? ニューロフィードバックとは、脳波をリアルタイムで測定し、そのデータを基に脳の活動をコントロールする技術です。 具体的には、脳波計(EEG)を使って脳の活動を測定し、そのデータを視覚や聴覚を通じてフィードバックとして提示します。利用者はそのフィードバックをもとに、自らの脳波を意識的にコントロールする方法を学び、脳の働きをより良い状態へと導くことができます。 この技術は、ADHD、不安症、うつ病、不眠症などの精神的・神経的障害の治療に役立つだけでなく、スポーツ選手や音楽家がパフォーマンスを向上させるためトレーニング方法としても活用されています。 ニューロフィードバックは、薬を使わずに脳の働きを改善できる点で、安全性が高く、副作用も少ないとされています。ただし、効果には個人差があり、全ての人に同じような成果が期待できるわけではありません。 この技術は、脳の健康を保ち、精神的な安定や集中力の向上を目指す方々にとって、新たな選択肢として注目されています。 バイオフィードバックとの違い ニューロフィードバックは、「バイオフィードバック」と呼ばれる技術の一種です。バイオフィードバックとは、心拍や呼吸、体温、筋緊張、皮膚電気反応など、身体の生理的な反応をリアルタイムに計測・可視化し、それをもとに自分の身体状態をコントロールする方法を指します。 その中でもニューロフィードバックは、脳波や脳血流といった脳の神経活動に特化したもので、より直接的に「脳の働き」にアプローチするのが特徴です。 つまり、バイオフィードバックが「身体全体の状態調整」を目的とするのに対し、ニューロフィードバックは「脳の最適化」に特化したアプローチだといえます。 ニューロフィードバックの進め方 ニューロフィードバックは、専門家の指導のもとで段階的に実施されます。以下は、一般的なトレーニングの流れです。 脳の状態を測定する まずは脳波やQEEG(定量的脳波検査)などを用いて、現在の脳の活動状態を可視化します。これにより、どのような脳波パターンに課題があるのかを把握します。 トレーニングの目標を設定する 測定結果をもとに、改善すべき脳波の特徴や目標状態を明確にします。たとえば、「集中力を高める」「リラックスしやすい状態を作る」など、個々の課題に応じて計画を立てます。 トレーニングを実施する 視覚や聴覚を通じてリアルタイムのフィードバックを受けながら、脳の状態をコントロールする練習を行います。たとえば、画面上の映像がリラックス状態になるとスムーズに進む、といった仕組みで学習します。 効果の確認と調整 一定期間のトレーニング後、再度測定を行い、変化の有無を確認します。必要に応じてプランを調整しながら、継続的に効果を高めていきます。 このように、ニューロフィードバックは一人ひとりの脳の状態に合わせて個別に設計・実施されるため、高い柔軟性と適応性を持ったトレーニング手法といえます。 ニューロフィードバックの応用 ニューロフィードバックは、脳の自己調整能力を引き出すことで、様々な分野で効果を発揮できます。脳波のリアルタイムデータを用いて脳の働きを最適化するこの技術は、メンタルヘルスからパフォーマンス向上まで、幅広い応用が可能です。ここでは、具体的な応用例をいくつか紹介します。 メンタルヘルス 不安やうつ病、PTSDなどのメンタルヘルスの問題に対して、ニューロフィードバックは、脳波のバランスを調整することで、ストレスを和らげ、感情を安定させるサポートを行います。 例えば、過度に興奮した脳波をリラックスさせることで、不安を軽減したり、抑うつ状態からの回復を促進したりします。薬物治療に代わる自然なアプローチとして、副作用が少なく、長期的な効果が期待されている点も大きな魅力です。 認知機能向上 記憶力や集中力を高めるために、ニューロフィードバックは脳の働きを効率的に整えるサポートをします。特に高齢者や脳にダメージを受けた人々に対して、脳波を訓練することで、衰えた記憶力を補強したり、注意力を改善したりすることが可能です。 たとえば、日常生活で忘れがちな細かなことを思い出しやすくなったり、複数のタスクに集中できるようになったりする効果が期待されます。 発達障害の治療 ADHDやASDといった発達障害に対しても、ニューロフィードバックは効果的です。 たとえば、ADHDの人々にとっては集中力を向上させることや、衝動的な行動を抑えることができるようになります。ASDの方には、感情のコントロールを支援し、コミュニケーション能力の改善に役立ちます。