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お酒とニューロテクノロジーで実現する新しい世界 

ニューロテクノロジーには脳情報を「読み取る」技術と、「書き込む」技術の2つの要素があります。 これらの技術は、自分の好みに合ったお酒を脳波から提案してくれたり、ノンアルコールでも酔ったときと同じような感覚に持っていけたりなど、「お酒」と「脳科学」の新しい世界の可能性を魅せてくれます。 今回は、『お酒とニューロテクノロジーで実現する新しい世界』をテーマに紹介します。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm02/ ニューロテクノロジーとは?「読み取り」と「書き込み」の2つの要素 私たちの会社VIE では、ウェアラブルの脳波計を製作し、さまざまなニューロテクノロジーを用いた事業をおこなっています。 ニューロテクノロジーというのは、私たちの情報処理を担う「脳」をターゲットにし、脳がおこなう情報表現をセンシングして理解したり、ニューロフィードバックという技術を用いて、なりたい脳活動を実現させるトレーニング技術のことを指します。 ニューロテクノロジーには大きく2つの要素があります。1つは脳の情報を「読み取る」技術です。これは、自分がいま見ているものがヒトなのか、空なのかといったことや、右に行きたいのか、左に行きたいのか、というようなことを脳活動から解読する技術のことを指します。 もう1つの要素は、脳に「書き込み」をおこない、脳活動を変えていくという技術です。 例えば、音楽を聴いてリラックスをしている状態の脳活動が挙げられます。外部の技術を駆使して、音楽を聴かなくても、その状態の脳活動を作り上げていく、という技術が「書き込み」にあたります。 好みに合ったビールを脳波をもとに提案 近年、「お酒」と「ニューロテクノロジー」の融合により、新たな技術が期待されています。ここでは私たちの会社 VIE が挑戦してみたい、ニューロテクノロジーを利用した事業をいくつか紹介します。 1つ目は先ほどの「読み取る」技術を利用したものです。 みなさんは複数あるビールメーカーや種類の中で、言葉では表現しにくいけれど、何となくこのビールは口に合う気がする、好みではない気がする、というような感覚を抱いたことはありませんか?そのような脳の情報を記録し、「読み取る」ことで、みなさんの脳とビールをマッチングさせて、「この人ならこの味のビールを好みそう」という提案を行えるようになる技術が研究されています。 VIE が製作しているウェアラブルの脳波計を装着しながら、飲食をしているときの脳状態を記録をすることで、脳科学の観点から、好みに合った食べ物を提案できたら面白いなと考えています。 ノンアルコールで酔っ払うニューロフィードバック 2つ目は「書き込み」の技術を利用したものです。 最近ではソバーキュリアス(Sober Curious)と言って、お酒を飲まない生き方を選択する人が増えています。そのような背景から、お酒を飲まなくても、お酒を飲んでいる人たちと同じように楽しもうとする、ノンアルコールの市場が注目されています。 しかし「お酒」には、 以前 お酒に関する話 で紹介したように、飲むことによって気持ち良くなったり、人付き合いが円滑になったりする効果があります。その力を、アルコールを摂取しなくても表出できるようになったら、面白いと思いませんか? 例えば、Aさんの素面のときの脳波と、酔って気持ちの良いときの脳波を記録しておきます。そして素面のときのAさんに、酔って気持ち良くなっているときの脳波と今の脳波が、どれくらい近いのかを教えてあげます。もちろんAさんは素面のため、最初は酔ったときの脳波とはかけ離れた位置にいますが、脳波を酔ったときと同じ状態まで持っていくように、Aさんに促します。 すると、Aさんが好きなアイドルのことを考えたり、楽しかった飲み会を思い出したりと、脳波を変えるために試行錯誤する中で、Aさんの脳波が酔ったときの脳波に近づいた瞬間が生まれてきます。これを何度も繰り返していくことで、Aさんは「こういうことを考えれば、脳波を近づけられるんだ」と学ぶことができます。 このように自分の脳活動を見て、その脳の活動を自分で変えていくことを、ニューロフィードバックといいます。このスキルがあれば、アルコールを飲まなくても、酔ったときと同じような感覚に近づくことができるので、お酒を飲みすぎることなく楽しい時間を過ごせるのではないかと考えています。  最近の研究※では、アルコールは、快感をもたらす脳の部位(腹側線条体)を活性化し、不安に関わる扁桃体の反応を抑制することが示されています。このような反応を、脳情報を媒体に演出することができたら、それがお酒と同様に未来の嗜好品になっていくかもしれません。 ※出典:Why We Like to Drink: A Functional Magnetic Resonance Imaging Study of the Rewarding and Anxiolytic Effects of Alcohol | Journal of Neuroscience (jneurosci.org), 2024年7月2日参照 脳波についてはこちらの記事でも紹介しています。 https://mag.viestyle.co.jp/eegmeasurement/ まとめ ニューロテクノロジーは、脳の情報を「読み取る」、「書き込む」という2つの要素が中心となっています。「読み取る」技術では、脳活動をモニタリングしながら、好みのお酒をマッチングさせることができたり、「書き込み」技術では、ノンアルコールでもお酒を飲んだときのような心地よい状態に近づけることができたりなど多くの可能性が秘められています。私たち VIE もそのような事業に挑戦していきたいと思っています。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/4LGjDLc5eyhYy3qLlPdWpA?si=LQ9hYAa8RbS7GsqfYyfaIw 次回 次回のコラムでは、脳科学の視点から『蛙化現象』について深堀りしていきます。 https://mag.viestyle.co.jp/columm04/

生活の質を高めるお酒の話/お酒によってコミュ障を克服!?

