FEATURE

ニューロフィードバック入門:脳を最適化する方法

日々のストレスや集中力の低下に悩んでいませんか? そんなあなたに注目してほしいのが、ニューロフィードバックという最新の脳トレーニング技術です。脳波をリアルタイムで測定し、自分の脳の状態を“見える化”することで、脳の自己コントロールを促します。 この画期的な手法は、メンタルヘルスの改善や認知機能の向上に役立つだけでなく、仕事やスポーツのパフォーマンスアップにもつながります。 心と脳のコンディションを整えたい方へ――。自分の脳と向き合う、新しい習慣を始めてみませんか? ニューロフィードバックとは? ニューロフィードバックとは、脳波をリアルタイムで測定し、そのデータを基に脳の活動をコントロールする技術です。 具体的には、脳波計(EEG)を使って脳の活動を測定し、そのデータを視覚や聴覚を通じてフィードバックとして提示します。利用者はそのフィードバックをもとに、自らの脳波を意識的にコントロールする方法を学び、脳の働きをより良い状態へと導くことができます。 この技術は、ADHD、不安症、うつ病、不眠症などの精神的・神経的障害の治療に役立つだけでなく、スポーツ選手や音楽家がパフォーマンスを向上させるためトレーニング方法としても活用されています。 ニューロフィードバックは、薬を使わずに脳の働きを改善できる点で、安全性が高く、副作用も少ないとされています。ただし、効果には個人差があり、全ての人に同じような成果が期待できるわけではありません。 この技術は、脳の健康を保ち、精神的な安定や集中力の向上を目指す方々にとって、新たな選択肢として注目されています。 バイオフィードバックとの違い ニューロフィードバックは、「バイオフィードバック」と呼ばれる技術の一種です。バイオフィードバックとは、心拍や呼吸、体温、筋緊張、皮膚電気反応など、身体の生理的な反応をリアルタイムに計測・可視化し、それをもとに自分の身体状態をコントロールする方法を指します。 その中でもニューロフィードバックは、脳波や脳血流といった脳の神経活動に特化したもので、より直接的に「脳の働き」にアプローチするのが特徴です。 つまり、バイオフィードバックが「身体全体の状態調整」を目的とするのに対し、ニューロフィードバックは「脳の最適化」に特化したアプローチだといえます。 ニューロフィードバックの進め方 ニューロフィードバックは、専門家の指導のもとで段階的に実施されます。以下は、一般的なトレーニングの流れです。 脳の状態を測定する まずは脳波やQEEG(定量的脳波検査)などを用いて、現在の脳の活動状態を可視化します。これにより、どのような脳波パターンに課題があるのかを把握します。 トレーニングの目標を設定する 測定結果をもとに、改善すべき脳波の特徴や目標状態を明確にします。たとえば、「集中力を高める」「リラックスしやすい状態を作る」など、個々の課題に応じて計画を立てます。 トレーニングを実施する 視覚や聴覚を通じてリアルタイムのフィードバックを受けながら、脳の状態をコントロールする練習を行います。たとえば、画面上の映像がリラックス状態になるとスムーズに進む、といった仕組みで学習します。 効果の確認と調整 一定期間のトレーニング後、再度測定を行い、変化の有無を確認します。必要に応じてプランを調整しながら、継続的に効果を高めていきます。 このように、ニューロフィードバックは一人ひとりの脳の状態に合わせて個別に設計・実施されるため、高い柔軟性と適応性を持ったトレーニング手法といえます。 ニューロフィードバックの応用 ニューロフィードバックは、脳の自己調整能力を引き出すことで、様々な分野で効果を発揮できます。脳波のリアルタイムデータを用いて脳の働きを最適化するこの技術は、メンタルヘルスからパフォーマンス向上まで、幅広い応用が可能です。ここでは、具体的な応用例をいくつか紹介します。 メンタルヘルス 不安やうつ病、PTSDなどのメンタルヘルスの問題に対して、ニューロフィードバックは、脳波のバランスを調整することで、ストレスを和らげ、感情を安定させるサポートを行います。 例えば、過度に興奮した脳波をリラックスさせることで、不安を軽減したり、抑うつ状態からの回復を促進したりします。薬物治療に代わる自然なアプローチとして、副作用が少なく、長期的な効果が期待されている点も大きな魅力です。 認知機能向上 記憶力や集中力を高めるために、ニューロフィードバックは脳の働きを効率的に整えるサポートをします。特に高齢者や脳にダメージを受けた人々に対して、脳波を訓練することで、衰えた記憶力を補強したり、注意力を改善したりすることが可能です。 たとえば、日常生活で忘れがちな細かなことを思い出しやすくなったり、複数のタスクに集中できるようになったりする効果が期待されます。 