さらに、薬物療法と併用することで、より持続的で副作用の少ない治療を実現することができます。 スポーツやパフォーマンスの向上 プロのアスリートや音楽家、ビジネスリーダーにとって、ニューロフィードバックは、競技や演奏、ビジネスの場で最大限のパフォーマンスを発揮するための重要なトレーニング手法です。 脳波をトレーニングすることで、集中力を高めるだけでなく、リラックスした状態を保つことで、緊張感をコントロールし、プレッシャーのかかる状況でも冷静に行動できるようになります。 このように、ニューロフィードバックはメンタルヘルスから認知機能向上、発達障害の治療、さらにはスポーツやパフォーマンス向上といった幅広い分野で活用されています。今後もその応用範囲はさらに拡大し、多くの人々の生活の質を向上させることが期待されています。 ニューロフィードバックの活用事例(VIE) VIE株式会社は、イヤホン型脳波計「VIE Zone」を通じて、ニューロフィードバック技術の実用化を推進しています。このデバイスは、手軽に脳波を測定できる点で画期的であり、さまざまな場面での脳波トレーニングを可能にしています。 以下では、VIEによるニューロフィードバックの具体的な活用事例をご紹介します。 マインドフルネスへの応用(VIE×POLA) ポーラ化成工業株式会社と共同で、化粧品を使用した際の心理状態、特にマインドフルネス状態を脳波から正確に推定するアルゴリズムを開発しました。 この技術により、従来の質問票やヒアリングに頼らず、脳波データを活用して化粧品が使用者に与える心理的な影響をリアルタイムで分析することが可能になりました。これにより、製品の感性価値を高め、より効果的な製品開発に活用されています。 視力改善への応用(VIE) イヤホン型脳波計を用いたニューロフィードバックを利用して、短期間で視力を改善することに成功しました。この研究では、近視の被験者に対して2週間のトレーニングを実施し、脳波を調整しながら視覚学習を行いました。 特にα波を強化することで、視力の向上が持続することが確認されました。この方法は、家庭でも視力訓練に応用できる可能性があり、視力回復の新たなアプローチとして期待されています。 スポーツへの応用(VIE×イブキ) イブキと共同で、緊張状態におけるゴルフパフォーマンスの低下「チョーキング現象」を予防するために、ニューロフィードバック技術を活用した新しいトレーニング技術の開発を行いました。 この技術は、緊張やプレッシャーによるパフォーマンス低下の問題に対処するため、脳波をリアルタイムでフィードバックし、心身のパフォーマンス向上をサポートするものです。ゴルフだけでなく、他のスポーツやプレゼンテーションなど、緊張が影響するシーンでも応用が期待されています。 eスポーツへの応用(VIE×KDDI) KDDIと共同で実証実験をおこない、eモータースポーツの選手がブレインテックを活用したトレーニングでドライビングテクニックを向上させました。 この研究では、脳波データを利用して脳の反応速度や認知能力をトレーニングし、シミュレーターでのラップタイムを改善しました。この技術は、プロレーサーを目指すeスポーツ選手にとって有望な手法として注目されています。 ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードはこちら ニューロフィードバックの展開 この記事では、ニューロフィードバック技術について、その基本的な概念と多岐にわたる応用例を紹介しました。ニューロフィードバックは、脳波をリアルタイムで測定し、フィードバックを通じて脳の自己調整を促す技術であり、メンタルヘルスの改善や認知機能の向上、発達障害の治療に役立つだけでなく、スポーツやパフォーマンス向上の分野でも活用されています。 さらに、イヤホン型脳波計「VIE Zone」を使った具体的な事例として、マインドフルネスへの応用、視力改善、スポーツ、eスポーツにおける活用方法について詳しく解説しました。これらの事例は、ニューロフィードバックがいかに多様な場面で有効であるかを示しており、今後もさらなる発展が期待されます。 ニューロフィードバックは、現代社会のさまざまなニーズに応えるための新たな手段として、多くの分野で活躍しており、その技術は私たちの生活の質を向上させる可能性を秘めています。

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