みなさんはアルコールに対してどのようなイメージがありますか?「アルコール中毒」といったマイナスな側面が強調されることがありますが、プラスな側面もたくさんあることが分かっています。 例えば、アルコールによって不安を軽減することができたり、初対面の人とも打ち解けることができたりなど、アルコールは社会における対人関係を手助けしてくれる要素も持ち合わせています。 初対面の人との交流の場で、アルコールが私たちをサポートしてくれるのは、アルコールにはセルフディスクロージャー(自己開示)を促す作用があるためです。 そんなアルコールに関連して、今回は『生活の質を高めるお酒に関する話』をご紹介します。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm01/ 対人関係に役立つ?アルコールは社会的な飲み物 人は誰しも「こんなことを言ったら嫌われるかな?」「恥ずかしいな?」といった不安や自意識過剰の念に駆られることがあります。 このような感情は、主に脳の前頭葉という部分で起こっています。前頭葉は、人の行動の開始や抑制を司る機能がありますが、アルコールの飲用によってこの「抑制」の機能が低下すると言われています。それにより、素面では恥ずかしさや不安で言えないようなことも、お酒が入ることによって自分をさらけ出しやすくなります。 自己開示をすると、相手も自分のことを話しやすくなる、このようにしてアルコールの力で初対面の人とも打ち解けやすくなるのです。 実際に、初対面の3人組がアルコールを飲みながら会話をする方が、飲まなかったグループよりも会話が弾み、笑顔が増え、終わった後に「自分たちは仲良しだ!」と感じる割合が高いということが示された研究※もあります。 初対面の相手とは「カフェから始める」よりも「お酒から始める」方が、仲良くなりやすいのかもしれません。しかし、先ほども述べたようにアルコールによって脳の「抑制」の機能が低下するため、その分リスクもあることは確かです。 ※出典:Moderate Doses of Alcohol Increase Social Bonding in Groups – Association for Psychological Science – APS, 2024年7月2日参照 適度な飲酒は快適な睡眠を導く? 最近の研究では、適度な飲酒は初期段階の睡眠を深める効果があることが示されています※。一方で、認知機能や感情の健康に影響を与える可能性があることも示唆されています。 はじめのうちはお酒をたくさん飲んだら、その分ぐっすりと眠られるかもしれません。しかし、それに味をしめて続けていくと、だんだん体も脳もアルコールに対する耐性がついてきてしまいます。 これは「辛いものを食べ続けると、同じ辛さでは満足できなくなっていく」のと同じ現象です。質の高い睡眠をアルコールによって誘発したいのであれば、一杯ほどの飲酒が良いのかもしれません。 ※出典:Alcohol before bed: New research uncovers its impact on sleep architecture (psypost.org) , 2024年7月2日参照 記憶はつくられていなかった!?「飲み過ぎて記憶を飛ばした」は間違い みなさんは「飲み過ぎて記憶飛ばしちゃったよ…」と誰かが言っているのを聞いたことはありませんか?この記事を読むお酒好きの方なら、自分でこのセリフを言ったことがある人もいるかもしれませんね。 しかし、実はこの言葉は間違いなのです。「記憶が飛ぶ」というのは、「ちゃんと記憶していたのに忘れちゃった」ということを指しますが、実際には飲み過ぎてしまった人の脳の中では「記憶をする」という機能自体が働いていないのです※。 もう少し説明すると、その人がその場で会話ややりとりをするのに必要な「短期記憶」は脳の中で働いています。しかし、次の日までその記憶を保持する「長期記憶」は働いていません。それにより、側から見ると普通に会話をしていた人でも、本人は次の日、記憶を無くしてしまっていることがあるのです。 つまり「記憶が飛んだ」ではなく、「記憶は作られていない」という方が正しいことになります。 ※出典:Interrupted Memories: Alcohol-Induced Blackouts | National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism (NIAAA) (nih.gov), 2024年7月2日参照 まとめ アルコールには健康のリスクはありますが、良い面もたくさんあります。不安を和らげたり、断りづらいことを断れるようになったり、新しい人との絆を強めたりなど、アルコールによって実現されることは数多くあります。さらに、適度な飲酒は睡眠の質を良くし、あなたの人生を豊かにするでしょう。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/25ZFcvkz3vnknJgI9cOJJ9?si=vl95oM6MR-iVXfsyAqOuNA 次回 次回のコラムでは、『お酒とニューロテクノロジーで実現する新しい世界』 をテーマにご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm03/

ビールを好きになる脳の仕組みとは?