発達障害の治療 ADHDやASDといった発達障害に対しても、ニューロフィードバックは効果的です。 たとえば、ADHDの人々にとっては集中力を向上させることや、衝動的な行動を抑えることができるようになります。ASDの方には、感情のコントロールを支援し、コミュニケーション能力の改善に役立ちます。さらに、薬物療法と併用することで、より持続的で副作用の少ない治療を実現することができます。 スポーツやパフォーマンスの向上 プロのアスリートや音楽家、ビジネスリーダーにとって、ニューロフィードバックは、競技や演奏、ビジネスの場で最大限のパフォーマンスを発揮するための重要なトレーニング手法です。 脳波をトレーニングすることで、集中力を高めるだけでなく、リラックスした状態を保つことで、緊張感をコントロールし、プレッシャーのかかる状況でも冷静に行動できるようになります。 このように、ニューロフィードバックはメンタルヘルスから認知機能向上、発達障害の治療、さらにはスポーツやパフォーマンス向上といった幅広い分野で活用されています。今後もその応用範囲はさらに拡大し、多くの人々の生活の質を向上させることが期待されています。 ニューロフィードバックの活用事例(VIE) VIE株式会社は、イヤホン型脳波計「VIE Zone」を通じて、ニューロフィードバック技術の実用化を推進しています。このデバイスは、手軽に脳波を測定できる点で画期的であり、さまざまな場面での脳波トレーニングを可能にしています。 以下では、VIEによるニューロフィードバックの具体的な活用事例をご紹介します。 マインドフルネスへの応用(VIE×POLA) ポーラ化成工業株式会社と共同で、化粧品を使用した際の心理状態、特にマインドフルネス状態を脳波から正確に推定するアルゴリズムを開発しました。 この技術により、従来の質問票やヒアリングに頼らず、脳波データを活用して化粧品が使用者に与える心理的な影響をリアルタイムで分析することが可能になりました。これにより、製品の感性価値を高め、より効果的な製品開発に活用されています。 視力改善への応用(VIE) イヤホン型脳波計を用いたニューロフィードバックを利用して、短期間で視力を改善することに成功しました。この研究では、近視の被験者に対して2週間のトレーニングを実施し、脳波を調整しながら視覚学習を行いました。 特にα波を強化することで、視力の向上が持続することが確認されました。この方法は、家庭でも視力訓練に応用できる可能性があり、視力回復の新たなアプローチとして期待されています。 スポーツへの応用(VIE×イブキ) イブキと共同で、緊張状態におけるゴルフパフォーマンスの低下「チョーキング現象」を予防するために、ニューロフィードバック技術を活用した新しいトレーニング技術の開発を行いました。 この技術は、緊張やプレッシャーによるパフォーマンス低下の問題に対処するため、脳波をリアルタイムでフィードバックし、心身のパフォーマンス向上をサポートするものです。ゴルフだけでなく、他のスポーツやプレゼンテーションなど、緊張が影響するシーンでも応用が期待されています。 eスポーツへの応用(VIE×KDDI) KDDIと共同で実証実験をおこない、eモータースポーツの選手がブレインテックを活用したトレーニングでドライビングテクニックを向上させました。 この研究では、脳波データを利用して脳の反応速度や認知能力をトレーニングし、シミュレーターでのラップタイムを改善しました。この技術は、プロレーサーを目指すeスポーツ選手にとって有望な手法として注目されています。 ビジネスにおけるブレインテックの活用事例10選 ブレインテックがビジネスでどのように活用されているのかを示す、10の企業事例をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。 資料をダウンロードはこちら ニューロフィードバックの展開 この記事では、ニューロフィードバック技術について、その基本的な概念と多岐にわたる応用例を紹介しました。ニューロフィードバックは、脳波をリアルタイムで測定し、フィードバックを通じて脳の自己調整を促す技術であり、メンタルヘルスの改善や認知機能の向上、発達障害の治療に役立つだけでなく、スポーツやパフォーマンス向上の分野でも活用されています。 さらに、イヤホン型脳波計「VIE Zone」を使った具体的な事例として、マインドフルネスへの応用、視力改善、スポーツ、eスポーツにおける活用方法について詳しく解説しました。これらの事例は、ニューロフィードバックがいかに多様な場面で有効であるかを示しており、今後もさらなる発展が期待されます。 ニューロフィードバックは、現代社会のさまざまなニーズに応えるための新たな手段として、多くの分野で活躍しており、その技術は私たちの生活の質を向上させる可能性を秘めています。

