今回は、東京大学大学院で「融合身体」の研究に取り組まれている井上さんにお話を伺いました。インタビューの前半では、井上さんの研究に至るまでの背景やこれまでの研究成果などについて詳しくご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
インタビューの後半では、井上さんのパーソナルストーリーに焦点を当て、幼少期の生活や現在の趣味、研究に関するエピソードなどについて伺いました。
研究者プロフィール
氏名:井上 大地(いのうえ だいち)
所属:東京大学大学院 情報理工学系研究科 知能機械情報学
研究室:Cyber Interface Lab(葛岡・谷川・鳴海研究室)
研究分野:HCI、融合身体
研究へのきっかけと歩みーー脳波から融合身体へ
── まずは簡単に自己紹介をお願いします。
はい、現在は東京大学大学院の情報理工学系研究科で学んでいます。学部時代は、人間の脳とコンピューターをつなぐBCI(Brain Computer Interface)に関する研究を行っていました。大学院に進んでからは、HCI(Human Computer Interaction)の分野にフィールドを広げて、その中でも「融合身体」という学習手法を中心に取り組んでいます。
── もともとは脳科学への関心が入口だったんですね。「融合身体」というのは、どのような研究手法なのでしょうか?
簡単にいうと、VR空間の中で教師と学習者が1つのアバターを共有しながら動かす仕組みです。たとえば、学習者が腕を動かす際、教師の動きも合成されてアバターに反映されるので、自分一人では得られない「上手い動きの感覚」がまるで補助輪のように体験できるんです。運動スキルを学ぶ際に、とても効果的だと考えています。
── それは面白いですね。井上さん自身の原点についても教えていただけますか? 幼少期はどんなふうに過ごしていたのでしょう。
とにかく好奇心が強くて、山で遊んだり工作をしたりしていました。コガネムシの羽を拾って観察し、同じような羽を自作してみたり(笑)。それを自由研究として提出したこともあります。生き物全般が好きで、動物園に行ったらカバの絵をずっと描き続けるような子どもでしたね。
VIEインターンでの挑戦――視野を広げた日々
── 学部時代にはVIEでインターンをされたそうですが、そのきっかけは何だったのでしょう?
「脳」に関連する研究や事業に携わっている企業を探していたときに、ちょうどVIEの活動を知ったんです。興味を持ってすぐにメールで連絡したところ、オンラインでお話をする機会をいただいて、そのままインターンとして採用してもらえました。
── インターンでは、具体的にどんなプロジェクトに参加されたんですか?
大学3年生の頃から約1年間、イヤホン型脳波計の実験や、サウナでの脳波計測、さらにはラスベガスでの技術検証など、本当に幅広いプロジェクトに関わらせていただきました。学問の世界だけでは得られない視野が広がったのを感じます。
研究と趣味の相乗効果で未来を切り拓くーーベンチプレス150kgへの挑戦
── ここからは、研究の裏側や私生活について伺いたいと思います。 井上さんの研究室はどんな雰囲気ですか?
とても自由で個性豊かですね。料理が好きで味覚の研究をしている先輩がいたり、息抜きにはダーツや麻雀、Nintendo Switchで遊んだりもします。私自身は留学先のイタリアで学んだ「アペリティーボ」という文化を取り入れて、夕方にみんなで軽くお酒を飲む時間を作ってリフレッシュするようになりました。新しい習慣を柔軟に取り入れられるところが魅力だと思います。
── すごくオープンな雰囲気なんですね。井上さんは研究以外で熱中していることはありますか?
はい、今はトレーニングにハマっています。就職活動が一段落した1年ほど前から本格的に始めて、今ではベンチプレスで130kgを挙げられるようになりました。次の目標は150kgですね。
── 130kgは本当にすごいですね。どれくらいの頻度でトレーニングされているんでしょうか?
週に3〜4回くらいですね。大学のジムが使えるので、研究室に通う日はそのままジムにも立ち寄ってトレーニングするようにしています。
── なるほど。研究の合間を縫って、かなり本格的に取り組まれているんですね。最後に、今後の目標や展望について教えてください。
最近は生成AIをどう活用できるかに興味があります。特定の分野の論文を大量にインプットさせて、まるで専門家と議論しているかのような対話ができないかと考えているんです。受動的に本を読むだけじゃなく、AIとのやり取りを通して主体的に学ぶスタイルを試してみたくて。あとは筋トレも続けて、ベンチプレス150kgを目指したいですね(笑)。