みなさんは「パブロフの犬」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? ベルが鳴ると餌が出る仕組みを理解した犬は、ベルの音が聞こえるだけでヨダレを垂らすようになるというものです。元々はベルの音を聞く聴覚系の神経細胞と、ヨダレを出す神経細胞はなんの繋がりもありません。 しかし、犬はベルの音が聞こえると餌が出てきて、ヨダレを垂らすことを繰り返していきます。すると、聴覚系の神経細胞とヨダレを出す神経細胞は同時に活動するようになり、徐々に2つの神経細胞同士の繋がりが強くなるのです。 このように脳内の神経細胞同士の繋がりが変わっていくことを、脳の「学習」と呼びます。今回は、こうした脳の「学習」に関連して、『ビールを好きになる脳の仕組み』をテーマに紹介します。 ビールを好きになるのは、脳が「学習」しているから? 繋がりのなかった神経細胞同士が新しく繋がることを、脳の「学習」と呼びます。この「学習」の応用が「強化学習」です。 強化学習を説明するのに、こんな実験※があります。ネズミの目の前にレバーを置き、そのレバーを押すとネズミの好物のチーズが出てくる。すると、ネズミはレバーを押すことを「学習」するようになります。これはレバーを見る視覚系の神経細胞と、レバーを押すという運動系の神経細胞が、チーズという報酬を通じて繋がりを深めていくというものです。これを「強化学習」と言います。 ところで、みなさんは「赤提灯」を見ると、なぜかそのお店に入りたくなってしまうといった経験はありませんか?また、暑い日にはビールを飲みたくなってしまう、そんな経験もあるはずです。 実はネズミにとってのレバーは、人間にとっての赤提灯であり、レバーを押すことはビールを頼むことと同じなのです。赤提灯を見るだけでお店に入ってしまう、そしてその場所でビールを飲んで気持ち良くなった経験は、脳にとっての報酬となります。それを繰り返していくと初めは苦くて美味しいと感じなかったビールも、メニュー表に載っているだけで頼みたくなってしまう、それがビールを好きになっていく脳の「学習」なのです。 ※出典:Skinner's theory on Operant Conditioning - Psychestudy, 2024年7月2日参照 ワインは美味しいから高い?高いから美味しい? みなさんはコンビニで売っているワインと、高級フレンチで出てくるワインのどちらが美味しいと思いますか?多くの人が後者と答えるのではないでしょうか。 実はこれに関して、面白い脳の実験※があります。2つの同じワインに対して、「これは高級なワインです。」と言われて飲むのと、「これは安いワインです。」と言われて飲むのとでは、脳の中で美味しさを感じ取る部分の働きが全く異なるというものです。同じワインであるのに、後者では美味しさを感じ取る脳の部分が活発に活動し、「美味しい!」と感じるのに対して、前者では活発な脳の活動が起こらず「美味しくない…」と感じてしまうのです。 このように直前に聞く情報によって、私たちが感じ取る美味しさが変化してしまうことは、価格だけでなく商品のブランドでも同様です。「このメーカーの商品なら美味しいに違いない。」「これだけ高ければ美味しいだろう。」といった脳の期待が商品の美味しさを高めていくのです。 ※出典:Marketing actions can modulate neural representations of experienced pleasantness, 2024年7月2日参照 水を飲んだだけでも酔っ払う!?上島竜兵効果とは… 脳科学の研究では、アルコールを口に含んだだけで、脳が酔ったときと同じ反応を示すことがわかっています。 例えば、ビールを口に含んだだけでは、苦いというだけでアルコールはまだ頭に回っていません。しかし、その苦いと感じるビールの味自体に、脳がアルコールを期待し、酔ったときと同じ反応を示すのです。 これは有吉弘行さんが「すべらない話」で披露していたものですが、上島竜兵さんの飲む瓶の中の焼酎を全て水にすり替えたところ、上島さんは水を飲んだだけで酔っ払ってしまったそうです。上島さんの脳の中では焼酎を期待して飲んでいたため、水を飲んだだけでも酔ったような感覚になってしまったのでしょう。 まとめ ビールを好きになるのは、脳の神経細胞同士の結びつきが変わるためです。ビールが美味しいから好きになるのではなく、ビールを飲むことによって脳が報酬を感じるから、美味しいと思うようになっていくのです。このように脳内で学習が起こることで、ノンアルコールでも気持ち良くなってしまう上島竜兵効果が生じたり、値段やブランドによって美味しさの期待値を高めるマーケティングが成立しているのです。 ニューロマーケティングについては、こちらの記事でも紹介しています。 https://mag.viestyle.co.jp/neuromarketing/ 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/5We2dEdxvLurNyVY2srJQ8?si=rVV3erIuQouy00_EBI0IOA 次回 次回のコラムでは『生活の質を高めるお酒の話』をご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm02/

脳と機械の融合:ブレインマシンインターフェース(BMI)の進化と応用事例