男性は女性よりも感謝しにくい?相手に感謝を伝えるためには〇〇を贈ることが効果的!

前回は人から感謝されるよりも、自分から感謝をすることの方が大切だということを学びました。しかし実際に感謝というものは、気軽にできるものではないことも分かっています。 https://open.spotify.com/embed/episode/33rQ0RJxI5Z8KtP4Th2Nmo?si=fa6d99faf7ca4cb1&utm_source=oembed 感謝をすることで、パフォーマンスが発揮されたり、良い人間関係が構築されたり、たくさんのメリットがあります。今回はそうした恩恵を受けるためにも、感謝のコツについて学んでいきましょう! 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm13/ 感謝しにくい人ってどんな人? 最近の研究で、「感謝ができる人」というのは、限られていることが分かってきています。私たちが感謝しやすい相手は、友達や家族などの身近な人たちです。反対に、前回のコラムでも紹介したように、仕事上の人間関係では、感謝の気持ちが芽生えにくいと言われています。 以前の「勉強」をテーマにした回で、お金をもらって勉強をすることは、お金をもらわないと勉強をしなくなってしまうため、勉強自体のモチベーションは下がってしまうという話がありました。 https://open.spotify.com/embed/episode/0AwufjF1ibX29HCGQbzdo3?si=39036c4f1f494de1&utm_source=oembed 職場における感謝もそれと同様で、部下に自分の仕事を手伝ってもらっても、「そんなのお給料もらっているから当たり前じゃん」というように、お金が絡むことで感謝の気持ちが少なくなってしまいます。このように、お金が絡む仕事という場においては、人は感謝のメリットを受けにくいのです。 また、職位が上がっていくほど、人が親切にしてくれても、疑い深い見方をするようになってしまうと言われています。 例えば、「この人は私の仕事をたくさん手伝ってくれたけど、本当は私に取り入って出世したいだけなんだろう」というように、人の親切の意図をあれこれと詮索してしまうことが頻繁にあるようです。 さらに、女性は感謝しやすくて、男性は感謝しにくいというように、感謝の気持ちが起きるのには性別の違いも関係しています。どの文化圏でも、男性は感謝の気持ちを感じにくく、表現しにくいと言われています。女性は頻繁に手紙を書いたり、贈り物をして感謝の気持ちを表現しますが、男性は細々とした感謝の気持ちを伝える行為を、苦手とする人が多いのは、日常生活でも感じる場面が多いはずです。 その他にも、「私が感謝したところで、相手は喜んでくれないだろう」というように、相手の反応を過小評価してしまうために、感謝しにくくなってしまうことや、発達障害を持っている人は、人との関係の中で感謝の気持ちが起きにくいこと、さらには遺伝によって「感謝しやすい遺伝子」と「感謝しにくい遺伝子」の持ち主がいることも分かっています※1。 遺伝に関しては、そのような遺伝子を持っている人は、感謝の気持ちが少ないだけでなく、人を許す寛容性が少なかったり、幸福度が低かったり、うつ病になるリスクが高いということまでも分かっています※2。 最近では感謝に関連したサービスで、Unipos(ユニポス)のピアボーナスというものがあります。このサービスは、例えば、あなたが同僚に何か仕事を手伝ってもらったとき、感謝の気持ちを込めて、感謝のメッセージや少額のインセンティブを送ることのできる仕組みです。このようなサービスは、感謝しにくい人にとっては、感謝をする良い機会を作れるものになるでしょう。 ※1 出典:Why Is Gratitude So Hard for Some People? (berkeley.edu), 2024年7月11日参照 ※2 出典:How Gratitude Combats Depression | Psychology Today, 2024年7月11日参照 感謝を伝えすぎるのは逆効果!感謝するうえで注意したいこと ここまで、感謝をするためにはどうしたら良いのか、ということについて紹介してきました。しかし、感謝をしすぎるということにも、リスクが含まれていることが分かっています。 1週間に3回くらいまでは問題ありませんが、それ以上だと効果は薄れるだけでなく、疲労感を感じてしまうこともあります。そのため、感謝をする量よりも質を意識することが大切です。 また、誰にでも感謝をすれば良いというものでもありません。自分に精神的・肉体的被害を加える相手に対して、感謝できるところを探そうとすることも、やめるべきだということも分かっています。カップルが喧嘩をしてしまったときに、感謝できるところを探そうとすることも、重大な問題を避けてしまうことに繋がってしまうかもしれません。 さらに、自分に自信がない人は、何かうまくいったことがあっても、「あの人たちのおかげで助かった」というように、自分ではなく周りの人に感謝をする傾向にあります。本当は自分の力で達成したことも、自分の力ではないと思ってしまい、自己肯定感が低くなってしまうことがあります。感謝することも大切ですが、自分の努力を褒めてあげることも重要なのです。 「感謝」と「恩義」も別物です。感謝は、誰かがあなたを助けてくれたときに起こる、ポジティブな感情ですが、恩義は「この前あの人からこれをもらったから返さなきゃいけない」というように、報いなければいけない、返報しなければいけない、という負債感、つまりネガティブな感情なのです。そのため、恩義を感謝と勘違いしないように気を付けましょう。 質の良い感謝のコツとは?相手に喜ばれるプレゼント選び このように「感謝の質」はとても重要で、良い感謝のコツというのも、さまざまな研究から分かっています。 例えば、感謝しにくい立場の人(偉い役職、上司など)から感謝をする文化を作っていくことや、普段感謝をされにくい立場の人に感謝をしていくことは、お互いにメリットがあります。また、困難なときほど感謝をするように心がけることは、感謝の質を高めるコツだとも言われています。 最近ではLINEギフトのように、手軽に感謝のメッセージをつけて、クーポンや物をプレゼントできる機会が増えていますが、これに関しても面白いことがわかっています。 ある会社の従業員に対して、感謝の気持ちを込めてお金を渡す群、プレゼントを渡す群、プレゼントに値札がついている群、折り紙でコインと紙幣を包む群、というように複数の群にわけて贈り物をしました。すると、お金ではないものをもらった群の方が、その後の従業員のやる気や質が上がったそうです。 また、金銭のプレゼントに関しては、ただ単純にお金をもらうだけでは、喜びやパフォーマンスの向上は見られなかったのですが、折り紙で工夫をして紙幣を包んであげると、お金ではないものをもらったときと同じように、従業員の質がアップしたそうです。 ここでわかるのは、折り紙で紙幣を包むという行為や、相手を思ってプレゼントを贈る、というような、一手間に込められた気持ちが大事だということです。ポンっと送信できるような金銭的なものよりも、相手のためにどれだけの時間をかけたのか、という気持ちが伝わるものの方が、相手のパフォーマンスの向上に効果があります。 また、購買行動に関しても感謝に違いが出ることが分かっています。Amazonのような物を買うことができるストアと、トリップアドバイザーのような旅行という「体験」を買うことができるストアでは、レビュー欄を見てみると、「体験」を買った人の方が感謝が多くみられることがわかります。 「これを買って生活が楽になりました!ありがとうございます!」というようなレビューは少なく、旅行のような体験を買った人の方が、「良い思い出になり、すごく楽しかったです!ありがとうございます!」という感謝の気持ちを伝えるレビューが多いのです。 そのため、大事な人に感謝を伝えるときには、ものだけではなく、遊園地に一緒に行くことや、プチ旅行をプレゼントしてみるなど、体験できるものを加えることで、相手にも喜んでもらいやすくなるのかもしれません。 これは以前「恋愛」の回で紹介したことですが、物をもらったときにどのように感謝をしたら良いのか、ということも重要であることが分かっています。「こんな高いものをありがとう」といったコスト性の感謝の仕方よりも、「これ欲しかった物なんだよね、ありがとう」といった応答性の感謝の仕方のほうが、相手に感謝の気持ちが伝わりやすいと言われています。 また、どうしても感謝しにくい人は、自分が死ぬことを想像してみると、感謝の気持ちが浮かびやすいとも言われています。自分が生きているうちに、感謝できる人に感謝しておこうという気持ちが起こるのかもしれませんね。 まとめ 感謝の気持ちを表現することは、案外難しいものです。特に、仕事上の人間関係では感謝の気持ちが芽生えにくく、金銭的な報酬よりも体験や手間をかけた贈り物の方が効果的です。例えば、感謝の気持ちを込めたプレゼントを贈られた従業員の方が、やる気や仕事の質が向上することが示されています。 また、感謝をしにくい人には、感謝のサービスを利用することが有効です。感謝の質を高めることで、職場や人間関係の改善につなげることができるでしょう。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/4QUiVvZ96bh2EeeFZmbeeb?si=74DACJ3YQpioUhKQcpEPmg 次回 次回のコラムでは、『感謝とニューロテクノロジー』についてご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm12/

脳波計測アプリの広がる可能性:最新のアプリケーション14選!

脳波計測アプリは、近年注目を集めており、健康管理、メンタルケア、教育、エンターテインメントなど、多岐にわたる領域で応用が広がっています。 この記事では、脳波計測アプリの概要から、具体的な活用例、アプリの将来性について詳しく解説すると同時に、実際に現場で利用されている代表的なアプリケーションをご紹介します。最新の技術動向に関心がある方や、ウェルビーイングを向上させたいと考えている方にとって必読の内容です。 脳波計測アプリとは 脳波計測アプリとは、脳波センサーを利用して脳の活動をリアルタイムでモニタリングし、解析するツールです。これらのアプリは、健康管理やメンタルヘルス、集中力向上、睡眠の質改善、ニューロフィードバックトレーニング、エンターテイメント、医療分野などの幅広い分野で利用されています。 ユーザーは、脳波データを通じて自分の精神状態や集中力、ストレスレベルなどを把握し、自己改善や健康維持に役立てることができます。 近年では技術の進歩により、これらのアプリはますます高度化し、より精度の高いデータを提供することができるようになっています。さらに、多くの脳波計測アプリは、初心者でも簡単に利用できるよう工夫されているため、専門的な知識がなくても、自宅で手軽に脳波を測定し、解析結果を日常生活に活用することができます。 脳波測定については、こちらの記事でも紹介しています。 https://mag.viestyle.co.jp/eegmeasurement/ 脳波計測アプリの活用例 脳波計測アプリは、さまざまな分野で幅広く利用されています。ここでは、アプリケーションがどのような用途で利用されているのかを、分野ごとに分けてご紹介します。 メディカル領域 メディカル領域では、脳波計測アプリを使用して、患者の脳波をリアルタイムでモニタリングし、治療やリハビリテーションに活用します。これにより、医療従事者は患者の状態を詳細に把握し、最適な治療法を提供することができます。 現在では、これらの技術はてんかん、脳卒中リハビリテーション、精神疾患の診断・治療、ニューロフィードバックなど幅広く利用されています。 医療領域でのブレインテック技術活用については、こちらの記事でもご紹介しています。 https://mag.viestyle.co.jp/braintechmedical/ 教育領域 教育分野では、脳波計測アプリが学習効率を高めるためのツールとして活用されています。学生の集中力や理解度をリアルタイムでモニタリングし、それに応じた最適な学習方法を提供することで、個別に効果的な指導が可能になります。 脳波計測技術の進化により、集中力の向上や理解度の評価、学習効率の改善などが可能になり、教育現場での応用がますます広がっています。 リラクゼーション領域 リラクゼーション領域における脳波計測アプリは、ユーザーがリラックス状態を維持し、ストレスを軽減するためのサポートを行います。瞑想やリラクゼーションセッションを通じて心身のバランスを整えることができます。 これらのアプリはスマートフォンやタブレットで簡単に利用できるため、日常生活の中で手軽に取り入れやすいのも大きな特徴です。 エンタメ領域 エンタメ領域では、脳波計測アプリがゲームやエンターテイメントの一部として利用されています。ユーザーの脳波を解析し、ゲームの進行やインタラクションをリアルタイムで変化させることで、没入感のあるエンターテインメント体験を楽しむことができます。 近年では、脳波データに基づいて仮想空間を個別にカスタマイズするVR体験が可能になったり、リアルタイムでストーリー展開が変化する映画が製作されたりしています。 研究領域 研究領域では、脳波計測アプリを用いて脳の活動を詳細に分析し、学術研究やデータ収集をおこないます。これにより、脳の機能と行動の関係を調べ、新たな発見を得ることができます。 現在では、アルツハイマー病やパーキンソン病などの治療法開発の研究や、ストレス管理や注意力向上を目的としたバイオフィードバック研究が進められています。 脳波計測アプリの代表例 脳波計測アプリにはどのような種類があるのでしょうか。ここでは、それぞれの領域で利用されている代表的なアプリケーションをご紹介します。 メディカル領域 NeuroNode NeuroNodeは、 ALS(筋萎縮性側索硬化症)や、他の運動ニューロン疾患を持つ患者のためのコミュニケーションツールです。脳波や筋電位を検出するセンサーを利用して、動きが制限されている患者が意思を伝えるのを手助けします。 NeuroNodeの公式サイト EmotivPRO EmotivPROは、脳波(EEG)をリアルタイムでモニタリングし、詳細なデータを収集、解析するための多機能なアプリケーションです。脳波計測デバイスと連携して使用するためのアプリであり、脳の活動を研究するためのプラットフォームとして、神経科学研究や教育研究、睡眠研究など、さまざまな学術研究や臨床試験に利用されています。 EmotivPROの公式サイト 教育領域 Focus@Will Focus@Willは、ユーザーの集中力を高めることを目的とした音楽ストリーミングサービスと脳波計測アプリです。ユーザーの脳波データに基づいて、最適な集中状態を維持するための音楽を推奨します。アプリ単体で使用することができ、仕事や学習の際に集中力を高めたい人々に広く利用されています。 Focus@Willの公式サイト Emotiv Insight Emotiv Insightは、脳の健康やパフォーマンスを向上させるための、軽量で使いやすい脳波(EEG)計測デバイスとアプリケーションのセットです。