ブレインマシンインターフェース(BMI)は、脳とコンピュータを直接つなぐ革新的な技術です。この技術の進歩により、脳波を使って義手を操作したり、ゲームを楽しむことが現実のものとなりつつあります。特に、障害を持つ人々が再び自立した生活を送るための手助けとしても注目されています。 この記事では、BMI技術の基本から、実際の活用事例、そして将来の可能性までを詳しく解説します。最新の技術動向に興味がある方や、新たなビジネスチャンスを模索している方にとって必読の内容です。 ブレインマシンインターフェース(BMI)とは? ブレインマシンインターフェース(BMI)とは、脳とコンピュータや外部機器を直接接続し、脳の指令を読み取って機械を操作する技術です。医療や教育、エンターテインメントなど多様な領域で活用が進み、特に障害を持つ人々のQOL(生活の質)向上に貢献するとして注目されています。 またBMIは、脳の状態を活用する先端技術分野「ブレインテック」における中心的なテーマの一つでもあり、神経科学と工学の進展に支えられて発展してきました。今後も私たちの生活や社会に大きなインパクトを与える可能性を秘めた技術です。 ブレインテックについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。 https://mag.viestyle.co.jp/braintech/ BMIの仕組み ブレインマシンインターフェース(BMI)の仕組みは、脳の電気活動を検出し、それを信号として解析することに基づいています。具体的には、以下のようなステップで動作します: 信号の取得頭皮に装着する電極(非侵襲的)や脳内に埋め込む電極(侵襲的)を用いて、脳波や神経活動を計測します。これにより、脳の指令を電気信号として取得します。 信号の解析取得した電気信号を、特定のアルゴリズムや機械学習モデルを使って解析します。これにより、ユーザーの意図や指令を解読し、適切なアクションに変換します。 信号の伝達解析された信号を、コンピュータやロボットアームなどの外部機器に送信します。これにより、脳の指令に基づいて機械が動作します。 フィードバック操作結果をユーザーにフィードバックし、リアルタイムで調整を行います。これにより、操作の精度と効率が向上します。 BMIの種類とその特徴 BMIは、大きく分けて非侵襲的な方法と侵襲的な方法の2種類に分類されます。それぞれの特徴は以下の通りです。 非侵襲型BMI 頭皮上に装着する電極を使って脳波を取得します。手軽に使用でき、手術を必要としないため安全性が高いのが特徴です。しかし、信号の取得精度が低く、ノイズの影響を受けやすいというデメリットもあります。 → 主な技術:EEG(脳波計)、fNIRS(近赤外分光法)など→ 主な用途:集中力の可視化、ゲーム操作、教育アプリなど 侵襲型BMI 脳内に電極を直接埋め込んで神経信号を取得します。この方法は高精度な信号取得が可能で、詳細な制御ができますが、手術が必要であり、感染症や炎症のリスクが伴います。 → 主な技術:ECoG(皮質脳波)、インプラント電極など→ 主な用途:義手・義足制御、重度障害者のコミュニケーション支援など BMI技術の実際の活用シーン BMIは医療、エンターテインメント、教育、コミュニケーション支援など、さまざまな分野での応用が進んでいます。以下に、それぞれの分野における具体的な活用シーンを紹介します。 医療分野 BMIは、医療分野での応用が特に進んでいます。たとえば、脳波を利用して義手や義足を動かす技術が開発されており、これにより障害を持つ人々の生活の質が大きく向上しています。 また、BMIはリハビリテーションにも利用されており、脳卒中や脊髄損傷の患者が失った機能を回復するための支援として役立っています。BMIを使った早期診断や治療計画の立案も進められており、より効果的な医療提供が期待されています。 研究紹介 BMIを使用した歩行訓練プロトコルが、脊髄損傷を持つ患者に対してどのような効果をもたらすかを調査することを目的とした研究が行われました。 本研究では、脊髄損傷によって四肢麻痺となったある患者が、従来のリハビリテーションでは十分な回復が難しい状態にありました。しかし、BMI技術を活用したリハビリにより、脳波を使ってロボットアームを操作し、日常生活動作の練習が可能となりました。このアプローチは、患者のモチベーションを高め、機能回復を促進する新たな手法として期待されています。 参考:Donati, A. R., Shokur, S., Morya, E., Campos, D. S. F., Moioli, R. C., Gitti, C. M., ... & Nicolelis, M. A. L. (2016). Long-Term Training with a Brain-Machine Interface-Based Gait Protocol Induces Partial Neurological Recovery in Paraplegic Patients. Scientific Reports, 6, 30383. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27513629/ 企業の取り組み: Neuralink イーロン・マスクが設立したNeuralink社は、侵襲的なBMI技術の開発に取り組んでいます。Neuralinkのデバイスは、脳内に超薄型の電極を埋め込み、高精度な脳波データを取得します。この技術により、脳とコンピュータの直接通信が可能となり、医療分野での画期的な応用が期待されています。 参考:https://neuralink.com/ エンターテイメント エンターテイメントの分野では、主にBCI(Brain-Computer Interface:脳波をコンピュータに伝え、制御やフィードバックを行う技術)が新たな体験を提供しています。 