Emotiv Insightは、ユーザーの脳波をリアルタイムでモニタリングし、精神的な状態や認知機能を評価することで、集中力の向上、ストレス管理、メンタルヘルスの改善などに役立ちます。 Emotiv Insightの公式サイト MyndPlay MyndPlayは、脳波計測を使ったエンターテイメントアプリです。ユーザーがヘッドセットを装着して映画やゲームを楽しみながら、脳波データをリアルタイムで解析し、コンテンツの内容を動的に変化させていきます。これにより、集中力やメンタルパフォーマンスを向上させることができます。 MyndPlayの公式サイト リラクゼーション領域 Headspace Headspaceは、瞑想とマインドフルネスを手軽に実践できるアプリケーションです。ガイド付きセッションにより、ユーザーがストレスを軽減し、心の健康を向上させることができます。初心者から経験者まで幅広いユーザーに対応しており、日常生活の中でリラクゼーションや集中力の向上をサポートします。Headspaceはアプリ単体で利用可能であるため、スマートフォンにダウンロードするだけでいつでもどこでも使用できます。 Headspaceの公式サイト Calm Calmは、ユーザーのストレスを軽減し、心の健康を向上させるための瞑想とリラクゼーションアプリです。ガイド付き瞑想、リラックス音楽、睡眠ストーリー、呼吸エクササイズなど、多様なコンテンツを提供しており、初心者から経験者まで幅広いユーザーに対応しています。アプリ単体で使用することができ、日常のストレス管理や睡眠の質向上、集中力の向上を目指す人々に広く利用されています。 Calmの公式サイト Muse Museは、瞑想とリラクゼーションに特化した脳波計測アプリです。専用の脳波センサー(ヘッドバンド)を使用して、ユーザーの脳波をリアルタイムでモニタリングし、瞑想セッション中の脳の活動を解析します。Museは、瞑想の効果を最大化し、ストレスの軽減やリラクゼーションの促進をサポートします。 Museの公式サイト VIE Tunes VIE Tunesは、脳波計測を利用して、個々のユーザーに最適化された音楽を提供することで、集中力の向上やリラクゼーションを促進するアプリです。専用のイヤホン型計測器を使用して、ユーザーの脳波データをリアルタイムで解析し、フィードバックをおこないます。アプリ単体でも使用することができ、ユーザーがなりたい状態を選択することで、それに合った音楽を提供してくれます。 VIE Tunesの公式サイト エンタメ領域 Neurosky MindWave Neurosky MindWaveは、ユーザーの脳波を計測して、リアルタイムでフィードバックを提供する脳波センサーとアプリケーションのセットです。主に教育とエンターテイメントの分野で使用され、ユーザーが集中力やリラックス度を可視化し、効果的にトレーニングすることを可能にします。MindWaveは、脳波データを利用してゲームや学習活動を操作することができ、楽しく脳のトレーニングをおこなうことができます。 Neurosky MindWaveの公式サイト Brainlink Brainlinkは、脳波計測デバイスとアプリケーションのセットで、ユーザーの脳波をリアルタイムでモニタリングし、フィードバックを提供することで、集中力の向上やリラクゼーションをサポートします。エンターテインメントや教育、メンタルトレーニングの分野で幅広く利用され、ユーザーが脳波データを通じてゲームや学習アクティビティを操作できるようにすることで、インタラクティブな体験を提供します。 Brainlinkの公式サイト NeuroGaming NeuroGamingは、脳波計測技術を利用してインタラクティブなゲーム体験を提供するプラットフォームです。ユーザーの脳波データをリアルタイムでモニタリングし、そのデータに基づいて最適なコンテンツを提供します。この技術は、ゲームのエンターテイメント性を高めると同時に、集中力や反応速度のトレーニングにも役立てることができます。 NeuroGamingの公式サイト 研究領域 OpenBCI GUI OpenBCI GUIは、OpenBCIのデバイスを使用して、脳波データや他の生体信号を記録、視覚化、および解析するためのアプリケーションです。ユーザーが脳波(EEG)、筋電図(EMG)、心電図(ECG)などの生体信号を収集、解析、視覚化することができ、さまざまな研究やプロジェクトに活用できます。 OpenBCIの公式サイト NeuroExperimenter NeuroExperimenterは、脳波データを詳細に収集し、行動実験や心理実験をおこなうための研究用アプリケーションです。アプリ単体でも使用できますが、EEGキャップや電極セットと組み合わせることで、より多くの機能を活用し、強力なツールとして利用することができます。使いやすいインターフェースと高度な解析ツールは人気が高く、学術研究や臨床試験において幅広く利用されています。 NeuroExperimenterの公式サイト 脳波計測アプリが秘める可能性 脳波計測アプリは、急速に進化している技術分野であり、今後も多くの可能性を秘めています。これまでの進化により、脳波計測アプリはより高精度なデータ提供が可能となり、ユーザビリティも大幅に向上しています。 今後さらに多機能化し、健康管理から教育、エンターテイメント、医療に至るまで、さまざまな分野での応用が期待されています。これらのアプリケーションはわたしたち生活をより豊かで健康的なものにしていくでしょう。

「ありがとう」を伝えると生産性が上がる!感謝できる人とできない人の違いとは?

相手に何かをしてあげたときに「ありがとう」と言われると嬉しくなったり、反対に感謝をされないと、少し残念な気持ちになったり、このような経験はありませんか? 人間にはさまざまな感情がありますが、「ありがとう」という感謝の気持ちには、脳科学的にもたくさんのパワーが秘められているのです。今回は、人間関係や健康、仕事でのパフォーマンスなど、感謝の気持ちが発揮する力について深掘りしていきます。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm12/ 感謝の気持ちはなぜ存在する?「ありがとう」の言葉に秘められた力とは? 古代ローマの時代、政治家であり哲学者でもあるキケロは、「感謝の心は最大の美徳のみならず、すべての美徳の起源である」と言いました。人間のあらゆる感情の中で1番の美徳だとキケロが言うほど、「感謝」は私たちにとって大切な感情なのです。 脳科学の研究では、感謝の感情を持つことは、人間関係の維持や強化に貢献することが分かっています。また、嫌なことや不安なことなことがあっても、何かに対して感謝の気持ちを持つことができれば、抑うつ効果が期待されることが証明されています※1。 また、感謝を「する側」と「される側」とでは、「感謝」が持つ力に差があることも分かっています。自分のやる気を上げてくれたり、人間関係をよくしてくれたりするのは、「ありがとう」と言うことであり、感謝の気持ちを持つ側なのです。感謝をされるよりも、感謝をする回数を増やしたり感謝の質を高めることが大切です。 とは言っても、感謝の気持ちを積極的に持つことは、なかなか難しいことです。その場では「ありがとう」と思っても、その記憶は長くは続きません。 そこでオススメなのは、感謝の気持ちを書き留めた日記をつけることです。今日1日で起きた、感謝できる物事や感謝の気持ちを、日記に書いてみることを繰り返すと、意識して感謝が身についてきたり、感謝できるようになったりします。日記をつけるだけで、幸福度が上がったり、ストレス耐性が上がることも分かっています※2。 ではそもそも、感謝という感情はなぜ存在するのでしょうか? 感謝の感情は、進化の過程で人間社会を強化するために発展してきたと考えられています。「プロソーシャルビヘイピア」といって、感謝の気持ちはその人をポジティブな気分にさせ、その気持ちを維持したり、より高めたりするために、今度は自分が他の人の役に立つことをして、感謝されようという行動が増えていきます。 このように人間関係において、「感謝」という気持ちが存在することで協力行動が生まれ、それが広がり、人間集団が強化されていくのです。 そのため、感謝の気持ちは、人間の進化の過程で残り続け、存在し続けていると言われています。 ※1 出典:The Neuroscience of Gratitude and Effects on the Brain (positivepsychology.com), 2024年7月11日参照 ※2 出典:How Gratitude Changes You and Your Brain (berkeley.edu), 2024年7月11日参照 感謝をしやすい環境と感謝をしにくい環境の違い 「ありがとう」をしっかりと言葉にできる人は、「良い人」というイメージが付きやすいと思います。しかし、感謝のしやすさにも個人差があることが分かっており、感謝をしやすい人と感謝をしにくい人が存在します。 例えば、所属している組織が堅苦しい場合だと、感謝の気持ちが生まれにくいと言われています。そのため、公的な機関である役所や病院、会社などは、感謝が少ない傾向にあります。また、ストレスの多い職場や、人間関係が円滑でない職場では、何かに貢献しているという意識を持ちにくくなり、感謝の気持ちが生まれにくくなります。 反対に感謝の気持ちが多い組織は、ボランティア組織や宗教組織、慈善組織などです。これらの組織では、ストレスが少なく、貢献意識が高くなりやすい傾向にあります。そして貢献意識が高い人が集まると、より他の人から感謝をされたり、他の人に感謝したり、感謝を認識する機会が多くなります。 感謝の気持ちを持てるようにするための方法とは? 冒頭でも紹介したように、感謝をすると生産性が上がるということが実際に分かっています。そのため感謝の気持ちを持つことは、職場においても大事なことです。職場で感謝の気持ちを持ちやすくするためには、先ほど紹介した「感謝日記」が有効であると言われています。 最近の研究では、2週間大学生にオンラインで感謝日記をつけてもらい、日々自分に起きた出来事で感謝できることを綴ってもらうだけで、彼らのやる気が上がっていったという結果も出ています。 他にも、悲しかったことや辛かった出来事の中に、感謝できる部分を探してみるという方法があります。例えば、一緒に映画を見る約束をしていた友人が寝坊をしたため、延期になってしまったとします。そのような悲しい出来事の中にも、今日の予定が無くなったことで、自分の時間が持てたことに対する感謝や、楽しみな予定が来週に引き伸ばせたことに対する感謝など、さまざまな感謝できる点を見つけられると思います。 このように悲しい出来事の中にも感謝できる点を見つけていくことによって、気持ちがとても楽になり、苦痛やストレスが軽減することができるのです。 まとめ 感謝という感情は、人間が互いに協力しあって存続してきた感情です。この感情は、人間関係を維持したり、社会関係を築くためにとても役に立ちます。 「辛い出来事」や「嫌な記憶」もポジティブに変換できる、人間にとって大切な感情なのです。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/33rQ0RJxI5Z8KtP4Th2Nmo?si=6TxnZ13QTw6XmWkQ-47ooQ 次回 次回のコラムでは、脳科学的に解明された『感謝のコツ』についてご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm14/