たとえば、脳波を使ってキャラクターを操作すれば、コントローラーを使わずに直感的なゲームプレイが可能になります。さらに、バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)と組み合わせることで、没入感の高い体験が実現し、エンターテインメントの可能性は一層広がると期待されています。 企業の取り組み:Emotiv Emotiv社は、非侵襲的な脳波計測デバイスを開発しており、これを用いたエンターテイメントアプリケーションを提供しています。Emotivのヘッドセットは、ユーザーの脳波をリアルタイムで解析し、ゲームやVR体験を制御することができます。 参考:https://www.emotiv.com/ 教育 BMIは、教育分野においても革新的なツールとして注目されています。この技術は、学習効率の向上や特別支援教育の分野で特に有用です。 企業の取り組み:NeuroSky NeuroSky社は、教育分野におけるBMIのパイオニアです。同社は、脳波をリアルタイムでモニタリングし、集中力やリラクゼーションをトラッキングするヘッドセットを提供しています。 このヘッドセットは、学習アプリやゲームと連動して、生徒の集中状態をモニタリングし、適切なフィードバックを行うことで、学習への集中を促します。NeuroSkyの技術により、個別の学習スタイルに対応した教育支援が可能になり、効果的な学びの環境が実現します。 参考:https://www.neurosky.jp/ コミュニケーション支援 BMIを利用することで、脳波を通じて意思を伝えることができるようになります。これにより、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や脊髄損傷などの重度の障害を持つ患者が、再び周囲の人々とコミュニケーションを取ることが可能になります。 研究紹介 非侵襲的なBMIを用いて、脳波(EEG)信号からリアルタイムで音声を合成するシステムを開発した研究があります。このシステムは、ユーザーの意図を脳波から読み取り、それを即時に音声へと変換することが可能です。 この研究では、被験者の脳波信号から高精度な音声合成に成功しました。さらに、視覚および聴覚によるフィードバックを統合することで、ユーザーの意図と合成音声との一致度が向上し、全体としてユーザーエクスペリエンスが大幅に改善されました。特に、非侵襲的な手法を用いることで、ALS患者など音声コミュニケーションに困難を抱える患者にとって有望な支援技術であることが示されました。 参考:Anumanchipalli, G. K., Chartier, J., & Chang, E. F. (2019). A Noninvasive Brain-Computer Interface for Real-Time Speech Synthesis: The Importance of Multimodal Feedback. Nature, 568(7753), 493-498. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29641392/ 企業の取り組み:Tobii Dynavox Tobii Dynavoxは、視線追跡技術を用いた支援コミュニケーションデバイスを提供する企業です。Tobii Dynavoxの製品は、言語や運動機能に障害を持つ人々が、自分の意思を効果的に伝えることを支援するために設計されています。 たとえば、ユーザーが画面を見つめるだけで、カーソルを操作して文字を選択することができる技術があり、手や声を使わずにコミュニケーションを取ることができるため、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脳性麻痺などの患者にとって非常に有効なものとして知られています。 参考:https://www.tobiidynavox.com/ 将来のBMI技術の可能性 BMIは急速に進化しており、その未来には多くの可能性が広がっています。技術の進化により、さまざまな分野での応用がさらに拡大し、私たちの生活に大きな影響を与えることでしょう。以下に、将来のBMI技術の可能性について解説します。 より精度の高い脳波解析 将来のBMIでは、脳波解析の精度が飛躍的に向上することが期待されています。現在の技術では、脳波データの解像度や信号のノイズ除去に課題がありますが、進化するアルゴリズムや機械学習技術により、より正確で細かい脳波解析が可能になります。これにより、複雑な動作や微細な意思伝達が実現し、BMIの応用範囲が大幅に拡大することでしょう。 非侵襲的技術の進化 非侵襲的なBMIも大きな進化を遂げると予想されています。現在は頭皮に装着するEEGキャップなどが主流ですが、将来的には装着が簡便で、精度が高く、日常的に利用できるデバイスが登場するでしょう。たとえば、軽量で長時間装着可能なヘッドバンド型や、日常のアクセサリーとして使えるタイプのデバイスが開発されるかもしれません。 AIとBMIの融合 人工知能(AI)とBMIの融合は、BMI技術の大きな飛躍をもたらすでしょう。AIは脳波データを解析し、パターンを学習してユーザーの意図を高精度で予測することが可能です。これにより、BMIデバイスの操作がより自然でスムーズになり、ユーザーの体験が向上します。また、ユーザーごとに最適化されたフィードバックを提供することで、学習やリハビリテーションの効果を最大化することが期待されています。 医療分野での新たな応用 BMIは、医療分野でも新たな応用が期待されています。例えば、BMIを用いた早期診断システムが開発されることで、脳疾患や神経障害の早期発見が可能になります。