「痩せられる人」と「痩せられない人」の脳の違い/ダイエットとニューロテクノロジーの話

これまで、悪い習慣を良い習慣に変えていくことや、周りの人と協力して取り組みを継続させていくことなど、さまざまなダイエットの効果的な方法をご紹介してきました。 しかしそれでも、長期的なダイエットは容易に達成できるものではありません。そこで今回は、ニューロテクノロジーを使った、ダイエットに効果があるとされている最新技術をご紹介します。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm11/ 痩せられる人と痩せられない人には脳活動の違いがあった! そもそもダイエットに関わる脳の情報処理を理解しないと、話は進められません。アメリカのカリフォルニア州にあるカルテックのグループが、衝撃的な事実を雑誌サイエンスに掲載しました。 彼らはアメリカでダイエット中の、ビッグサイズな人たちを集めてきて、fMRIという脳のスキャナーに被験者を入れました。そこでサラダやスニッカーズなど、低カロリーなものから高カロリーなものまで、食べ物の写真を被験者に見せたところ、「痩せられる人」と「痩せられない人」には脳の違いがあるという事実がわかりました。 私たちの脳には、「目的思考」と「習慣思考」というものがあります。ダイエットには「目的思考」が必要です。「習慣思考」は「カロリーを取れ!スニッカーズを食べろ!」と誘惑してくるのですが、「痩せるためにはサラダを食べないといけないんだ」というように、目的と照らし合わせた思考にしていかなければならないのです。 そこで重要になるのは、dlPFC(Dorsolateral prefrontal cortex=背外側前頭前野)と呼ばれる脳の部位です。痩せられる人たちの脳は、報酬を期待する脳の部位VMPFC(ventro-medial prefrontal cortex=腹内側前頭前皮質)で起こる活動を、dlPFCが止めてくれます。 つまり、頭の中にブレーキのような働きをする脳の部位(dlPFC)があり、「美味しそう!食べたい!!」と思ったときに、そのブレーキが作動する人と作動しない人に分かれるようです。 ダイエットにおいて「過食はやめよう」「カロリー制限をしよう」というように、「目的思考」に脳を変えるためには、dlPFCの活動が必要になる、ということが解明されたのでした。 ニューロフィードバックを使って痩せられる脳を手に入れる! ここまでで、痩せられる脳の仕組みがわかったと思います。では、そのような仕組みを脳に書き込み、自然にこの作用を起こさせることができたらすごいと思いませんか? 1つの方法としては、dlPFCの脳活動を上げる訓練をおこなうことが考えられます。例えば、fMRIに入って「あなたのdlPFCの活動はこういう状態だから、もっと上げなさい」と指示し、美味しそうなドーナツの写真を見ながら訓練をすると、なんとドーナツが食べたくなくなってしまう、という状態にすることが可能です。 また「モチベーショナルニューロフィードバック」という方法もあります。例えば、ハンバーガーの写真を見ながら、dlPFCの活動をうまく起こすことができたら、そのハンバーガーの写真がどんどん遠ざかっていく、というものです。これにより、ハンバーガーを見てもハンバーガーに対する食欲を抑える、ということが学習しやすくなっていき、それによってダイエットが成功していくということがわかっています。 さらに、dlPFCに直接微量の電流を40分ほど流し続けると、ブレーキが作動するという方法もあります。ハイカロリーなものを食べたくなってしまうという脳の情報処理を、ニューロフィードバックで修正することで、逆にサラダや豆腐などを食べたくなるようにしてあげることが可能になります。 訓練をしたり、外部から刺激を与えることによって、食行動が変わり、痩せられるようになる、というのは夢のような話ですよね。カロリーが低くて健康的な食事で、より満足できる脳に変えられることができたら、ダイエットも継続しやすくなるのではないでしょうか。 まとめ ハイカロリーな食品を選ぶか、ローカロリーな食品を選ぶかという食選択は、脳の情報処理によるものです。そのため、ニューロフィードバックを利用することで、健康的な選択を促進できる可能性があります。 私たちの会社VIE でも、ニューロフィードバックを中心とした技術を取り扱っているので、将来的にはダイエットに関連した製品も提供できたらと考えています。 ニューロフィードバックについては、こちらの記事でも紹介しています。 https://mag.viestyle.co.jp/neuro_feedback/ 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/28IWJZQBO3huFB3UdinnBB?si=nmNHdQdzSDeC7C6qjcbl7A 次回 次回のコラムでは、脳科学の研究に基づいた『感謝の力が発揮する力』についてご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm13/

ダイエットを長続きさせるための4つのコツ「EAST」/驚くほど痩せる簡単な習慣とは?

ダイエットはすぐに結果が出るものではなく、痩せてなりたい自分になるためには、長い時間がかかります。では、どのようにすれば長期間モチベーションを維持し、ダイエットを継続することができるのでしょうか? 今回は、行動経済学に基づいたダイエットの方法やマインドをご紹介します。 前回のコラムはこちらです。 https://mag.viestyle.co.jp/columm10/ 人間の脳は未来のために頑張ることはできない? 人は将来のために努力をすることが、苦手な生き物だということを証明する実験※があります。「今の自分」という輪と「将来の自分」という輪を紙に描かせてみます。すると「今がよければいい」と考える人は、2つの輪を離して描き、「今の自分は将来の自分と繋がっているんだ」と考える人は、2つの輪を重ねて描く傾向にあるようです。 さらに、前者のように輪を離して描く人ほど、不健康で貯金もしていなくて…という人が多いことがわかっています。 未来のために努力をすることは、人間が本能的に苦手としていることなのです。しかし、これを「脳が得意なことを使って克服していこう」というのが、行動経済学やナッジになります。 行動経済学とは、人間の意思決定や食行動などの日常の営みが、どのようなプロセスで行われているのかを研究し、それに基づいた介入を行うものです。行動経済学において有名なフレームワークのひとつに、ダイエットに役立つ「EAST」と呼ばれるものがあります。 ※出典:Frontiers | Looking Back From the Future: Perspective Taking in Virtual Reality Increases Future Self-Continuity (frontiersin.org), 2024年7月11日参照 脳が得意なことを使ってダイエットを継続させる4つのコツ 「EAST」の1つ目は「Easy=簡単」です。脳はめんどくさがり屋なので、少しでも大変なことがあると、やる気をなくしてしまいます。「Easy」はその解決策として、あらゆることを「デフォルト化」してしまえばいい、という考えです。 例えば、臓器提供の話が例に挙げられます。臓器提供は、チェックリストに印をつけていくのが、とても煩雑な作業であるため、多くの人は同意をしないそうです。しかし、デフォルトで印がついている状態のものを渡し、同意しない場合はチェックを外す仕組みにすると、多くの人はその行為を面倒に思い、臓器提供に同意をするということがわかっています。これを「デフォルトオプション化」と言います。 自分にやらせたいことをデフォルトオプション化してしまえば、頭を使って考える必要がなくなるため、自然に行動に移すことができるのです。 ダイエットの話で言えば、毎日のご飯で何を食べるかを決めていないから、月見バーガーやケンタッキーを食べてしまうけれど、「夜ご飯は絶対にサラダにする」と言うように、食べるものをデフォルト化してしまえば、脳に負担をかけずに健康な食生活を継続できるのではないか、ということです。 「EAST」の2つ目は「Attractive=魅力的」です。脳は、注意を引くようなものでないと、行動を変えることができません。そのため、サラダを例に挙げると、盛り付けを綺麗にすることや、お気に入りのお皿に盛り付けるなどして、サラダを魅力的に見せ、美味しく食べられるようにする、というものです。 「EAST」の3つ目は「Social=社会的」です。人間は、周りの人がどうしているかが気になってしまい、周りの人の行動にとても影響を受けやすい生き物です。それを利用して、ダイエットでは「今日何を食べたか」「どのくらい歩いたか」などを、友達や周りの人と報告し合うことにより、人の力を借りて痩せられるのではないか、というものになります。 「EAST」の4つ目は「Timely=時間」です。人間はいつでも習慣を変えられるわけではなく、変えやすいタイミングがあることがわかっています。 例えば、中東では糖尿病や肥満が多いことが問題になっています。そこで「ダイエットをしなさい」と言われても、すぐに食生活を改善することは難しいのですが、ラマダン(断食)の時期に食事の介入をすると、食生活を変え易くなるそうです。 ダイエットに金銭的な報酬は効果なし!?驚くほど痩せる簡単な習慣とは? ダイエットを長続きさせるためには、悪い習慣を良い習慣に変えていくことが大切です。「痩せたら1万円あげる」と言うような金銭的な報酬は、ダイエットにはあまり効果がないとされています。反対に「短期的に変わる指標」「KPI的な指標」は、ダイエットの報酬として、効果的であると考えられています。 例えば、「食品を選ぶときにカロリーチェックをしたか」「糖分の含まれている飲み物は飲まなかったか」「夕食を18時までに食べ終えたか」と言うように、複数の簡単な指標を作り、もし失敗したら「どうしたら改善できるか」というセルフチェックを習慣にすることで、驚くほど痩せていく、という研究事例があります。 まとめ ダイエットは体重などの数値に囚われてしまいがちです。しかし、体重はあくまで、ダイエットを行なった結果であり、「間食をしなかった」「一駅分歩いた」というような痩せるまでの過程に目を向けていくことが、ダイエットの長続きのコツでもあります。 そもそも私たちの脳は、ダイエットのような長期的な行動を苦手とします。反対に、脳が得意なことを使って、食生活や運動生活を変えていくことができれば、ダイエットを成功させることができるかもしれません。 🎙ポッドキャスト番組情報 日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜 パーソナリティー:茨木 拓也(VIE 株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花 https://open.spotify.com/episode/3EwVd7FIlgssCQc2p5Nwiz?si=VMPMbTW3RcCGKdpeTSmggA 次回 次回のコラムでは、ニューロテクノロジーを利用した『ダイエットに効果がある最新技術』をご紹介します。 https://mag.viestyle.co.jp/columm12/

1 18 19 20 21 22 24

Ready to work together?

CONTACT

ニューロテクノロジーで新たな可能性を
一緒に探求しませんか?

ウェアラブル脳波計測デバイスや、
ニューロミュージックに関心をお持ちの方、
そして共同研究や事業提携にご興味のある
企業様、研究機関様からの
お問い合わせをお待ちしております。

Ready to work together?

CONTACT

ニューロテクノロジーで新たな可能性を
一緒に探求しませんか?

ウェアラブル脳波計測デバイスや、
ニューロミュージックに関心をお持ちの方、
そして共同研究や事業提携にご興味のある
企業様、研究機関様からの
お問い合わせをお待ちしております。