また、BMI技術を使ったリハビリテーションは、より効果的かつ個別化された治療を提供することができ、患者の回復を促進します。さらに、BMIを利用した神経制御デバイスは、難治性の疾患治療にも応用されるでしょう。 医療現場で応用されるブレインテックについては、こちらの記事も参考にしてください。 https://mag.viestyle.co.jp/braintechmedical/ 新たなコミュニケーション手段としてのBMI BMIは、ユーザーの思考や意図を直接機械に伝達できるので、従来の言語や文字に依存しない新たなコミュニケーションを可能にします。脳波を介して直接意思を伝達することで、障害を持つ人々や異なる言語を話す人々とのコミュニケーションが可能になります。将来的には、BMIを用いたグローバルなコミュニケーションツールが開発されることが期待されており、遠隔地にいる人々とのコミュニケーションも、BMIを通じてリアルタイムで行えるようになるでしょう。 ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードはこちら BMIがもたらす新しいビジネスチャンス ブレインマシンインターフェース(BMI)は、医療、エンターテインメント、教育、コミュニケーション支援など多岐にわたる分野で革新をもたらし、新たなビジネスチャンスを創出しています。 医療分野では、高精度な脳波解析による早期診断や個別化リハビリが進展し、患者の回復を促進します。非侵襲的技術の進化により、日常生活での利用が容易になり、市場拡大が見込まれます。AIとBMIの融合は、ユーザー体験を向上させ、効率的な学習や治療を実現します。さらに、新たなコミュニケーション手段としてのBMIは、言語障害者や重度の障害者に新しい交流の機会を提供します。 これらの技術進歩により、BMI市場は急速に成長し、多くの企業にとって魅力的なビジネスチャンスとなるでしょう。

脳波とは?種類からビジネス活用まで徹底解説

脳波を活用したブレインテックの市場規模は急速に拡大し、多くのビジネス分野での応用が進んでいる一方で、海外に比べて日本では脳波を活用したビジネスは数が少ないのが現状です。 そこで本記事では、海外から日本における脳波を活用したビジネスの現状を包括的に解説し、脳波を活用することで得られる新たなビジネスチャンスについて探ります。 さらに、脳波が企業活動にどのような革新をもたらしているか、具体的な事例を通じて紹介します。脳波技術の最前線を知りたい方や新たなビジネス機会を模索している方に必見の内容となっていますので、ぜひご覧ください。 脳波とは 脳波とは、脳が活動しているときに発生する微小な電気信号のことです。私たちの脳内で、神経細胞が互いに情報を送り合う際には小さな電気的なパルスが生じ、これが集まって特定のリズムやパターンを形成します。この現象を脳波と呼んでいます。 睡眠の質やストレスの度合いを調べるために脳波を測定し、健康状態や心理状態の手がかりとして活用されています。 さらに、ブレインテックという、脳科学を活用したテクノロジーも世界的に注目されています。この技術は医療分野に限らず、ゲームなど様々な分野で応用されており、ビジネスの世界でも脳波の研究や活用に注力する企業が増えています。 https://mag.viestyle.co.jp/braintech/ 脳波の種類 脳波にはいくつかの種類があり、行っている活動によって種類が変わります。 たとえば、睡眠中やリラックスしているときにはデルタ波やシータ波が、集中しているときにはガンマ波が観測されるなど、活動に応じてそれぞれ異なる脳波が観測されます。 δ波(デルタ波):周波数が0.5〜4Hzの波で、深い睡眠時に主に見られます。 θ波(シータ波):周波数が4〜8Hzの波で、軽い睡眠やリラックスした状態、創造的な活動が行われる時に現れることがあります。 α波(アルファ波):周波数が8〜13Hzの波で、リラックスして目を閉じた状態で現れやすいです。瞑想やリラックスした覚醒状態に関連しています。 β波(ベータ波):周波数が13〜30Hzの波で、覚醒して活動的な思考や注意が行われている時に見られます。 ガンマ波:周波数が30Hz以上の波で、集中している状態や認知活動が高まっている時に観測されることが多いです。 https://mag.viestyle.co.jp/eegmeasurement/ 脳波が発生する仕組みとは 脳波は、私たちの脳内で神経細胞(ニューロン)が活動する際に発生します。これらの細胞は、情報を伝達するために電気信号を利用します。ニューロンが活動するとき、小さな電流が生じ、これらの電流が集まることで脳波と呼ばれる特定の波形が形成されます。 例えば、本を読んでいるとき、テレビを見ているとき、寝ているときなど、脳は異なる活動をしています。このとき、それぞれの活動に応じて異なるパターンの脳波(上述)が発生します。 リラックスしている時にはゆったりとした波が、集中している時には速い波が、それぞれ観測されるのです。 このように、私たちが何をしているかによって異なる脳波が発生しているので、脳波を測定することで、さまざまな活動や脳の状態を知る手がかりになります。 脳波を活用したビジネスの市場規模やトレンド 脳波を活用したブレインテック市場は、特にEEG(脳波計)デバイスの分野で急速に成長しています。2021年から2028年にかけての市場規模は約10億ドルから約17億ドルへと拡大すると予測されており、年間平均成長率は7.5%と見られています。 この市場の成長は、これまでの医療分野での技術進歩だけでなく、教育、エンターテイメント、個人向けウェルネスといった新しい市場の開拓によっても推進されています。特に、消費者向けの健康管理やストレス軽減を目的とした製品が人気を集め、脳波技術の普及を促進しています。 脳波をビジネスに活用する具体例 次の章で具体的な企業事例を紹介しますが、ここでは、脳波をビジネスに活用するとどのようなことが実現できるのか。その具体例を簡単に紹介します。 たとえば、教育分野では、学習者の集中度を測定し、カスタマイズされた教育プログラムを提供するために脳波が活用されています。また、ビデオゲームや仮想現実(VR)技術においても、プレイヤーの感情や反応をリアルタイムで把握し、より没入感のある体験を提供するために利用されています。 さらに、マーケティング分野では、消費者の広告に対する反応を分析し、より効果的な広告戦略を立てるために脳波データが用いられることがあります。これにより、消費者の未言語化された感情や本能的な反応を捉え、製品やサービスの改善につなげることが可能です。 これらの例からもわかるように、脳波技術は単に医療分野に留まらず、日常生活のさまざまな側面に革新をもたらす可能性を秘めています。このように多方面での応用が進むことで、脳波技術の市場はさらに広がりを見せ、新しいビジネスチャンスが生まれています。 海外の脳波ビジネスのトレンド それでは、海外では脳波を用いてどのようなことを行っているのかを紹介します。 特にブレインマシーンインターフェース(BMI)技術が様々な産業で革新をもたらしています。 アメリカ合衆国: 軍事アプリケーション: 米国国防総省(DARPA)は、脳波を利用して兵士の戦闘能力を向上させるプロジェクトを支援しています。具体的には、思考だけでドローンを操縦する技術の開発などが行われています。 医療アプリケーション: カリフォルニア大学バークレー校では、脳に直接埋め込むことができる「ニューラルダスト」と呼ばれる微小センサーの開発が進んでおり、これにより、神経活動を高精度でモニタリングできます​ (RAND)​。 https://mag.viestyle.co.jp/braintechmedical/ ヨーロッパ: 教育とトレーニング: ヨーロッパの一部の教育機関では、BCIを用いて学生の学習効率を高めるための研究が進められています。注意力や集中力のデータを基に、個別の学習プランを最適化する試みが行われています。 アジア: 産業オートメーション: 日本を含むアジアの国々では、BCI技術を産業用ロボットや自動化システムと組み合わせることで、製造ラインの効率化や作業者の負担軽減を目指しています。 脳波ビジネスを行う企業事例5選 ここからは、実際に脳波をビジネスに活用している企業事例を日本と海外に分けて紹介します。 日本の企業事例 VIE株式会社:イヤホン型脳波計と企業向け脳波解析プログラムの提供 VIE株式会社は、イヤホン型脳波計「VIE ZONE」と脳波解析プログラムの提供しています。 このプログラムは研究者や企業の研究開発部門向けに設計されており、イヤーチップが電極となることで耳から脳波を計測できます。従来の煩雑な装着手順を省き、日常的に使用できるこのデバイスは、ニューロテクノロジーの研究と応用を大きく前進させます。VIEは、これにより幅広い産業における脳波データの利活用を促進します。 また、脳情報を研究や事業に活用することのできるサービス「VIE Streamer」の提供もしています。 VIE Streamer:https://streamer.vie.style/ Ghoonuts株式会社 Ghoonuts株式会社は、脳刺激デバイスを開発し、治療が確立していない疾患の医療に貢献することを目指す会社です。 特に失語症の患者向けに言語トレーニングアプリを開発中で、どこにいても言語リハビリを利用できるサービスを提供することを目標としています。さらに、認知症や統合失調症など、薬だけでは解決できない分野への挑戦も計画しています。 HPはこちら:https://ghoonuts.com/ 海外の企業事例 EMOTIV社:脳波による感情分析技(アメリカ) EMOTIV社は、高度な脳波測定デバイスと感情分析ソフトウェアを開発しています。これらの製品を通じて、ユーザーの感情状態や認知パターンをリアルタイムで把握することができ、ウェルネス、マーケティング、教育など多岐にわたる分野で活用されています。特に、企業が消費者の無意識の反応を分析するのに利用されることがあります。 HPはこちら:https://www.emotiv.com/ NeuroPro社:脳波による精密なデータ分析(スイス) NeuroProは、脳波データの解析と可視化を行う高度なソリューションを提供するスイスの企業です。この技術は医療診断、リサーチ、そしてパーソナルヘルス管理に利用されており、脳の活動パターンを詳細に把握することが可能です。特に、神経科学の研究や臨床試験において重要なツールとされています。 HPはこちら:https://www.neuropro.ch/ NeuroSky社:脳波を利用した教育ツール(アメリカ) NeuroSky社は、脳波計測技術を活用した教育向けアプリケーションを提供しています。これにより、学習者の集中力やリラックス状態を測定し、個別の学習プランの最適化やストレス管理に貢献しています。学校や教育機関での導入事例が増えており、効果的な学習サポートツールとして注目されています。 HPはこちら:https://neurosky.com/ ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードはこちら 脳波を活用したビジネスの今後に注目 脳波技術は、ビジネスや日常生活において大きな可能性を秘めています。市場規模は急速に拡大しており、医療や教育、エンターテイメントなど多岐にわたる分野での応用が進んでいます。 脳波を活用した製品やサービスは、私たちの生活をより便利で効率的なものに変える力を持っています。今後も脳波技術の進化が続く中、新たなビジネスチャンスを見逃さないためには、この分野への理解と関心を持ち続けることが重要です。

「感謝」と「脳科学」で新ビジネス!感謝の効果を引き出すニューロフィードバック

これまで「感謝」と「脳科学」について紹介してきましたが、私たちの会社VIE でも、感謝とビジネスをつなげて、挑戦してみたいことがあります。 感謝にはたくさんのメリットがある一方で、前回も紹介したように、難しさもあります。その難しさの部分を脳でトレーニングして克服できたら、面白いと思いませんか? 今回は、感謝とニューロテクノロジーについて深掘りしていきます。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm14/ 感謝を通して人は変われる!感謝がもたらす良い効果 感謝に関わる脳の研究は、ここ数十年でかなり蓄積してきています。例えば、以前感謝のコツでご紹介した「感謝日記」を数週間続け、その前後で脳の活動を比べた研究があります。 これにより、感謝のトレーニングをしていくことで、感謝ができるようになっていくことが分かっていますが、それだけでなく、向社会的な行動が増えていき、自分だけでなく他人にも貢献する、自分勝手な行動を取らないようになっていく、ということも分かりました※1。 そのような活動の変化とともに、自分がもらう利益に対して脳の報酬系(欲求が満たされたときに発動する神経系)が活動していた人たちが、相手の利益に対して活動するようになっていったそうです。 つまり、自分の幸せに対して喜んでいた人たちが、他人の幸せに対して、幸せを感じることができる人に変わったのです。これは、人は感謝を通して利他的になれるという、とてもポジティブな検証結果を示しています。 しかし、前回も紹介したように、負債の感情は感謝と混同しがちです。そこで、感謝を感じるときと、罪悪感を感じるときの状況を作り、脳活動を測定してみると、実は感謝を感じるときに特有なポジティブな脳活動があることが分かりました。 感謝のときに活動する報酬系には、μオピオイド系と呼ばれる、痛みを和らげたり、幸せなときに活動する部位があります。動物の場合には、毛繕いをするときにこの部位が活動しているとされています。毛繕いをしてあげると、痛みが和らいだり、μオピオイドが増えるそうで、これが人間でいう感謝に近いのではないかとされています※2。 感謝の中枢とも言えるような脳のネットワークがあるのなら、その脳活動を自分で高めていくトレーニングができれば、あまり感謝しにくい組織にいたり、偉い役職についている人でも、感謝できるようになるのではないでしょうか。そうすれば、会社の業績も上がり、チームメンバーの幸福度も上がって、良い利益をもたらしそうですよね。 ※1出典:Gratitude and well-being: A review and theoretical integration - ScienceDirect, 2024年10月2日参照 ※2出典:Frontiers | A Potential Role for mu-Opioids in Mediating the Positive Effects of Gratitude (frontiersin.org), 2024年10月2日参照 感謝とビジネスを繋げるために、VIE が挑戦したいこと 実際に感謝しにくいような、高い役職にいる人たちに、「感謝をしていきましょう!」と促すことは、難しそうです。しかし、ビジネスの世界で感謝というものは、チームパフォーマンスやメンタルヘルスに大きな影響を与えます。 現在、世界の企業では「人的投資」に注目が集まっています。お金を稼ぐだけでなく、従業員みんながハッピーに仕事ができるようにしようという考えが、今後ますます広まっていくでしょう。多くの人が「感謝」の重要性を感じるようになったとき、「感謝」のニューロフィードバックを使ったビジネスは成功する可能性が十分にあるのではないでしょうか。 また、現在興味を持っている分野として、仏教文化の慈悲の瞑想があります。その中にも「感謝の瞑想」というものがあり、これは、身近な人、自分、世界中の人々など、あらゆる人に対して感謝の気持ちを持つという瞑想法です。このような伝統文化とテクノロジーが融合するところにも、面白さがあると思っています。 ニューロフィードバックについては、こちらの記事でも紹介しています。 https://mag.viestyle.co.jp/neuro_feedback/ まとめ 感謝は脳の中で起きるものであり、そのメカニズムはだんだん解明されてきています。ニューロフィードバックの技術を使えば、感謝をしにくい人たちが、感謝をしやすい脳活動を起こせるようになると期待されており、私たちの会社VIE でも、そのようなことに挑戦していきたいと考えています。 そして、ニューロテクノロジーを通して、たくさんの場面で感謝を生み出し、社会に貢献できたらと思います。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/7gH4qs2Tz6L2uDzpwiN4zr?si=8qHqN50US-qaQnc5miDBGg 次回 次回のコラムでは、日常生活で役立つ『人間の意思決定』に関するお話をご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm16/

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